関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

日吉正和調教師

日吉正和調教師


気心の知れたスタッフ達と厩舎をスタート

-:調教師を目指すにあたって、特別されてきたことはありますか?

日:ちょうど角居先生が、若い子を集めて調教師になるための勉強会をやっている、という話を耳にしたんです。法規だけではなく、調教師としての考え方や、厩舎での動き、競馬界の流れなども教えてくれていました。そこで高橋くんという、今は坪先生のところで、攻め専をやっている子がいたんですけれど、新しく調教師を目指す子と、ずっと目指してきた子では勉強する範囲も違うので、2人で独立して別の日に勉強会をするようになったんです。
特別ということではないですけれど、調教師になるのとやるのでは異なる半分、調教師のスタートラインに立つためには、教科書的な勉強は必要ですからね。厩舎を経営していくには、この社会も知らないといけないですし。
また、自分がモノをわかっているかどうかというのは別にして、常に調教師目線で物事を考えることは徹底しました。従業員(厩務員・調教助手)のころに、従業員の目線でモノをしゃべっていて、受かった途端に雇用者的な喋り方はしたくなかったから、従業員のころから雇用者的な考え方をしていたので、他の従業員には嫌われましたね(笑)。「なんだ、コイツ」みたいな。でも、一番徹底していたのはそこですね。


-:そう聞くと、正直、今のポジションがご自身にとっても最適な環境じゃないでしょうか?

日:正直、今が一番楽しいですね。周りにも「調教師になって大変じゃないか?」と言われますけれど、楽しいスタートを切らせてもらっていますね。

-:厩舎を転々とされていましたが、ご自身で移ろうと思って、沢山の厩舎に在籍されたのでしょうか?

日:そうですね、我慢が利かない人間で、昔から、ある程度やって物事が動かなければ、コロッと変えてしまう方なので(笑)。

-:これまでに経験された厩舎の先生のスタイルや学ばれた事で、具体的な印象を教えて頂けますか?

日:皆さんそれぞれのスタイルはありますからね。岡田稲男先生は、競馬をよく知っていて熱意もある方、馬を回したりする(所属馬の馬房の管理など)のが凄く上手な方でした。野元先生(野元昭元調教師)は厳しいところもありますが、いつも笑っていて、柔らかい方でした。僕が案外、短気なところもあり、僕にないものを持っている方で見習わされました。
作田誠二先生のところでは、実務的なこともやって凄く勉強させてもらいましたし、吉岡先生(吉岡八郎元調教師)のところでは、厩舎に入ってすぐの頃、調教師試験に受かって、そんな中で牧場にもよく連れて行ってもらいました。


-:開業するにあたって、どんな調教スタイルでやっていこうというものはありますか?

日:ある意味固定観念を持たない。このやり方で馬を仕上げるというのはないですね。ただ、馬は集団性の動物なので、少頭数であっても集団で行動するようにして、こなせるべきものはちゃんとこなせるようにしたいですね。それは僕の理論として大事にしたいです。

-:スタッフの雇用についてはどう考えていますか?

日:吉岡先生のところに入って、そこでいたメンバーを7~8割引き継いできて、厩舎をどういう風にしたいかというのを、一年間ずっと話して来ました。そういう意味では一から説明する必要がないのでやり易いですね。

-:じゃあ、新規開業であっても、やり易さはあるわけですね。

日:そうですね。同じ方向を向いてくれる人間が沢山いたので、じゃあ頑張ろう、と足並みを揃えやすいですね。スタッフは他に池江泰郎先生、須貝彦三先生のところから一人ずつ来てもらいました。

-:昨年で引退した高野容輔元騎手などもいらっしゃるようですね。

日:ええ、去年に引退して、その流れでスタッフになりましたが、真面目な子だし、僕もああいうタイプの子は好きなので、本当にいいスタッフが入ってくれたと思います。

昨春には中山グランドジャンプを制し、障害界での飛躍が期待された高野容輔騎手だが、昨年一杯をもって騎手を引退。 現在は日吉調教師の下で、調教助手として厩舎に貢献している。身にまとっているのは厩舎の調教服。

-:どんなタイプの馬を作っていきたいですか?

日:そうですね…、皆さんは無事で走って、なおかつ、いい馬方が好きでしょうね(笑)。僕は長距離戦だと、レースをみていても楽しいですからね。ある程度、距離をこなせて強い馬でしょうか。グローバルスタンダードと呼ばれる2400mで走れる馬を作れたらと思います。

-:どんな血統や系統の馬を扱ってみたいとかはありますか?

日:今は特にはないですね。まだまだ産まれたばかりの厩舎で、ゆくゆく厩舎に力をつければ、どんな馬を扱ってみようと選ぶ事が出来るのかもしれないですけれど、預けてくれた馬をこなしていく事が、僕らの仕事だと思いますから。
その中でそういったものが出てくるのかもしれませんし、あくまで僕の好き嫌いの個人の問題ではないですからね。将来的に厩舎全体で、そういう傾向が出来るのかもしれませんが、まだ決めつけるのは早いし、じっくり育てていく中で、ステイヤーの馬などを育てられたら楽しいでしょうね。


-:現時点でのジョッキーの大まかな起用プランはありますか?

日:今は酒井学君によく声をかけさせてもらっていますね。非常に一生懸命に乗ってくれる子ですし、僕は大好きなジョッキーです。

-:他には同期の方ですか(笑)?

日:同期は、たぶん、まだ僕のところの馬には乗りたがっていないと思いますよ(笑)。僕らとしては馬を育てて、ここは減量騎手がだな、とか、その馬のタイプや方向性にあった騎手をチョイスするだけですから。それが同期かもしれないし、これから台頭してくる子かもしれないですし…。そういう意味では(酒井)学には勝手に期待しています(笑)。

-:勝ちたいレースはありますか?

日:日吉特別でしょう。ここは言わないといけないのかと思いました(笑)。巡り合わせだと思いますが、どんな条件だろうと大きいタイトルは獲りたいです。ダービーも好きだけれども、菊花賞やジャパンカップも魅力がありますね。

-:わかりました。最後にファンへ向けて一言お願い致します。

日:僕らも頑張って楽しい競馬を提供したいし、ファンも馬主さんにも競馬を楽しんでもらえれば、と思います。
競馬は勝負の世界でプロスポーツの世界なんだけれども、ギャンブルでありエンターテイメントでもあり、ファンの方それぞれ楽しみ方は違うんでしょうけれどね。トータルで競馬を本当に楽しんでもらえるように心掛けて行きたいと思っています。


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【日吉 正和】Masakazu Hiyoshi

1972年福岡県出身。
2010年に調教師免許を取得。
2011年に厩舎開業。


91年に騎手デビュー。騎手としては2,111戦92勝の成績を残し03年に鞭を置くと、同年から調教助手に。 調教助手としては作田誠二厩舎、岡田稲男厩舎、野元昭厩舎、作田誠二厩舎、吉岡八郎厩舎を渡り歩いて、今年3月より厩舎を開業。 吉岡厩舎時代からのスタッフを中心に厩舎運営に日々励んでいる。厩舎の調教服はオレンジ色を大きくあしらったデザインが印象的。