強い3歳世代の勢いを見せたいエイシンアポロン
2010/10/24(日)

岡田稲男調教師
三歳馬同士の決着となった毎日王冠で勝ったアリゼオとハナ差の好勝負を演じたエイシンアポロン。8番人気という低評価を覆すレース内容に驚いたファンも多かった事だろう。
GⅠ馬ショウワモダン、三歳でもトップクラスの素質馬ペルーサを破っての2着だけに天皇賞(秋)でも楽しみな一頭になった。今回はエイシンアポロンを管理する岡田稲男調教師に天皇賞への意気込みを聞いた。
岡:アポロンのオーナーである平井会長の意向もあって今回の天皇賞挑戦になりました。毎日王冠を使った後の状態も良く、馬は元気いっぱいでしたので迷わず承諾しました。会長世代にとって天皇賞出走というのは特別な思いがあるんです。その熱い思いに応えるようしっかりと準備を進めているところです。
-:先生がアポロンを預かるようになったきっかけを教えて下さい。
岡:アポロンを預かると決まった時点では馬はまだ日本に着いていませんでしたからね。日本に来て初めて牧場で見たときは・・・派手な顔の馬だな、と思いましたよ(笑)。エイシンの平井オーナーは毎年馬を預けて下さいます。結果も出ていますので、そういう積み重ねがアポロンとの出会いにつながったんだと思っています。
-:2歳時のデビュー前の状況はどんな印象でしたか?
岡:もちろん牧場も期待していた一頭だったので二歳の早い時期に助手を連れて牧場に行きました。そこで感触を確かめたんですが、その時点ではまだ馬自身に走る気がないというか・・・そこまで走るイメージはなかった。それで栗東に入厩させて馬の仕上がりを見ながら調教を進めていったんです。なかなか坂路の時計が詰まらない状況だったので、とりあえず一回使おうと思って出走した新馬戦だったので正直、半信半疑でした。
-:時計が詰まらない状況で使った新馬戦をご覧になっての印象はどうでしたか?
岡:前半はついて行けず、どうかなと思いました。しかし、ペースが落ち着いたところである程度まで差を詰めましたから直線でどれだけ伸びるかな?と思った。すると、4コーナーを曲がり切れず外にふくらんでしまったんです。でもそこからの伸びは調教からは想像できない脚だったので次は面白いかもしれないと思いました。意外に実戦タイプというか調教で動かなかったのは太かったのもあるんでしょうね。
-:それで一気に期待がふくらんだ2戦目で初勝利となったわけですが。
岡:二戦目の未勝利戦では体重こそ変わりなかったものの馬体が締まって新馬戦よりも良い状態で出走できました。初戦とは行きっぷりから違っていて予想外に二番手からの競馬になりました。それで掛ってしまってひやひやしましたが途中で先頭に立った。そこからはコーナーも上手く回って後続を突き離す圧勝でしたからホッとしましたよ。

-:その後デイリー杯2着、京王杯2歳Sで初の重賞制覇、続く朝日杯フューチュリティーSでもローズキングダムの2着と着実に力をつけて行ったわけですが当初の動きからここまで変わる馬も珍しいんじゃないでしょうか?
岡:まぁ珍しいというか、いるにはいるんですよ。未勝利が精一杯かと思っていた馬が500万で勝って1000万も好走したり。ただ、アポロンのようにGⅠに使えるような馬は少ない。元々持っていた素質があったのに馬が走り方を知らなかっただけなんです。
-:3歳になってからの初戦は弥生賞でヴィクトワールピサの2着でした。この辺りから春のクラシックが見えて来たんですが期待した皐月賞、NHKマイルCは予想外の結果になってしまいました。
岡:目にみえない疲れでしょうか。朝日杯でも目一杯走りましたし、弥生賞も馬場の悪い中頑張ったんで疲労はあったと思います。春の時点では馬が精神的に幼く、まだ成長しきっていなかったんです。
-:夏の休養は岡山のエイシン牧場ですごしたわけですが、熱い夏は順調に越せましたか?
岡:エイシン牧場の環境がすごく静かな所にあるのでトレセンよりずっとリラックスできました。早く走りたいって気持ちが馬から感じとれましたので連れて帰るのが楽しみだったんです。
-:それが毎日王冠の好走につながっていたんですね。休み明けでいきなり走って疲れはないですか?
岡:当初はマイルCSに向かうローテーションを考えていましたが馬が元気一杯なんで天皇賞にも使えるかな?っていうくらいの状態だったんです。それで平井会長とも相談して今回の天皇賞挑戦になったわけです。毎日王冠より相手も骨っぽくなりますから強い古馬に胸を借りるつもりで向かいます。春の経験を生かしてアポロンが調教で燃えすぎないように調整するつもりです。レースまで走りたい気持ちをため込んで本番で爆発させれたらいいですね。この三歳世代は世間での評価も高いので天皇賞を楽しみにしてください。
|
||
■重賞勝利
|
||
約20年以上、調教助手などの下積みを経て、03年に厩舎を開業。GⅠの大舞台では、昨年の朝日杯FSで2着が最高の実績だが、ハイレベルと称される現3歳世代でトップクラスの実績を残し続けてきたエイシンアポロンで悲願のGⅠ制覇に挑む。 |
