今年に入って5戦4勝。前走のスワンSではG1馬モズアスコットを破って重賞初制覇を果たし、出世街道をひた走るダイアトニック。同じ安田隆行厩舎で、既に重賞3勝をマークし、同じロードカナロアを父に持つダノンスマッシュにもヒケを取らないと高く評価されていた逸材がいよいよ開花。待ちに待ったG1初挑戦を前に、その意気込み、手応えを陣営に語ってもらった。

何とか間に合ったスワンSを快勝

-:マイルCSに出走するダイアトニック(牡4、栗東・安田隆厩舎)ですが、スワンSではモズアスコットとの叩き合いでした、レースを振り返っていただけますか。

安田景一朗調教助手:当初からスワンSを目標にしていましたが牧場から「夏負けが尾を引いて、ちょっと間に合わないかも…」という報告を受けていました。10月1日に栗東に戻し、やれるだけやろうという感じでスワンSを目指しました。調教の動きはすごく良かったですが、何とか間に合ったというのが正直なところでした。目に見えない疲れはないのか心配していましたが、あの勝ち方は正直ビックリでしたよ。次に繋がれば良いとか、本当にそういう感じだったので勝てたことに驚きました。

-:G1馬モズアスコットとハナ差の争いでしたからね。

安:直線を向いた時は、あの馬の底力を見ましたね。改めてポテンシャルの高さは感じました。ウチのダノンスマッシュと同世代で、今までダイアトニックもヒケを取らない逸材だと思っていたので、その思いが間違いじゃなかったなとホッとした気持ちでした。

ダイアトニック

▲モズアスコットを破ったスワンS

-:安土城Sを勝った後に放牧に出て、ロードカナロア産駒の特徴である夏の弱さが出たのでしょうか。

安:そうですね。安土城S後は、オーナーサイドも「夏に弱いのは分かっているから、無理をしないでスワンSから行きましょう」ということでした。それでも今年の夏は強烈な暑さの時もあったので、ちょっと夏負けが尾を引きました。

-:当初の予定から2週間ぐらいズレた感じでしょうか。

安:そうですね。10月の前半でも、まだいくらか残暑が残っていました。だからといって守りに入っているだけでは仕上がらないし、結構負荷を掛けてきました。ダイアトニックがよく応えてくれたと思います。

-:ダイアトニックはトロワゼトワルや、NHKマイルC2着のケイデンスコールを担当されていた厩務員さんから岩本さんに代わらましたね。

安:新馬当時は岩本君がやっていたので、戻ったという感じですね。色々な馬が重なって一旦、放さざるを得ない状況だったんです。新馬の頃からダイアトニックのことを一番知っている岩本君に意識的に戻しました。

-:岩本さんと言えば、ロードカナロアを担当されていた方ですものね。

安:そうですね。ロードカナロアの良い所、悪い所をシッカリ把握してくれているのでね。

-:ダイアトニックはロードカナロア産駒より、もう少し荒々しさがある馬ですね。

安:そうですよね。ダノンスマッシュやケイデンスコールとは馬体も、乗り味も違います。

-:その違いを教えて下さい。

安:ダノンスマッシュやケイデンスコールは高級なトヨタ車で、綺麗に走ってペースが上がっていくんです。ダイアトニックはポルシェですね。爆発力があってギアを上げていったら、回転がすごく速くなる。本当にすごい加速力ですよ。

爆発力と勝負根性で大一番へ

-:これまでのダイアトニックの成績を見ると、得意とは言えないマイル戦に挑戦するわけですが、厩舎としてはどのように考えていますか。

安:僕は、距離は大丈夫だと思うんですよ。流れの速い1400mを使ってマイルCSだと、道中はもっと良い位置で手綱を持てる余裕が出るんじゃないかと。むしろ急がすと良くない馬んです。前回もスミヨン騎手が上手く流れに乗ってくれたから、あの脚が使えました。スワンSで1400mの流れを経験しているからマイルだったら、もう1つ2つ前のポジションで競馬が出来そうです。なおかつそこで溜めれたら良いなというのはありますね。それでも伸び切れなければ、距離が長いのかなと思います。

時計は全然違いますけど、新馬で1600mは勝っていますし、新潟の1600mでも2着に来ています。道中は引っ掛かる馬じゃないので、距離に関しては問題ないと思いますけどね。ただ、相手がさすがに1600mのスペシャリストが揃っています。インディチャンプやダノンキングリーはやっぱり強いので、胸を借りるつもりで挑みます。

-:距離よりは相手関係との力差がどうなのか、ということですか。

安:そうですね。やっぱり力差じゃないですか。

-:G1初挑戦という所が距離より気になるんですね。

安:そうですね。スワンSのモズアスコットにしても、使って良くなってくるでしょう。もちろんダイアトニックも上積みはかなりあると思うのですけど、どの厩舎もマイルCSに向けて状態をアップさせてくると思いますからね。どういう競馬になるかは本当に想像出来ないですが、今日(11/8)追い切って、1回使った効果を実感しました。

-:坂路での動きはいかがでしたか。

安:僕が乗って、感覚的には53~4秒くらいで乗ろうと思ったのですが、速くなってしまいました。乗っていて54の終い12.8ぐらいかなと思っていたら、51.7-12.2を馬なりで出していました。使う前よりもストライドが大きくなっていましたし、気持ちも燃え過ぎずに走れていました。この状態で強いメンバーとどれだけやれるか、楽しみです。

-:「前回は夏負けが尾を引いて、やや急仕上げだった」ということですが、それを使って、体の変化はありましたか。

安:締まりましたよね。使った効果なのか、季節が進んで涼しくなっているからなのか、歩様に硬さがないんですよね。夏場は少し硬いんですよ。寒くなるにつれて、ロードカナロアの子は良くなっていきますからね。

-:当日は気温が低いに越したことはないですね。

安:そうですね。

-:初めてスミヨンジョッキーが乗られた訳ですが、検量前に戻ってきた時の感想はどうでしたか。

安:「すごい爆発力だ」と言っていました。1600mはどうかと聞いたら「全然問題ない」ということで、「次もダイアトニックに乗せてほしい」と言ってくれました。世界一流のジョッキーなので、1600なら1600なりの乗り方をしてくれますよ。

外枠が当たっても、先週のみやこSのウェスタールンドのパトロールビデオを観ても、なるべく距離損のないレースをしているのがわかりますよね。4コーナーで内への入り方はキツいですけど、同じことをやれと言われても、あれは出来ないですからね。

ダイアトニック

絶好調・スミヨン騎手が連続騎乗

-:体重の変化を教えていただけますか。

安:体重はスワンSから大幅な変動はないと思います。

-:ファンは初めて戦う強敵相手にダイアトニックがどこまで迫れるか?相当、悩みますよ。

安:毎日王冠のダノンキングリーとか、安田記念でアーモンドアイを倒しているインディチャンプ、やっぱりメンバーは強烈ですよ。あとはスミヨンが有力馬の後ろで競馬をしてくれたら良い根性をしているので、食らい付いてくれると思います。

-:京都の芝状態は良いですが、使い込んで悪くなる時期がマイルCSかなという懸念もあります。馬場の良し悪しはどうですか。

安:言ったら、切れというよりはピッチ走法に近い走り方で、芝を掴んで走れる馬なんですよ。僕は雨が降っても問題ないかなと。前回のスワンSも緩かったですけど、全く問題なかったので、大丈夫かなと思いますね。本当にロードカナロア産駒はユルい仔が多いですけど、ダイアトニックはユルさの中に芯が入っているので、馬場が悪くてもしっかり走れそうです。

-:最後にG1初挑戦の舞台で、ダイアトニックを応援しているファンにメッセージをいただけますか。

安:スワンSを勝たせていただいてマイルCSに挑戦します。かなり強敵揃いですが、ダイアトニックもスワンSから状態は良くなっています。強い相手に一泡吹かせられるよう頑張ります。

-:スワンSは外から差してきましたが、内枠なら違った競馬が出来る可能性もありますか。

安:そうですね。安土城Sでも馬込みから抜けてきましたし、馬を怖がる性格ではありません。むしろ並んでからの勝負根性が強いので、内枠に入ったとしても全く不安はないです。

-:ダイアトニックの勝負根性が活かされるように、叩き合いになることを祈っています。

安:ありがとうございます。