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安田隆行調教師

安田隆行調教師


5日のオーシャンS(GⅢ)で、昨年11月の京阪杯以来の実戦を迎えるダッシャーゴーゴー(牡4、栗東・安田隆厩舎)。昨秋は、その京阪杯こそ大きく崩れたものの、セントウルSを制覇、スプリンターズSでも(降着の憂き目にはあったものの)僅差の2着に入線するなど、一躍、スプリント戦線の主役級にのし上がった。明け4歳初戦に挑む戦前の近況を、先日のフェブラリーSを制し勢いに乗る安田隆行調教師に語って貰った。

-:まずはフェブラリーSのトランセンドは強かったです。本当におめでとうございました。

安:ありがとうございます。レースの週の金曜まで、ずっと強気だったんです。それが、『負けたらどうしよう?いや勝てるだろう!負ける?いや大丈夫!』って段々弱気になっちゃった(笑)。
これがプレッシャーなのかな。レースでもマチカネが並びかけに来てヤバい!と思って直線向いたら、実況が『マチカネ先頭!』って言ってるので『負けるのか?』って不安になったけれど、なんとか抜けて来て。『よっしゃ勝てる!』ってガッツポーズですよ。ゴールしてから大きく深呼吸して、息を整えて下に降りました。


-:深呼吸したのは気持ちを静めるためですか。

安:昨年のJCダートでトランセンドが勝った時に感極まって泣いてしまったんです。それで今回は冷静にしようと思ってやったんです。あれだけ競られて良く勝てたと思います。本当に強くなってくれた。

-:トランセンドはドバイWCにも招待されました。

安:3月3日に栗東トレセン内で検疫に入ります。普段いる厩舎とは別の検疫専用の馬房に移り、他の馬より2時間早い5時からドバイ遠征の馬達と一緒に調教することになります。
競馬開催の土日はお昼の12時からの調教になるので、担当の山下くんには体力的に過酷な1週間になりますね。出発は9日なので、6日の日曜くらいに1本サッと追い切る予定です


GⅠ連勝を飾ったトランセンドと山下助手

-:ドバイへ向けてのお話はもう少したってから改めて取材させてください。

安:わかりました、こちらこそよろしくお願いします。

-:今回のオーシャンSで復帰するダッシャーゴーゴーですが、京阪杯から振り返って頂けますか?

安:ダッシャーは夏頃からいい感じで来ていて、スプリンターズSでも他の馬に迷惑をかけてしまいましたが、能力は見せてくれました。京阪杯の敗戦はハッキリとはわかりませんが、展開も大きかったと思います。1200mのレースにしてはペースが遅かったですし、器用さのない面もあるので悲観していません。

-:なるほど、ダッシャーゴーゴーの良さが生きるには、ある程度流れた展開で差す形なんですね。放牧から帰ってきて変化はありましたか?

安:身体が増えて成長しています。30㎏増えて帰って来ましたから、良い休養だったんでしょう。30㎏増えたといっても、ボテッとしているわけではなく、骨格も大きくなって必要な肉も付いた成長分です。今(1週前段階)は、そこから10㎏ほど絞って530㎏後半です。輸送を考えて少し余裕残しですが、久々でも十分走れる状態に仕上がってします。



-:先週(2月23日)の追い切りでは坂路で猛時計(4F48.9-ラスト1F13.0)でした。

安:先週の時点で少しピリッとさせたかったので、ビッシリ追うように指示しました。ダイエットの意味もありますが、輸送の前にビッシリ追えないので、先週目一杯追って負荷をかけたんですよ。ダッシャーゴーゴーは坂路で乗っても息が乱れない馬なのですが、さすがに48.9で上がってきた来た時はフーフー言ってました。でも、あれくらいやってもへこたれるような馬ではありません。

-:本番の高松宮記念を控えて、今現在の仕上がり具合はどの程度だと思われますか。

安:そうですね…、8割くらいは仕上がっていると思います。このデキでどのくらいやれるのか?そこが楽しみです。今年の高松宮記念は阪神での開催となります。ダッシャーゴーゴーにとって阪神コースは、セントウルSで勝っているように相性の良い舞台です。そこに向けて良い状態に持って行きたいですね。今のところ思い通りに来ていますので、何も心配していません。

-:ダッシャーゴーゴーはスプリンターにしてはおっとりした性格に見えますね。

安:たしかに普段の調教でもスイッチさえ入れなければ、凄くゆっくり走ることも出来るんです。精神的に落ち着きもあるので輸送も苦にしません。その反面、レースに行ってスローになると自分から掛って行かない分、流れに乗り損ねる面もあります。ソコソコ流れてくれて末脚をためれる形が一番良いんです。このクラスになると前に行く馬もそう簡単には止まってくれませんからね。今回のオーシャンSでもハマれば相当良い脚を使ってくれるはずですので、展開だけが不安です。

-:キンシャサノキセキなど有力馬も揃っていますがオーシャンSは楽しみですね。

安:休養して逞しくなったダッシャーゴーゴーに期待してください。ダッシャーゴーゴーは掛る馬ではないので乗りやすいタイプです。有力馬の中には折り合いに気を使う馬もいるでしょうから、チャンスもあるはずです。厩舎の流れも良いので、高松宮記念に向けて内容のある競馬をしてくれると信じています。少し寒さが戻って来ましたが、中山競馬場で応援してもらえるとうれしいです!


【安田 隆行】 Takayuki Yasuda

1953年京都府出身。
94年に調教師免許を取得。
95年に厩舎開業。
JRA通算成績は418勝(11/2/27現在)
初出走:
95年3月11日3回京都5日目8R マルル・3着
初勝利:
95年3月25日1回中京7日目6R アカツキホーオー・延10頭目


■最近の主な重賞勝利
・11年 フェブラリーS
・10年 JCダート
・10年 みやこS
(共にトランセンド号)
・10年 セントウルS
(ダッシャーゴーゴー号)


騎手時代は小倉開催45週連続勝利など、ローカルコースでの活躍が目立ったが、トウカイテイオーの皐月賞・日本ダービーで2冠制覇の手綱をとったことでも知られる。調教師としても着実に実績を積み重ね、10年秋にはジャパンカップダート(トランセンド)で厩舎初のGⅠ勝利を収め、今春にはトランセンドでドバイ遠征も予定している。
また、現在も積極的に調教で騎乗するなど、いつでもレースに乗れるほどの騎手時代と変わらぬ体重を維持している。