厩舎の屋台骨を支える調教助手とは!?
2010/2/26(金)

清水英克調教師
清:感心するよ。
嶋:今までトレセンにいて、1度も朝寝坊したことがないんですよ。
菊:それだけ。一つだけの取柄(笑)。
嶋:もし朝に菊地さんがいなかったら「もう死んだと思ってくれ」って。
菊:それは本当にね、先生に言うの。「俺が朝来てない時は何かあったと思ってくれ」って。
清:この間、集合時間から1分くらい過ぎても菊地さんが来なかった時には高宏、ソワソワしちゃって。
嶋:やっぱり心配になっちゃうんですよ。いつもの時間に来ていないと。
清:で「ちょっと電話してみましょうか」って。
嶋:いつも正確に来るんで。
菊:本当に1回もないですから。昭和46年にこの社会に入って1回も出遅れていないです。 俺はこれだけですよ、誇りは。これが助手の番頭です(笑)。
高:菊地さん、何だかカワイイですね(笑)。ちなみに嶋田さんはいつ頃から先生と?
清:僕と高宏は、僕が最後の助手をしている時、一緒に仕事をしているんですよ。その時に結構2人で意見を出しながら「この馬なるんじゃないかな」「こうやって乗ったら引っかからなくなるんじゃないかな」とかっていう感じで仕事をしていたんで、そういう仕事の仕方を分かっている訳ですよ。
高:先生の仕事に対する考えを分かっていらっしゃる、と。
清:そうそう。前にも話したと思うけど、僕は「調教で馬は絶対に変わる」という考えを持っているんですけど、高宏も菊地さんもそういう考えを分かってくれていますから。でも、あの助手で一緒に働いていた時、高宏はジョッキーを辞めたばかりで、本当に助手に変わったばっかりだったから辛かったよな?
嶋:はい、あの時は大変でした。それまで土田厩舎の番頭をされていた清水先生が調教師試験に合格して抜けるっていう時に僕が入って、いきなり番頭を引き継ぐ形になって任されましたから。右も左も分からない状態で、厩務員さんたちからアドバイスをもらいながら、本当に必死にやっていました。
高:騎手から助手に変わって仕事内容もガラッと変わる訳ですしね。
嶋:今度は馬を仕上げる側に回った訳ですから。馬のケアの方が本当に重要になってくるんで、慣れるまで大変でした。
清:あそこで頑張ったから今があるんだよな。みんな大好きだもん、仕事が。遊びも大好きだけど。
菊:だってね、遊びたきゃ仕事しなきゃ、でしょ?ね。
清:今の子って、お金が先という子が多いじゃないですか。でも、もしこの仕事の給料が安くても、たぶんこの仕事をやっているよね?3人とも。

菊・嶋:やっていますね。
清:僕らは仕事をやってなんぼだと思っているから。動いてなんぼでしょ?俺も菊地さんも高宏もマグロなの。
高:マグロ、ですか?
清:そうマグロ。回遊魚だから動いていないと死んじゃうの(笑)。
高:アハハ(笑)。
清:菊地さんなんてその上、喋っていないと死んじゃうから(笑)
菊:1秒でも黙ったらもう(笑)。俺は喋ってないとね。喋れないと辛いから。
高:本当に仲が良いですね(笑)。
清:ウチの厩舎は、暗い人は合わないですよ。キャラクター的にみんな明るいしね。この間の日曜の宴会も盛り上がったしね。スケベな話が多いから、摩衣ちゃんは呼んであげられないなあ(笑)。
高:楽しそうですね(笑)。
清:ウチの厩舎は朝から晩までうるさいですから。朝と午後と喋ってるし、1日1回も喋らないっていう事は無いよね?
嶋:ありませんね(笑)。
清:よそには会話の無い厩舎もあるんですよ。ウチは僕が5時間、菊地さんは7時間くらい喋り続けるから(笑)。
高:止まらないですね(笑)。
嶋:常に喋っていますからね(笑)。
菊:黙っていられないの(笑)。仕事をしていても面白くないでしょ?やっぱり楽しく楽しくさ。それだからって手を抜いてるわけじゃないしね。
清:喋りながら手が動いてるから。器用だよね。みんな仕事はしっかりやってくれるからね。僕からみんなに「お前ら仕事やれよ」って言ったことはないですよ。一回も無いよな?
嶋:ありませんね。
高:おおー。
嶋:「そう言え」って言われてるんで(笑)。
高:アハハ(笑)。
清:俺が喋ったらその後こうやって返事しろよって(笑)。やっぱりクリーンなイメージで売っていますから(笑)。でも、本当にコミュニケーションが取れているのは、仕事に良い影響がありますよ。うちの方針として1つは、皆の仕事が終わるまでは、僕と助手は待っているんです。よそでは普通、助手さんは先に帰っちゃうところもあるんですけどね。
高:そうなんですか。
清:そう。やっぱり、全部が終わるまではとりあえず待っていてあげたいんですよね。 助手さんもそれを理解して、一緒に待っていてくれてるから。それで最後にみんなでおやつを食べながらくだらない話なんかして「じゃあお疲れ」で終わるんです。 そうやってお喋りしている時は、普段だったら言いにくいような事でも「実は今日こういう事があったんで」って話してくれると、こっちも「いいよ。いいよ」ってなるじゃないですか。
高:なるほど。
清:例えば厩務員にしても隠したい事もあるわけですよ。運動していて馬から落っこっちゃった、とか。そういうのもざっくばらんな会話の中だと「気を付けろよ」で話が済みますからね。もし、僕が怒っても2人がフォローしてくれますしね。最後の、上がりの会話でほぼ100%、腹の中が通じるんじゃないかな。
菊:何かあれば、厩務員さんが先に言ってきてくれますもんね。若い子でも。だから楽しいって言ってますよ、厩務員さんもみんな。楽しく働けるって。
嶋:ベテランの厩務員さんがしっかりと教えてくれているから、若い人達もやりやすいんじゃないですかね。特に臨時の子らは、ベテランの厩務員さん達から「お前らいっぱい失敗しろ」って教えられているみたいですね。 凄いなって思いますよ。
清:そう、ウチね、ベテランの厩務員2人が凄く良い人なんだよ。
嶋:「もう、とにかくいっぱい失敗しろ」って。同じ失敗をしたら、多分相当怒られると思うんですけど。
清:そうだよね。
嶋:僕たちで教え切れない部分っていうのはかなりあると思うんですよ。先生も含めて。でも、そういう厩務員さんのように本当に教えてくれる人がいるから、みんな安心して働けるんじゃないですかね。
菊:若い子も安心してできるよね。
嶋:やっぱり失敗はしますもんね。
菊:そういう失敗のフォローも、先生は僕ら2人に任せてくれるからね。やりがいがありますよ。
清:今年になってから、ちょっとまたみんな動き出したよね。馬のケアをする時間長くなったよね?
菊・嶋:そうですね。
清:ねえ。正月から意識改革している子、多いよね。厩舎が良いスタートを切れたのも当然だったのかなあ、なんてちょっと思うところもあるし。早くから来て、馬の脚を冷やしたりさ。

高:凄い働きぶりですね。
清:いや、僕はスタッフをこき使うのが嫌だから「時間内でいいんだよ」って言っているんですけどね。でも、やっぱりやりたい子はやりたいってなりますからね。雰囲気は凄く良いですよ。また、うちの厩務員は自分の担当馬以外もよく知っているよね。
菊・嶋:そうですね。
清:今は他人の事を気にしない子が多いから。美浦でレースを見た事が無いから分からないけど、ウチは厩舎で集まっている時間だったら、多分みんなでレースを見て応援してくれていると思う。
高:結束が固そうですね。
清:多分、辞めたくない人間の方が多いよね?嬉しい事ですよ。だからウチが登竜門じゃダメなの。ウチがゴールで、ウチに骨をうずめる気じゃないと楽しめないっていうかね。今、臨時の厩務員さんが3人来てるけど、多分3人とも出たくないんじゃないの(笑)?
高:延長を希望されて(笑)。
清:確かに楽しいよな。稼げるから。仕事が良くなっていくと金稼ぐでしょ。金稼ぐと欲しいもの買えるでしょ。欲しいもの買えると女にモテるでしょ。両手に花だね(笑)。
嶋:仕事の目標を持って、馬が良くなって来るとやっぱり楽しくなりますよ。
清:本当に今、厩舎は良い形が出来てきているよね。だから今、考えているのは菊地さんいなくなった時だよな。
嶋:本当ですね。僕は先生に「僕は菊地さんと同じぐらいの仕事は出来ないかもしれないです」って。
菊:そんなこと無いよ(笑)。
嶋:先生は「お前は菊地さんの7分ぐらいでいいから。残りの分は俺がフォローしてやるから」って。 菊地さんぐらい周りに気配りして仕事するっていったら、本当に大変なことなんで。
清:だから菊地さんには新弟子を1人育ててもらわないとね。高宏が7分埋めて、残り3分足りない部分をフォロー出来るような。それで、今の状態で菊地さん頑張ってくれていれば、菊地さんが10でタカヒロ7でしょ?で、もう1人の子が3頑張ってくれたら20になるじゃん。そうしたら厩舎のレベルもまた上がるよ。
嶋:もう話は10年後まで出来てます。
菊:アハハ(笑)。まあ先の事はまだ分からないよ。
清:何か今日は厩舎の話が弾んじゃって、あんまり助手や番頭の仕事っていうのは引き出せなかったんじゃない?これはまたパート2が必要だよね(笑)。
高:またお邪魔させてもらいます(笑)。今日も既に1時間以上お話を聞かせていただいて。
清:今度はもっと凄いよ!菊地さんの経歴を振り返るだけでも7時間は必要だから(笑)。
高:アハハ(笑)。
清:みんな待っているからいつでも来てくださいよ(笑)。
高:ありがとうございます!またお邪魔させてください(笑)。
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■最近の主な重賞勝利 |
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10年1月10日にガルボでシンザン記念を勝ち、初重賞勝利をおさめた。その翌日の1月11日にはコスモネモシンでフェアリーステークスを制し、二日連続の重賞勝利という偉業を成し遂げた。明るい人柄で周囲に笑顔が絶えない。 |
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■出演番組
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2006年から2008年までの2年間、JRA「ターフトピックス」美浦担当リポーターを務める。明るい笑顔と元気なキャラクターでトレセン関係者の人気も高い。2009年より、競馬ラボでインタビュアーとして活動をスタート。いじられやすいキャラを生かして、関係者の本音を引き出す。 |