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ロドルフ・コレ調教師

ロドルフ・コレ調教師


昨年のマイルCSでは大外から鋭い追い込みを披露し、4着入線を果たしているフランスのサプレザ(牝6)。同馬は一昨年にもカンパニーの3着に敗れており、今年で実に3年連続のマイルCS参戦となる。管理するのは、仏・シャンティーに厩舎を構えるロドルフ・コレ調教師。アマチュア騎手として活躍した後、98年に弱冠24歳の若さで厩舎を開業。現在は29頭の管理馬を抱える38歳の敏腕トレーナーだ。
自身に初のGⅠ勝ちをもたらした愛馬を再び日本に送り込む、ロドルフ・コレ調教師に3度目のマイルCSに懸ける意気込みを伺った。


-:マイルCSは3年連続での参戦となりますね。

C:今年もサプレザでマイルCSに挑戦することは、春先から視野に入れていました。今年も招待馬に選出していただき、日本に遠征できることを大変嬉しく思っています。

-:サプレザはすでに6歳ですが、ここに来てさらに強くなった印象があります。

C:そうですね、今年は復帰戦のGⅢを勝った後、GⅠを4走してすべて3着以内と安定していますし、ゴルディコヴァ(欧州史上最多となるGⅠ14勝を挙げた名牝)と接戦を演じてくれたり、その内容も非常に濃いものだったんです。目標としていたサンチャリオットS(GⅠ・ニューマーケット競馬場1マイル)3連覇の偉業も達成してくれましたし、「間違いなく昨年よりもパワーアップしている」と自信を持って言えます。3歳の夏にデビューした遅咲きタイプの馬で、肉体的にも精神的にも馬が大人になって、完成期を迎えているんです。日本や香港での経験も、馬にとってプラスになったのではないかと感じています。

-:過去2年のマイルCSはいずれも惜しい競馬(3着、4着)でした。

C:どちらも勝っても不思議のない内容だったのですが、2年ともに枠順が外目になってしまって、それが結果に大きく響きました。最初の年は勝ち馬(カンパニー)とはだいぶ走った距離に差がありましたし、昨年も枠順が16番に決まったと知らされたときは、心底がっかりしましたよ(苦笑)。最後の末脚には見るべきものがあったので、直線では大きな声が出ましたが、あんなに大外を走らされてはね……。



-:サプレザの長所はどんなところですか?

C:どんな競馬場でも確実に素晴らしい末脚で伸びてきてくれるところですね。牝馬ですが精神面でもタフで輸送も苦にしませんし、本当にエライ馬ですよ。ニューマーケットを非常に得意としていますが、ロンシャンでも何度も勝っていますし、京都でもあのような脚が使える。こういう馬はなかなかいないでしょう。

-:9月のサンチャリオットS以来のレースとなりますが、前走後の状態はいかがですか?

C:今年はサンチャリオットSの日程が2週間繰り上がったので、過去2年と比べてフレッシュで良好な状態を保てています。私自身も経験を積んで、マイルCSへ向けた調整方法を掴みましたし、日本に来る前は芝での強い調教を控え、ダートコースで長目のところを乗り込んできました。今年はサミアという帯同馬をつけて、日本での調整にも万全を期しています。このまま順調にレースを迎えることができれば、と考えています。

-:過去にはタイガーテイルでエリザベス女王杯とジャパンカップに遠征された経験もお持ちです。日本の競馬にはどんな印象がありますか?

C:ファンの方々の競馬に対する熱意にいつも大変感銘を受けています。競馬をあれほど熱く応援してくださるというのは本当にありがたいですし、素晴らしいことですよね。レース自体はフランスと比較した場合、馬場が軽いので時計がまるで違って、レースの流れも非常に速いので、見ているだけで戸惑ってしまうこともありますね(笑)。

-:日本とフランスでは、調教のスタイルなども大きく異なりますか?

C:ええ、調教も異なりますね。日本のトレーニングセンターの施設はビデオで見せていただいたことがあって、JRAの職員の方にもお話を伺いましたが、フランスでは調教の時計を計る習慣はありませんし、馬体重も測定しないんです。一部の厩舎には体重計もあるのですが、そういう厩舎は非常に稀です。施設面で言えば、フランスにはウッドチップというものが存在しません。ウッドチップのコースがあるのは欧州ではアイルランドぐらいではないでしょうか。欧州の冬は大変厳しいので、フランスではオールウェザーを重宝していますね。

-:今年の凱旋門賞には2頭の日本馬が参戦を果たしましたが、見せ場なく敗れました。日本馬の欧州遠征はどのようにご覧になっていますか?

C:日本調教馬が世界でもトップクラスの能力を持ち合わせていることは、これまでの実績から疑いようがありません。ですが、やはり馬場の違いが難しいのだろうなと思いますね。普段軽い馬場で競馬をしている馬が、重くてタフな馬場で走る。これは相当に難しいことです。欧州の馬場にも対応できる余程のパワーがある馬でなければいい結果は出せません。ヨーロッパに来た日本馬で印象的だったのは、キングジョージに出走したハーツクライという馬です。あの馬は本当に素晴らしい馬だなと感じましたね。



-:今回のマイルCSにはお父様が管理するイモータルヴァースも参戦を予定しています。

C:イモータルヴァースは非常に強い馬ですよ。夏のジャックルマロワ賞ではサプレザとゴルディコヴァを、まとめて差し切っていますから。実は、今年6月にロイヤルアスコット開催で行われたGⅠコロネーションSでイモータルヴァースが勝った時、2着の馬が私の管理するノヴァホークという馬だったんです。ロイヤルアスコット開催のGⅠレースで父とワンツーを決めることができたのはすごく嬉しかったのですが、今度は私の馬が1着でのワンツーを決めることができれば最高ですね(笑)。

-:最後にファンの方々へメッセージをお願いします。

C:マイルCSは私がもっとも勝ちたいレースです。今年こそは勝てるように、全力で挑みます!昨年以上のサプレザをお見せできると思いますので、ぜひ京都競馬場でご声援をいただければ幸いです。




【ロドルフ・コレ】 Rodolphe COLLET

1973年9月15日生まれ。
1998年にシャンティイで厩舎開業。


最近の主な重賞勝利
・09~11年サンチャリオットS(全てサプレザ号)


父は1987 年のジャパンカップをルグロリューで制し、マイルCSにイモータルヴァースを送り込むロベール・コレ調教師。父親が調教師であったことから競馬への関わりは深く、調教師になる前にはアマチュア騎手として活躍、約30勝を挙げた。
英国のジョン・ゴスデン調教師や米国のジャック・ヴァンバーグ調教師といった名調教師のもとで研修を受けた後、1998年3月にシャンティイ地区で管理馬4頭から開業。
開業から2週間後には早速初勝利を挙げ、2001年6月にはイタリア・ミラノで初めて重賞競走に勝利した(マリオ・インチーサ賞:オノリフィック号)。そして、一昨年のサンチャリオットSをサプレザが制し、人馬共にG1初勝利を挙げた。なお、これまでにも2003年のエリザベス女王杯でタイガーテイル(3着)を出走させている。