関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

日高大輔調教助手&蛯名幸作厩務員

日高大輔調教助手&蛯名幸作厩務員

本年の阪神ジュベナイルフィリーズは、美浦から4頭が栗東入りしている。話題の超良血馬・ダンスファンタジアをはじめ、新潟2歳S勝ちのマイネイサベル、ライステラス、ホエールキャプチャと、どの馬も上位争いを期待させる馬たちばかりだ。
今回はこの関東馬の中からホエールキャプチャにスポットをあてる。同馬の調教を担当する若き調教助手・日高大輔氏と、ベテラン厩務員・蛯名幸作氏にうかがった。


-:では、ホエールキャプチャのデビュー前の感想からお願いします。

日:函館に行く前、5月くらいの早い段階で美浦に入ってきたのですが、厩務員の蛯名さんが検疫馬房に来たホエールキャプチャを見てピンと来たらしいんですよ。その時から蛯名さんだけは、『この馬は良い』って言っていました。

-:実際、美浦トレセンに入って、調教に乗られた印象はどんな感触でしたか?

日:2歳にしてシッカリした馬でバランスが良いな、という感じでした。普段は他の馬に動じることもなく、どっしりかまえている馬です。何かの拍子で急にカーッとする事もありますが、何がきっかけで暴れたのかわからない(笑)。そうかと思えば他の馬が暴れていてもシラーッとしてたり。

-:馬体を見てもレースで見るほどの瞬発力が秘めているようには感じないのですが、乗り味は違うものでしょうか?

日:たしかにそれほど見栄えがするタイプではないのですが、エンジンがかかってからの脚は凄いですよ。それに僕はまだ27歳ですし、馬乗りとしてのキャリアは浅いのですが、僕にでも乗れるような馬なのですよ。競走馬の中ではかなり乗りやすい部類だと思います。

-:というと、過剰に引っ掛かったり、止まらなかったりはしないタイプなのでしょうね。

日:掛かるところがないですし、『行け』って言えば行くし、本当に思う通りに乗れるので、(田中清隆)先生も僕を乗せているのだと思います。

-:そういうタイプですと、調教する場所が美浦から栗東に変わっても苦労することはなさそうですね。

日:馬は平気みたいですが、人間がモノ見しちゃいましたよ(笑)。見る物全部が美浦と違うな~って。



-:美浦と栗東ではそこまで違いますか?

日:違いますよ。例えば、美浦の地下馬道は一方通行で向こうから馬が歩いてくる事はないんです。壁で仕切られていますからね。栗東では調教に向かう馬と帰って行く馬がすれ違う。精神的にタフな環境だと思いました。それに栗東の坂路は噂通りの施設ですね。美浦の坂路は入ってしばらくは平坦で、ラストにちょっと登る程度なのですが、栗東は入っていきなり坂で、勾配率も美浦よりキツイ。調べたら美浦は高低差17mで、栗東は32mもあるのですから、馬にかかる負荷は全然違いますよ。

-:では、そのキツイ坂路でホエールキャプチャを乗った感想はどうでしたか?

日:まず美浦では1日に坂路2本乗っていたところを1本にして馬が疲れないようにしました。やはり馬もキツかったようで、最初『ハァハァ』言って走っていましたが、トモのシッカリした馬なので意外にこなしています。それに厩務員の蛯名さんが担当する馬は疲れそうなメニューを組んでも馬が硬くならないんです。どうやっているかはわかりませんが名物厩務員さんなんで秘策があるんでしょうね(笑)。うちの厩舎の若いスタッフも何かあれば蛯名さんに相談するくらいですから。

-:ということは困ったことはないと。

日:栗東だけではなく美浦にいた時からなのですが、ホエールキャプチャは調教で走る前におしっこをするんですよ(笑)。それも毎日です。こっちでも、逍遥馬道から坂路のスタート地点に行く下り坂で毎日するので、他の厩舎の方に『またやってんのか!』ってチャカされています。馬が多い時間帯にちょろっとするのでなく、長いので迷惑だと思うんです。でもおしっこをして、覚悟を決めて調教に向かっているみたいなので、その間はただ待つしかないじゃないですか。

-:その、覚悟を決めて走った1週前の追い切りはどうでしたか?

日:池添騎手に乗ってもらいました。動きは4F52.9-12.0で池添騎手も『エンジンのかかりが遅いけど、行きだすと良いね。もう1回来週も乗るよ』と言ってくれました。元々、1週前の追い切りしか乗る予定はなかったのですが、来週も乗ってくれる。これって期待してくれている証拠ですかねぇ。

-:最終追い切りは、どの程度の時計になりそうですか?

日:あまり加減せず51秒台くらいを出すと思います。阪神まで(輸送が)近いですから、ビッシリやる予定です。

-:いろいろありがとうございました。続いて担当の蛯名さんに伺います。美浦では名物厩務員という蛯名さんですが、ホエールキャプチャを初めて見た時に何か感じるモノがあったとか?

蛯:な~んって言うんだろ、走る馬ってやっぱり何か感じるんだよね。そんな馬はなかなかいないし、過去にそう感じたのはグルメフロンティア(98年フェブラリーS・中山金杯勝ちなど)だけだから。トーホウシデン(ダービー④着、菊花賞②着、中山金杯勝ちなど)やタイキリオン(02年ニュージーランドT勝ち)も担当したけれど、そこまで感じなかったんだよね。

検疫に入った時にこの仔と会って『これは走るぞ』って一人で言っていたんだよね。何でそう感じたのかは俺にもわかんないけれど。だけど函館のデビュー前に横山典騎手に乗ってもらった事があって、普段なら『走らない!』って、冗談言うような男が『これは走るから大事にしたほうがいい』って言ってくれて。やっぱり走るのかな~ってね。


-:ホエールキャプチャは新馬戦の後、中1週で未勝利戦を勝っています。この中1週とは、馬には厳しいローテーションだったのではないでしょうか?

蛯:いや~この頃が一番苦労したよ。だって新馬使った後ソエが痛くなって、ずっと冷やしながらなんとか未勝利を勝てたんだよ。この馬は調教に行くとグッと気持ちが乗ってくるから、少しくらい痛くても歩様が悪くなったりしない。だけど触ると痛がる。朝昼関係なくアイスノンや粘土で冷やして冷やして。

普通、函館で未勝利勝ったら函館2歳S行こう!ってなるでしょう?でも横山典騎手が勝ってすぐ『勝ったけど今日のキャンターは良くなかったよ。思ったほど伸びなかったし、ソエが痛いんだな。2歳Sはあきらめて一回休ませた方が良いよ』って馬主さんにその場で言ってくれたんだよ。あの後3ヶ月休めたのが大きかったね。


-:休養から帰ってきて使った芙蓉Sでは、まさかの逃げ切りでした。

蛯:勝ったことより逃げた事が先々にどうでるかが心配だった。正直、次のレースから引っ掛かって行くようにならないかな?ってね。悪い事教わったんじゃないかって心配が先に来た。それに関西のオルフェーヴルあたりと、同じ位置からどれくらい走れるか見たかったっていうのもあったんだよ。僕はキレ負けするとは思ってなかったし。



-:その心配をよそに、ファンタジーSでは新馬戦に戻ったようなゲートの出方でした。

蛯:ね~(笑)。『勝てるんじゃないか?』って、思って連れていったから、レース途中で『今日はダメだな!』って、諦めかけていたら、最後は凄い脚で来てくれて。まぁゲートはあんなものなのだろうね。速く出る気がないっていうか、そこは期待していないから良いけどね。

-:その後は美浦には帰らず栗東に入ったわけですね。

蛯:驚いたことにファンタジーSを使ったとは思えないくらい馬が元気だった。一流ジョッキーに乗ってもらった後、いつも感じることなんだけど馬に疲れが残らないんだよ。さすがは武豊だって思ったね。それにこの厳しい不況の時代に1ヶ月も出張させてくれた先生には感謝しているよ。

まだ若い日高(助手)は馬に優しいんだ。ホエールキャプチャは行儀の悪いことをすることもある。そんな時叱りつけてしまうと馬はますます反抗してしまう。その点、日高は馬を待ってやる優しさがある。だから先生に『栗東に行ってくれ』って言われた時に、『日高が来るなら行くよ』って、お願いしたんだ。馬は何十年やってもわからない。馬をどうにかしようなんて思っていたら、おかしくなっちゃうんだよ。人間から馬に近づく気持ちがないとダメ。


-:27歳の若い助手と、定年間近のベテラン厩務員の子弟コンビが仕上げるホエールキャプチャは楽しみですね。

蛯:昔さぁ、栗東トレセンが出来たばっかりの頃、もう40年になるかな。その時ここに来て今回は2度目の出張なんだよ。あの時は桜花賞にタマミって馬を連れて来て勝ったんだ。縁起の良い栗東で、ホエールキャプチャをきっちり仕上げるから楽しみにしていてよ!




【日高 大輔 調教助手】Hidaka Daisuke

1983年生まれ、調教助手歴は未だ4年目ながらも、ホエールキャプチャの栗東滞在に同伴。 競馬ラボでは、GⅠ特集内の「関係者に聞きました」でも度々取材に協力して頂いていたが、オリジナルインタビューは初登場。



【蛯名 幸作 厩務員】Ebina Kousaku

インタビュー内でも話題に挙がったタマミ(70年の桜花賞など、重賞5勝)をはじめ、グルメフロンティア(98年に中山金杯、フェブラリーSと連勝)、トーホウシデン(ダービー④着、菊花賞②着、中山金杯勝ちなど)やタイキリオン(02年ニュージーランドT勝ち)を担当。 競馬界に身を置いて、40年以上ものキャリアを持つベテラン厩務員。