厩舎ゆかりの血統馬が毎日王冠で始動する。NHKマイルカップでは怒涛の追い込みをみせ、差し切り勝ちを決めたケイアイノーテック。この馬の母は同じく平田修厩舎で管理され、ダートで名を馳せたケイアイガーベラだったが、縁のあるはずの血統馬を手がけるまでは、苦難の末だったという。また、重賞初勝利がG1初勝利だったように、勝ち味に遅かった春シーズン、ここまでの道のりを平田修調教師にタップリと語ってもらった。

厩舎ゆかりの血統馬 入厩のキッカケは担当者の熱意

-:毎日王冠(G2)に挑むケイアイノーテック(牡3、栗東・平田厩舎)についてよろしくお願いします。先生ゆかりのケイアイガーベラの2番仔ということで、この馬との出会い、最初の印象を教えていただけますか。

平田修調教師:ウチにいたガーベラにディープ(インパクト)を2回続けて付けたのですが、走るのが分かっているから、是非とも欲しいと思っていました。「初年度の子供はセリに出る」ということだったので、我々もお世話になっている里見(治)会長にお願いして「絶対に獲りにいきます」と話していました。ディープ産駒ですが、そこまで高くはならないだろうと思っていました。しかし、カタールの馬主が競って来て、負けてしまったんですよ。値がドンドンつり騰がって、結局引くことになりまして。

そして、「その下がいるけど、(ケイアイガーベラやケイアイノーテックのオーナーである)亀田会長がその仔もセリに出すかどうか悩んでいる」という話を聞いていました。そんな中、現役時代のケイアイガーベラを担当していた佐々木(剛)という助手が頻繁にガーベラを見に牧場に行っていたのです。普通なら牧場にかつての担当馬を見に行っても、牧場の都合もありますし、元気にしているかな、くらいで帰ってくるものです。しかし、彼はずっとガーベラのそばにいたらしいんですよね。牧場側にしたら、それだけ愛情を持って担当してくれていたということが伝わったみたいでね。牧場の方も亀田会長に伝えてくださって「この馬は平田のところで」と考えてくれたようです。

全兄のセリでは里見会長にまで出てもらって負けたという経緯がありましたし、それ以降はもし、セリに出てきてもどうしたらいいのか悩んでいました。欲しいのは欲しいけど…ね。そういう意味では、佐々木の熱意に助けられた部分もあるんですよね。

平田修調教師
平田修調教師

▲「ケイアイノーテックが入ってきたのは佐々木のおかげ」と語る平田修調教師と
ケイアイノーテック、その母ケイアイガーベラを担当していた佐々木剛調教助手

-:しかも、競りに出ていたら初年度の仔が高い値段で落札されているので、2年目のこの仔も安くはならなかったでしょうからね。

平:セリに出せば、やっぱり高い値段で売れることは分かっていますよね。それを、敢えて預けていただけたのは…。ガーベラがあれだけ走ってくれたから、というのはもちろんあるんだけど、佐々木の力が大きかったことに尽きます。彼のガーベラを思う気持ちが通じたんでしょう。

-:その後、実際にケイアイノーテックをご覧になった時の印象はいかがでしたか。

平:初年度もあんな感じだったんですよね。でも、もっと黒くて、コンパクトなイメージがありました。全兄の現在の体重は分からないけど、ケイアイノーテックはもう少し体があって、顔つきがガーベラに似ているイメージがありました。ダートなのか芝なのかということは、牧場に行く度に話していたんですよ。

-:それは、どの辺りから芝に、という気持ちに変わられたのですか?

平:ディープの仔ですからね。割と早い段階から仕上がってきて、一番初めの新馬(2歳新馬開幕週)を使えたように「ここを狙えそうだな。やっぱりディープ産駒だし、初めの新馬は芝しかないから、芝で行こうや」という話になりました。もし、芝でもう一つだったら、ダートは絶対に走るだろうという感じのスタンスで入厩させて、ゲート試験を受からして、上手く行けば使おうという感じでした。追い切りを始めたら、すぐに時計が出だして、使えるわ、という感じでしたね。そういう天才肌的な部分もあるかもしれないですね。

-:気性的にちょっとヤンチャな面もありますね。

平:気性は、普段は大人しかったですし、うるさい馬というカテゴリーには入らないですよ。何かやった時がキツいイメージはありました。当初は坂路で上がって、止めしなも、ものすごく蹴り上げたりしていましたが、今はあれほどのことはないんだけどね。

-:そういう性格の馬にとってゲート試験というのは、難航しそうです。ゲート試験はスムーズに行きましたか。

平:あの馬は割とスムーズに行きましたね。元気過ぎすところはあるけど、悪いことをしてやろうというところはないから、そういう点に関しては、苦にはしなかったね。

平田修調教師
2勝目を挙げるまで想定外の苦戦

-:とんとん拍子で調教を重ねて迎えた新馬戦も1番人気で期待以上の勝ちっ振りだったと思います。

平:そうですね。追い切り時計も出ていましたけど、ムッチャ走るわ、という感触でもなく、やったら時計はでる、みたいな状況でした。新馬戦に向けてきっちり仕上げた感覚ではなくて、成長途上だけど、普通に走るんじゃないか?と思っていました。能力の高さ、素質、それだけで競馬に向かいましたね。

-:新馬戦は余裕を持たせた感じだったんですね。

平:仕上げきっていないし、そんなに本数もやっていなかったですね。それであの競馬だったので、(福永)祐一も上がってきて、開口一番に「これ、G1を勝てる…」と言いかけて「G1に出られる」と言い直しよった、ハハハ。祐一も前の週の追い切りに乗っていて、切れる感触が頭にあったみたいでレース後に上がってきた時も「この馬は切れることが分かっていたから」みたいなコメントをしていたよね。乗り役としては初めから切れるイメージがあったんだなと思いますね。

平田修調教師

▲世代最初の新馬戦を勝利したケイアイノーテック

-:新馬戦からいきなり33秒5の脚を使っていますからね。

平:そうですね。そう思って見れば、楽勝と言えば楽勝でしたね。あれは、本当に能力だけで勝ったレースでした。そこから夏はどうするか、という問題がありました。素質もあるから、ここでもう一丁、という考え方もなくはなかったのだけど「暑くなるし、秋競馬で十分ですね」という話をオーナーと相談しました。それで夏は牧場に戻したんです。そこから本当に仕上がるまで時間が掛かったというところがありましたね。

-:デイリー杯2歳S(3着)の時に、いきなり+22キロで大きく成長していましたね。

平:そうですね。大きく成長した部分も、もちろんあるのだけど…。

-:太かったのですか?

平:太かったというか、仕上がっていなかったんだと思います。新馬はああいう状態でも勝てるから、仕上がりが早いように思うけど、結局あの時は素質だけで勝っているからね。本当の意味で、力が付いて勝ったという訳じゃなかった。秋になれば、夏に使ってきている馬が相手になると、善戦はするんだけど勝ち切れないみたいなところがありました。色々な意味で、本当に仕上がりきっていなかったという気がしますね。

「本当はこぶし賞で決めたかったのだけど、そこで負けてしまったから、しょうがなく平場を使ったら、ああいう競馬をしてくれました。あの辺りから、本当の意味であの馬の持っている力を出せるようになってきた気がしますね」


-:そういう意味では、今年のニュージーランドT(2着)で-12キロでしたが輸送もあったのでしょうけど、使いつつ仕上がってきていたとみていいのでしょうか。

平:けっこう使ってきていて、その前の500万の平場で勝った時は強い競馬でしたから。G1(朝日杯フューチュリティS4着)を使った後にこぶし賞(2着)で負けて、本当はこぶし賞で決めたかったのだけど、そこで負けてしまったから、しょうがなく平場を使ったら、ああいう競馬をしてくれました。あの辺りから、本当の意味であの馬の持っている力を出せるようになってきた気がしますね。

-:使いつつ芯が入ってきたということですね。

平:暮れの朝日杯G1の時でも、スタートで後手を踏んで、後ろからの競馬になって、あれがもうちょっとスンナリ出ていて、前々で競馬が出来ていれば、2着はあったかなという競馬でした。4着でしたが、能力自体は十分に示してくれていました。こぶし賞で負けたのはちょっと予想外でしたね。あそこは勝ちたかったなぁ。パクスアメリカーナも強い馬だから仕方ないですけどね。

ようやく定まってきた理想の競馬
ケイアイノーテックの平田修師インタビュー(2P)はコチラ⇒