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中竹和也調教師

中竹和也調教師

3歳時にファルコンSを制し、NHKマイルCを、あのキングカメハメハを上回るレースレコードで、中竹和也調教師・藤岡康太騎手を含め、人馬共にGⅠ初タイトル奪取となったジョーカプチーノ。 3歳春を最後に約1年半に及ぶ休養を余儀なくされるも、昨秋のスワンSでは、超久々のレースでありながら、直線、差し返す根性をみせて3着に好走。暮れのラピスラズリSでも逃げ切りを決めて、GⅠレース以来の勝ち星を挙げた。

そして、1番人気に推された年明け緒戦のシルクロードS。スタートでやや立ち遅れるシーンがありながらも、慌てることなく差し切り勝ち。 レース前の馬体重も、デビュー以来、最高体重となる532キロと、心身共に完全体に近づきある、今。今度は人気を背負った形で、2度目のGⅠ獲りに挑む。前走後の過程から、厩舎のスタイルに至るまで、管理する中竹和也調教師に伺った。


-:シルクロードSで3歳時以来の重賞勝利を挙げたジョーカプチーノですが、まず、先生のイメージで、この馬の父でもあるマンハッタンカフェ産駒はどんなイメージでしょうか。マンハッタンカフェ産駒というと、シルクロードSで、同じく走ったアーバニティの方がマンハッタンらしい特徴があるように感じます。

中:そうそう、あっちの方がマンハッタンらしいですね。産駒は。サンデーサイレンスに似たような、皮膚が薄くて長手で体高が大きく出るイメージですね。

-:マンハッタンカフェ産駒で芦毛というと、珍しい感じもします。

中:お母さんが芦毛だからね。お母さんが(遺伝の特徴に)出ているのだと思います。

-:黒光りしたイメージもありますね。前走を振り返っていただけますか?

中:出遅れて「やっちゃった」と思いましたよ。あんな(スロー)ペースになるとも思わなかったし、道中もかかったようにみえたから「今日は飛んだな」と思いましたよ。

-:あんな中で、勝ちきったというのは。

中:大きいよね。康太(藤岡康太騎手)が出遅れても、「後ろから行こう。こうしよう」という意識を持って、そうゆうレースをさせたという事がね。ファルコンSの時も同じようなケースになったけれども、あの時は出遅れて、たまたま流れが向いちゃった、ラッキーなところはあったんですよね。競馬の内容は一緒に見えても、全然違いますよね。

-:馬を操作をして、コントロールして作れたレースと。

中:それが大きいんです。そんな、言うことが聞けるような馬になったんだなと思いましたよ。昔は(手綱に)触るとガツーン、ビューンといっちゃっていたからね。


マンハッタンカフェ産駒の国内芝GⅠレースでの距離別全成績(07年以降)
距離 成績 主な活躍馬(レース名)
1200m (0-0-0-2)
1600m (1-2-1-12) ジョーカプチーノ(09年NHKマイルC優勝)
2000m (1-1-0-11) レッドディザイア(09年秋華賞優勝)
2200m (0-0-0-3)
2400m (0-1-2-9) レッドディザイア(09年オークス2着)
3000m (0-0-0-10)
3200m (0-0-1-0) メイショウドンタク(10年天皇賞春3着)
マンハッタンカフェは、ご存知の通り、現役時代に菊花賞・有馬記念・天皇賞(春)を制したが、上記の成績のように、一概にもステイヤー志向の高い産駒が多いわけではない。ジョーカプチーノ然り、母系の良さを活かすタイプである事も、種牡馬として成功した要因の秘訣といえるだろう。


-:前走のプラス10キロは想定の範囲内でしたか。

中:むしろ、はち切れんばかりのいい馬体をしていたよね。大人の体になってきた。充実期というか、完成された体になってきましたよ。スワンSの時も、前の週から馬体重は30キロくらい増えていて「全く太くない」って、言っていたんだけれども…。いざ、プラス20何キロという数字を見ると、周りは「太い太い」と。

-:芦毛だと、ファンの間でも馬体の比較がし辛い印象があります。プロの眼でみたら、どうでしょうか。

中:僕も見辛いですよ。カプチーノはしょっちゅう見ているからわかるけれども、セリなんかにいっても、外から観て筋肉の質が。芦毛は本当に見辛いですね。

-:ジョーカプチーノが以前、痛めていた箇所の具合はどうでしょうか。

中:全く問題ない。何の不安もないですね。カプチーノが一年半近く休んだのは、一つの要因じゃないですからね。あっちこっちと回りまわって、時間がかかったもので。深管は簡単なものではなかったけれども、一つずつが深刻な問題じゃなかったですからね。

-:確かに一度、戻ってきて、仕上げ途上までは行っていましたね。

中:ちょうど一年前のこの時期、高松宮記念を目指していて、深管を痛めましたからね。

-:プール調教を多く取りいれている印象がありますが、この馬にとってはどうゆうコンセプトで施しているのでしょうか。

中:一応、入厩した馬には全頭そうさせているんですよね。カプチーノは調整が難しくて、走り出したら100(%)で走っちゃうんです。ゼロから20くらいまでは大丈夫だけれども、25や30にしようとすると、100になっちゃうんですよね。かといって、20くらいを何度も乗っていても、調教としては足りないですからね。だから、20くらいで留めておいて、あとはプールにしているんですね。本当は日々、50くらいにはしたいんですけれど。

-:先生から見た藤岡康太騎手の良さはありますか?

中:康太はマイペースだからね。それがこの馬には合っているんじゃないかな。

-:先生はジョッキーも経験されたと思います。先生が乗るとしたら、今回、どう乗りますか?

中:僕がジョッキーだったら、乗り方を決めない。ゲートを開いた時に考えますね。どう乗るかをイメージしていたら、この間みたいに出遅れた時に、パニックになっちゃいますからね。



-:この馬が掛かっているようにみえるのは、気性的なものなのか、スピードがあり余り過ぎているからそうみえているのか、どちらでしょうか。

中:この前は頭を上げ気味で、口も割れていたようにみえたから、掛かっているように思ったんですよね。本来、掛かっていると、手にガツーンと来るんだけれども、康太は「見た目ほど、そんな事はなかったですよ」って、言っていたからね。

-:3歳時にはNHKマイルCを制したように、千二で連勝している今でも、マイルくらいまではこなせそうでしょうか?

中:どうかなぁ。もう一回、康太が同じような競馬(ジョーカプチーノが鞍上の言う事を聞くような)が出来たら、考えられるかもしれないな。

-:放牧から帰ってきてからは順調でしょうか。本番まで、どんな追い切りの指示をされますか?

中:ええ、順調です。今日(9日)はゲートの練習をしまして、もう、今週も来週も一杯に追うように指示します(17日は栗東坂路で4F51.2-12.6)。

-:レースの展開についてはどう考えていますか?

中:前走をみたら、ゲートさえ決まれば、2~3番手でもレースは出来るんじゃないかなと。前走だって、中団につけた時に、馬の真後ろにつけていたわけじゃなくて、ずっと外につけていましたからね。前に壁があろうか、なかろうか抑えられるんじゃないかな。行くんだったら、行く競馬も出来ますからね。(昨年)暮れのラピスラズリSも、吉田君(吉田豊騎手)はある程度出してから、馬なりでスーッと行っているんだけれども、行かせているわけじゃなくて、スピードが違うから行っているわけですからね。

-:時計も速かったですね。

中:あれもハナを獲りに行っているわけじゃないですからね。他の馬が頑張ってハナを獲りにいっていたら、2~3番手に控えていたと思うんですよ。

-:この馬の兄弟はダートで活躍していますが、下の子も入ってくる予定でしょうか?

中:ずっとうちですね。今の1歳が(父が)アドマイヤムーンで、2歳がジャングルポケット。(ジョープシケの)お腹の中にいる仔はディープインパクトですね。

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【中竹 和也】 Kazuya Nakatake

1964年滋賀県出身。
98年に調教師免許を取得。
99年に厩舎開業。
JRA通算成績は261勝(11/03/21現在)
初出走
99年3月27日2回阪神1日目8Rゼンノタカモク・8着
2回中京1日目8Rメイショウチハヤ・11着
初勝利
99年6月26日1回函館5日目6Rダイヤモンドピアス・延31頭目


重賞勝利
・09年 NHKマイルC/・11年 シルクロードS
・09年 ファルコンS(全てジョーカプチーノ号)


騎手として障害重賞4勝、92年JRA賞最多勝利障害騎手受賞など、通算2469戦176勝。99年に厩舎を開業。 今年は管理するジョーカプチーノが3歳時以来の重賞制覇。昨年の中山大障害で2着に惜敗したタマモグレアーが、障害GⅠ制覇を狙う。 また、勝ちたいレースは「やっぱり、ダービーですね」と、意気込むクラシック戦線には、弥生賞で3着に好走したデボネアが皐月賞に駒を進める予定。

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11年シルクロードS一週前