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赤木高太郎調教助手

元騎手、赤木高太郎流の総仕上げ

-:この度のダービーは、橋口先生にとって念願のダービーだった訳ですけど、皐月賞もダービーの直前も追い切りに乗られて、赤木さん流の味付けが施されました。

赤木高太郎調教助手:まあ、そうですね。できるだけあの馬の持ち味が出るように、先生の指示と(担当助手の)甲斐さんと相談をしながら乗っていたんですけどね。

-:あの馬の良さというのは、もちろんハーツクライ産駒独特のスタミナであったり、粘りがあると思います。赤木さんもその辺を感じられていて、追い切りでも活かしましたか?

赤:一番気を付けているのは、トビが大きくて綺麗なので、それを害さないように、抑え過ぎないように気を付けていましたね。

-:それが直前追い切りでも、坂路のテンの1ハロンを思っていたよりも行かせたところが、大一番に活きたと思うのですが。

赤:もう少しゆっくりと行こうとは思っていたんですけど、普段の調教から抑え過ぎないようには考えているんですよ。少し速くなりましたけど、馬は全然余裕で走っていたのでね。



-:ダービーのゲートが開いて、ちょっと先行できたことは、ご自分のやられてきたことがスムーズにいったのかな、という感覚があったのではないですか?

赤:ジョッキーさんも気合でポジションを取りにいってくれたので、それは大きいと思いますけどね。

-:4コーナーからのイスラボニータとの勝負というのは、赤木さんの思い描いていた通りの粘りとスタミナが存分に活きましたね。

赤:やっぱりハーツクライのすごさは、テンに行っても後ろから行くような脚を使えるのが武器だと思うので、良い位置が取れた時点で、これは勝てるなと思いましたけどね。

-:ゴールをした時は、どんな気持ちでしたか?

赤:感動というか、ホッとしたというのが入り混じって、あんな気持ちにはなかなかなれないですね。

-:一人でニンマリとしていた感じですか?

赤:でも、レース走る前は、ジョッキーの時には味わえないような緊張感がありましたけどね。騎手の時は自分が乗ってやるので、見ている方が本当にドキドキしますね(笑)。騎手から調教師になった人もみんな言いますもんね。「見ている方がドキドキするな」と。



前田オーナーと橋口師の嗅覚

-:まだまだ勝った時の感動というか、余韻に浸っている時期だと思います。(ダービー翌週の6/4に取材)

赤:先生ほどの大トレーナーが20年近く掛かって悲願を手にしたという重みと、ちゃんと悲願を達成した、というすごさを感じていますね。やっぱりノースヒルズの前田オーナーが2連覇して、橋口先生も独特の勝負強さを持っていますね。というのは、レースの前に前田社長から電話があったんですよ。「おい、赤木。今の東京の馬場は前が残るし、中団より前の内ぐらいで乗らなアカンやろ」と、ジョッキーでもなかなか気付かないことを、ドンピシャぐらいのことを言われていたので、僕らは「その通りだと思いますね」という話で、すごいなと思って。

先生も「中団より前に行って、イスラボニータがそれくらいにおって、上がりが34秒前半で粘り込むから、その直後ぐらいのインで脚を溜めないと、勝つのはちょっと苦しいぞ」と言っていたから、本当にそこまで嗅覚がすごいんやなと思って。僕らは何回もレースに乗っているから、大体分かるのは当然なんですけど、そこまではっきりとしたことを言っていたんでね。レースの前ですよ。それが全くその通りになって、何かやっぱりその辺じゃないですか、引きの強さというのがね。オーナーさんでも、そこまでドンピシャなことをなかなか……。すごいなと思いましたよ。その通りになりましたしね。




-:でも、その走り、スタイルを公表出来たというのは、赤木さん自身にとっても幸せなことですね。

赤:携われるのは、幸せというより感謝の気持ちで一杯ですね。こんなことはないですからね、日本ダービーなんてね。負けたにせよ、勝ったにせよ、携われることが。この厩舎に入れたことによって、この感謝の気持ちを持ち、僕も調教師を目指しているので財産ですからね。こればっかりは教えてもらえるものでもないし、携わった人間しか分からないですからね。背中を知っているとか、その時の難しさとかは。

-:この経験を活かして、これからも強い馬をつくって送りだして、僕らを楽しませて下さい。

赤:それが多分、恩返しということではないですかね。

-:今回は本当におめでとうございました。

赤:ありがとうございました。

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【赤木 高太郎】Kotaro Akagi

1987年に園田・齊藤裕厩舎所属で騎手デビュー。小牧太、岩田康誠騎手らとしのぎを削り合い、兵庫を代表するトップジョッキーの一人として活躍。04年に小牧騎手と時を同じくしてJRAへ移籍。当時存在した一次試験(筆記)免除の特例を受けることなく、地方騎手として初めて、筆記試験を突破したことで大きな話題を呼んだ。

移籍後もコンスタントに成績を残し、11年10月に惜しまれながら引退。自身の厩舎を開業する夢を叶えるべく、橋口弘次郎厩舎で調教助手として励んでいる。騎手時代から何度も海外研修を行い、また09年には栗東所属ながら拠点を美浦に移すなど、飽くなき向上心の持ち主。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。

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