三度目の正直で勝つ。ステファノスは2015年に2着、2016年は3着とあと一歩届かず、今年は毎日王冠から始動していたローテーションを変更。前哨戦のオールカマーから勝ちを意識して調整法も変え、結果は2着に終わったが本番への手応えをつかんだ。異なる臨戦過程を選んだ狙いと、G1タイトルへの思いを荻野仁調教助手に伺ってきた。

過去2年とはココが違う!オールカマーからの始動でゆとりある調整過程に

-:オールカマー2着から3年連続で天皇賞・秋(G1)へ挑むステファノス(牡6、栗東・藤原英厩舎)についてお聞かせください。まず、前走は惜しくも2着という結果でしたが、いかがでしたか?

荻野調教助手:あれは十分な競馬をしていると思いますよ。勝ち馬(ルージュバック)が強かったですけど、良い感じでしたね。

-:藤原厩舎さんというと、G1を勝たれる前に、割と前哨戦ではちょっと負けて、本番で上げて来て勝たれるというパターンが多いと思います。今回に関しては、(戸崎)ジョッキーにも伺ったのですが「先生からは、いつも以上に前哨戦から勝ちに行く姿勢が見られた」と言っていたのが印象的でした。

荻:結果として2着でしたが、勝ちを意識するような展開と乗り方で、それは上手くいっていると思うんです。結果こそ勝ち馬に上手くやられてしまいましたが、勝利を意識した競馬で2着だったということで、良かったと思いますけどね。

ステファノス

-:早めに仕掛けていきながら、最後まで粘り通していましたからね。オールカマー前の仕上げ、調整は芝に入れたり、普段と少し違ったと思います。

荻:そうですね。馬自体も、体も息も前の週からしっかりと追い切りを掛けて、負荷を掛けたので、あれくらいのパフォーマンスはすると思っていました。勝ちを意識している調教の内容でした。

-:今回は中4週ということでしたが、オールカマーを選んだ理由というのは(毎日王冠に出走予定だった)シルバーステートの存在もあったのですか?

荻:そういう訳でもないのですが、(中2週の)毎日王冠ではなく、1回間を空けて、1度疲れをしっかり取って行きたいというのが先生の本音だったのではないですか。

-:それが当たり前ではありましたが、普通に考えても、毎日王冠を使って中2週でまた持ってくるというのは、楽ではないですよね。

荻:そうですね。やっぱり疲れを取って、もう1回そこにピークに持っていく中2週だったら、それくらいですよね。ちょっと馬に半分任せていかないといけない部分があるという。今回は乗り始めもじっくり乗っていって、1週前にはしっかり追い切りが出来て、今回のレース前は単走で様子を見て、ピークをそこに維持というか、前の週に出来たというのが良いんじゃないですかね。どうしても中2週になると、一旦戻していく追い切りになってしまいますからね。そういう形になるので、今回はもう1回しっかり馬をつくって、それを一気に競馬に持っていくと。それで、つくる方としては安心というか、じっくりというか、馬と相談できるからつくって持っていけるというね。先週も動きが良かったからね。

-:追い切りの本数や数字を見る側とすれば、客観的に数字だけを見ていると、1週前にしっかりとやって、当週は軽めで持っていく方がゆとりはあるのかな、という感じはしていました。そこを伺いたかったです。

荻:そうですね。やっぱり約ひと月あると、1度疲労を取れるから、つくって行く時に乗り手が分かりますからね。前回のオールカマーの時に本馬場に入れた時でも正直しっかり攻めていましたから。

ステファノス

▲25日の最終追い切りは芝コースで5F66.9-51.3-37.3-12.0秒を計時しているステファノス

-:もともとオールカマー前は乗り出すのが早かった印象がありますね。

荻:勝負出来る態勢で来ていたので、あれは乗らずしてもヒシヒシと分かりましたね。リードホースとして前を走っている立場でやっていましたが、追い切りでもしっかりと負荷を掛けて追っていましたからね。

-:併せられていて、そのスピード感、力感が分かると。

荻:時計的にはいくらでも出せますが、そうじゃなくて負荷を掛けるという意味でしっかり出来たので。先週も前を走っていましたが、良かったですよ。

-:いま、ノートをめくって振り返られていますが、追い切り内容はきちんとレポートに全部書かれているのですね。

「中4週ということは間が1カ月空いて、ずっと軽めのところを乗って、ゆったりとピークに持っていけるのに、先週にこの時計をCWでマーク。この動きを見た時もオッと思いましたね」


荻:そうですね。中4週だから、前の週にこれ(強い追い切り)が出来るんです。オールカマーの競馬が9月24日で、20日に芝の単走で(馬)ナリで動いているけど、これも1週前に思いっ切り時計を出している訳ですよ。これも僕が乗って、けっこう(前に)行ったんですよ。その内から鮫ちゃん(鮫島良太騎手)が追う。芝で負荷を掛けて63秒なんて、1000m1分3秒ということですからね。35-11.5秒と、ここで攻めているんですよ。誘導を付ける意義ということはそういうことです。

1週前に時計を出して、ビシッとやらせてもらって、当週は馬なりでも単走で時計を出すと。中4週ということは間が1カ月空いて、ずっと軽めのところを乗って、ゆったりとピークに持っていけるのに、先週にこの時計をCWでマーク。この動きを見た時もオッと思いましたね。併せ馬で最後は2頭で良い動きをしていましたよ。今日(10/25)も下の悪いところでしたが、鮫は「今回はトータル的にグッと来ている」という話をしていたんですよ。大丈夫ですね。

-:芝にするのは、馬場が悪いから芝に変えているのですか?

荻:そうそう。全身的に疲れてしまうから。馬はもう出来ているし、勝負勘も出来ていて、芝の方がそんなに負担がないですから。逆にポリトラックの方が衝撃は強いし、ウッドチップは深いから、全身使うので、あれくらい湿った馬場の方が、逆に芝に行った方が楽に走れるということで。

-:チップが荒れていたら、脚に外傷を負うこともありますよね。

荻:そう、外傷もでき易いですから。

-:いつもCWでやっている厩舎の最終追い切りが芝になったりすると、逆にいつも通りじゃないなと思って、勘ぐってしまいますが、そういう訳ではないと。

荻:ないですね。そういうのはボス(調教師)の機転でパッと変わる時もあるし、中に入った時に「じゃあ本馬場に行こか」とね。

-:先生も常に地下馬道から帯同して、馬場まで一緒に見に行かれていますよね。

荻:そうそう。ということで、ステファノスは順調だと思います。状態は問題ないでしょう。

ステファノス

▲18日の1週前追い切りはCWコースで3頭の併せ馬6F84.6-68.0-52.8-38.8-11.9秒をマークした

「G1を2つくらい獲っていても不思議じゃない馬」
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