ノーザンF天栄インタビュー part2 歴史的名牝の次男登場!

競馬ラボスタッフ(以下スタッフ):多くの良血馬を見せていただき目移りしますが、またもものすごい良血馬です。母に名牝グランアレグリアを持つグランマエストロ、こちらはかなりの注目を集めている馬だと思います。荒川厩舎長、どのような馬でしょうか。

荒川厩舎長(以下荒川):真面目です。めちゃくちゃ真面目です。

スタッフ:"めちゃくちゃ"というワードが出ました(笑)

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荒川:めちゃくちゃ真面目で、しかもスピードがあります。お母さんもそうだったのですが、どちらかというとコントロールの面が大事になってきそうです。

スタッフ:持ち前のスピードをしっかり生かせるよう工夫が必要、ということですね?

荒川:そうですね、我慢させるところは我慢させ、行けと言ったらしっかり行くというところをキッチリと教えていければと思います。お母さんに似ていますね。

スタッフ:似ているとなると期待度もより高まりますね。

荒川:現時点で動けますし、速い調教を行っても問題ないです。あとは操縦性であったり、心肺機能がどれだけ整ってくるかというところですね。

脚元であったり、体調面には全く不安がないんです。しっかりしていますし順調に調教を積めているので、このまま無事にデビューまで行ってほしいです。

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スタッフ:多くのファンの方が無事に行ってくれるよう願っていると思います。

荒川:そうですよね。今のところは何も心配していません。行く気をどう抑えるかとか、コントロールの面だけだと思います。今の現状、乗っている感じはマイルあたりかなという感じがありますね。1200mというタイプではないと思います。

エピファネイア産駒は前向きなタイプの馬が多いのですが、お母さんは最終的にテンションが落ち着いてきて、2000mもこなしていました。このぐらいまで走れるようになったらいいなと思っています。

スタッフ:非常に期待ができるということで、この馬も楽しみですね。

荒川:育成中の現時点でも新馬戦を勝てるのではないかという感触があります。これからが楽しみです。

スタッフ:続いて見せていただいたのは、グランマエストロと同じエピファネイア産駒で、フォーエバーヤングの妹にあたる良血馬ダーリングハーストです。小島厩舎長、6月の東京の新馬戦は3着でしたね。

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小島厩舎長(以下、小島):新馬戦でスローペースでしたが、もう少し距離があったほうがいいかなとレースを見て感じたところです。ただ桜花賞までは1600mが主流になってくるので、マイルを経験していって結果を残せればなと思います。

スタッフ:ダーリングハーストのストロングポイントを伺ってみたいです。

小島:データで見ると心肺機能がいいんです。ストライドの大きな走りをしますし、なおかつリラックスして走れます。精神面を見ても、やはり本質的にはもう少し距離があった方がいいのかもしれません。

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スタッフ:お兄さんはフォーエバーヤングということで注目を集める存在ですが、お兄さんと似ているところはありますか?

小島:お兄ちゃんはノーザンファームしがらきにいるので分からないのですが、馬格はやはりフォーエバーヤングのほうがあります。牝馬でやや華奢な部分があるので、お兄さんと違って妹は芝のほうが良さそうです。

この子のお姉ちゃんにあたるブラウンラチェットもウチの厩舎で育成を担当させていただいたのですが、お姉ちゃんも芝だなという感触がありました。似ているかもしれません。

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スタッフ:芝向きの走り方をする、というところでしょうか?

小島:そうですね。そこまでパワーがあるという感じではないんです。ただお姉ちゃんもちょっとコンパクトな感じの馬ですが、ダーリングハーストはちょっとスラッとした感じで脚も長く、より距離はあっていいかもしれません。 お姉ちゃんとの共通点はどちらも操作性が良く、リラックスしているところでしょうね。走り方も綺麗です。

スタッフ:お姉さんのブラウンラチェットは体重の増減も激しいタイプという印象があります。

小島:妹は体重が大きく減ることはないですが、大きく増えることもないという現状です。カイ食いは安定はしていますが、欲を言えばもっと食べた分が実になってほしいなという思いはありますね。カイバは食べてくれるのですが。

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スタッフ:このあたりは成長に期待というところですね。

小島:北海道から天栄にやってきて、その後トレセンに輸送してゲート試験も受かって、また天栄に帰ってきてトレーニングをして、また美浦に行ってトレーニングをして…という感じなので、なかなか体重が増えづらい状況ではあると思います。

なので今はこのような経験をどんどん積んでいって、後々身体が増えてくれればなと思っています。

スタッフ:長い目で見ていきたいですね。

小島:そうですね。新馬戦の後も大きなダメージはなかったので、暑い夏場も馬に合わせながらレースを選択してければなと思います。

スタッフ:ここからはノーザンファーム天栄の木實谷雄太場長に2歳馬のお話などを伺っていこうと思います。早速ですが木實谷場長、特に期待している2歳馬がいましたら教えていただきたいです。

木實谷場長(以下、木實谷):今回取材していただいた馬の中ではドリームコアですね。

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スタッフ:ドリームコアのどのあたりに期待されているのでしょうか。

木實谷:1歳で初めて見た時から期待しています。凄く恵まれた、スケールを感じる馬体だったのですが、デビュー戦でも期待通りの走りを見せてくれました。

普段の調教からも動きもいいです。それでいてまた伸びしろの大きさも感じさせるところがあります。血統的にもお母さんのノームコアは天栄で育った馬ですので、色々な意味で期待が大きいです。

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あと今回観ていただいた中だと、天栄出身の名牝であるアーモンドアイ、グランアレグリアの息子であるプロメサアルムンドグランマエストロも期待は大きいです。

この2頭は血統的な部分はもちろんのこと、いい意味で1歳時からの成長度合いが大きいんです。プロメサアルムンドは8月の新潟、グランマエストロは新潟の後半から中山開催でデビューできると見ていますが、しっかり能力を発揮できるようにしていきたいです。

スタッフ:場長は今挙げていただいた2歳馬のお母さんたちとも思い出深いと思いますが、似ているところ、似ていないところを伺ってみたいです。

木實谷:プロメサアルムンドはお母さんのアーモンドアイとはあまり似てないですね。毛色も全然違いますし。お母さんはバランスの良い、品の良い馬だったのですが、プロメサアルムンドのほうが筋肉量も豊富です。そういう意味ではタイプは違います。

グランマエストロもお母さんとは毛色が全然違うので、パッと見て面影というのはまったくないのですが、乗ってみての前進気勢の強さなどの部分はいい意味で受け継いでいると思います。

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スタッフ:この2頭の距離適性はマイルあたりにありそうでしょうか。

木實谷:そうですね。まあプロメサアルムンドのほうが現時点ではまだ走りに余裕があるので、少し距離の融通性はあるかなと思っています。

グランマエストロはお母さんのグランアレグリアのデビュー当初と同じように、良く言えば前向き、悪く言えばちょっと余裕がないところがあるので、まずは少し短めの距離でしっかり競馬を覚えさせていって、徐々に距離延長も含め融通性を持たせていきたいと考えています。

スタッフ:この2頭の長所を挙げるとしたらどのあたりになるでしょうか。

木實谷:プロメサアルムンドはフットワークの大きさですね。モーリス産駒の中には結構掻き込むようなフットワークの馬が多いのですが、この馬は凄く伸びのあるフットワークをします。そういう意味ではちょっとお母さんのアーモンドアイに似ているところはあるかもしれないです。

グランマエストロはいい意味で気性面ですね。前向きさはお母さんと似ていて、長所でもあると思います。

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スタッフ:そういえば今年の春、「東京デビューだけでなく、新潟デビューの馬に注目馬がいっぱいいるよ」と木實谷さんが教えてくださったのですが、他に新潟デビュー組で特に注目している馬はいらっしゃいますか?

木實谷:開幕週にデビューするペルウィクトールですね。サートゥルナーリア産駒です。お父さんは凄くフットワークの良い馬だったのですが、いい部分を受け継いでいる印象です。

ゲート試験が終わってが馬体は460kgぐらいまで落ち込んでしまったのですが、またそこから回復して、今は素晴らしい馬体になっています。

1歳のクラブ募集時から凄く期待していた馬が、やっとまた馬体が戻っていい頃になってきたという感じなので、7月27日のデビュー戦が楽しみです。※取材は7月上旬、デビュー戦は詰まりながら3着

ダートの新馬も1鞍組まれているのですが、そこでデビュー予定のサンラザールというクリソベリルの子も楽しみです。クリソベリルの仔は素質の高い馬が多そうな印象を持っているので、どんな走りをしてくれるかなと思います。

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スタッフ:産駒は馬格もガッチリしているのでしょうか?

木實谷:そうですね。距離はどの馬もちょっとあった方が良さそうです。サンラザールをもっと早く使えたのですが、春の東京だったらダートの新馬は1400mしかないので、もう少し距離が欲しい印象がありました。

クリソベリル産駒はどの馬も持久力が高そうですし、特に地方の競馬場などでかなり走るのではないかなと思います。

スタッフ:今日天栄を見せていただいた上での質問になるのですが、結構工事しているところが多い印象を受けました。

木實谷:工事に関してはどちらかというと改良ですかね。修復改良と言うのかな。水はけが悪くなっているところを直したり、あとは単純に拡幅工事も行って、より安全にスタッフが乗れるようにしています。

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天栄も開場から14年が経って、馬の数も増えて、乗り手の数も増えているので、ちょっと狭くなってきてるんです。そういった部分を意図しての工事です。

厩舎地区の方は今月からエアコンも稼働することになっています。やはり避熱対策ですね。こちらに関しては更に進めていかないと、ちょっと厳しいかなと思っています。

スタッフ:人馬共に健康が大事ですね。

木實谷:一番大きな部分です。今は造成工事を行っていまして、一応来年の末には新たに100馬房が完成する予定です。今は収容頭数の拡大を目指しています。

スタッフ:それに伴ってコースも広げないといけませんね。

木實谷:そうですね。そして従業員の独身寮ももう一棟建てる予定です。

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スタッフ:天栄の規模がどんどん大きくなって、管理もまたより大変になっていきそうな…。

木實谷:そうなります。そういった意味でもやはり人材育成をより進めていかないといけないと思っています。天栄開場から14年、当初の厩舎長がまだ頑張ってくれている中で、やはり世代交代はどうしても必要になってきます。

スタッフ:今、厩舎長のお話が出ました。今日も各厩舎の厩舎長の皆さんにお話を伺ったのですが、皆さん馬ファーストで、各自それぞれが色々なことを考えられて育成されていると感じました。木實谷さんから具体的に何か指導、方針を示すことはあるのでしょうか?

木實谷:そうですね…。毎週天栄の馬は50頭ぐらい出走するのですが、ほとんどは負けるレースなんです。そこからしっかり課題を見つけて、次にどうしていくかを考えることが大事だと思います。

私はこちらに帰ってきた時に、大体厩舎長と一緒にレースを観るんです。次に向けてどうしようかということを私が言う前に、スタッフ、そして厩舎長たちにまず考えてもらいます。

分析し、次こうしていきたいですという意見が出た中で、よりいい方向に行けるようにリードしていく立場だと思っています。

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スタッフ:皆さんに考える力を養ってほしい、ということですね。

木實谷:それが今一番大きいところです。私も結構天栄を空ける時も多いですし、これだけの規模になるとみんなにしっかり、いい答えを導けるようになってほしいなと思います。

スタッフ:人と馬が共に育っているような場所を目指すということでしょうか?

木實谷:そうですね。そうなってほしいと思っています。

スタッフ:本日は様々な貴重なお話、本当にありがとうございました!

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