アドマイヤコスモスの快進撃は新年も続く!?
2011/12/28(水)
橋田満調教師
父が高松宮記念勝ちのアドマイヤマックス、母が重賞でも活躍したアドマイヤラピス。半兄は全日本2歳優駿のアドマイヤホープ、そして、中山金杯連覇のアドマイヤフジ。正に“橋田ファミリー”の結晶とも言うべき血統背景の持ち主だが、ここまでの道程は順風満帆とは言えないものだった。デビュー前から、前走に至るまでの経緯を橋田満調教師がジックリと語ってくれた。
計り知れない可能性
-:アドマイヤコスモスについて伺うのは初めてのことになります。この馬を初めて見た時の印象から教えていただけないでしょうか?
橋:初めて見た時は、お母さんが慢性的なフレグモーネで満足に運動をすることができず、産まれた時に子供の姿勢が曲がって出てきてしまうんです。つまり、お母さんが運動を出来ないために、子供もお腹の中で同じ姿勢しかできないから、そうなってしまうんですよね。でも、それは解消出来ているから、今は心配する要素ではないですよ。
-:デビュー戦が4月のダート戦でしたが、そこまで遅れた理由とは何だったのでしょか?
橋:先に挙げたこともあって、牧場で育成が進められなかったからね。それにデビューも遅れたことで未勝利戦も芝のレースがなかったからね。そのデビュー戦も、ダート戦とはいえ、既走馬に混じった中で本命人気に推されて勝ったようなレースでした。騎手が内側からステッキを入れたら、外に逃避してしまったんですよ(苦笑)。
しかも、2着に負けた上に骨折が判明してしまって、半年間は競馬に使えなくなって、地方に行かざるをえなくなったんです。怪我さえなければ、次に500万下を使っても勝てたと思うよ(笑)。誰もが勝ったと思ったレースを外に飛んで行ってしまって、骨折だからねえ……。
-:そのデビュー戦然り、これまでの新潟でのレースなど、外に逃避してしまう癖はステッキに怖がってのものですか?
橋:ステッキを怖がっているのとは違うかな。周りのモノに敏感というか、モノ見をするところもあるんだ。
-:逆にいえば、それだけ走っている最中でさえも余裕があるということですね。
橋:そうだね。とにかく色々なモノに敏感な馬で、周囲が気になるんだろうね。走っていても、周りが見えてしまうんでしょう。
-:この馬の兄弟というと、活躍馬が沢山いる血統ですが、コスモスと比較して似ている部分や似ていない部分はありますか?
橋:う~ん、似ていないなあ。(アドマイヤ)フジはもうちょっと雄大で馬格のあるタイプで似ていないし、(全日本2歳優駿勝ちのアドマイヤ)ホープはもうちょっと硬いタイプだったからね。
-:お父さんのアドマイヤマックスと比較してはいかがですか?
橋:父親とはよく似た格好はしているけれど、産まれた時の父親のイメージとはちょっと違うかなあ。産まれた時は「雰囲気がダブる」と、よく言われるものだけれど。
-:先生から見たアドマイヤマックス産駒全体の印象はどんなイメージでしょうか。
橋:マックスってサンデーサイレンスの仔とは思えないような形をしていたんです。こう幅があって、ドッシリしていて。後ろから見ると幅が広いからね。アグネスタキオンなんかもそんな感じだけれど、サンデーサイレンス産駒って、そういうタイプって少ないじゃない?産駒にはそういうところがよく出ているね。馬格があって筋肉質なところが。それはマックスの子供に共通するんじゃないかな。
-:アドマイヤマックス産駒も、コスモスもそうですが、新潟2歳Sを制したモンストールなど、ここへ来て結果を残してきていますね。
橋:当初は他のサンデーサイレンス系の種牡馬との兼ね合いもあるし、繁殖牝馬に恵まれたとは言い難いじゃない?だけれど、徐々に産駒が走ってきて、結果を出してきていることは、種馬としてはいい事ですよ。普通は(種牡馬成績が)下がってくるものだから。来年はもうちょっと繁殖も集められると思うし、マックスの事は“マイネル”の岡田さんが凄く応援してくれて、いい繁殖をつけてくれたりしているからね。
-:マックス自体は高松宮記念などを制した短距離馬でしたが、コスモスは2000m前後で走っていますよね。その違いはどこから来るのでしょうか。
橋:コスモスに関してはお母さんが長距離で走っている馬だったんですよね。走り方を見ていると、マイルくらいが合いそうな気もするんだけれど。
-:ピッチ走法のように見えると言いますか……。
橋:“ピッチ走法”に見えるでしょ?だけれどもコスモスは上下動がない。だから距離がこなせるんです。動きに無駄がないんですよ。俗に云うピッチ走法だと距離が持たないからね。
段階を踏んだ臨戦過程
-:地方から戻ってきて、ここまで快進撃を続けてきましたが、ここ一連の印象も教えてください。
橋:抜けだしたら、フラフラするところは付き纏っているけれど、いつでも余裕をもって4コーナーを回ってきているね。で、p。一度だけダノンスパシーバと叩き合いになるレースはあったねえ。あれはいいレースだった。ダノンスパシーバもあの後、走ってきていますし、ああいう競馬を経験したことは、コスモスにとって凄くタメになったと思うよ。あの接戦を凌げたことがね。
-:ダノンスパシーバ以外にもアスカトップレディやアスカクリチャンなど、後のオープン馬を降しての連勝ですから、余計に価値が高い印象がありますね。
橋:そうだね。でも、これまでは条件戦での連勝だけれど、今はオープンに上がったから、これからはなかなか簡単ではないと思うな。でも、連勝が出来るということは、条件が整わなくても、勝っていることじゃないですか?スポットで勝つというのは、条件が向かないと勝てていないわけで。そういう意味でも連勝出来ている馬というのは強いと思いますね。コスモスもこれからはオープンでも連勝できたら、本当に強い馬だと言えるだろうね。
例えば、ディープインパクトやシンボリルドルフのように連勝を伸ばしてきた馬というのは、本当に強いんだよね。自分に条件が整わなくても勝つんだから。ただ、ウチのはまだ条件クラスだからね。そこは違うと思うし、オープンになってもそれを続けられたら強いけれど、それはなかなか難しいね。
-:でも、あのルドルフでも古馬との対戦で負けましたよね。
橋:ずっと連勝で行くことは容易じゃないからね。ウチのも(デビュー戦や地方で)負けているし(笑)。地方で負けた時は聞くところによると、気難しいところを出したみたいね。レースでも気難しいところがあるから。
-:とはいえ、あのデビュー戦は勝ったような内容ですよね(笑)!?現状、距離やコースなど、どの条件がベストとみていられているのでしょうか?前走で道悪をこなしましたし、速い上がりのレースや、レコード決着にも対応してきましたよね。
橋:何がベストかはわからないねえ。坂もこなしているし。でも、色々なことをこなしているからこそ、ベスト条件がどれとはわからないよね。距離は2000mで限定しているじゃない?それがいいかなあとは思ってやっているけれど。レースで言うなら宝塚記念や、秋の天皇賞に行けるならば、そういう舞台に行きたいとは思っているけれど。“何かを絞る”という作業は難しい事だと思うよ。

-:前回、重賞タイトルを手にして、先生も96年から続く、重賞連続勝利を継続されました。これまでに幾多の名馬を手掛けてきた中で、それらと比較しての手応えはどんな風にみていますか?
橋:この馬は高跳びさせることなく、地道に来ているんですよね。気性面の難しさを抱えているじゃない?それを一歩一歩、馴らして行っている段階だから。どこが優れているかといえば、心肺能力が凄く高いんです。だから、終いの脚が上がってしまうようなレースを一度もしていないでしょう。
私は“G3”と“G1”は丸っきり別物だと思っているから。G1を狙うとかは、次のレースを積み重ねていく中で「感触が掴めたら」と思っています。少しずつ、積み重ねていこうと思うし、そういうタイプじゃないかと思っています。
-:それでも、色々な条件をこなしてきていますよね。G1となると、肉体的なものじゃなくて、精神力もないといけないと思いますが。
橋:そうじゃなくて、G1って、馬の能力が本当に高くないといけないと思うな。G3とG1は全然違うからなあ。私としてはまだそういうところに行く段階じゃないと思うんだ。
-:じゃあ、前回、あれだけの余裕がありそうな勝ち方をしても、有馬記念というのは……。
橋:全然考えなかったねえ。まだ、あれだけフラフラする馬はそういうところに出す段階じゃないと思うんだ。G1というのは能力があって、キッチリ走ってこそ、勝てるレースだからね。ビッグレースに使うには無理だよね。これから学習してもらわないといけないし、積み重ねていってのタイプだからね。
-:初めての関東圏でのレースになりますね。その辺りに不安はありますか?
橋:関東圏というより、中山のトリッキーなコースだよね(笑)。これまで大きいコースばかりで走ってきて、(前回の新潟)ローカルから四大競馬場に移るけれど、中山って中でも小さいコースだからね。器用に立ちまわらないといけないから。それはどの馬にも言えることだけれど。
-:アドマイヤコスモス以外にも、重賞に手が届きそうな馬がいますよね。次走予定も簡単に教えてください。
橋:アドマイヤロイヤルは平安Sですね。重賞に手が届きそうなところに来ていますね。ランリョウオーはこの間、負けるとは思わなかったけれどなあ。これも重賞を狙える器だと思うけれど、まだ次走は決まっていないです。今はノーザンファームしがらきにいるけれど、元気にしていますよ。
-:わかりました。色々な話もお聞かせいただきましたが、アドマイヤコスモスと挑む中山金杯についての意気込みをお願いいたします!
橋:色々なことに挑戦してきて、色々なことをこなしてきた馬。でも、これまでの中で、コースとしては一番難しい小回りのコースになりますが、そこをどうこなしてくれるかが課題になると思います。沢山の課題をこなしてきたのがコスモスですからね。期待したいと思います。
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■最近の主な重賞勝利 |
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アドマイヤベガで制した99年の日本ダービーをはじめ、G110勝、JRA重賞通算50勝を数える名伯楽。アドマイヤコスモスの福島記念では16年連続重賞勝利を記録した。 |








