関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

鈴木裕幸調教助手

昨秋は神戸新聞杯からのローテで、不安視された追い合い面をクリアして、菊花賞で悲願のタイトルを掴んだエピファネイア。レース中の外傷や捻挫などによって古馬との対戦はならなかったが、この大阪杯での復帰が何よりの朗報だ。日本ダービー以来となるキズナとの再戦、メイショウマンボとの初対決と興味は尽きないが、いつもの自然体で鈴木裕幸調教助手が本年緒戦への展望を聞かせてくれた。

とにかく順調。無事であることが一番

-:菊花賞以来約5ヶ月ぶりのレースとなるエピファネイア(牡4、栗東・角居厩舎)ですが、帰厩されたのはいつ頃でしたか?

鈴木裕幸調教助手:3月上旬ごろだったと思います。

-:戻ってきた時の第一印象を教えていただけますか?

鈴:いつも通りの感じでしたよ。

-:5ヶ月経っていると、背が高くなったりもするかと思います。

鈴:それでも、もともと早い段階からデキ上がっていた馬だったので、そんなに大きな変化というのはないですね。

-:精神的に良いリフレッシュができたというくらいですか?

鈴:そう思いますね。牧場では凄く落ち着いてくれていたみたいですし。

-:乗り出してみてからの変化というのは何かありましたか?

鈴:休んでいた分、少し緩んでいたような面もありましたが、追い切りを入れていく毎に、一段ずつ良くなっていっているので、今のところ何の不安もないですね。

-:ファンにとって体重は気になるところだと思いますが、その辺りの変化はどうでしたか?

鈴:この前、量ったのですが、殆ど変わらないですね。菊花賞よりももっと前から、目方的にはあまり変わっていません。菊花賞前に比べると、まだ少し余裕がある感じがしますけど、あの時は神戸新聞杯を一度使っていますし、5ヶ月の休み明けの1週前と考えれば、順調に来ていると思います。


「必要以上にテンションが上がっているというのは全く無いですし、追い切りをやる毎にトモに力強さが出てきています」


-:今週の水曜日(3/26)は雨の中での追い切りでした。

鈴:追い切り内容は良かったです。(福永)祐一騎手も「良かった」と言ってくれましたし、見ていても、前の週はやっぱり少し気持ちが勝っている面が見えましたが、1週間経って、傍から見ていても良かったと思いました。

-:その「良かった」というのは、やはり人馬のコミュニケーションの面ですか?

鈴:そうですね。折り合い面に関してもそうですし、動きにしても良かったです。

-:あの雨で、時計も若干かかり気味なコンディションでした。

鈴:パワーがあるので、調教に関しては馬場の悪さは全然苦にしないですね。

-:取材当日となる本日は金曜日で、追い切りから2日経っていますが、ピリッとしてきたとか、なにか変化はありましたか?

鈴:必要以上にテンションが上がっているというのは全く無いですし、追い切りをやる毎にトモに力強さが出てきています。今日キャンターを乗った感触からも、良くなっていると思いますね。



好敵手とファンに喜んでもらえる競馬を

-:菊花賞を勝った後、ファンはジャパンカップや有馬記念への参戦を期待していたと思いますが、そこで見られなかった分、楽しみが広がりそうですね。

鈴:そうですね。無事に行ってくれるのが、まず何より一番だと思います。

-:今回の大阪杯で、初めて同世代以外の馬とも戦うことになります。それをエピファネイア級の馬に聞くことは失礼かもしれませんが、この馬にとっては、いかに自分のレースができるかの方が問題になりそうでしょうか。

鈴:毎回同じ答えになってしまいますが、周りのメンバーを気にしたことはそれほどないですね。あの子は自分自身に対しての課題が多いのでね……。自分の競馬ができれば、良いレースを見せてくれると思います。

-:レースでは、やっぱり若干行きたがる仕草は見せるでしょうか?

鈴:どうですかね。菊花賞の時は大丈夫だったと言っていますし、今回は2000mですからね。正直、そんなに不安視はしてないですね。


「何も変わったことをするつもりはないですから、今までと同じようにやっていこうかなと思っています。いつも通りが一番です」


-:あと1週間、調教を積んで本番に向かうわけですが、これからまだまだ活躍していかなければいけない馬です。

鈴:ぜひ、今年1年頑張ってくれればと思っています。

-:幸先良いスタートを決めるために、大事な一戦ですね。

鈴:何も変わったことをするつもりはないですから、今までと同じようにやっていこうかなと思っています。いつも通りが一番です。

-:そういう鈴木さんのスタンスが、この馬にも合っているんでしょうね。

鈴:アレもコレもってやったところで、それが馬にとって良いのかどうかも分からないですからね。もちろん、必要かなと思うことはやりますけど、その結果は競馬にならないと分からないです。

-:昨年の今頃は、3歳クラシックを目指して厳しいローテーションで頑張っていたわけですが、経験を積んで、表情にも凛々しさが出てきましたかね。

鈴:あんまり関係ないと思いますよ(笑)。信じる以外に無いですよね。走るのはアイツですから。



-:ライバル達も休み明けで出てきます。この馬も、5ヶ月空いたという不安だけで、その他の点は心配いらないでしょうか。

鈴:5ヶ月空いたことに対しても全く不安はないですし、無事に走って、力を出し切って帰ってきてくれればそれでいいかなと思っています。

-:我々ファンはワガママなので、勝利を望んでしまいますね。スターホースの宿命といいますか。

鈴:もちろん、そのためにやっていますが、改めて言うことでもないような気がします。勝ちを獲りに行くというのは大前提として置いといて、無事に精一杯走ってきてほしいです。

-:強いエピファネイアが見られることを、期待しています。

鈴:キズナやメイショウマンボにしろ、同世代の最優秀3歳牡馬・牝馬が出てくる予定ですし、他の世代の強い馬もいますから、お客さんもいっぱい来てくれるんじゃないかなと思いますので、その中で喜んでもらえるような競馬をしてくれればいいなと思います。

-:エピファネイアの良いところを見せたいですね。楽しみにしていますので、残り1週間頑張ってください。

鈴:頑張ります。応援よろしくお願いします。

菊花賞前・エピファネイアのインタビューはコチラ⇒






【鈴木 裕幸】 Hiroyuki Suzuki

1977年6月生まれ、京都府出身。
競馬とは縁のない家庭に生まれるが、中学生の頃、偶然ダイユウサクが勝った有馬記念をテレビで観て、競馬という職業を意識することに。 ジョッキーとしては、身長・体重・視力などが適さなかったため、厩務員を目指すことを決意。高校時代に京都競馬場の乗馬苑で乗馬を始め、高校卒業後、北海道の幾つかの牧場を渡り歩き、2004年に競馬学校厩務員過程に入学。
そこから、角居厩舎に入ると、シーザリオ(オークス&アメリカンオークス勝ち)、フレンドシップ(ジャパンダートダービー)、ロールオブザダイス(平安S)、ステラロッサなどを担当した。日々の仕事に対してのモットーは「ルーティーンにしないこと、繊細に務めることを心掛けたい」と語る。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。

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