春のクイーンエリザベス2世Cでは、ともに海外G1を制することになるリスグラシュー、ディアドラを破って香港でG1初制覇を果たしたウインブライト。帰国後の秋2戦は9着、8着と結果は案外ながら、使いつつ調子は右肩上がり。その名を一躍に世界に知らしめた香港で迎える秋3走目。その手応えを主戦の松岡正海騎手に聞いた。

上昇一途で春と遜色ない仕上がりへ

-:ウインブライト(牡5、美浦・畠山吉厩舎)の香港カップに向けてですが、まずは前走の天皇賞(秋)の馬の状態から、振り返っていただけますか。

松岡正海騎手:オールカマーが不甲斐ない結果(9着)で、使った上積みを期待したんですけど、攻め馬とかでも思ったほど上がってこず、状態に関しては、オールカマーよりもちょっと良くなったかなという感じだったので、右肩上がりですけど、8分ぐらいしかなかったのかなという印象ですね。

-:実際のレースを振り返られて、いかがでしたか。

松:外枠(15番)を引いちゃったんですけど、競馬は上手くいって、ある程度理想的な良い位置で、距離ロスもある程度防げて、レースの内容としては良かったかなと。最後の踏ん張りがちょっと足りなかったのは、調子が上がってこない所で、踏ん張りが利かなかったかなという所でしたね。

松岡正海騎手

▲天皇賞は無念の8着

-:その後の香港Cに向けての調整ですけど、この中間は14日、21日と併せ馬で追い切りに乗られていると思いますけど、この辺りで馬の状態はどのように感じていますか。

松:2回使って、天皇賞(秋)の後はちょっと上積みがあったので、それは3週前の最初の併せ馬で感じ取っていたので、2週前もある程度やっておいて、1週前が終わった後、飛行機の輸送とか色々あるので、ちょっと余裕を持たせて積みたかったので、2週前までにある程度つくって、今週は70ぐらいで軽めにしてという感じで、反応だけ診てという稽古だったんですけど、動きは天皇賞(秋)の時よりも格段に良いと思います。

-:昨日(11/27)の追い切りということですね。この中間の調整で、どういうポイントに気を付けながら調整されたのですか。

松:乗り慣れているので、特に気を付けているポイントというのはないんですけど、息遣いであったりだとか、どれぐらい腰の踏ん張りがあるのかだとか、他の馬で気を付けていることと一緒ですね。この馬は古馬になってからは、段々見るポイントが少なくなってきて、見るポイントとしては息と腰の感じぐらいですかね。

松岡正海騎手

▲今年初戦の中山金杯を快勝
ここから快進撃が始まった

-:これまでの現役生活の中で、ウインブライトが一番良い状態だったのはいつのレースでしたか。

松:現役生活の中では金杯が一番自信があったかな。金杯の時は(ハンデが)58と分かっていたんですけど、58でも負けないなという、今まで勝った重賞の中でも一番自信があったし、大体負けないなという感じでしたね。あの辺から3連勝して、香港(クイーンエリザベス2世C)も勝つ訳ですけど、その時がやっぱり一番デキが良かったのですね。夏場はちょっと休みが長かったので、自分が思ったよりも取り戻すのに時間が掛かったんですけど、本当にグッと良くなって、今は春に勝った時のデキと遜色があまりない所まで来ていると思います。

再び香港で雄叫びを!

-:この後の香港に輸送してからの調整ですけど、この先気を付けていることがあれば教えて下さい。

松:1回行っているので、今回は馬もちょっと分かっている感じなので、検疫に入って大分気も入っているので、前回は飛行機で輸送して着いた時に、ちょっと気の抜けた感じだったので、直前にやったんですけど、もう出来ているので、気が入っていればやる必要もないし、その辺りの雰囲気を火曜日に感じ取って、水曜日にどれだけやるかというのは決めるんですけど、まだちょっと分からないですね。

-:それは今後の馬の状態を見ながらということですね。

松:そうですね。

-:春にクイーンエリザベス2世Cを勝ちましたけど、改めてあのレースを振り返ると、いかがでしたか。

松:競馬自体は、道中は上手くいったんですけどね。スタートがゲートボーイとか初めてのことも多かったから、ちょっとイレ込み加減ではありましたけど、競馬自体は上手くいって、馬込みでも折り合ったりだとか、馬込みを苦にしない馬にはしてきたつもりだったので、その成果というのは十分に出たのかなと思いますね。

-:世界の舞台でG1を勝って、あの勝利は松岡騎手にどういう意味がありましたか。

松:勝ったのは香港でしたけど、2歳から自分でG1を勝てると言って、その馬を自分が追い切りに乗って、厩舎と一緒に仕上げてきて勝てたということが、自分にとっては勲章ですかね。

松岡正海騎手

▲香港で再び雄叫びをあげるか

-:それだけ当初から期待されていたのですね。

松:当初から期待していて、なかなかG1を勝つことは出来ないと思いますからね。自分なりに大事に仕上げつつ、ある程度結果も出しつつ、クビにならずに乗り続けるということは、ジョッキーとしてはなかなか難しいんですよ。大体、途中で乗り替わっちゃうんですよ。そういうのも加味しながら、馬に無理させずにみたいな所も紆余曲折があって、そうやって乗り続けられたということも、自分としては評価していますし、それで勝ったということも評価しても良いんじゃないかと思いますね。乗り役を15年ぐらいやっていたら、これぐらいの仕事が出来なきゃいけないなと思ってやってきたから、それが出来て良かったなと。

-:今回は国内のアーモンドアイという強敵もいますけど、それらを含めて最後に意気込みをお願いできますか。

松:昨日、牝馬の胸を借りますと言ったら「セクハラだ」と言われたから、言えないんですけど…、そういうつもりで言ったんじゃないんですけどね(笑)。自信を持っていけるデキですし、もちろん自分で精魂込めて仕上げているので、負けるつもりも1ミリもないし、勇気を持って挑んでいきたいと思います。

アーモンドアイは11月30日に出走回避を発表しました。