関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

服部 利之調教師

服部 利之調教師


父エイシンサンディという目立たぬ血統ながら、デビュー戦前よりセイクリムズンの現在における活躍を確信していたという服部利之師。重賞2連勝を含む目下3連勝中で、勢いであればフェブラリーS出走馬の中でも屈指。厩舎の代表馬でもあったブルーコンコルドが獲り忘れたタイトルに挑むが、大一番を前に意外にも冷静な心境を語ってくれた。

-:競馬ラボに服部先生は始めての登場となります。よろしくお願いします。セイクリムズンは今でこそ重賞を連勝する破竹の勢いですが、デビューしてからここに至るまでにご苦労もあったと思います。そのプロセスを教えてください。

服:こちらこそよろしくお願いします。最初、馬を見た時点で能力があるのはもう分かった。というよりも馬が違ったね。イメージ的にはニホンピロウイナーだったんだ。だから、適性は芝だと思い込んでしまってね。それで芝で下ろしたんだけど、3戦目のレース後に幸君が『ダートちゃいますか?』と言ってくれて。それでダートで2連勝。このあたりから馬体もグッと盛り上がってきたね。

-:その時点からここまでの活躍は想像できたのでしょうか。

服:1歳の春だったかな。初めて馬を見せていただいた時から、重賞の2つ3つはいけるという印象があったよ。どの路線でそうなるかまでは分からなかったけどね。

-:それだけ馬は良かったと。

服:私が大好きなタイプ。当時から本当に馬は良かったよ。体はできていなかったけど、その先を想像するまでもなかったくらい。

-:そう考えるとここまでの活躍は当たりまえですね。

服:むしろ、もどかしかったよ。休養を挟みつつ最近やっと思い描いた姿になってきたけど、もっと早くに結果を出せていい馬と思っていたから。

-:出世が遅れたのは体質的な部分ですか?それとも?

服:精神的な部分が大きかったと思うよ。能力と気性が噛み合わなかった感じかな。

-:そんな中、この馬はクラスが上がるにつれて、徐々にパフォーマンスも上げてきた印象があります。道中のペースがキツイというか、相手が強ければ強いほど真価を発揮できるタイプではないかと思うのですが。

服:そう見えたのかな?ここ3戦でいえば霜月Sの内容が最も良かった。前走は大技だったからね。幸君も自信を持っていたし、GⅢでは実力が抜けていたけれど、あの競馬でさらに上でやっていけるというのはまだ早計だよ。距離的に短かったから心配していたけれど、カペラSのゴール前は2、3完歩でポンポーンと差し返したよね。あの小技はうれしかった。やっぱりGⅠの最後は小技だから。

-:1200、1400であれだけのパフォーマンスをしてきましたけれど、距離が延びることへの懸念はありませんか。

服:古馬はそうなんだけど、この馬もここにきて枝というか前後の胴がこぶしひとつくらい伸びてきた。馬体はこれで完成だろうね。想像でしゃべっているし、経験はないけれど1600には自信を持っているよ。勝ったとはいえ1200、1400は少し忙しい。距離適性が変わってきたんじゃないかな。前走は1ハロン伸びたくらいでタレる競馬でもなかったしね。

-:このフェブラリーSに出走というのは、どのあたりの時期に意識し始めましたか。

服:過去2回東京コースで負けてしまっていたから、自分たちで不得手なイメージを払拭したくてね。3走前の霜月Sがその転機だったんだ。馬主さんにも『この路線で目標とするのはフェブラリーSひとつです』と相談させてもらってね。当時は今年のフェブラリーSなのか来年のフェブラリーSなのか分からなかったけど、馬が期待に応えてくれて、そんな呑気なことを言っている場合ではなくなったけれど(笑)。

-:もう立派な有力馬ですものね(笑)。

服:私はローテションというのは重要だと思っているし、来年以降もこれがモデルケースになるだろうから。そういった意味では理想的に賞金加算ができてよかったよ。

-:先生の厩舎といえば比較対象としてブルーコンコルドという馬がいましたが、タイプ的に似ている部分というのはあるのでしょうか。

服:そんな話がチョロチョロと新聞にも出ていたねぇ。比較せんといてと言うたのにな…。片方は全て終わって競走成績が出ているわけだから。もう片方は今から競走成績をつくっていく。馬のプライドを大切にしたいから、比べるのは失礼だと思っている。ただ、タイプは違うよね。セイクリムズンは不器用だから広いコースで伸び伸びと走らせたほうがいいし、ブルーコンコルドはあれだけの巨体ながら小回りコースをどこからでも加速できる器用な馬だったから。持っている長所も性格も別だよ。

-:前走後の状態というか上積みはどうでしょうか。

服:この馬のいいところは競馬に向けて気持ちが高ぶっていって、栗東に戻ってくると抜けているところ。そういう意味で疲れが取れるのは早いし、調整しやすいよね。1週前も良い動きだったけど、今回の間隔ならスイッチを入れるのは当週でいいかと。状態の良し悪しが追い切りの時計に反映してこないタイプだけど、1回1回を平らな目で分析できるから、やりにくいタイプではないよ。

-:成長段階なのか馬体が増えつつ結果がでている印象ですが、先生はどう捉えているのでしょうか。

服:この時期の牡馬だったら、もっと増えても驚かないけどね。私は馬体重を測らない派だし、実際の体を見て納得しているから。ファンの皆さんもウチの馬に関しては心配しなくてもいいんじゃないかな。

-:気性的な部分や展開面などから、理想とする枠順はありますか。

服:展開は不問。どんな流れでも幸君が捌いてくれればいいわけだから。枠は自分の希望として1枠。向こう正面で馬の位置取りが一番よく見えるから。管理馬であればすべて言えることだけど、セイクリムズンはやっぱり特に見たいよね。

-:先生は相手関係など気にされるほうですか。

服:まったく気にしない。自分の馬がどこまで突き上げている場所にいるのかは気になるけど。特にダート路線は交流重賞を含めれば使えるGⅠの数も多くて、相手関係もさほどは変わらないわけだから。まぁ、そんな路線もしばらく離れていたから、面子もよく知らないくらい(笑)。

-:素人目ですが、今年は横一線だと思います。エスポワールシチーが出ないといのもありますし。

服:あれが出んからと言われるは嫌やなぁ。強いの、みんな出ればいいのに。

-:ということは、自信は結構おありですか!

服:自信はない(笑)。その感覚はブルーコンコルドの時に捨てたから。GⅠを3つ4つ勝ってる時は確かにそう思った時期もある。ただ7つ目に挑戦した時なんか、もう何が何だかわからなくなったしさ。弱気になっているわけではないけれどね。

-:フェブラリーSは②着が最高でしたね。やっぱり欲しいタイトルなのでは?

服:新聞には“悲願”なんて書いてあったなぁ(笑)。正直、勝つよりも重要なことがあると思っている。それは、このレースを使うことで1800がこなせるかどうかを見極めること。1800をこなせる馬であれば、それこそダート路線では道が広がるから。ブルーコンコルドで南部杯を勝った時も、何がうれしかったって、1600をこなしたことが一番うれしかった。

-:勝ち負けを抜きにしたところに見据えるものがあるのですね。

服:ひとつのレースとはいえ、次への糧だからね。

-:ブルーコンコルドもそうでしたが、セイクリムズンも幸騎手が不動の主戦です。乗り方の打ち合わせなどはいつもされるのでしょうか。

服:文句は言うよ(笑)。だいたいパドックで『どうするんや?』と聞くけれど、大筋においておかしなことを言わなければ一任するよ。気の悪い時期に内に突っ込んだりしてヤキモキした時期もあったけれど、今思えばそれも生きているし。幸君も自信を持っているから、とやかく言う必要なないと思っているよ。

-:最後にファンの皆様に向けてメッセージをお願いします。

服:GⅠとなればそれぞれご贔屓の馬もいるだろうけど、特にそれがなかったらウチの馬を応援してほしいね。渋い血統でしょ?ただ、馬は血統だけではないという私の考えをセイクリムズンの走りで証明できればと思います。




【服部 利之】Toshiyuki Hattori

1958年京都府出身。
1998年に調教師免許を取得。
1999年に厩舎開業。
JRA通算成績は110勝(11/2/13現在)
初出走:
99年3月6日2回中山3日目11R ツルミワールド・3着
初勝利:
99年4月4日2回阪神4日目7R エイユースナイパー・延13頭目


■最近の主な重賞勝利
・11年 根岸S
・10年 カペラS
(共にセイクリムズン号)
・10年 小倉記念
(ニホンピロレガーロ号)


父である服部正利元調教師の影響で競馬の世界へ。厩務員、調教助手を経て調教師となるが、自らのポリシーである相馬眼を信じ、GⅠ馬のブルーコンコルドを始めとする一般にはメジャーとはいえぬ血統を次々と走らせる。このフェブラリーSには厩舎として5頭目の重賞ウイナーであるセイクリムズンを送り込み、厩舎としてさらなる繁栄を誓う。