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中竹和也調教師

中竹和也調教師


話題はジョーカプチーノを起点に、初年度産駒がクラシック戦線を控えるディープインパクト産駒や、中竹調教師ならではと言える、アメリカのセリでの若駒の買い付けなど、厩舎のスタイルについても伺った。

-:ディープインパクト産駒の印象はどうみていますか。一部では、牝馬がいいだけに、もうちょっと走っていいんじゃないか?という見方もあるようですが。

中:ディープは走ってくるでしょう。アグネスタキオン産駒って、活躍しているじゃないですか?アグネスタキオンが種馬になった初年度って、凄くいい牝馬ばかりにつけていたんですよね。その時に1勝はするけれども、なかなか2勝はできなくて、みんな「2勝は出来ない」って騒いでいたんですよね。他にもフジキセキ然り、マンハッタンカフェ産駒なんか、一年目の産駒が走った時に、社台グループは全然つけてませんでしたから。そこで爆発的に活躍をしだして、カプチーノと同じ世代のレッドディザイアなどが出てきたんですよね。

-:今のディープインパクトはアグネスタキオン産駒と似た雰囲気ですね。

中:この世界はみんな、一年目の産駒で評価をつけちゃうんですよ。科学的に証明はされていないだろうけれども、一年目って、殆どの産駒が走らないですから。牝馬も「初仔は小さい」と、よく言われますし。逆に新馬勝ちすると、去年のハーツクライのように殺到しますからね。晃一(角田晃一調教師)には言っていたんだけれども、みんながハーツって言っている時に「来年クラシック戦線に乗るんだったら、ハーツの仔は出ていないけれども、ディープの仔は出ている。ディープの仔もクラシックでは上位は難しいかもしれないね。でも、来年だったら、ハーツよりディープだよ」って。この間、晃一が「中竹さんの言う通りでしたね」って、言ってましたよ。

-:ただ、もともとハーツクライは2歳戦向きには思えないタイプですし、あの牝馬の質の差を考えても、なかなかの初年度じゃないでしょうか。

中:一年目から、あれだけ走る馬を出したということは、けっこう能力のある種馬だと思いますから。たぶん、今年はちょっと(周りが)買い控えるだろうから、今年の産駒こそチャンスだと思います。

-:ディープインパクト産駒はやり辛さはありませんか?

中:うちはダコールエルヴィスバローズマリアと3頭いるけれど、そうゆうところはないですね。

-:話は変わりますが、気になるのが、先生の厩舎のロゴマークです。これにはどんな意味がこめられているのでしょうか?

中:4つ葉のマークですか?『日高の生産や育成のグループ』『ファン』『馬主さん』『現場の競馬関係者』(を一つの葉ずつに見立て)、その馬に関わる人たち全てが、みんな幸せになるようにという意味です。

-:それは先生が考えたのでしょうか。

中:最初4つ葉だけのマークだったんだけれども、僕ですね。4つ葉のクローバーなんて、ありふれていますから。そんな大した話じゃないですよ(笑)。


厩舎のブルゾンにもそのロゴがあしらわれている

-:先生は海外のセリにもよく買い付けに行かれているようですが、どういった点を重視していますか?

中:それはねぇ、行った先のセリによって違うでしょ。オーナーの希望が牝馬か牡馬か、という事によっても違うでしょ。行った先がトレーニングセールでも違う。それは与えられた条件によって、見方が変わってきますよ。たとえば、「トレーニングセールで男馬を買ってこい」という話であれば、走っている動き・パフォーマンスを一番重視します。「1歳の牝馬を買ってこい」という話であれば、先々は繁殖を考えるような牝馬なら、見た目よりもカタログを重視します。

-:どんなファミリーの出身であるかという事ですね。

中:カタログを観て、先々は繁殖として残していいな、という馬以外はみません。皆が合わせたいような種馬と相性が良くて、尚且つ、母系がしっかりしているような。

-:それでいて、金額が折り合うと。

中:そうですね。そうゆうのもあるし、「1歳のセリで男馬を買ってきなさい」という話だったら、全く血統は無視するし。動きとか、歩き方、爪も勿論、重視します。外で目に見える情報を大事にしますよね。だから、条件によってだいぶ変わるかな。

-:先生の馬の新馬をみると、アメリカで買ってきた馬で「この血統は知らないなぁ…」という、ケースをよく感じます。

中:それは、トレーニングセールに行って買ってきた馬がそうだと思うんです。トレーニングセールに行くと、まず、第一にパフォーマンスを重視して、その次に、姿・形。尚且つ、予算に天井があるじゃないですか?予算に限界がある中で、動きが良くてとなると、血統は二流、三流にどうしてもなってしまう。血統も良かったら、何千万となっちゃいますからね。そこで、血統を後回しにするから、聞いた事もない血統という事になるんだと思います。それを狙っているわけじゃなくて、必然的にそうなってしまうんですね(笑)。

-:アメリカには年にどれくらいいかれるのでしょうか?

中:例えば去年は7回行ったかな。コールダーいって、バレッツマーチで3頭、キーンランドのエイプリルで1頭、バレッツのメイで2頭、サラトガで1頭、キーンランドのセプテンバーで1頭、キーンランドのノーベンバーで1頭だから9頭かな。ノーベンバーは当歳だったし、サラトガとキーンランドのセプテンバーは2歳。トレーニングセールで買ったのは今の3歳ですね。世代は違いますね。

-:今の3歳ですか。

中:ヴォトレメイヤーなんかもそう。バレッツマーチで買った馬ですよ。

-:トレーニングセールで買う難しさは、走っているところをみた雰囲気を重視するわけですよね?あとで立たせたりしたりすると、全然違うイメージだったりする事もあるんじゃないですか?

中:いやぁ、全然違う。パフォーマンスをみて「いや、スゲエな」と思って馬をみても、実際来たら「えっ?!」っていうのがいますからね。

-:その中で「当たり」を引いていることは凄いですね。

中:トレーニングセールで買った馬は殆どが勝ちあがっているからね。

-:中竹先生が好きなタイプもあると思うんです。その中でも選ぶことって、難しいのではないでしょうか。

中:あるある。自分の好きな馬っていうのはあるけれども、それはセリに行って、自分の好き嫌いは押し殺している。過去はそれを追求していたけれども、結果が伴わなかったから止めました。過去の失敗があるから、今があるわけですからね。また、自分の好みを出すのかもしれないけれども、現時点では押し殺していますね。

-:それは自分の好きなラインがあるからこそ、そこを避けることが出来るわけですよね。

中:そうですね。自分の中でそうゆうモノはもってはいます。

-:その中でも、先生が理想に近かった馬はどの馬でしょうか?

中:フォルスストレート(06年11月の2歳新馬戦でデビュー勝ちも、その後、勝ち星を挙げられず、南関東で3戦)なんかそうですね。理想に近いような馬だったけれど、あの馬(が成績を挙げられなかったの)は去勢したりした事もあったからかもしれませんが…。それにしても、実際「これは芝の長いところいけるなぁ」と思っていたのに、ダートの短いところでしたね。

-:わからないのが馬の面白さとはいえ、仕事ですから、面白さだけは追及出来ないですものね。

中:結果を出さないといけないですからね。セリに行ったら、プレッシャーですよ。13~14万ドルって、手を挙げていると「本当にこの馬で間違いないかな…」って、焦ってきますから。値段が上がれば上がるほど。

-:確かにセリですから、その瞬間で考えないといけないですよね。

中:「見落としないよな?爪は大丈夫だったよな?」って。本当にプレッシャーになりますよ。

-:買ってからの気苦労も絶えないですか。

中:買って初めてスタートですからね。買ってからがゴールじゃなく、でっかい責任のスタートだから。大きいセリで落とした瞬間から、スタート台でどこに立っているかの始まりだから、その素材自体でね。仕事としては、プレッシャーがあるだけ、遣り甲斐があるけれどもね。

-:今年の3歳で、どの馬が大きく成功している例といえる馬でしょうか?

中:今年のトレーニングセール組では、ヴォトレメイヤーですね。ファルコンSにも出せたし。

-:わかりました。先生のスタイルから、ジョーカプチーノの事まで、沢山語って頂きありがとうございました。最後に高松宮記念に向けて、まとめていただけますか?

中:ダートでは走った事があるけれども、阪神の千二というのは初めてのコースですね。でも、中山でも、小倉でも、京都・中京でも勝っているし、色々なコースを走って、コース替わりがどうかという事は一度もないですからね。
NHKマイルCも初めての東京コースでしたからね。それに関しては心配はしていないですよ。ただ、GⅠだからね、強い馬が一杯出てくるだろうし、各陣営も獲りに来るだろうからね。そうゆう中で、カプチーノの全能力を発揮出来るように、ウチとしては持ってゆくだけですね。それしか出来ないと思います。


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【中竹 和也】 Kazuya Nakatake

1964年滋賀県出身。
98年に調教師免許を取得。
99年に厩舎開業。
JRA通算成績は261勝(11/03/21現在)
初出走
99年3月27日2回阪神1日目8Rゼンノタカモク・8着
2回中京1日目8Rメイショウチハヤ・11着
初勝利
99年6月26日1回函館5日目6Rダイヤモンドピアス・延31頭目


重賞勝利
・09年 NHKマイルC/・11年 シルクロードS
・09年 ファルコンS(全てジョーカプチーノ号)


騎手として障害重賞4勝、92年JRA賞最多勝利障害騎手受賞など、通算2469戦176勝。99年に厩舎を開業。 今年は管理するジョーカプチーノが3歳時以来の重賞制覇。昨年の中山大障害で2着に惜敗したタマモグレアーが、障害GⅠ制覇を狙う。 また、勝ちたいレースは「やっぱり、ダービーですね」と、意気込むクラシック戦線には、弥生賞で3着に好走したデボネアが皐月賞に駒を進める予定。

ジョーカプチーノについて、過去のオリジナルインタビューはコチラ↓
11年シルクロードS一週前