サンテミリオンは好仕上がりでGⅠ直行!
2010/10/8(金)
古賀慎明調教師
高:よろしくお願いします。以前オークスの前に取材をさせていただきましたけど、見事に同着で優勝されて。あのレースは凄かったですね。
古:ありがとうございます。そうやってみなさんから言われるように、G1初の1着同着ということでオークス史上に残るレースだと思います。また同着という結果だけでなく、最後の直線で叩き合いのマッチレースで、見応えもあって良いレースだったと思います。こういう成績を残せて本当に嬉しいと思いますし、当事者でありながら感動しました。
本当に………あ、確定が出るまでの間のことを思い出して胃が痛くなってきた(笑)。
高:アハハ(笑)!ウウーッていう感じですね。
古:スタンドで生で見ていたときには「勝った」と思ったんですけど、その後すぐに調教師席から下に降りるエレベーターに乗るときに、チラッとオーロラビジョンに映ったスロー映像を見て、逆に「やられた」と思ったんですよ。
高:そうなんですか。
古:また今のオーロラビジョンは性能が良いから、凄く鮮明にハッキリ見えるでしょう?あの見事なハイビジョンのおかげで「いや、ちょっと分が悪いぞ」と。
高:不安に。
古:だから結果が出るまでの間は「馬を信じてあげたい」という気持ちをもちろん持っていたんですけど、それは「勝った」という確信があったわけではなくて「馬が頑張ってくれたんだから何とか…」という願いのような感じで、あとはもう信じるしかないな、と。
正直なところ、キツいかなと思って待っていました。G1で写真判定になるレースが結構ありましたけど、ハナ差でも必ず差がついて、G1は同着にしないという風に言われていましたからね。
高:そうですよね。
古:でも、それにしては長いな、と。「待てよ、これはちょっと長過ぎるな」と思って、それから期待はしていましたけど、結果が出るまで待っている間は重かったですよ。
高:結果が出たときはどんなお気持ちでしたか?ホッとしたんじゃないですか?
古:普通だったらホッとするんでしょうけど、そういう感情では無かったですね。あのときの検量室前は、人もたくさんいて異様な雰囲気だったでしょう?僕は当事者ですけど、そういう異様な雰囲気に呑まれている感じでしたね。
高:確定した瞬間のどよめきも凄かったですもんね。
古:まさか同着という結果になるとは、ほとんどの人が想像していなかったでしょうし、みんなビックリしていた感じでしたよね。
高:これでオークス前のインタビューでおっしゃっていた「自分の管理するサンテミリオンで、種馬としての勲章をゼンノロブロイにプレゼントしたい気持ちがある」という思いが実現しましたね。
古:そうですね。嬉しいことですよ。思い入れのあったロブロイに気持ちが伝わって、それがサンテミリオンに伝わったのかな。
高:良いですね。そのオークス後の調整はどのようにされてきたか教えていただけますか?
古:オークスは雨の馬場コンディションと、タフな内容のレースの後だったので、ミホ分場と山元トレセンを経由して疲れを取ってから、北海道・千歳の社台ファームへ行きました。
秋のことを考えると、夏をどうやって過ごすかというのはいろいろなパターンがあると思いますけど、サンテミリオンは今年の正月にデビューして、そこからオークスまで勝ってくれたということを忘れちゃいけないなという気持ちがあったんです。
高:ものの半年くらいの間でG1まで上り詰めたんですよね。
古:そうですね。だから自分の生まれたところに行けば、リラックスしてオーバーホール出来るだろうし、成長を促したい気持ちもあるし、夏場を少しでも涼しいところで過ごさせてあげたいな、と思って北海道に返しました。凱旋という意味もありますしね。なかなかタフなレースだったので、激走の疲れを取るのに、ある程度の時間は必要でしたね。
高:それだけ頑張っていたんですね。
古:そうですね。それでもこちらの期待通り、無事に疲れも取れました。また、この馬は女の子にしてはカイバ食いが凄く良くて、しっかりしているんですよ。北海道に行っても良く食べてくれて、490キロを越えるくらいになりました。
高:えー!じゃあオークスから30キロ以上増えていますね!
古:もう、一回りも二回りも大きくなって。まさにこちらの思い通りに成長してくれたと思います。その姿を見て「北海道へ返して良かったな」と思いました。
高:北海道から戻ってきての調整はいかがですか?

古:今年は美浦が凄く暑かったじゃないですか。北海道で疲れを取ってから美浦に戻すにもタイミングが…。美浦は9月になっても暑かったですからね。
高:そうですよね。
古:昨日も昼にセミが鳴いていましたよ、ツクツクボウシが。
高:ええー!?じゃあスズムシとセミが共演しちゃいますね(笑)。
古:本当、そうですよ。それで、その暑さもあって、戻ってくるタイミングがちょっとギリギリになりました。千歳の社台ファームから宮城の山元トレセンでワンクッション置いて、9月11日に美浦へ戻って来たんですけどね。
高:なるほど。そして10月3日から長めの調教を始められていますね。
古:はい。ちょっと時間がかかりましたけど、とにかく馬の体調に合わせて調整してきたら、こうやって直行というローテーションになりました。「何とかこのトライアルに間に合わせないといけない」といってスケジュールを決めていたわけではなく、さっき話したように、今年デビューした馬だということを忘れてはいけないから、馬の体調、成長に合わせて進めていこうという気持ちでいるんです。その結果がこうして秋華賞へ直行という形になったということですね。
高:トライアルを使わないという選択も勇気がいりますよね?
古:そう思うでしょう?でも僕の厩舎スタイルとして、まずは「馬ありき」で、ローテーションに合わせるのではなく馬に合わせただけのことなので、いつも通り、普通のことですよ。特にサンテミリオンの場合、若い3歳牝馬ということもありますからね。
高:なるほど。
古:定石としてはトライアルレースを叩いてという形があるので、G1にぶっつけって、よっぽどのアクシデントが無い限りはないでしょうから、普通だったら大変なんでしょうけどね。でも厩舎のスタイルとして、レースありきではなく、馬ありきですから。
高:サンテミリオンの状態に合わせて調整を進められているんですね。ここ最近の動きに関してはいかがですか?
古:今日(10/6・水)は、ウッドチップで5ハロンから併せ馬で追い切りをしましたけど、しっかりした動きでしたし、息の入りも良かったです。G1直行ですけど、何とかレースに向けて順調に調整出来ている形です。……「G1直行は大変ですよ」って思っているでしょ?目がそう言っているよ(笑)。
高:いえいえ(笑)。
古:まあ、追い切り本数が足りないんじゃないか?と、誰でも思うと思いますよ。でもサンテミリオンを見ているのは我々ですから。今は右肩上がりの状態で来ているので、レースのときにはもっともっと良い状態に持っていけると思います。
高:今までのレース前の調整はウッドチップで併せ馬という形ですけど、来週も同じような形になるんでしょうか?
古:そうですね。よっぽど天気がどうこうということが無ければ、調教コースを変えることは無いと思います。
高:古賀先生がサンテミリオンの調子の良し悪しを判断するポイントがあれば教えてください。

古:サンテミリオンの追い切りのフットワークを見て「走りそうだな」と感じたわけですし、そういう意味では、追い切りのフットワークを見て良し悪しを判断するところはありますね。あとは息の入りなどチェックするポイントはいろいろありますけど、仕草がどうこうというよりは走り方でしょうね。
高:追い切りでのフットワークの違いって、毎回感じるものですか?
古:うーん…、いや、やっぱりフットワークだけでは分からないですね。と言うのも、追い切りのときは、サンテに限らずウチの厩舎の馬はみんな良く走りますからね。追い切りを出来る状態に持っていっていること自体が、調子の良し悪しの問題をクリアしているんです。「状態がイマイチかな?」と感じるときには、追い切りでそこまで負荷はかけませんから。
高:なるほど。
古:そうです。早めにそのジャッジをして抑えるところは抑えて。体を痛めてしまうと時間がかかりますけど、早期発見することによって短い治療期間で済みますからね。調整を抑えることで、目先のレースをひとつパスすることになるかもしれませんけど、長い目で見れば競走馬としての生活を長く送れることに繋がるんじゃないかと思います。だから、順調に追い切りが出来れば順調なんだな、と思っていただければ。
高:本当に「馬ありき」の調整方法なんですね。ちなみにG1を勝ったことで、先生ご自身の中で変化はありましたか?
古:いや、特にそんなに大きくは変わっていないんじゃないですかね。サンテミリオンの使い方も、オークスを勝っても「馬ありき」を通していますし、本人としては変わっていないと思いますけどね。ただ、自己紹介のときには、G1トレーナーだという形で…
高:アハハ(笑)!先生、真面目な顔とトーンでサラッとボケますね(笑)。
古:まあそれは冗談として、嬉しいことはありましたよ(笑)。今年の夏に函館でダグラス・ホワイト騎手と会ったんです。ダグラスが初めて藤澤厩舎にきたときに僕が函館競馬場を案内して、そのとき以来に会ったんですけど、調教師になったよっていう話と、オークストレーナーだぜっていうのを言えるのが嬉しかったですね。
高:おー!それは良い話ですね。
古:まあ、流暢な英語で喋ったんですけどね、ダグラスとは。
高:アハハ(笑)!流暢な英語でって、わざわざ強調されて(笑)。
古:日本の関係者の方たちはオークスの結果を知っているので、僕から言う機会が無いじゃないですか。さっきの冗談みたいに「G1トレーナーだ」なんて自己紹介をすることも無いわけですし。だから先週のスプリンターズステークスで来ていたデュプレシス騎手と喋ったときもね。
高:得意の英語を駆使して、オークストレーナーだよ、と(笑)。
古:外国人を見つけると、そうやって話して。
高:アハハ(笑)!
古:日本人にそんなこと話したら「コイツ、何考えてるんだ?」って思われちゃうからね(笑)。いけない、脱線しましたね。話をサンテに戻しましょう。
高:はい(笑)。では、今回初めての京都コースで、長距離輸送も初めてになりますがそれに関してはいかがですか?
古:輸送はこれから先の競走生活の中でこなしていってもらわないといけない課題のひとつですからね。あ、輸送の問題って、栗東に滞在していないけど大丈夫ですか?っていうことを聞きたいわけですか(笑)。
高:先生、深読みを(笑)。でも、美浦で調整をされることに関しては、よく質問を受けたんじゃないですか?
古:そうですね。9月の頭に美浦に帰ってきて、馴染んでいる場所でしっかり調教をしたいなという考えもありましたから。輸送に関しては、サンテの精神的なタフさを信じたいです。
高:環境の変化に敏感ということはありますか?
古:うーん、どんな状況でもカイ食いが良いですからね…。生き物ですし、3歳の牝馬なので、そのときになってみないと分からないですけど、ひとつの指標としてカイバ食いの良さを考えると、環境の変化も大丈夫だと思います。
高:カイ食いの良さの他に、仕草、立ち振る舞いに特徴などありますか?
古:普段は穏やかな馬ですよね。怒った顔を見たことがないです。レースのときはグッと歯を食いしばる表情を見せますけど。
高:闘争心が凄いんですね。
古:やっぱりそうでないとG1は勝てないし、走る馬っていうのは、そういうピリッとしたキツい性格の馬がほとんどだと思います。でもサンテは厩舎では凄く穏やかですから、メチャクチャ可愛いですよ。
高:頑張って欲しいですね。それでは最後にレースに向けての抱負をお願いします。
古:春は良いレースの立役者になれたので、同じように秋も良いレースの立役者になって欲しいと思います。他の馬と違って直行というローテーションで、オークス以来のレースになりますけど、しっかり良い状態で持っていきたいと思っていますし、馬もそれに応えてくれると信じています。
高:応援しています。お忙しいなか、ありがとうございました。
古:ありがとうございました。
~10/8(金)追加取材~
-:先生、ジョッキーの予定に関してはいかがですか?
古:いろいろ考えた結果、ノリちゃん(横山典弘騎手)がレースに間に合わないこともありますし、候補としては藤岡佑介騎手を考えています。これまでのレース振りを見ていただいても分かるように、サンテはクセも無くて競馬が上手な馬なので、テン乗りでも問題ないと思います。もうノリちゃんも退院したようですし、1日も早く元気になって、また一緒に仕事をしたいですね。
-:ありがとうございました。
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■最近の主な重賞勝利 |
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2006年の開業年から管理馬アサヒライジングで牝馬クラシック戦線を賑わす。開業翌年の07年から4年連続で重賞制覇を継続中。 |
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■出演番組
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2006年から2008年までの2年間、JRA「ターフトピックス」美浦担当リポーターを務める。明るい笑顔と元気なキャラクターでトレセン関係者の人気も高い。2009年より、競馬ラボでインタビュアーとして活動をスタート。いじられやすいキャラを生かして、関係者の本音を引き出す。 |








