前走のジャパンカップでは、天皇賞(秋)7着から鮮やかな変わり身を見せて、昨年春の大阪杯以来となる勝利を挙げ、2つ目のG1タイトルを手に入れたスワーヴリチャード。G1連勝を狙う有馬記念は3歳時に勝ったキタサンブラックからコンマ2秒差の4着と健闘。キャリアを重ね、心・技・体充実の時を迎え、2年越しのリベンジに向けての意気込みを庄野靖志調教師に聞いた。

5歳秋を迎え更に充実!

-:いよいよ大詰めの有馬記念(G1)です。スワーヴリチャード(牡5、栗東・庄野厩舎)ですが、ジャパンCで大阪杯以来のG1勝利、おめでとうございました。

庄野靖志調教師:ありがとうございます。

-:天皇賞(秋)は7着、その後はジャパンCに向けて良化していたことは感じていましたが、一気に勝つとは思いませんでした。まさにガラリ一変しましたね。

庄:間違いなく上向いたなというのはありましたね。もちろん天皇賞(秋)を使う前から、使ったら更に上向くだろうなという感触はあったんですよ。レース後、間違いなく良くなったなという手応えを感じました。

-:それは、普段のどういう動きから判断されたのですか。

庄:やっぱり手脚の動きが軽くなって、トモの筋肉とか体のメリハリが写真を撮って見比べていても分かるくらいでした。すごく体調が良くなっていっているんだなというのがハッキリ分かりましたね。

-:ジャパンC直前の追い切りは、坂路で今回と同じくらい動いていましたね。

庄:ジャパンCの1週前で52.0-12.0で、ここも終い段々速くなっていくイメージでした。終い2ハロンが11.9-12.0でした。それで当週も50.6-12.0で、ここも11.7-12.2で上がってきました。やっぱり脚力と心肺能力がすごいですし、本当に良い馬だなと思いますね。

-:それは、歳を重ねてやっぱり体に芯が入ってきたということですか。

庄:もちろん歳を重ねてですが、体が出来上がってきて、こういう調教にも耐えられるようになってきたのかなと。これだけの時計を重ねていけば疲労感が出てくるものですが、そこからの回復力が段々良くなってきたんです。天皇賞(秋)の後、JCに向かっていく上では疲労からの回復が早く、体のメリハリがついていきました。良くなるのが手に取るように分かるくらいでしたね。

スワーヴリチャード

▲力強い動きを見せた1週前追い切り

スワーヴリチャード

▲最終追い切りも豪快に登坂した

-:スワーヴリチャードは調教で動くじゃないですか。コースでも馬なりで好時計が出る馬ですが、そこから更に負荷を掛けた追い切りをしたら、どうなりますか。

庄:どうなんでしょうね(笑)。これまではずっとCWで追い切りをしてきた中でやり切った感じでした。CWで一杯にやったことはなかったのですが、おそらくやったら、最後の1ハロンで10.9とかの時計が出てもおかしくないと思いますね。逆に今回は坂路で距離が短い中でシッカリ負荷を掛けられたのは、良かったと思います。

-:1週前の今日(12/12)、一番時計の50.1で、終い12.2という時計を出されたのはジャパンCより1ランク上の調整が出来ているということですか。

庄:時計だけでもう一段上の状態を求めている訳ではないんですけど、秋3戦目の有馬記念に向かって、古馬でもG1を3戦というのはしんどいと思うんですよね。その中で今日これだけの調教が出来ているということ自体が、スワーヴリチャードの持っている強さだと思いますね。

昨年の安田記念調整が成長の糧に

-:ジャパンCを勝って、何の不安もなく迎える有馬記念になりそうですね。

庄:そうですね。ジャパンCが終わって乗り運動を始めた段階で、担当の久保君も「まだいけるし、まだもう一段階上げられそうだ」というコメントをしていました。その後、1週間だけノーザンファームしがらきでリフレッシュさせてもらったのですが、戦闘モードが抜けて気持ちが落ち着いた時に体の疲れや痛みがどう出るかが不安でした。でも、牧場ではそれほど疲れもなく行けそうだと判断し、私自身も同感でした。スワーヴリチャードの体調を再確認して初めて、“有馬記念に行こうか”となりました。

-:今年のジャパンCはJC史上でも稀にみる馬場の悪い状況でしたからね。

庄:JCでは珍しいですよね。天皇賞(秋)はたまに悪くなったりしますけどね。馬場自体は去年のJCなどのように高速馬場と言うほどパンパンではない中で、アーモンドアイがレコードで勝ってしまうような馬場状態でした。今年はまた逆で、少し時計の掛かる馬場でしたからね。

-:大分重かったと思いますしスワーヴリチャードのレースだけは、2分25秒台でしたが、同じ時間帯に違うクラスの馬が走っていたら、もっと遅い時計だったと思います。

庄:そうだと思いますね。あの馬場の中でも時計は速い方だと思いますね。マーフィー騎手も朝からずっと競馬を乗りながら馬場を気にしていました。JC前ぐらいには内と外、4~5頭分ぐらいはあまり変わらないから、ポジションによっては内に行っても良いという判断をしていました。

-:それはマーフィー騎手から先生に進言されたのですか。

庄:いや、どの陣営もそんな感じでしたよ。馬場状態もそうですけど、東京の芝コースは内側から乾きやすい傾向があるので9レースを観ていてそろそろこれは外を回ったら届かないぞという感じだったんです。その辺は僕の周りのオーナーも含め、関係者の人たちも「外を回ったら届かないから」と言っていたし、ジョッキーも第一声でそのようなことを言っていましたからね。

スワーヴリチャード

▲ジャパンCで久しぶりの勝利

-:あのジャパンCのスタートでスワーヴリチャードが内に入ってカレンブーケドールの真後ろを取れたのが最大のポイントだったのかなと思いました。

庄:1コーナーのあそこでほぼ決まったと言って良いぐらいでしたね。やっぱりマーフィー騎手が一番良い所を取ったなという感じもします。それと割と内側の馬たちがみんなスタートが良く横並びで出ていったんですが、リチャードはちょっと二の脚が付かなかったのが逆に功を奏したようで、カレンブーケドールの後ろのポケットに入っていけました。

ただすぐに内を狙いに行けたことはマーフィー騎手の好判断だろうし、最初からカレンブーケドールの後ろというのは頭にあったみたいです。みんなが横並びでポジションを取りに行っている所にスッと1人だけ最内を取れたというのはラッキーでした。

-:結果論かもしれないですけど、カレンブーケドールが良いコンディションで出てくれたから、4コーナーは進路が開けたということですね。

庄:マーフィー騎手自身もカレンブーケドールには乗った経験があるから、それに付いていったら道が開けるだろうという考えはあったみたいですからね。

-:でも、騎手の上手さだけじゃなく担当の久保さんや先生が色んなことを試してこられましたよね。馬装にしてもそうだし、チークピーシーズにしてもそうなんですけど、調教の強さとか、どのコースで追い切るかとか色んな試行錯誤を経てジャパンC優勝という結果が出たのだと思います。

庄:今回、坂路にしたりチークピーシーズにしたとかいうのは、オーナーのアドバイスもありました。「馬場で長めにやるよりは、坂路の短い所でビュッと終い切れるような、終い重点の追い切りの方が良いのでは?」というアドバイスをいただきました。その助言も活きましたし、厩舎スタッフ、担当の久保君を筆頭に毎日コツコツと粛々と過ごしている中で、リチャードの変化をキッチリ観察してくれていることが大きいんです。それによって僕がどれぐらいの調教メニューを作るのかが決まる。久保君の正しいジャッジがあってこそなんです。その辺は厩舎スタッフの力というのは大事ですね。

-:去年、安田記念という路線変更を試されて色んなことにチャレンジしながら、最適な舞台を探してきたということですね。

庄:安田記念の1600を狙いに行ったのも、今の日本の競馬はスピード競馬であって、やっぱり種馬もある程度スピードが必要ですし、それを証明するものがないと種馬としての価値も上げられないんです。そういう意味で東京のマイルを走れるというのは、この先の彼の競走馬人生ですごく糧になるだろなとは思っていました。結果は3着でしたけど、逆に言えば、G1で3着に来れているんですからね。レコードのコンマ1で走っている訳ですからね。

-:勝ち時計が1分31秒3ですからね。

庄:恐ろしい時計ですね。

コースも馬場状態も不問!
スワーヴリチャード陣営インタビュー(2P)はコチラ⇒