重賞ウィナーの意地をみせるかガルボ
2010/7/2(金)

清水英克調教師
高:よろしくお願いします。まずは前走のNHKマイルカップを振り返っていただけますか。15着という結果でしたけれども。
清:うーん、良いスタートは切れましたけどちょっと外々を回った感じで、もっと馬込みに入れながらレースをさせても良かったかもしれませんね。よく考えるとシンザン記念と朝日杯は馬込みに入ってレースをしていましたから、今のところガルボにはそういうレースが合っているんでしょうね。結論から言うと、ラジオNIKKEI賞でも馬込みに入れながらレースをしてもらおうと思っています。
高:そうですか。NHKマイルのときの体調に関してはいかがでしたか?
清:外見では問題はありませんでしたけど、内面的にもうひとつだったのかもしれません。結果が出ているときは調教でも運動でもガツッと来るところがありましたけど、NHKマイルのときはそういう面がありませんでしたね。レース当日も妙に装鞍所で馬が仕上がっていたりね。
高:NHKマイル後の状態はいかがでしたか?
清:レースが終わったあとは「真っ白」という状態でしたね。あしたのジョーのラストシーンみたいな感じで。今までの疲れや目に見えないプレッシャーもあったんでしょうね。
高:中間の状態はどうですか?
清:だいぶ良くなってきていると思います。もっとうるさくても良いと思っていますけどね。
高:まだ先生が思っているより大人しい感じですか。
清:そうですね。「まだ元気がないな」という見方も出来ますけど、調教で乗っている菊地さんは良い手応えを感じているみたいなので、もしかすると「馬が大人になったのかな」という見方も出来ます。実際に体も大きくなってきていますし、今までの経験上、走る馬は突然大人になることがあるので、今回は正直半信半疑の面もあります。
高:元気がなくて大人しいのか、成長して大人しいのか、ということですね。
清:そうそう。こういう見極めが出来ることは、僕にとって良い経験になると思います。今までは自分が乗っていた経験で考えていましたけれども、今回は横から見続けていた経験で考えていますから。常々、実際に乗らなくても横から見ているだけで状態が分かるような調教師にならないといけない、と思っていますので、今回は良い経験になりますね。
高:なるほど。今日(6/30・水)の調教はいかがでしたか?
清:今週の火曜日の朝の状態が思っていたより大人しかったので、今日は、菊地さんと相談して「ちょっと気を入れてみよう」ということになって、少しやってみました。見た感じ、フォームも良くて、ストライドも良かったですよ。
高:楽しみですね。今回はハンデ戦で57キロになりますね。
清:そうですね。楽ではありませんけど、それだけ期待されているということでしょうね。
高:福島コースに関してはいかがですか?
清:右回りは好成績を残していますし、小柄な馬ですから小回りも合うと思います。

高:楽しみですね。先ほど「今回は良い経験になる」というお話がありましたけれども、この春、ガルボとコスモネモシンでコンスタントにG1出走を経験されたのも良い経験ですよね。
清:そうですね、やっぱりああいう舞台に出ると、欲が出てきますね。あの盛り上がった雰囲気の中で表彰を受けたいですね。
高:優勝カップを受け取って、高く掲げたり。あ、調教師の方はあまりそういうパフォーマンスはされませんよね?
清:いや、僕、それをやったんですよ。フェアリーステークスの表彰式でカップを掲げたんです。そうしたら、失笑でしたよ、失笑。
高:観客の反応は芳しいものではなく…(笑)。
清:「アハハ」って聞こえました(笑)。「ヨシッ」ってカップを掲げたら、観客の方から「アハハ」って。その笑いも2、3人の笑いで…。
高:パラパラと(笑)。
清:G3では観客の反応もこんな感じなのかな、と。
高:重賞を勝ったんですから凄いことですけどね。
清:重賞を勝つのもとてつもないことだと思いますけど、僕らもそこで終わりたくはありませんから。だからまだ過程なんですよね。
高:まだ満腹ではありませんよ、と。今年は重賞を勝ってG1出走をしたことで、マスコミに取り上げられる機会も増えたと思いますけど、スタッフの皆さんの変化を感じることはありましたか?
清:底上げは出来たんじゃないかな、と思います。危なっかしいところもたくさんありましたけど、良い経験になりましたし、レースで勝てなかったときの分析をみんなで冷静にしましたしね。ただ、今回はマスコミがたくさん厩舎に来て、明らかにみんなが浮き足立っていたところもありました。
高:マスコミ応対も慣れが必要なんですね。
清:そうですよ。マスコミがしょっちゅう出入りをしているようになれば、絶対その状況に慣れてくるでしょう?そうすると舞い上がらないで会話が出来るようになりますよ。まあ、競馬の世界に入ってくる人たちは、対人関係が上手くない人も多いですからね。今回の経験で人間的にも大きくなったと思いますよ。
高:そうですか。先生も多くのマスコミ応対をされましたよね。
清:そうですね。僕のインタビューがテレビで流れるのを、僕の親や子供も見てくれていたようですよ。まあ、いろいろインタビューを受けましたけど、中には答えに困るものもありましたね。
高:そうなんですか。
清:「ライバルはどの馬ですか?」という質問をされましたけど、僕は基本的に他のメンバーを見ませんから。その日の作戦を立てるのは、レース当日の競馬場へ行ってからなんです。それで新聞を見て、ウチの馬に印が付いていないと「分かっていないなあ」と(笑)。
高:ウチの馬を無印にするなんて、と(笑)。ところでG1シーズンも一区切りとなって最近暑くなってきましたけど、調整も難しくなってきませんか?
清:そうですね。だから、調教のスタイルを工夫したり、カイバにもいろいろと工夫をして食べさせています。でもやっぱり一番大事なのは水ですね。ウチの厩舎では24時間いつでも新鮮な水を摂取できるようにしています。
高:へー。
清:水は大事ですよ。多分人間が死ぬときに何を一番欲しがるかといったら、水だと思うんですよね。僕も昔、減量していたときに、夜中に起きて何を一番したかったかというと、水を飲みたかったんですよ。やっぱり体重の3分の2を占めていますしね。お坊さんでもそうですけど、水と塩を摂っていれば死なないわけですから。
高:なるほど。それだけ水に注意されていらっしゃるんですね。さて今年も半分過ぎましたけれども、ここまでの厩舎の成績を振り返っていかがですか?
1 | 2
|
||
■最近の主な重賞勝利 |
||
10年1月10日にガルボでシンザン記念を勝ち、初重賞勝利をおさめた。その翌日の1月11日にはコスモネモシンでフェアリーステークスを制し、二日連続の重賞勝利という偉業を成し遂げた。重賞初勝利をあげたガルボでラジオNIKKEI賞に臨む。 |
|
||
■出演番組
|
||
2006年から2008年までの2年間、JRA「ターフトピックス」美浦担当リポーターを務める。明るい笑顔と元気なキャラクターでトレセン関係者の人気も高い。2009年より、競馬ラボでインタビュアーとして活動をスタート。いじられやすいキャラを生かして、関係者の本音を引き出す。 |