自分の形で真っ向勝負アドマイヤラクティ
2014/4/27(日)

有馬記念は3番人気で11着と大きく崩れたアドマイヤラクティだが、そこは生涯成績で掲示板外を数えられるほどの堅実派。G2の阪神大賞典では本番を見据えての仕上げで2着と、身上のしぶとさを見せてきた。梅田智之調教師に聞けば心配された反動もなく、すべてにおいての上積みは間違いないこの天皇賞(春)。充実のハーツクライ産駒が、世間の言う“3強”にどこまで肉薄するか目が離せない。
-:よろしくお願いします。今朝の追い切りが終わった直後のアドマイヤラクティ(牡6、栗東・梅田智厩舎)ですが、阪神大賞典ではレース前の取材で聞かせていただいた通り力を示して2着という結果でしたが。その後の状況はいかがですか?
梅田智之調教師:有馬記念が終わってから放牧に出して、阪神大賞典の1ヶ月くらい前に厩舎に入れたんですが……。この馬は爪の状態で今まで苦労していて、今回もレースから逆算して1ヶ月前に戻したら、爪を気にして時計をなかなか出せなくて、治すのに時間がかかりました。時計を出せる頃にはレースも迫っていて、それもあって結構調教が足りないかもしれないという思いがあって、バリバリやっちゃったんですよね。それがマイナス6キロという、休み明けにしてはあんまり良くない状態で、競馬に出してしまいました。それでも結果を出してくれたんだけど、怖かったのはその反動ですね。
ただ、大賞典が終わってから天皇賞まで時間もあったし、その間はずっと栗東に置いて、ダメージが残らないように時間を充てました。今回は前走に比べるとすこぶる順調で、毛ヅヤもいいし、馬体もフックラ見せています。普段はCコースの手前から1周半回って、向こう正面から6Fの時計を出すのですが、今回は向こう正面から2周回りました。1週前だからビッチリ負荷をかけようと思ってね。道中の折り合いもついて、乗り役との呼吸も合っていましたし、6Fからジワーッと上がっていって、追い切り自体も久々に上手くいったなという感じです。
-:ライバルになるゴールドシップは、昨日76秒終い重点で併せ馬をしていましたね。ラクティの時計はいかがでしたか?
梅:6F80秒台で、ラストは11秒台後半。お釣りがないようにビッチリやりました。これで、だいたいできたかなと。今週は四位騎手に乗ってもらったんですけど、来週はこちらで。日曜日と、来週の水曜日は、明日からの馬の状態を見て、どれだけやるかを判断ですね。少しのさじ加減で。
「今回は強い馬もいますからね……。有馬記念みたいに、色気を持っていったら失敗したんでね、この馬の競馬に徹した方が結果は良いかなと思います」
-:アドマイヤラクティ+京都コースというと、テーマとしては下り坂になるのではないでしょうか?
梅:もともと3コーナーでズブさを見せて、みんながペースアップした時にモタモタするところありますからね。それは京都でも阪神でも、どこでもそういう感じがします。ただ、前走では案外スーッと勝負どころで上がって行けたので、乗り役が合っているのかなと思いますね。
-:下り坂でちょっと躊躇するというか、あそこで流していけないところが、この馬と京都コースの相性で怪しいところですね。
梅:左を見ながら走るような癖のある馬だから、右回りのコーナリングが、左回りに比べると下手なのかなとは思うけど、その辺は乗り役が追い切りを含めて何度も乗っているので、あまり心配はしていません。ただ、今回は強い馬もいますからね……。有馬記念みたいに、色気を持っていったら失敗したんでね、この馬の競馬に徹した方が結果は良いかなと思います。
いつも後ろから行って、勝負付けが済んだところで突っ込んできて4着とかが多かったから、有馬記念の時はウィリアムズ騎手が乗っていたのもあって、前に行って“勝つかケツか”という競馬をしてもらおうと思って、オーナーにもそう言っていたんだけど、結果的に悪い方に出てしまって。今回もG1だけど、色気を持たずに、自分のレースをしてくれたらなと。
-:ラクティの形に徹して……と。似たようなポジションに、キズナらがいると思います。
梅:いるんですよね(笑)。だったら後ろで牽制しているうちに前に行ったほうがいいと思うのだけど、有馬記念はそれで失敗しているのでね。
-:明らかに、後ろでタメといて終いの良さを活かしているときの方が、歯がゆさはありますけど、ゴール板のところで伸びていますね。
梅:ただ、一瞬のキレ味は、他のキレる馬には見劣ります。その辺のズブさをジョッキーがどう判断して乗ってくれるか、上からな言い方ですが、お手並み拝見といった感じです。どうやって乗ってくれるかという楽しみがあります。

-:ラクティを応援するファンにとって力強いファクターは、ハーツクライ産駒ということですよね。年を重ねるごとにもう一枚化けそうといいますか。
梅:この馬はそんな感じがしますね。去年の天皇賞(春)は4着で、今年の方がメンバーは揃っているとは思うのですが、馬は強くなっていると思います。強敵相手にどれだけやれるか、という期待はすごくありますので、楽しみですね。
-:ジャスタウェイにしてもウインバリアシオンにしても、今までなんだったんだろうという走りをしますね。
梅:本当に、なんだったんだろうなと思いますね。ウインバリアシオンは元々クラシックでも活躍していたけど、ジャスタウェイは急に強くなった気がしますね。そういう点ではまだこの馬も伸びしろはあると思います。具合が悪くて休んだということはないんだけど、毎年コンスタントに使っている割にはそんなに数は使っていないですから。春3走、秋3走とか、そんな感じで使っています。急に大きくなるというのはあまり考えられないけど、ちょっとずつでもまだ伸びていくような感じはします。
-:ハーツクライ産駒に共通していることでは、若干気の悪いところというか、元気が良すぎる面もあるじゃないですか。ラクティを見ていてもそういうところはありますか?
梅:オープン馬だから普段やることは派手だけど、そこまであんまり激しい暴れ方はしないです。やるのは、パドックで号令がかかって乗り役が跨ってからの地下道。今までも前回もそうだけど、大体先出しにして、地下で乗り役に乗ってもらっています。大賞典の時も地下道でヤンチャしたし、そこだけこの馬は変わらないなと思います。普段の調教ではヤンチャしないんですけどね。競馬の時だけです。返し馬に行ってしまえばもう問題ないし、多少ゲートを渋ったりするけど、昨日ゲートの練習に行っていますし。
「前に比べたら若干大人になっているとは思うのですが、つかめないところがあります。走らなかったときの敗因がいまいちわからないんです。4回使ったにしても走らなすぎたから、馬の気の問題かなと思いますけどね」
-:あとはハーツクライの血でスイッチが入ってくれれば、今までの歯がゆいラクティを一変させるだけの競馬ができるかも知れないですね。
梅:それだけのデキにあると思うんですけどね。今日の動きは良かったし、あと10日でどこまでもう一皮剥かせて行けるかな、というところですね。
-:取材などでも結構話を聞くのですが、ハーツクライ産駒は状態があんまり良くなさそうなときに爆発しているイメージがあります。ジャスタウェイが天皇賞を勝った時も台風の影響で木曜日輸送でした。あの馬はそれほど環境変化に強くないという話でしたし、パドックでも蕁麻疹みたいなのが出ている状態だったので、僕としては、大丈夫かなと心配した目で見ていました。それがあの脚を使うんですから、なにがあんなに変わったんですかね。中山で、1番人気で負けたりしていたところは、若干ラクティとかぶります。
梅:この馬に関しては、以前は本当に崩れることがないと思っていました。ここのところは、有馬記念でも結構な負け方をしたし、去年の目黒記念(10着)もあそこまで負けるかなという負け方をしています。前に比べたら若干大人になっているとは思うのですが、つかめないところがあります。走らなかったときの敗因がいまいちわからないんです。4回使ったにしても走らなすぎたから、馬の気の問題かなと思いますけどね。
-:それが悪い方に出た時は大敗するけど、気分良く行けた時には、今までのイメージを覆すだけの脚を使ってくれるかもしれないですね。そちらを期待したいですね。
梅:それくらいのデキにはあります。今年2戦目なので全然疲れもなく、使い詰めでお釣りがないということもないです。
アドマイヤラクティの梅田智之調教師インタビュー(後半)
「道中のポジションと今回の見所」はコチラ⇒
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競馬学校厩務員課程を経て、96年から西橋豊治厩舎に調教厩務員、調教助手として所属。06年から厩舎を開業。12年の大阪杯をショウナンマイティで制して重賞初制覇。昨年のダイヤモンドSをアドマイヤラクティで制し重賞2勝目を挙げた。今年も看板馬のアドマイヤラクティ、ショウナンマイティでG1制覇へと挑む。 |
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