ヤマカツエースが昨年4着の舞台で一発を狙っていく。今シーズンは道悪の天皇賞(秋)で11着、ジャパンカップでは外枠(8枠16番)が響いて8着に終わった。評価を下げているが、春の大阪杯では勝ったキタサンブラックから0.2秒差の3着と、力量ではまったく見劣りしない。担当する土屋均調教助手に、雪辱への思いを聞いた。

天皇賞のダメージ大 ジャパンCは回復途上

-:有馬記念(G1)に出走するヤマカツエース(牡5、栗東・池添兼厩舎)について、秋緒戦の天皇賞(秋)の話から聞かせていただきたいのですが、9月末にお話を聞かせていただいた時には天皇賞に向けていい感じで調整を進めていけそうというお話がありました。その後天皇賞までの1ヶ月、調整はイメージ通り順調にいったのでしょうか?

土屋調教助手:そうですね。元々秋は天皇賞を含めて3戦と決まっていましたが、天皇賞は適性的にも一番いいと思っていましたし、その後の状態が下がらないように、と思いながら調整しました。

-:レース前、状態面では「これなら」という感じだったのでしょうか?

土:ええ、札幌記念を使った後も順調に来ていましたし、いい状態でした。ただ、雨がひどくて……。

ヤマカツエース

-:天皇賞の2週前に池添騎手が乗って、Cウッドでいい時計が出ていましたね。2週前から強い追い切りをするのも予定通りだったのでしょうか?

土:そうですね、予定通りです。

-:同じく休み明けだった春の金鯱賞では2週前に一杯に追って、1週前は馬なりで、そして当週は一杯に追われていましたが、天皇賞の時は2週前、1週前に一杯に追って、最終追い切りは馬なりでした。このあたりの意図は?

土:輸送がありますからね。それを考えて遠距離輸送の時は直前はセーブしてやるようにしています。どうしても輸送で体重が減ってしまうタイプなので。

-:金鯱賞前はオープン馬のメイショウオセアンと併せ馬をしていましたが、天皇賞前は2歳未勝利のアリイタヤスとの併せ馬でした。これは何か意味があったのでしょうか?

土:いや、特に走る馬だからとか、そういう深い意味はなくて、集中力を高めるために併せ馬の形をとっているだけで、モチベーションを競馬の時に近い形にするためにやるので、相手はあまり関係ないですね。

-:よく強い馬と併せ馬すると、もう片方の馬も走るようになると言いますが、アリイタヤスにもいい経験になりそうですね?

土:そうですね、アリイタヤスにもいい経験になってくれるといいです(笑)

-:以前お話を伺った際に「この馬が輸送で体重がどのくらい落ちるのか分かった」とおっしゃっていました。天皇賞の前走比マイナス4キロ、504キロは想定内だったのでしょうか?

土:想定内ですね。大体20キロ減るので、ちょうどいいくらいかなと。もう5歳なんだし、こちらとしては、そろそろ輸送にも慣れてほしいところなんですけどね(笑)。

-:そんな天皇賞ですが、当日はひどい雨でした。

土:雨はそんなに苦にしないタイプだと思っていたのですが、あそこまで降るとねぇ……。こればかりは仕方ないんですが。

-:悪いスタートではなく、見ていた限りはいい位置で運べたかなと思うのですが、ノメったぶんリアルスティールに取りたい進路を取られてしまったようにも見えました。そのあたりはいかがでしょう?

土:まあ、そのあたりはタラレバになってしまいますからね。結果として外を回ってくる形になりましたが、あれは仕方ないです。馬場に関しても、ノメった差というより、距離の差だと思います。結局はキタサンブラックもサトノクラウンも4コーナーでは内を走ってから外に出していたように、あそこまで悪くなったら、通ったところの差もあるんじゃないでしょうか。そう解釈しています。

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-:天皇賞の後は、さすがに反動はありましたか?

土:うん、さすがにちょっとありました。ダメージが大きかったので、ジャパンカップの一週前追い切りもそこまでやれない状態で、終い重点の形になりました。ダメージというか、回復のほうに時間がかかったと言ったほうがいいのかもしれません。速いところはセーブした感じです。

-:そんな中でジャパンCの馬体重は前走比プラス2キロの506キロでした。体重の増減が激しいタイプですし、そう考えればいい体重だったのではないでしょうか?

土:そうですね、自信になりました。調教をこなしていく中でそれだけ体調が回復していたということでしょうし、調子も良かったんだと思います。

-:最終追い切りは予定通りだったのでしょうか?

土:予定通りです。天皇賞と同じくらいの出来にあったと思いますよ。調子を下げないように、下げないようにと思いながら調整していました。

「ジャパンCも4コーナーでは『おっ!』となるような手応えでしたし、最初から内枠だったら、もう少し着順は良かった。次が楽しみになる内容でした」


-:ただそのジャパンCは16番枠。常々ロスない競馬がしたいとおっしゃっていたので、あまりいい枠ではなかったのではないでしょうか?

土:まあ、こればかりは仕方ないと思いました。ジョッキーはもうちょっと早く内に入れたかったみたいなのですが、そのぶんが最後出た感じはあります。止まってはいないのですが、2400mだと最後に周りと脚が一緒になってしまうのかなと。

-:これは東京の2400mが長い、ということなのでしょうか?

土:久々の2400mだった影響もあると思いますね。今年はずっと2000mしか使っていなかったものでね。外枠で内に入れるまでちょっとロスもありましたし。

-:逆に言えば、ここで2400mを経験したことは、次の有馬記念の2500mに向けていい経験になったのかもしれませんね。

土:そうですね、いい経験になったのではと思います。ジャパンCも4コーナーでは「おっ!」となるような手応えでしたし、最初から内枠だったら、勝ったとは言いませんが、もう少し着順は良かったのではないでしょうか。次が楽しみになる内容でした。

ヤマカツエース

-:レース後、池添騎手は何かおっしゃっていましたか?

土:「久々の2400mに最初戸惑っていたかな、最後は脚色が一緒になってしまった」と言っていましたね。全然、悲観する内容ではなかったと思いますよ。

-:ジャパンCの反動などはありましたか?

土:天皇賞の時に比べれば全然はなかったですね。回復も早かったです。なのであとは状態をキープするだけだなと。彼ら(馬)はしゃべらないから本当は状態が上がっているのか下がっているのか分からないけど(笑)、飼い食いや普段のしぐさをチェックしながら、状態をキープできているか確認するようにしています。

昨年4着より余裕を持ったローテーション

-:去年の有馬記念は金鯱賞(1着)から中2週で使われていました。やはり1週間でも多く間隔が開くだけで違いますか?

土:少しでも間隔が開いたぶん、やっぱり調整も楽ですよね。

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1週前はCWコースで池添騎手を背に6F81.1-12.3秒をマーク

-:去年の有馬記念一週前は単走で調教されていましたが、今年の一週前追い切りは?

土:単走でやりました。もうこの秋2回使っている馬ですからね。あとはいつも通り、輸送を考えて当週の追い切りは終い重点でやることになると思います。いつもと同じパターンで、パターンを変えないで。たぶん体重ももう戻っていると思います。

-:あとは有馬記念で内枠を引くだけですね。

土:そうですね。スタートは上手な馬なので、あとは立ち回りひとつだと思っています。外枠が当たったらしょうがないです。何とかロスなく立ち回って、キタサンブラックの引退レースですし、何とか負かそうという意気込みは持っていますよ。

-:この秋の2戦はどちらも参考外の部分がありますし、有馬記念で期待しているファンは多いと思います。

土:そうなんですよね。思ったよりファン投票も上のほうにいましたし、あとは無事にゴールしてくれれば。そして1つでも上の着順を目指したいと思います。応援してあげてください。後押ししてあげてください。

※12月19日(火)はミッキークイーン陣営のインタビューを更新予定です!