底を見せていないグリムが、重賞タイトル奪取に燃えている。前走のユニコーンSは2番人気に推されたが、何度も進路がなくなる不運で9着。レース後のダメージはなく、レパードSを目標に順調に乗り込んできた。500万下ではコパノキッキング、青竜Sスマハマという期待馬を撃破したように、能力の高さは証明済み。湯浅貴英調教助手に、巻き返しへの意気込みを聞いた。

川田騎手が惚れ込んだ素質

-:レパードS(G3)に挑むグリム(牡3、栗東・野中厩舎)について、よろしくお願いします。ユニコーンS(9着)は、2番人気でファンの期待も大きかったのですが、予想外の結果になってしまいましたね。

湯浅貴英調教助手:よろしくお願いします。そうですね。ちょっと前が詰まっちゃって、行くところ、行くところが壁になってしまったみたいですね。逆に、レース後のダメージはなかったですけどね。

-:前が抜けるシーンが少ない、特殊なレースになっちゃいましたね。

湯:広い東京コースでも、あれだけ壁になったらね。

-:窮屈になっちゃいましたが、あれが良い経験になったというか、初めてキツい競馬をしたということですね。

湯:そうですね。1度中京の500万(はこべら賞7着)の時に、同じような形で負けたのですが、あの時もジョッキーが「前が壁になって、捌けませんでした」と言って帰ってきましたからね。

グリム

▲ユニコーンSから巻き返したいグリムと湯浅助手

-:グリムがレース展開を組み立てる上では、ある程度、自分の前がフリーになっている方がいいのでしょうか。

湯:フリーというか、馬が行けるスペースがあれば問題ないんですけどね。

-:レース前のパドックのテンションはいかがでしたか?体重は+2キロでしたね。

湯:いつも通りですね。別にイレ込んだこともなく、落ち着きすぎていることもなく。ずっと同じような体重で来ていますので、そういう意味では極端な変化がない子ですね。カイバも食べてくれるし、調教もやりやすいですね。体はつくりやすい子ですね。

-:前走時は、同厩舎のシヴァージも一つ前のレース(青梅特別1着)に使って、強い勝ち方をしていましたね。

湯:強かったですね。あの馬には敵わないかもしれないですね、ハハハ(笑)。賞金面で向こうが抽選だったので、同じ馬主さんでしたしね。川田君が両方乗っている馬だったから「両方に乗りたい」というほどでした。

-:それだけ可能性のあるダートの新星が、厩舎に2頭もいるというのは。

湯:ありがたい話ですね。

ダート替わりで「思惑通り」の快進撃

-:馬を見させていただくと、まだ幼さが残る感じですね。

湯:そうですね。まだまだお子ちゃまですね。

-:前走後からの成長、変化はいかがですか?

湯:実質7週間なので、特段成長した訳じゃないですが、前走後に短期放牧に出して、気分的にはリフレッシュして帰ってきています。状態的には悪くないと思いますね。

-:ただ、今年の夏は、例年にも増して気温が高くて、若い馬には厳しい夏だと思うのですが、暑さ対策はどういうことをされていますか。

湯:ミストを付けて、扇風機も2台付けて、暑さ対策はしていますね。意外と、これだけ暑い割にはバテることもなく、今のところ順調に来ていると思いますね。

グリム

-:今週の追い切りの動きはいかがでしたか?

湯:良かったですね。ウチの(攻め専の)根岸助手に乗ってもらって、良い動きでしたね。合格点です。

-:この馬はここからどういう風に成長してくれたら、というポイントや希望があったら教えてください。

湯:どちらかと言うと、少し不器用なところがあるので、この前みたいに前が壁になると、一瞬でシュッと割っていく瞬発力に欠けますね。そういう意味では、これから良い意味での切れがもっと付いてくれば、良い方向に行くと思うんですけどね。

-:この馬は、デビューは芝ですもんね。

湯:そうですね。誰もが芝を使って、クラシックを夢見るものですから。1200mの芝だったから、クラシックは関係ないかもしれませんが、芝でどんなものなのかなと。でも、3着に来て上出来ですよね。芝で3着だから、ダートですぐに勝ち上がるだろうと思ったら、アッサリ2戦目で勝ってくれたから、こっちの思惑通りでしたね。

-:ダートでも芝でも、抜群のスタートセンスとスピードを発揮する訳ですから、あとは瞬発力を、ということですね。

湯:ポジションを取れる、スッと動ける瞬発力ですね。

-:それは調教でも意識されているのですか。

湯:ちょっとずつですけどね。いきなり付くものでもないので、毎日の積み重ねで頑張っていますね。

グリム

-:2月の阪神では、コパノキッキングという馬を負かしているのですが、あの馬はケンタッキーダービーに登録して話題になっていましたが、それを負かしたと。

湯:あの時はビックリしました。評判馬でしたし、単勝も1.5倍でしたし、その前にこの子は負けていたから、どんなものかなと思ったら、勝っちゃったと。

-:その頃から比べたら、しっかりしてきましたか?

湯:そうですね。初めて入厩した時と比べたら、本当に馬は立派になりましたね。幅が出てきたというか、いいところに良い筋肉が付いてきたかなと思います。

-:これでも、まだまだ伸びしろが残っているということですよね。

湯:と思いますよ。まだまだと言ったら、大げさかもしれないですけど…。

暑さも輸送も「問題ありません」

-:新潟までの輸送はいかがですか?

湯:輸送は問題ありません。この前も東京に2回行っているのですが、特には問題ないですね。

-:逆に今の時期を考えると、外枠でスンナリの方が組み立てやすいのですかね。

湯:ええ、そう思いますけどね。

-:あんまり内枠で被せられて、窮屈になるとまた動きたい時に動けないということですかね。その辺の枠も注目ですね。あと、返し馬やパドックで注意しているポイントはありますか?

湯:パドックではなるべくテンションを上げないようにはしていますね。特に、今回は初めての競馬場だから。おそらく大丈夫でしょうけど、一応初めてのところでは変にテンションが上がって、レース前に無駄な力を出しちゃったら、レースも含め繋がらなくなりますから。パドックではなるべくテンションを上げないように、落ち着かせていきたいなと思っていますけどね。

-:夏場のパドックというのは、春や秋の気温が良い時と比べて難しいと思うのですが、汗だくになっていて、それの方が良いのか、どうでしょうか。

湯:汗だくは良くないでしょうね。ただ、汗を全くかいていないのは、逆にマイナスになるので、程良い発汗ですね。動いているところの筋肉を汗が出てくるくらいは……。

-:お腹の後ろや首の付け根、肩ですか。

湯:その辺は良いと思いますね。

グリム

-:今の体重はどれくらいですか。

湯:今は494キロなので、前走時よりも2~4キロ減っているのですが、大体いつもと一緒くらいですかね。前走と一緒か、-2~4キロくらいでレースに行けると思います。

-:ユニコーンSがこの馬の能力ではないということを証明しないといけないですね。

湯:希望としては……そうしたいですね。

-:どこか控えめなところはありますね。

湯:あんまりこの馬に負担を掛けたくないからね。まだこの子の能力がどんなものなのか、僕らもわかっていないので、あんまり過剰な期待を掛けて「この馬アカンやんけ」と思われるのが可哀想だから。長い目で見てやって下さい、ハハハ(笑)。

-:その内、本物になるということですね。

湯:ええ。なったら「やっぱりアイツ走りよんな」と思って下さい。

-:毛色も芦毛なのに、一目だとまだ芦毛っぽくないですね。これが白くなる頃には、ファンがもっともっと注目する馬になれば良いですね。

湯:そうですね。

-:ユニコーンSで応援してくれて、もう1回ここでも応援しようというファンに。

湯:前回は不完全燃焼の競馬だったので、応援してもらったお客さんには大変申し訳なかったですが、今度は全能力を出せるように、厩舎スタッフ一同頑張っていますので、またグリムちゃんを応援してやって下さい。よろしくお願いします。

-:仕切り直しの一戦、期待しております。

湯:ありがとうございます。

-:ありがとうございます。

グリム