
ダートの帝王・ホッコータルマエが貫禄を示す 帰国初戦!
2015/6/20(土)
-:久しぶりのレースとなる帝王賞ですが、2年ぶりの出走ですね。ホッコータルマエ(牡6、栗東・西浦厩舎)についてお願いします。今年3月のドバイWCお疲れ様でした。
西浦昌一調教助手:ありがとうございました。頑張ってくれました。
-:去年の雪辱に燃えて行かれたわけなのですが、今回は先手をとって日本の意地といいますか、ホッコータルマエの競馬はできましたね。
西:世界相手に底力を見せてくれた競馬だったのですが、あそこまで戦えるのなら、自分の型に徹して、番手なり本当に強い馬を目標にして、という競馬をしてみたかったですね。まさかあんなに誘導カーを見て怯むと思ってなかったので。それをあのラップを刻んで競馬してくれたから、強さを見せてくれました。
ホッコータルマエと担当の相良調教助手(左)、調教担当の西浦助手
-:世界で戦うにはそういう初めての経験も乗り越えないといけませんね。
西:そうですね。全ての底力がないとダメなのでしょうね。また痛感した部分もありました。
-:世界の中で、あのエピファネイアがバテてしまうレースで、5着に粘ったのは評価できますね。
西:レースを作って、あの頑張りだったのでいい競馬だったと思います。
-:その後の疲れはどうでしょう?三木ホースランドに帰って、検疫して3週間くらい放牧でしたね。
西:3週間、小松トレーニングセンターで休ませてもらいました。時計は出さずに乗り込んでもらって、4月の終わりの29日に帰厩して、それから時計を出し始めました。徐々に消化して、1週前追い切りをこなして順調に仕上がっています。
-:最終追い切りは土曜日にされるのですか?
西:はい。土曜日に行います。
-:今回の帝王賞を使うメンバーはだいたい土曜日みたいですね。どのような感触で追う予定か教えて下さい。
西:先週に長めをしっかりと幸騎手にやってもらい、負荷をかけたので、今週は終い重点でどれくらいキレるか、動きを確認すれば問題ないと思っています。
-:先週乗られた幸騎手の手応えというか、コメントはいかがでしたか?
西:手応え的には相手が動く馬だったので、見劣ってしまったのですが、しっかり負荷をかけることができました。1週前追い切りとしては上々じゃないか、という話でした。
-:ドバイ帰りの休み明けですね。
西:しかし、2ヶ月間は“15-15”などしっかり乗り込めているので、問題ないと思います。
6/10(水)、幸英明騎手が騎乗して坂路で追い切り
4F52.3-12.9秒マークしている
-:改めて成績を振り返ると、ここは取りこぼせない気持ちだと思うのですが。
西:前回の休み明けのJBCと比べると、7ヶ月の休養と3ヶ月の休養とでは状態も違います。(トレセンへ)持ってきた経緯も違って、2ヶ月間しっかり乗り込めているので、恥ずかしくない状態で競馬に持って行けると思います。
-:JBCの時の休み明けと比べて………。
西:雲泥の差ですね。
-:もう、ここは順当にいけますね。
西:ええ、行ってほしいですね。
-:大井競馬場に関してはいかがですか。
西:大井はまず不得意なイメージ、負けるイメージはないですね(4戦3勝)。
-:世間は時期的に宝塚記念一色になると思うのですが、帝王賞も良いメンバーが揃うよ、という事をアピールしたいですね。
西:そうですよね。いいメンバーが揃いましたので、楽しみです。
-:ライバルとして幸騎手が乗って勝ったクリノスターオーはどうですか?
西:相手関係はやってみないとわからないでしょうが、そこは幸くんがタルマエを選んでくれたのでね。
-:クリノスターオーが阪神を勝った際、話の中にホッコータルマエが出てきて、日本のトップホースの基準みたいです。タルマエイズムみたいのものがあって、タルマエみたいなレースができるのであれば、トップホースの仲間入りって感じがあったのですが、それだけの馬になったのですね。
西:いつの間にか素晴らしい馬になってくれて嬉しい限りです。
「連覇できるレースは全部連覇して、国内最多G1・9勝の記録を更新し、それがどこまでとなるか、という期待がありますが、その後も楽しみです。今回勝てば並べますし、無理でも秋に3走予定しているので」
-:ドバイが終わった今、次なる目標はどこですか。もうチャンピオンズCは勝っていますね。
西:連覇できるレースは全部連覇して、国内最多G1・9勝のエスポワールシチー、ヴァーミリアンのような名だたる名馬の記録を更新し、それがどこまでとなるか、という期待がありますが、また、その後も楽しみです。
-:日本競馬のレジェンドになると。
西:はい。来年以降には。今回勝てば並べますし、無理でも秋に3走予定しているので。
-:3走を教えてもらってもいいですか?
西:JBC、チャンピオンズカップ、東京大賞典は確定しています。その後はオーナーとの判断で、今年と同じローテーションになるのかどうかですね。
-:昨晩もプリンスオブウェールズSがロイヤルアスコットで行われまして、スピルバーグが挑戦して6着。改めて日本のG1馬と言っても世界でなかなか通用しないという難しさはあると思うのですが、もう一度ホッコータルマエが世界に挑戦するという可能性はありますか。
西:あると思います。何度かやれば、そのうち順番は回ってくるという考えもありますし、行って負けたから通用してない、ということはないと思います。日本人の勤勉さで輸送のリスクが軽減できるようになっているので、ヨーロッパでもドバイでも、今はあまり輸送の負担は気にならないですね。わかってしまえば大したリスクではないですから。どんどん行った方がいいと思います。
-:実際2回目で着順をあげたのも、1回目の経験が生きたと。
西:そうですね。馬場が変わった事もあったでしょうし、3年連続ドバイへ行かせてもらっているので、勉強させてもらって、厩舎力としては上がっていると思います。
-:それだけの馬ですから尚更、帝王賞では。
西:凱旋して、またファンの前で強いタルマエを見せるというのは海外で走らせる意義だったりするので、期待に応えたいと思います。
ドバイでのホッコータルマエ
-:大井競馬場のパドックでは「日本に戻ってきたぞ」という形でお披露目されるわけですね。
西:そうですね。「だからこそ」という想いで調整しているので。
-:昨日も坂路で軽いところを昌一さんが乗られていました。感触として、体の使い方や筋肉の状態は全く問題ありませんか?
西:問題ないですね。はい。
-:順当な勝利をお祈りすると共に、最後にファンに帰ってきたよ、とメッセージをお願いします。
西:ドバイWCでは力は見せてくれましたが、残念な結果でした。国内最強であるということを改めて証明するためにも、今回と秋は頑張ってくれると思います。応援よろしくお願いします。
-:得意の大井でタルマエの強い競馬を見せて下さい。
西:ありがとうございます。
(取材・写真=高橋章夫 写真=山中博喜、競馬ラボ特派員)
プロフィール

【西浦 昌一】Syoichi Nishiura
昭和49年生まれ。西浦勝一調教師の3人兄弟の長男。当初はこの世界に入るつもりはなく、東京の大学に進学するつもりだったが「早く一人前になりたい」という思いから留まることに。当時はまだ西浦師の騎手時代で、父の思い出の馬を尋ねると「カツラギエースの時は小学校5年生くらいで、社宅の周りで自転車レースしていたんです。みんなおめでとうおめでとうって言って、何がおめでとうなんだろうなと。うちのオカンは騒いでるわで、凄いレース勝ったんだ位にしか思わなかった」と。
当初に所属したのは解散した星川厩舎で「当時ジョッキーだった本田さんと仲が良かったので、頼んだら入れてくれたという感じ。可愛がってもらえて、サンライズ系とか外車、サンデーなど走る馬ばっかりやらせてもらってました」。西浦厩舎は開業して1年後から16年間所属しており、現在は持ち乗り助手として活躍。毎日馬に接する時のモットーは「一緒に気持ちを分かってあげる、仲良くしているんだけど少しだけ優位に立っておきたい」。同世代に元騎手の飯田祐史調教師などがいる。

【高橋 章夫】 Akio Takahashi
1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。
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