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西浦昌一調教助手

昨年はホッコータルマエで日本のダート戦線を牽引した西浦勝一厩舎。総大将は川崎記念からの始動を予定しているが、数日前の東海Sに登場するのは1歳下の重賞ウイナーであるケイアイレオーネ。当コーナーではすっかりお馴染み、2014年は益々密着させていただくことになる西浦昌一調教助手に、ダート界席巻を誓う2頭の近況を聞かせてもらった。

快勝から一転、大敗の敗因を探る

-:東海Sを予定しているケイアイレオーネ(牡4、栗東・西浦厩舎)ですが、11月のみやこSで12着と大敗してしまったあとから、間隔が空いての出走です。このブランクの理由を教えて下さい。

西浦昌一調教助手:脚質的にも合っているということで、暮れの阪神(ベテルギウスS)を使おうと思ったのですが、具合が良過ぎて最終追い切りで挫跖しちゃったんですよね。そこの完治が遅れたということで、ここまで空いたんです。

-:この馬はここ最近で26キロぐらい増えています。大柄な馬なので、そこまで気にしなくて良いのかもしれないですが、570キロという超大型馬で体重管理というのは、かなり難しいのではないですか?

西:必要以上に増やそうと思ったら、また増えますけど、まだ明け4歳。脚元固めがやっとできたかな、という程度なので、そこまでパンプアップさせる調教とかもせず、加減はしていますね。

-:太目が残っているというよりも、この馬の骨格や体格的に言えば、もっとあっても良いくらいだと。

西:はい、もっとあっても良いぐらいですね。



-:みやこSで12着に敗れた敗因はどの辺にありますか?

西:京都の馬場が前残りのダートなので、後ろから付いて回るのもちょっとしんどい競馬だったと思うんですけど、その前(シリウスS)で重賞を勝っているので、ちょっと色気を持って出したら、引っ掛かりながら後ろから、という競馬になってしまったので、しょうがなかったのかなと……。

-:急に流れが速くなる展開よりは、平均ペースで流れて、途中から進出していくような競馬が、この馬の形ということですか。

西:まあ、京都は前が止まらないですからね。平坦で前が上がりもシッカリと動けるので。

-:平坦で軽いダートよりもスタミナが求められるような条件の方が、この馬には合っていると。そういう条件で言うと、凍結防止剤が入るこの時季の重いダートに期待したいですね。

西:期待したいですね。


フェブラリーS前哨戦・東海&平安S 明け4歳馬の好走例(過去10年)
年・レース名 馬名 人気着 3歳事の古馬との主な戦績
13年東海S ホッコータルマエ 1人気4着 JCダート3着
12年平安S シルクシュナイダー 6人気3着
09年平安S エスポワールシチー 1人気2着 トパーズS(OP)勝ち
08年平安S マコトスパルビエロ 5人気3着 関越S(OP)勝ち
06年平安S タガノゲルニカ 5人気1着
06年平安S ヴァーミリアン 2人気2着 浦和記念勝ちなど
05年平安S ブラックコンドル 8人気2着 春待月S(OP)勝ち
05年平安S ジンクライシス 1人気3着 JCダート3着
昨年から東海Sと平安Sの施行時期が変更。条件も違うだけに、一概にひとまとめには出来ないが、いずれもフェブラリーSの重要なステップレース。そこでの明け4歳馬の好走例をみると、上記8頭中6頭が、「3歳時に古馬混合の重賞で好走・OP特別勝ち」の実績があった。
その点、ケイアイレオーネはハンデ戦ながらも、古馬を相手に重賞勝ち。実績的には申し分はない。

気になる超大型馬の馬体重

-:先週辺りから差し傾向が強くなっているダートなので、中京でも多分、気温さえ下がって凍結防止剤が入れば、予想以上に前が止まる展開が見込めると思うんですけれど、今週(1/16)の追い切りの動きはどうでしたか?

西:終い重点で最後まで走れるような併せ馬を組んで、しっかりと13秒を切って上がってくれたので、来週にしっかりとやれば態勢は整うんじゃないかなと。

-:動き自体はいかがでしょうか。

西:良い時と比べて、まだそこまでキレキレで動けるような態勢ではないんですけど、来週はそこを目指してやっていけるのかな、という今日の内容だったので、まだ良くなっていくはずです。

-:今のところの体重はどれぐらいですか。

西:580くらいあるんですよねえ。

-:今が580キロということは、前走が574キロでしたけど、そのくらいか、ちょい減りぐらいで出せそうですか。

西:出せそうな感じです。

-:1年間走り続けてきた訳なんですけれど、どこか変わったところはありますか?

西:勝った後はちょっと気の悪さを見せたりもしてたんですけど、しっかりと躾け直せばお利口な馬なので、今は大丈夫なので。大きいだけで線の細い馬だったのが、付くべきところに筋肉が付きだして、パンプアップしてきました。それ以上パンプアップさせると脚元も怖いので、もうちょっと我慢をして、放牧に出したところから、更なるパンプアップを狙っていきたいなという感じですね。



敗戦にも収穫あったUAEダービー

-:この馬は去年の3月にUAEダービーに出走していて、3歳ながら、日本とは全く違う環境や空輸など、色々な経験をして状態を戻すのが難しかったと思います。

西:いや、馬場もこなしていたし、実際は適応していたんです。行く前(出国検疫)まではジェンティルドンナも一緒だったし、タイセイレジェンドがリードホースをしてくれていましたが、行ってしまえば、堂々とした振る舞いで、むしろみんなを連れて歩くくらい堂々とした馬だったので、すごく頼もしくて。いざ走らせたら、スベるようにしっかりと走ってくれてたので、僕らは楽しみでしょうがなかったんですけど……。

でも、出負けをして、パッチンと喰らって、引っ掛かっちゃったんで、しょうがないと言えばしょうがないんです。言ったら、みやこSみたいな競馬になっちゃってダメだったんですけど、あれがスムーズに行ってれば……。僕、担当者、幸騎手、乗った人間全員がタペタをこなせている、と思わせる走りをしてくれてたので、是非もう1回、G2でも良いのでドバイに出たいですね。3歳で古馬をやっつける馬なんて、あまりいないので、勝った意義をわかってくれて選んでくれればな、と思っているんですけどね。もう1回行きたいですよ。




-:その後の成績を考えると、もうちょっと走っても良いかなというイメージがあったんです。

西:3着、3着、3着と賞金を加算したいところで、獲れてなかったりだとかしていたので……。

-:持っている能力はあるけれど、色々な条件が噛み合わないと、この馬の良さが出てこないと。タペタをこなすというのは一般のファンにはわかりにくいと思います。ダートは結構メリ込むというか、良い感じでグリップが抜けるというか、そういうことがあるんですけれど、ドバイのタペタは馬にとってはグリップし過ぎる面があるイメージです。

西:キックバックでこなせない馬は跳ねちゃうんですよね。それが全然、自然なフォームでしっかりと走りこなせていたというのは、誰が乗ってもそう感じたんでね。「芝をこなせるスピードがないとダメだ」とかよく言われますけど、グリップとキックバックの差を考慮して動けるか、動けないかですね。


「G2でも選んでもらって行けば、勝負になると思うので。勝負になってくれれば、来年はドバイワールドCという目標もできるので」


-:骨格的にもレオーネは結構強いんですね。

西:と思います、僕は。G2でも選んでもらって行けば、勝負になると思うので。勝負になってくれれば、来年はドバイワールドCという目標もできるので。

-:5歳の3月に向けて、長期的な目標を据えて調整していけると。

西:そうですね。ドバイの後は一旦休ませて。



-:そういう夢も膨らむケイアイレオーネなですが、あれだけ体が大きいと、先ほど言われていた脚元の不安が常に付きまとうと思うのですが、調教で気を付けているところはありますか?

西:乗っている感覚が大きいので、難しいんですよね、アクションが。その分、首を使わせると、普段僕らが乗っている感覚より大き過ぎるので、それを起こしたりだとか、バランスバックしたりだとか、上手な子が担当しているので。良い収縮からハジけれるような馬になった矢先に挫跖しちゃった。馬が良過ぎたんでしょうね。

-:今は、みやこS以前のケイアイレオーネとは違うイメージになりつつある、過渡期と言うことですか?

西:ちょっと一頓挫あったんで、体調自体がどれだけ回復しているか、という問題があるんですけど、十分に走れる馬だと思っているので。

-:今週の動きは若干重めが残っている印象でしたけれど、来週の動きを確認してもらって、素軽い動きができているようだったら、いきなり東海Sで走ってもおかしくないと。

西:勝負になってもおかしくないです。

-:左回りに関してですが、この馬はユニコーンSで3着。あの時はUAEダービーを使った後で帰国緒戦だったので人気はなかったんですけれど、左回りをこなせたというのも好走の要因ですか。

西:どっちの手前にも得手不得手がないんで、やっている僕らとかは一切気にしたことはないですね。ついでに言えば、ドバイも左回りですからね。

-:能力があるから、場を選ばない走りができるんですね。これから更に楽しみな、ファンは覚えておいた方が良い1頭です。

西:そうですね。打倒ホッコータルマエで頑張ります。

●川崎記念前・ホッコータルマエについてのインタビューはコチラ⇒





【西浦 昌一】Syoichi Nishiura

昭和49年生まれ。西浦勝一調教師の3人兄弟の長男。当初はこの世界に入るつもりはなく、東京の大学に進学するつもりだったが「早く一人前になりたい」という思いから止まることに。当時はまだ西浦師の騎手時代で、父の思い出の馬を尋ねると「カツラギエースの時は小学校5年生くらいで、社宅の周りで自転車レースしていたんです。みんなおめでとうおめでとうって言って、何がおめでとうなんだろうなと。うちのオカンは騒いでるわで、凄いレース勝ったんだ位にしか思わなかった」と。

当初に所属したのは解散した星川厩舎で「当時ジョッキーだった本田さんと仲が良かったので、頼んだら入れてくれたという感じ。可愛がってもらえて、サンライズ系とか外車、サンデーなど走る馬ばっかりやらせてもらってました」。西浦厩舎は開業して1年後から15年間所属しており、現在は持ち乗り助手として活躍。毎日馬に接する時のモットーは「一緒に気持ちを分かってあげる、仲良くしているんだけど少しだけ優位に立っておきたい」。同世代に元騎手の飯田祐史技術調教師などがいる。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。

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