サマーウインドの底見せぬスピードは芝でも!
2011/3/18(金)
庄野靖志調教師
中央復帰以来ダートで9戦7勝、2着2回という完璧に近い成績を誇るサマーウインド(牡6、栗東・庄野厩舎)が、高松宮記念に挑戦する。昨年は交流重賞を3連勝でJBCスプリントも制して、ダートスプリント界の頂点に立って同馬だが、ドバイ遠征を一転、高松宮記念に矛先を向けた理由とは?また、ダートで培ったスピードが芝も発揮することが出来るのか?未知のポテンシャルに秘めた同馬について、庄野靖志調教師を訪ねた。
-:高松宮記念に向けてサマーウインドのお話を聞かせて頂きたいのですが、まず、3歳未勝利、当時の状況から教えて下さい。
庄:産まれも遅く育成時代はソエを痛がったり、トウ骨が弱かったりで、なかなか思うような調教が出来ませんでした。乗っては休み、乗っては休みの繰り返しで時間が経ってしまって、夏の3歳未勝利戦でようやく出走できる態勢が整った、という感じで、同世代の馬と比べると成長が遅かったですね。血統的にも早くから走るタイプではなかったので、成長を待っていたんです。
-:ソエやトウ骨を痛がる状態で、使った芝1200m戦だったわけですね。その時、芝の走り方はどうご覧になりましたか?
庄:正直、芝を使うのは少し早かったかもしれません。硬い芝を走ると痛いのかな、と感じました。それにゲートが速くない馬ですから、1200mも忙しすぎる印象がありました。
-:サマーウインドはゲートが遅かったんですか?
庄:今も速くはありませんよ(笑)。短距離馬でゲートの速い馬は、本当に速いですから。それらと比べると速くはない…。遅くはないけれど普通か…少し遅いくらい、という感じです。でもゲートを出た後が速いんです。スッとスピードに乗れるところがサマーウインドの強みですね。
-:それで、3歳未勝利戦で2着には来たものの勝てずに、一度、地方の門別に出たんですね。
庄:結果的にそうなりましたけれど、未勝利戦を2回使った後、両ひざを骨折して9カ月ほど休養しないといけなかったのです。「それなら…」という事で、復帰は門別からにしたのです。
-:両ひざの骨折と言うと大ケガですよね?
庄:まぁ軽い骨折ではないですよ、小指の爪くらいの骨が欠けたわけですから。でも、骨折した事で休まなければいけなくなったのは、サマーウインドの成長を考えると大きなプラスでした。もともと体質が弱かったので、一度、地方に出す可能性も考えていましたから。とにかく、休養した後は馬が一回り大きくなって、3歳時とは比べ物にならないくらい良くなっていました。
-:門別での2戦はご覧になりましたか?
庄:門別の原孝明調教師とは電話で話していましたし、レースはCS放送で見ましたよ。2戦とも追わずに楽勝でしたし、当時のレコードだったから、うれしかったです。馬場が湿って時計の出やすい状態だったけれど、それでも大差勝ちですから、ビックリしました。原先生も『良かったね~』と連絡してくれました。門別に入ってからも、脚を痛がる時はあったそうで、上手くケアしながら調教してくれたのだと思います。原先生には本当に感謝しています。
-:その後はファンも驚く快進撃となったわけですが、今年のドバイ挑戦の話から高松宮記念に目標が変わった経緯を教えて下さい。
庄:本当に単純な理由なんですが、招待状が届くのが遅かったんですよ。ドバイに行くとなると、事前にある程度仕上げなければいけない。しかし、招待されるかどうかわからない状態で、見切り発車はできないんですよ。もしも、招待されなかったら使うレースもなく、馬に負担になりますからね。2月28日に招待状が来ましたが、検疫にも時間がかかりますし、現実的には使えないということで、ドバイ挑戦は見送る事になりました。
-:そこから高松宮記念を目標に調整していったんですね。
庄:元々、いつかは芝に戻したいと思っていたので、「ちょうど良い時期かな?」と。芝向きの軽い走りかどうかは微妙なところですが、サマーウインドの良さはスピードの持続性にあると思っています。遅咲きの血ですから、心身ともに成長した今、どんな走りが出来るのか?期待と不安が入り混じった感じですね。スピード的には芝馬のGⅠに入っても負ける事はないと思っています。

-:調教メニューについてですが、3歳時はコース調教主体でしたが、中央復帰後は坂路中心のメニューです。この辺りの変化はソエや成長の遅れと関係があるのでしょうか?
庄:デビュー前は息を作る意味もあって、コースで長めに乗っていたのです。ある程度、仕上がってからはオーバーワークにならないように、気を使って調教メニューを組んでいます。今でも気分転換させたい時はCWや、ダートのBやEコースに入れます。サマーウインドは調教では馬場に敏感で、少しボコボコした馬場になると、自分から加減するところがあります。性格的に短距離のスピード型という感じではないんですよ。短距離馬なのに落ち着いているところがある馬です。
-:神経質なとこがあるんですね。サマーウインドは人間の血液型でいうと何型でしょうか…A型?
庄:O型じゃないですか(笑)?ONとOFFがはっきりしているし、無駄な事はしない馬です。例えば重賞に出ても他の馬を気にしない性格なので、レースで自分の能力が出せるのだと思います。きっと、高松宮記念に出ても、堂々といつも通り歩いていると思います。他の馬の方が『あいつ誰だ?見た事ないぞ』って思うんじゃないかな(笑)?馬だって、人間と同じように上下関係がありますから、強い馬に委縮する性格だと大舞台では厳しいんです。サマーウインドは有力馬たちの中に入っても、認められる馬だと感じています。
-:高松宮記念に向けての展望ですが、やはり展開でしょうか?
庄:こっちは無理して行くつもりはありませんが、スッとスピードに乗せられたらある程度、行けるとは思います。別にハナにこだわってはいませんので!出たなりで良いと思っています。ただ、先程も答えた通り、ゲートは速くないので二の脚で加速するタイプです。前目の良いポジションを取って、直線どこまで粘れるか?こればっかりはやってみないとわかりません。
-:スタート後に加速して先行するとなると、馬はかなり体力を消耗しそうに感じます。
庄:だから血統的には、もう少し距離の融通がききそうなのに、短距離で活躍するんだと思います。サマーウインドが持っている能力はマイルでも走れる排気量がある、そのスタミナを短距離の前半で使って直線も粘る。なかなかこういう馬はいませんよ。
-:今年の高松宮記念は阪神で行われます。これはサマーウインドにとってプラスになると考えていいでしょうか?
庄:たしかに阪神は旧中京や京都にくらべ少し時計がかかる馬場ですからね。1分7秒台の決着となるとスピードの絶対値で少し不利かもしれません。その点、阪神は坂もあるし、時計もそこまで早くはならないでしょう。時計のかかる良馬場のように、パワーが求められるなら、面白いかもしれませんね。ただし、最後の最後に坂があるので、あそこでスピードを殺されなければとは思いますけれど。
-:それでは、最後に高松宮記念に向けて、ファンへのメッセージをお願いします。
庄:サマーウインドが出走することで、競馬が面白くなると思います。芝は久しぶりですが、サマーウインドのパフォーマンスを100%出せるように仕上げますので、楽しみにしてください。内枠でスッと行けたら予想以上に粘るかもしれません。あまり急かして良いタイプではないので、ハナにこだわらず乗るほうが馬はリラックスして走れます。
当日の馬場がどうなるのか、今はまだわかりませんが、馬の状態は日を追う毎に良くなっています。サマーウインドのパワーとスピードがGⅠのメンバーに入ってどうなのか。僕もファンと同じような目線で楽しみにしています!

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■主な重賞勝利 |
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少年時代は馬生産を志して、日本大学獣医学部に進学するも、調教師に目標を改め、JRA厩務員過程より段階を踏んで厩舎開業。
開業2年目にホクトスルタンで目黒記念を制し、重賞初制覇を挙げると、昨年のJBCスプリントをサマーウインドでGⅠ(JpnⅠ)初制覇。
実家が北海道、門別の庄野牧場という、ホースマンのサラブレッドというべき、家庭環境で育った。 |







