明け4歳の若きスピードを見せつけるか。ダート初挑戦となった昨年のユニコーンSでハイペースを押し切ったのがワイドファラオ。古馬との対戦となった昨秋以降は、勝ち星にこそ手が届いていないが、陣営は各々のレースぶりをどう見ているのか。久々の東京マイルに戻る今回、反撃の可能性を探った。

昨秋はオーナーサイドのリクエストで1800m戦へ

-:ワイドファラオ(牡4、栗東・角居厩舎)について、昨年のユニコーンS前にお話を伺って以来、取材させていただくことになります。まず、前の話題になってしまいますが、フェブラリーS(G1)と同じ舞台で行われるユニコーンSは脚抜きのいい馬場とはいえ、前半のペースを考えると、かなり厳しい流れを押し切る、強い内容だったと思います。

高田建吾調教助手:そこまで芝を使ってきて、芝スタートが良いのは分かっていたので、スタートの良さを活かす競馬にはなるかと思っていましたが、想像していたより、前半は飛ばしていきましたね。終いまで持つか、大丈夫かなと思いましたが、結果的に凌いではくれましたけどね。あのレースを見ると、前に行って粘り込む競馬が合っていると感じはしましたね。

-:レース後、引き揚げてきた(福永祐一)ジョッキーは距離適性についても言及されていましたね。

高:帰ってきて真っ先に、「1400mの馬だね」と言っていましたね。前半あれだけ行ったから、さすがに終いは甘くなるのもあるでしょうから。

-:ジョッキー的にあれだけのペースの競馬を選択したというのは、それなりの勝算、手応えもあってのことだったということでしょうか。

高:「下手に我慢させて、喧嘩したくなかった」とは言っていました。馬自身は気分良く行けた分、後半の踏ん張りにも繋がったとは思うので。

-:そして、秋になって1400mの浦和のオーバルS(Jpn3)で古馬との初対戦でしたね。

高:適性も1600mよりも1400mの方がいいという気持ちもありました。それに当初は去年のJBCスプリントが浦和1400mでの開催ということだったので、その前にひと叩きするには、コース経験をさせる上でベストの条件だと思って、レース選択をしていました。

レースは地方競馬で砂の質も違うでしょうし、その時に初めてダートスタートも経験しましたし、コーナーを2度回るということで、色々な課題があったんですよね。そんな状況での競馬でしたけど、芝スタートほど行き脚もつかなかったし、控えてダメかと言ったら、そんなこともなかったですね。それで福永さんも、控えてもこなせるという意識は持ったと思うんですよね。でも、地元のノブワイルドに負けましたが、あの馬もあのコースは最も得意としている馬でしたし、こちらはまだ3歳。2着は確保してくれたので、悪くないレースだったと思います。

ワイドファラオ

▲舞台はユニコーンSと同じ東京1600m

-:その後は賞金面などの課題もあって、1800mへシフトしたのでしょうか。

高:賞金は足りていたと思うんですよね。でも、オーナーからは「目標をJBCスプリントよりもチャンピオンズCに向けて欲しい」ということで方針転換となりました。それで1800mがこなせるようだったら、今後の選択肢もだいぶ広がりますし、今の内に試そうということでした。そのステップとして、みやこSを選んだという感じでしたね。

-:そのみやこSは激しいレースでしたね。ただ、前に行った組の中では動き辛いところもありながら、差し決着の中で大きく離されていなかったですね。

高:あれを見て、案外1800mでもいけるのかなとは感じましたね。全然ダメだったら、スンナリ諦めていたとは思うのですけど、4角でちょっとゴチャついたりしながら、5着に踏ん張っていたので、当時はこなせなくもないんじゃないかという印象だったんですよね。それで、チャンピオンズCに向かった訳ですけど、さすがに相手が違いましたしね。

-:チャンピオンズCは現在のトップクラスの馬たちが集結しましたね。そして、外枠からの競馬。中京の1800mのコースだと、1コーナーの入りでどうしても内にいないと外を回らされてしまいますね。

高:スタートで躓いて、いつもより後ろからの競馬になってしまいました。あの馬の持ち味は、前に行ってどれだけ踏ん張れるかだと思うので、スタートして後手を踏んだのは、痛かったですよね。最後は余力もなくなった感じはありましたけど、この馬はやっぱり1800mの馬じゃないなとも感じましたしね。

将来を見据え末脚強化にも注力

-:前走(根岸S5着)は前の馬には厳しい流れではあったと思います。4歳初戦で58kgの斤量を背負ってということと、最後もそんなに沈んでいないことを考えると、次に繋がる競馬だったのではないでしょうか。

高:内容は悪くはなかったと思うんですけどね。ただ、福永さんも言っていたのが「1400mだとテンが速くなり過ぎるので、そこで楽が出来ないから、無理に付いていったら終いがガタッとなりそう。かと言って、ある程度は前に付けたかった…」という評価でしたね。直線も良い手応えで、一瞬伸びてきそうな感じもありましたけど、最後は58kgの斤量も響いたと気もしますね。

-:そう考えると、1600mで前付けしてのハイペースというのは、今のところ、良い条件ですね。

高:前向きに向かって行けるとは思っているんですけどね。でも、古馬の1600mになってくると、差し馬もけっこう届いてきますから。ユニコーンSなら同世代でしたから、そこまで差してくる馬もいないし、凌いだりもできましたけど、この間の根岸Sの時も差し負けてはいるので。控えてもそんなに脚は溜められないイメージがあるんですよね。それも踏まえて、今回は追い切りでも終い重点で、シッカリめにやるようにはしてきたんですけどね。あとは流れがどうなるか、だと思います。

-:今は、テンのスピードを意識させるよりは終いをシッカリ伸ばすということを意識されているということですね。

高:そうすることが先々活きてくると思いますし、逃げ一辺倒の馬にはしたくない意識があります。これから古馬と戦っていくにあたって、強化していかないといけないという意識はあります。

ワイドファラオ

昨春は芝のニュージーランドTも勝利

-:繰り返しになってしまいますけど、芝スタートというのは、ワイドファラオにとってユニコーンS振りの条件になりますし、今度はスタートも楽になりそうですね。

高:そうなりますね。 (芝、ダートの重賞を)両方勝っているように芝はいいですし、今回は同じ舞台でもありますから、期待はしていますけどね。

-:現時点で来週の天気は分かりかねる部分はありますが、1週前の土日は雨予報。来週1週間でガラッと変わることはなかなか考え辛いのかと思います。そう考えると、ワイドファラオにとっては良い条件なのかなと思うのですが。

高:さすがにパサパサにはならないでしょうね。ちょっと締まって、スピードに乗せられる馬場の方が合っていると思うので、その辺の状態次第ですけどね。

-:馬体を見させてもらうと、蹄はあまり厚ぼったくはないですよね。ダートでもそういうタイプだと、どちらかと言うと、スピードが活きる馬場の方がいいイメージもありました。

高:芝でも走れているくらいですから、それなりのスピードはあると思うので。今でも決してダート一辺倒という感じもしないですし、また芝を使ってほしい気はありますけど、今のところはダートの番組の方が適鞍は多いので、そちらに向かっていますけどね。

内枠から先行力を活かす形が理想

-:まだユニコーンSから1年は経っていないですけど、どういう部分が良くなってきたと感じますか。

高:正直、そこまでの大きな変わり身はないんですけどね。というのも、いつも同じような雰囲気で競馬に向かって、同じようなパフォーマンスをシッカリ出せるというタイプなので。大きく変わり身がないということもプラスというか、良さという感じもしますけどね。もちろん年齢を重ねたなりに成長分はありますし、力が強くなった部分はありますけど、中身の精神面としては、そんな大きな変わり身はないですね。

あとは競馬に対しては前向きな馬ですから、今回もそこをシッカリ出してくれればいいですね。1800mを2回使った時に、最後は離されてしまったところもあったので、あれで競馬を止めるような感じになっていないか、という心配はあったんですよね。前走で福永さんに、「(馬の気配を」見ておいてほしい」とは伝えましたが、レースから上がってきて「大丈夫」とのことでした。気持ちは途切れていなかった心配はなくなりましたね。

-:逆に、ユニコーンSやみやこSのような激しいペースを経験して、燃えるようなところが出てきたり、というリスクはなかったですか。

高:もともと燃えやすい感じではあるのですけど、前回は1400mという条件をちょっと意識して、気持ちを乗せながら、乗せながら調整していった面はあったので、パドックで少しイレ込み気味だったんですよね。それが気にはなっていたんですけど「いざ返し馬に行って走り出せば、気負う面はなかった」とは福永さんは言っていましたね。

その前の1800mを2度使った時は、1800mを持たすために気持ちに余裕を持たせたような調整で臨んだのですが、あまり気を立たせると、1800mだと絶対に持たないだろうなと思っていました。そこから前回1400mを使うにあたって、真逆の調整にはなっていたんですけどね。それでも、調教ではそこまで変にテンションが上がることはなかったのですけど、競馬に行った時に、パドックで多少気負う面は出てきていましたから、気を乗せ過ぎたかなという心配はしていたんですけどね。

-:調教はある程度の追い切り時計や限られた映像だけしか図れない部分はありますけど、そんな動作を馬に伝えるというのは、どうやって馬に伝えていますか。

高:説明は難しいですね…(笑)。普段乗っている時から、常に乗り手を意識させることでしょうか。落ち着かせないと言ったら、語弊がありますが、人が乗っているという以上は、調教ということに対して、常に集中させてやる状態という感じですかね。逆に、テンションが高い馬は、いかに普段リラックスさせてやるかという方が目標になっていくんですけどね。走っている時に、常に前に押し出しながら、それをずっと受けてやりながら、という、それの繰り返しなんですけどね。前に出す、それを受けるという繰り返しで、ずっと気持ちを乗せていくという感じですかね。

-:ハミの掛け方も変えたりされますか。

高:ハミはちょっと強めには掛けていますね。強く当てた分、出てきてもらうという感じですかね。

-:今回は、先ほどおっしゃられたように「先々を含めて、終いを伸ばせるように…」ということも意識させつつ、ある程度、行かせることも踏まえつつということですね。

高:おそらくインティくらいしか行く馬がいないと思うので、そことの兼ね合いになるのかなと。

-:それは、やっぱり枠や並びも重要ですか。

高:僕は、どちらかと言うと内が欲しいです。客観的に見る限り、インティは外の方が良いと思うんですよね。その方がお互いにスンナリ先行できるとは思います。そうなった時に、どちらの出脚が速いかというスピード比べになってしまうと思うのですけど、これが枠の並びが逆だったらどうなるのかなど、色々考えるところはありますけどね。こちらはどちらかと言うと、スタートをポンと出て、その後ちょこちょこと行き脚をつけるタイプなので内が欲しいですね。

-:福永さんは、そういうフットワークも含めて、1400mという感触があったのですね。

高:でも、この間1400mの根岸Sを使って、帰ってきた時に「やっぱり1600mかな…」と言っていましたからね。僕は競馬に乗れないので、実際は何ともわかりませんが、調教の雰囲気では1400m~1600mくらいの意識はあるんですけどね。1200mになると、またスピードが足りない気がするし、1800mはやっぱり長いのかなという意識もあるので、現状は1400m、1600mを意識しながら、今は乗っていますけどね。

-:前回は1400mで、その前は1800mにトライしましたけど、今回の加減としてはその中間になりそうですか。

高:前回を使って、思いの外、気持ちが上がっていたので、今回はそれを維持する意味でやっています。だから、そんなに気持ちを楽はさせていないですね。1800mよりは1400m寄りにはしています。

ワイドファラオ

-:あえて伺うと、高田さんが思い入れのフェブラリーSと言うと、どのレースになりますか。

高:それは、やっぱり2006年の(担当馬だった)カネヒキリでしょうね。あの時は、僕は1600mが短いと思っていました。あの馬もユニコーンSは勝っていましたけど、武蔵野Sで負けて、その後のJCダートを勝ちましたが、1回負けているイメージもあったから、1600mはどうなのか、という意識はあったんですよね。でも、そんなことは関係なく、勝ってくれましたけどね。その次のフェブラリーSの時は、武蔵野Sに行って、JCダート~東京大賞典~川崎記念~フェブラリーSとずっと休みなく行きましたから、さすがにもう全然お釣りがなかったんですよね。

それでも、出す以上、こちらはやるしかないので、出来る限りのことはやっていきました。あの時は惨敗すると思っていましたから。それがあれだけ頑張ったんですからね。あの時に、あの馬は本当にすごいなと思いましたね。1枠1番でもあって、東京の1600mダートの1枠は厳しいじゃないですか。それでも僅差の3着でしたし。

-:今回理想とする枠はどの辺りですか。

高:出来たら、3枠以内を引きたいですよね。ユニコーンSで勝った時は1番でしたからね。

-:最近は1枠も来ているんですよね。

高:東京のダートは内が深くなっているみたいで、1枠で閉じ込められて、内を回らされたら、厳しくなることがあるらしいんですよ。福永さんも1枠を引いた時に、内を回したくないなというのもあって、多分ハナに行って、あの時もそんなに内を回っていないんですよね。でも、多分ファラオに関しては、内であるに越したことはないと思うので、理想は1、2、3枠くらいかなと。この馬はG1になると、外を引くのでね(笑)。そこが心配ですけど。

-:去年のフェブラリーSのように、スンナリ行くケースもありますからね。

高:逃げにこだわっている訳ではないですけど、本質は前に行って踏ん張るというイメージがあるので、ある程度前の位置は取りたいですね。もちろんハナに行けるなら、アリだと思いますし、出来れば前目に付けて、直線で踏ん張るようなレースを期待しています。

-:最後に、改めてレースに向けての意気込みをお願いできますか。

高:東京のダート1600mという舞台が、去年のユニコーンSを勝っている舞台ですし、全然こなせないコースでもないと思うので、それに今回は芝スタートに戻るということもあって、スタートも割とスンナリ行けるとは思うので、そういう良い条件を味方に付けて、良い勝負が出来れば良いなと思います。