関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

安達昭夫調教師

安達昭夫調教師


-:JCダート、優勝おめでとうございました。その前走以来のインタビューですが、まずはレースを振り返っていただきたいと思います。

安:ありがとうございます。ああゆう(逃げる)展開になりましたが、とにかくジョッキーが巧くこなしてくれたと思いますね。

-:枠が発表された時の印象は。

安:正直言うと、1番枠は困りました。“さぁ、どうしようかな”と。装鞍所で哲三ジョッキーに“ゲート開いてから考えて”とだけ言いました。どうゆう展開になるかもわかりませんでしたし。

-:外国馬の出方も未知数でしたし、佐藤哲騎手もかなり苦心されたと思います。

安:1番枠だけは嫌だったんです。結果的には良かったんでしょうが、やれる事が狭まるというか。外国馬の出方もありますし、競馬は(佐藤哲騎手に)任せていましたが…。

-:しかし、結果は圧勝でした。この中間の状態はどうでしょう?

安:よく、力を出してくれました。間隔は空きましたが(中間は)放牧に出さないで、厩舎で調整してきました。

-:1週前追い切りの様子、動きはどうでしたか。

安:良かったですよ。坂路52秒で、終い12秒(正確には52秒2-37秒4-24秒0-12秒0)。1番時計のローレルゲレイロが49秒3で、全体的に時計が出ていました。あんなに軽い馬場って、なかなかないんですがね。しかし、時計が速かったといっても、飛ぶこともありますからね(笑)。ある程度は信用できますけれど、絶対に好調だとは言えません。

-:最終追い切りの予定も坂路でしょうか?

安:馬場状態をみてから決めたいと思いますが、あまり時計は出さないと思います。最後の微調整なので出さなくても輸送がありますし、(ファンの方は)気にしなくてもいいのかなと思います。すでに2週続けて出していますからね。

-:JCダート後、フェブラリーSに直行というのは前もったプランだったのでしょうか。

安:馬主さんの方向性もあったので、どうされるか相談しつつでした。一応、川崎記念の登録はしてもらったんですけれど“もうフェブラリー1本で良いんじゃないか”という事で、すぐにやめまして。

-:昨年のフェブラリーSは逃げる形で④着でした。



安:スローペースになるかハイペースになるかはその時次第ですし、JCダート同様、位置取りは騎手に任せたいと思っています。今回のメンバー構成だと、どうゆうレースになるかも予想がつかないですからね。

-:芝からの出走馬が多い事も難解な要素ですね。

安:ゲートが開いてみないとわからないところはありますし、枠順も決まらないとわかりませんですから。他の事を考えないで、調整だけしっかりやろうと思っています。

-:本当に今回は難解な要素が多いです。

安:一番困るのは私よりジョッキーじゃないですか(笑)?色んな事を考えるでしょうし。

-:JCダート前は南部杯を使っていましたが、今回、間隔的にはどうでしょうか。

安:放牧明けでも走れていますからね。また、冬場のこの時期に走って抵抗力が落ちて、不凍液が入って脚が腫れた時に細菌感染したりしたら嫌ですからね。鼻肺炎も流行っていたようですし。フェブラリーS一本に絞ってよかった、と思いますね。出走までまだ時間があるので、無事に行く事が前提ですけれど。

-:ファンが思っている以上に、気を遣うことが多いわけですね。

安:色んなことがありますよ。そうゆう馬だからこそ、アクシデントは起き易いですからね。

-:2ヵ月半ぶりの競馬になりますが、馬体重はどうでしょうか?

安:正直、馬体重はあんまり気にしていないんです。増えていたら成長分と思いますし、減っていることはないと思いますし、体の張りも良いですよ。

-:特にこの時期だから“増えていても気にすることはない”と。傾向としては、やはり若干増える時季ですよね?この時季の競馬の馬体重をみると、軒並みプラス体重です。

安:気にする事はないと思います。そんなにブクブク太るタイプではないですからね。JCダートの時も調教後馬体重はプラス14キロでしたが、レース前はプラス2キロだったんです。馬が自分で調整しているんでしょうね。

-:やはりレースが近いことをわかるものなんですね。



安:わかると思います。今回は輸送もありますし、理想の状態に持っていけるでしょう。この馬は右回りでも走りますが、左回りの方がさらにスムーズなところはありますよ。

-:昨年は当時の能力を示した④着だったと思いますが?

安:でも、まだ頑張れるところがあるのに、止めている感じでしたよ。平安Sもそうでしたし。私も哲ちゃんも“何が足りないのかなぁ?”って、感じだったんです。

-:その後も、佐藤哲騎手が付きっ切りで。

安:そうですね。ひと息入って体重も増えて(かしわ記念の馬体重から、南部杯出走時でプラス14キロ)、ダート馬らしい体つきになりましたし。だいぶ完成されたかなと思います。

-:エスポワールシチーのように、テンションの高い馬の馬体増は気になりませんが、輸送を控えている時に、調教後馬体重がレースと同じような場合は気になりますね。

安:そうですね、そうゆう点は参考にしてもらってもいいと思いますね。

-:エスポワールシチーが強くなった理由とはどういった点でしょう?

安:もともと能力はあったんでしょうが、それがダートにいって開花したという典型ですよね。こういう馬にはなかなか巡り合えないと思います。

-:ドバイまでいけるような状況になりました。

安:選ばれたら行ってみたいですね。オールウェザー、どうなんでしょう?芝向きの馬が活躍しますよね。出せられるものならば、出してあげたいと思います。

-:傾向もわからないですよね。先生のところにオールウェザーの情報は入ってきたりしていますか?

安:グリーンウッドに入っているものが、同じものをつかっているらしいんですけれど、ウチはそこに放牧に出してないんで、ちょっとわかりません。仮に行ってみて、そこで走らなかっただけでは適応性がないとは言えませんからね。レースをやってみないことにはわからないと思うので。

-:やはり、(海外だけに)コンディション維持の方が大変ですよね。ドバイは行くとしたら、(バンブーエール以来)2度目で。何か対策は?



安:そうですね。昔とは競馬場も違っていてどんなものかわからないですけれど、(昔の競馬場から)すぐ横らしいですよ、もう、昨年から工事もやっていたので。対策ですか?今のところは別に何も。まずはフェブラリーSに全力投球です。

-:JCダートの前にお話を伺った時は、サクセスブロッケンやヴァーミリアンを意識したコメントをされていましたが、今回、気になる馬はいますか?

安:全てライバルだとは思っていますが、ブロッケンは良くなってきていると思うんですよね。あの馬の本気って、あんなものじゃないと思うので。ウチの馬もいい状態で出さない限り、あの馬には勝てないと思います。

-:JCダートや昨年のフェブラリーSの印象からすると、仮に逃げない形になると、道中で心配するファンも多いのではないでしょうか?

安:そうゆうこともあるかもしれませんね(笑)。でも、2・3番手の競馬もこれまでしていますからね。芝を使っていた時も、色んな競馬はしていましたからね。

-:たしかに調教時計の出方も逃げ馬だったら全体時計が速くて、終いがちょっとかかりますものね。

安:本当にいい心臓をしているんでしょう。1400Mまでの馬にしたくなかったので、そういう調教も積んできました。その理想どおり1600~2000Mがいい馬だと思うんですよね。東京のダートコースも輸送も心配はしていないですし、とにかくいい状態に持っていく事が重要かなと。

-:また、白い帽子(1枠)かもしれません(笑)。

安:できれば、白い帽子は被りたくないですよ。最初が芝スタートですからね。もし、1番だったら…、ゲート開いてからですね(笑)。

-:ファンも例年以上に面白いレースを期待しています。

安:そうですね!面白くなるでしょう。芝馬も多いですし、カラフルで色々な馬が出てくるので、ファンの人は買う楽しみが出てくると思うんですよね。私は考えると混乱することが多いので、あんまり考えたくないですが…。

-:今回は1番人気、間違いないですね。

安:人気…してもらって、しょうがないですよね(笑)。

-:ドバイも視野となると、多少お釣りを残した仕上げになるんでしょうか?

安:そんな事はありません。余裕残しで勝てるほどGⅠは甘くないと思いますし、JCダートを勝たせてもらった時もGⅠを勝つ難しさを知りましたし。

-:具体的にはどんなところですか。

安:寸分狂いもなく持っていく!どこも悪いところがないように!何もかも上手く行かないと勝てないというか。

-:枠順が1番枠でどうかというところもプラスに働いたわけですからね。

安:最後はそうですね、運も必要だと思います。本当はあの枠が当たった時は不運だと思ったんですけれど、結果ああなって。サマーバードが出ていたら、どうなっていたかもわかりませんし…。

-:そうですか、今回は展開が味方についてくれることを祈ります。

安:あとは“ジョッキーに託すだけ”という状態に持っていきたいと思います。




【安達 昭夫】 Adachi Akio

1959年京都府出身
1999年に調教師免許を取得。
2000年に厩舎開業。
JRA通算成績は148勝(10/02/14現在)
初出走 2000年3月4日1回阪神3日目10R ヤマトプリティ・2着
初勝利 2000年4月23日1回福島2日目12R マルサンミッキー


■最近の主な重賞勝利
・09年JCダート
・09年かしわ記念
・09年南部杯
・09年マーチS
(全てエスポワールシチー号)


00年の開業以来、地道に勝ち星を積み重ね、チャクラ号、メイショウオスカル号、ヤマトマリオン号、バンブーエール号、そして、エスポワールシチー号など、個性溢れるな活躍馬を輩出。「なかなかこうゆう馬には巡り合えない」と、師も評するエスポワールシチーで、前走のJCダートを含め、昨春から4連勝中。その先にはバンブーエール以来のドバイ遠征も見据える。奢ることのない姿勢にサークル内での人望も厚い。