【祝】JRA通算100勝を達成!
2011/1/28(金)
斎藤誠調教師
高:よろしくお願いします。100勝、おめでとうございます。
斎:ありがとうございます。
高:お気持ちはいかがですか?
斎:この世界に縁故もなく、知り合いの馬主さんもいないなか、周りの皆さんの力を借りて達成出来た結果なので、本当、皆さんに感謝ですね。
高:厩舎スタッフの皆さんも喜んでいらっしゃったんじゃないですか?
斎:そうですね。でも、みんな100勝は通過点という感じで、先々に向けてポジティブに考えてくれていますよ。
高:みんなが浮かれて、先生が引き締めないといけないなんてこともあるのかと思っていましたけど(笑)。
斎:全然そんなことは無かったですね(笑)。淡々と、いつも通りの感じでした。1つ1つの積み重ねが100個集まったという記録ですからね。その代わり、1つ勝ったときはみんなで喜んでいますよ。
高:常に淡々としているわけではなく。
斎:そうですね。勝つのが当たり前、ということではなくて、勝ったときにはみんなで喜んでいます。やっぱり1つ勝つのは大変ですから。
高:そうですね。ちなみに、去年は過去最高の28勝をあげて、関東の優秀調教師賞と優秀厩舎スタッフ賞も受賞されましたね。
斎:これもみんなに感謝ですね。
高:2010年は、331回出走されていますね。これ、先生の厩舎の過去の成績をプリントしたんですけど。
斎:あー、JRAのホームページは凄いですよね。僕たちの情報がこうやって全部公開されてしまいますから(笑)。
高:収入まで分かっちゃって(笑)。調教師さんの収入は、賞金の10パーセントですよね?
斎:そうですけど、経費がかかりますからね。賞金の10パーセントは年商という考え方になるんじゃないですかね。そこから出張費などの諸経費がたくさん出ていますので。
高:なるほど。この成績を見ると、年を追うごとに出走回数が増えていますね。
斎:出走回数はこだわっていますよ。数を使ってあげる方が、馬にとって幸せじゃないかなと思っていますし、厩舎としても、レースを使っている方が楽しいですからね。
高:多くのレースに出走させるには、その準備も大変ですよね。
斎:その辺は、馬をレースに使える状態にしてくれる厩舎スタッフや、周りの牧場の方たちとも上手く連携は取れているかな、と思います。牧場に要望を出すときも、トレセンと牧場とのハード面の違いを踏まえて、ソフト面で「この馬をこうして欲しい」とお願いしています。
高:その連携が上手くいかないと、いろいろと問題も生じて。
斎:やっぱりコミュニケーションは大事ですよね。馬主さん、育成牧場ともしっかりコミュニケーションを取って。厩舎の中では、スタッフ間で情報共有をしなさいと言っています。「ほうれんそう」ですか。一般の会社でも同じだと思いますけど、報告、連絡、相談はしっかりやろうと言っています。

高:なるほど。
斎:みんな、自分の見方は持っていると思いますけど、他の人の見方もあるじゃないですか。1頭の馬に対して、みんなの目で見ていこうと言っています。
高:担当の馬だけやっていれば良い、というわけではなく。
斎:そうですね。だから、ベテランの厩務員さんに、担当馬以外でも脚元を見てもらったり、若い厩務員が「どうしたら良いですか?」とベテラン厩務員に聞いたり。昔だったら、そういう技術は教えてもらえませんでしたけど、今ならチームになっているので教えてくれますからね。
高:そういう世代を超えたコミュニケーションも。
斎:はい。昔は「技術は自分で盗め」という感じでしたけど、そういうコミュニケーションによって、技術の伝承にもなっているので、みんなが良い形で成長出来ていると思います。
高:ホワイドボードには、管理馬の放牧状況も載っていますね。
斎:これも「もうすぐこの馬が帰って来るな」とか、情報共有が出来ますからね。馬が放牧から帰ってきたら、今までと担当者が変わることもありますけど、その馬のクセとか気を付ける点を共有すれば、引継ぎもスムーズに行きますから。そういう情報が共有されていないと労災にも繋がりますからね。
高:情報共有することによって、ケガを事前に防げるケースもあるんですね。
斎:そうですね。「みんなケガなく、12月に笑って1年を終われるようにしましょう」というのが、1年の始まりの目標なので。やっぱり馬ですから突然のアクシデントはありますけれども、それは上手く対処して、未然に防げる事故、ケガは出来ることをきちんとやろう、と言っています。
高:先生の厩舎では、定期的にスタッフ全員が集まってミーティングを行ったりするんですか?
斎:いえ、そういうのはありません。何かを決めないといけないときは、みんなで集まりますけど、うちの厩舎では、みんなが集まってミーティングするということは無いですね。でも、それで良いと思うんですよ。「さあ、やりますよ」って集まっても堅苦しいし、そういうミーティングじゃ、意見も出ませんしね。そんな堅苦しい厩舎ではありませんし、僕も堅苦しいのは好きじゃないので(笑)。
高:自然発生的な意見交換が行われているんですね。本当に頼もしいスタッフさんたちですね。
斎:あと、頑張らないといけないのは、僕の仕入れだけですね。皆さんに好かれないと(笑)。
高:馬主さんから「斎藤先生のところに預けちゃおうかな」と(笑)。
斎:そうですね。この前スタッフのみんなにも話しましたけど、開業から5年までは、若いとか新人という理由で馬を預けてもらえるけども、10年経つと中堅になって、厳しくなってくるじゃないですか。本当に、10年経つと馬が集まりにくくなりますから。新しい馬主さんも増えにくい、厳しい時代ですし、開業6年目からの、この5年がかなり大事なんじゃないかなと思います。
高:なるほど。
斎:まあ、そういうことをスタッフみんなに話しましたけど、ウチの厩舎は向上心のある子たちばかりなので、あまり心配はしていません。一人ひとりが凄く成長しているし、個人としても、チームとしても、厩舎としても強くなっていると思います。
高:そうなんですね。さて、2011年になって、2010年に積み重ねた28勝という数字も0に戻って、新たなスタートになりましたけど…。
斎:だから1月は怖いですよね。もう今年は2つ勝たせてもらえて、両目が開いたからまだ良いですけど、例年スロースターターで、3月になっても1勝という年もありますからね。
高:じゃあ、最初の頃は雑誌に載っている調教師リーディングも読まないようにしたり(笑)。
斎:年が明けて最初の頃は、雑誌を買いません(笑)。
高:年が明けてなかなか勝てないと、焦りが出たり…。
斎:いえ、調教師としてやってきて、段々気付いてきましたよ。「1年を通して同じ結果になるんだな」と(笑)。馬が引退するまでに成績が上がっていけばいいかな、というのと同じように、厩舎の成績も12月までに上がっていけばいいかな、と。元々リーディングを狙えるような厩舎じゃないし、一発狙いの厩舎なんで(笑)。

高:アハハ(笑)。
斎:みんなが楽しくやれていれば、馬もハッピーだと思っていますから。
高:先生は、楽しくやれることを重視されていますね。
斎:だって仕事って毎日やることですからね。人間がギスギスしていたら、馬だって生きていますから、分かりますよ。長期スパンで考えれば、働きやすい環境の方が良いと思っています。
高:そういう明るい雰囲気があるので、私たちも、斎藤誠厩舎には脚を運びやすい印象があります。先生の厩舎には、ファンの方が厩舎見学に来ていましたよね?
斎:そうですね。JRAでやっているファンの厩舎見学も進んで引き受けています。ウチの厩舎に来てもらって、昔の閉鎖的な怖い厩舎のイメージが無くなってくれればなって。
高:参加者の方に厩舎オリジナルの帽子をプレゼントされていましたよね?
斎:喜んでもらえるかな、と思って奮発しました(笑)。ああいう活動でファンの底辺が広がっていけばいいな、と思っています。
高:分かりました。では最後に先生、今年の目標などありましたら教えてください。
斎:そうですね、数値的な目標は立てませんけれども、今年も楽しく、笑って1年の終わりを迎えられるようにスタッフともども頑張りたいと思います。
高:応援しています。今日はありがとうございました。
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■重賞勝利 |
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2006年開業の翌年に早くもサンツェッペリン号をクラシック戦線に送り込むなど、開業しても間もなく頭角をあらわす。 2010年には28勝をあげ、関東の優秀調教師賞・優秀厩舎スタッフ賞を受賞し、次世代を担う存在として注目を浴びる。 11年1月22日、中山5Rをマイネクイーンで制し、厩舎通算100勝を達成した。 |
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■出演番組
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2006年から2008年までの2年間、JRA「ターフトピックス」美浦担当リポーターを務める。明るい笑顔と元気なキャラクターでトレセン関係者の人気も高い。2009年より、競馬ラボでインタビュアーとして活動をスタート。いじられやすいキャラを生かして、関係者の本音を引き出す。 |









