スプリント路線の主役を目指すジョーカプチーノ
2011/1/26(水)

中竹和也調教師
-:まずは、中竹先生とジョーカプチーノの出合いから振り返って頂けますか?
中竹和也調教師(以下、中):けっこう昔の話になるよ(笑)。今から13年くらい前、僕が調教師試験を受ける前に研修でアイルランドに行ったんですよ。その時に、生産牧場・ハッピーネモファームの根本さんと意気投合しました。当時は根本さんも研修中でした。
その後僕は念願かなって調教師になり、根本さんとのおつきあいも続いていました。そんな時、根本さんから電話があって「先生にやってもらいたい馬がいるんです」と。聞けば、根本さんが開業して初めて産まれた馬だと言う。すぐ見に行きましたよ。その馬こそ、ジョーカプチーノなんです。根本さんの記念すべき1頭目の生産馬だし、馬ももちろん良かった。喜んで引き受けました。
-:先生がジョーカプチーノに初めて会った時の印象を詳しく聞かせてもらえますか?
中:マンハッタンカフェのイメージとは違い、がっちりとした印象でしたよ。血統からサンデー系のスラッとした馬体を想像していたのですが、母のジョープシケの特徴が出た体に見えました。ただ飛節(写真)の深いところにマンハッタンらしさを感じました。初仔にしてはガッチリ出たので体つきに関しては言う事なしでした。

-:その後、順調に育成が進んで入厩前に変わってきたところはありましたか?
中:育成では調教を休むようなトラブルもなく本当に順調でした。それで2歳の4月か5月頃に一度、僕自身がカプチーノに跨ってみたんです。そうしたらトモに力がなく、まだ前輪駆動といった雰囲気でした。この頃から初めはダートで使って、トモの成長を待とうと思っていました。

-:そして、新馬戦では1番人気に推されるも2着でしたね。
中:まず函館に入厩させて、仕上げる前にゲート試験を受け、すぐにパスしました。怖がりな面もなく順調に新馬に送り出せたんです。その新馬戦を走った後にソエを痛がったのですが、次の一戦までは我慢できるだろうと思って、2戦目に向けて調整しました。次を勝って休ませようと考えたんです。
しかし、レース当日に装鞍所で体を見たら、筋肉が落ちてゲッソリしていて…、体重も-14㎏でした。この判断は間違いだった、と悔みました。結果4着と負けてしまい、馬には申し訳なかったと思います。その後3カ月の休養を挟み、阪神のダート1400mで復帰しました。このレース後、デムーロ騎手から「芝を使ったらどうか?」と言われましたし、休んだおかげでトモがしっかりしてきたことを確信しました。
-:それからダートの未勝利を勝ち、芝路線へ向かったわけですが、芝の走りはどうでしたか?
中:芝初戦となったクロッカスSでは掛ってしまい7着。カプチーノの良さを生かすことができませんでした。それで小倉の芝1200m萌黄賞では、藤岡康太騎手に「掛るから馬が行きたがるなら行かせてもいいよ」と指示しました。 かなりのペースで逃げていたのに手応えが楽で、直線も他の馬を突き離す内容でしたから。芝馬の中に入っても通用するスピードを持っていると改めて感じた一戦でした。
-:ファルコンSでは萌黄賞とは一転して差す内容。しかも外々を回らされ、内から差してきたカツヨトワイニングの追撃も振り切る競馬でしたね。
中:ファルコンSは出負け気味に出てしまいましたが、クロッカスSほどは掛りませんでしたから、最後まで頑張れたんだと思います。入厩前の話にもありましたが、別に他の馬を怖がって逃げているわけではないので、差す形になっても折り合いさえつけば問題ないんです。
-:NHKマイルCの前に同じ距離のニュージーランドT(中山芝1600m)を使いました。1200m→1600mへ2F伸びても対応できる感触はありましたか?
中:この時は松岡騎手だったんですが「行くと思うから好きなように走らせて欲しい」と折り合い面だけ指示しました。3コーナーあたりで少し頭を上げるシーンがありましたが見た目よりマシだったんです。「これなら1600mでも我慢できるな!」と思いましたよ。
-:NHKマイルC(GⅠ)では逃げたゲットフルマークスの二番手から抜け出しての勝利。あのレースを振り返っていただけますか?
中:マイルを経験したといっても、まだまだ過信はできないと思っていました。このレースのポイントは前半2Fに尽きますよ。藤岡康太騎手が本当に上手く乗ってくれました。
掛るカプチーノの手綱を一切触らず、すんなり二番手におさまってくれた。掛るタイプの馬に乗って手綱を触らないように乗ろうと思ってもなかなかできる事ではないんです。手綱を持つ手にスッと力が入るだけで馬には伝わってしまうんですよ。
-:ダービー後に休養に入ったわけですが、1年5カ月という長期間になった経緯をお聞かせください。
中:2歳戦から数も使いましたしダービーの馬場もこたえました。その疲れを取るのに半年かかりました。その後も爪が悪くなったりで、去年の高松宮記念に向けて復帰しましたが、調 教を進める段階で深管を痛めてしまい、再度休養に入ったので、これだけ時間がかかってしまいました。

-:復帰戦のスワンSでは体重が+38㎏と大幅増でした。
中:体重的にはたしかに増えていましたが、見た目には全然太くなかったんです。休養前にくらべ、よりスプリンター色が強くなった体で、自信を持って出走する事ができました。 それにしてもスワンSの競馬は凄かった。勝ち馬に早目につかまってしまいどうなるかと思いましたが、そこからカプチーノは根性で頑張ってくれた。あれには驚きました。「なんちゅう馬や!」ってね(笑)。
-:その後はマイルCSを経て、ラピスラズリSを完勝しましたね。
中:スワンSから中2週でGⅠのマイルCSを使い、当初ラピスラズリSは使う予定ではなかったんです。マイルCSの後、カプチーノの状態を見てみると予想以上に疲れが残っていなかったので、急遽ラピスラズリSへ向かった、というわけなんです。レース後、吉田豊騎手も「凄い…」って驚いていましたよ。
-:今回出走するシルクロードSへ向けて、現在のカプチーノの状態を教えて下さい。
中:正月の変則日程などもありましたから、慎重に調整しています。今のところテンションも上がっていませんので、カプチーノ本来の走りをお見せできると思います。 1週前の動き(19日、栗東坂路で54.2-E-E-12.9)も文句なしだったので、自信を持って出走させられますよ。今季の最大目標は高松宮記念ですから、そこに向けて仕上げて行きたいですね。
-:シルクロードSはハンデ戦ですが不安点などありますか?
中:斤量はおそらく58㎏だと思っています(58kgにハンデ決定)。58㎏はスワンSと同じなので気にしていません。軽ハンデの馬がどうこうよりもカプチーノが気分良く走れる方に気を使っています。今回も行きたいように行かせますので、応援してください。
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■重賞勝利
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騎手として障害重賞4勝を含む、2469戦176勝。99年に厩舎を開業。頻繁に自らアメリカに赴いて若駒を買い付けに行く事も多く、日本ではお目にかかれないような個性的な血統の管理馬が多い事でも知られる。 |
