関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

村山明調教師

村山明調教師

今年のフェブラリーSの出走予定馬の中で、ダートのGⅠ勲章を持つのはトランセンド、エスポワールシチー、そして、このテスタマッタ(牡6、栗東・村山厩舎)の僅か3頭のみだ。3歳時には3連勝でジャパンダートダービーを快勝。古馬になってからも、明け4歳ながらフェブラリーSで2着、5歳時の昨年もマーチSを快勝と、実績は疑いようない。しかし、その爆発力に隠された諸刃の剣の気性とは…?約2年7ヶ月振りのGⅠ制覇へ向けての意欲を管理する村山明調教師に語ってもらった。

-:東京大賞典、根岸Sと続けて3着となりましたが、この2戦を振り返っていただけますか?

村:前走の根岸Sはスタートを意識してゆっくり出して折り合いに重視して運んだようですが、3コーナーで引っ掛かってしまいましたね。それでも、その割には終いもよく伸びていました。斤量も他の馬よりは1~2キロ重かったですから、条件を考えれば、頑張ったレースだと思います。
東京大賞典は前に行くのは意外でした。それでも、先行して3着に粘りましたし、最後もバタバタにはなりませんでしたからね。今回、一緒に走るワンダーアキュートも内と外が違うポジションを通っていれば、違った結果になったのかもしれません。ただ、テスタマッタは内に潜り込むと、しゃかりきになって走るところがありますから、外につけたのが良かったのかもしれませんが……。ワンダーアキュートを負かすという事であれば、外につけたかったですね。


-:去年一連の成績を見ても、“折り合い”が常に課題となっている感はありますね。

村:そうですね。昔からハミを替えたり、色々と試行錯誤はしているのですが、どうしても、レースに行くと真剣になり過ぎてしまうところがあります。それが道具を使って制御できるような問題じゃないというか、その辺りが難しいところですね……。昨年、四位騎手が乗り続けても、なかなか癖が直らなくて、今は岩田騎手が続けて乗ってくれることが、いい結果に繋がるといいのですが。

-:多少、乗り手は選ぶ部分はありそうですね。

村:そうですね。タイプ的にはしっかり押さえこめるジョッキーじゃないといけないかもしれません。

-:調教や厩での様子はどんな子ですか?

村:普段は大人しいし、調教だと本当に乗り易いんです。坂路だと若干掛かるところはありますね。(終いの1F14秒台と上がりが掛かった)根岸Sの最終追い切りは馬場の荒れた時間帯ですから、時計こそ出ていませんが、気にするようなところはありませんでした。

-:今週、来週の追い切りの内容はどんなものになりそうですか。

村:今週は併せて軽くやるので、来週はしっかりやることになると思います。調教駆けする馬でもないですし、競馬もつかってきていますからね。



-:この馬を扱う中で特に意識される部分はありますか?

村:少し神経質な部分があるのですが、年々そういうところも良くなってきました。パドックでイレ込むこともありますけれど、昔ほどの神経質さもなくなって、今は心身のバランスも丁度いい時期だと思います。ダート馬でいえば、年齢的にも完成されてくる頃ですから。

-:パドックでのタイプはどんなキャラクターでしょうか。

村:そこまでイレ込むことはないですけれど、ジョッキーが乗ると気合いが入りますね。最近は状態面も安定して、変にイレ込んだり、状態面で乱れることはないですから。著しくイレ込んでいなければ、いい傾向だと思います。こちらも安心して見ていられます。

-:去年の北海道でもランフォルセがマクってきたところで燃えてしまった部分はありましたね。そういった気性面は年を重ねてきて、良くなってきた部分はあるのでしょうか?

村:う~ん、そういう気持ちがあるから走るのかもしれませんし、そういう気持ちがなくなると、走らなくなるのかもしれない。いい部分を残しつつ、上手く立ち回る競馬をするのがベストだと思います。

-:フェブラリーSといえば、4歳の時に2着になった舞台ですね。枠的にはどのあたりがベストでしょうか?

村:先行するのであれば、外枠でもいいと思いますが、内目の枠がベストじゃないでしょうか?でも、そのあたりはジョッキーに任せるつもりです。枠が出てから、ジョッキー自身も考えてくれるでしょうからね。
ただ、テスタマッタの場合、折り合い面が一番の課題です。今回もそこがポイントになると思いますし、2着の時と同じように立ち回れたら、チャンスはあるんじゃないかと思います。


-:その点、今回はトランセンドであるとか、持ち時計のある先行馬がいるので、ここ一連の中でもレースはしやすくなるのかと思います。

村:どうなんでしょう。トランセンドも単騎でいくようなことがあれば、そんなにペースが速くなったりもしないでしょうし、それに(人馬初コンビとなる)ユタカさんがエスポワールシチーをどう乗るのかも未知数なところ。行きたいのが行けば、トランセンドも2番手で控えることも可能でしょうからね。ペースや展開に関しては蓋を開けてみないとわからないですから。

-:その東京コースですが、距離こそ違えど、3歳時にも好時計勝ちしていましたよね。

村:あの時は雨も降っていたから時計も速くなりましたね。ただ、脚長で胴もそれほど詰まっていないだけに脚抜きのいい馬場も向いています。それもあって、長い距離も持つんでしょうね。

-:折り合い面もそうですが、昨年のマーチSではモタれる面もみせていましたね。その点、左回りに変わっての走りはどうですか?

村:もともとトレーニングセールの時の走りを映像で観た時は、スムーズに走っていたように左回りは得意な気はします。当時はシャドーロールをつけていたので、多少、頭が高い気もしましたが、ダイナミックなフォームの印象がありましたね。
もともとは芝馬のイメージでしたし、「(競走馬人生の中で)一つや二つは勝てるかな?」と思っていたのですが、オープンでここまで通用するほどの馬になるとは思いませんでした。


-:テスタマッタはジャパンダートダービー以来のGⅠ制覇、また、中央での初GⅠ勝利が懸かります。フェブラリーSへ向けて、意気込みをお願いいたします。

村:相手も強いですけれど、なんとかこの馬の持ち味が活きるような展開になればと思います。また、これから先もある馬なので、一つ一つチャンスをモノにしていければと思っています。応援よろしくお願いいたします!



「オリジナルインタビュー」初登場、村山明厩舎とは


-:村山明調教師には初めてインタビューに出演いただきましたので、その他の話題についても、簡単にご紹介ください。まず、有力馬のスケジュールを教えてもらえますか?

村:サイレントサタデーという馬がデビュー2連勝しているのですが、弥生賞に行くか、スプリングSに行くか、検討しているところです。恐らく現状は距離が2,000mの方が競馬をしやすいでしょうから、弥生賞に行く方向です。

-:勝ち負けすれば、皐月賞もみえてくるだけに力の入る一戦ですね。この馬を初めてみられた時はどんな印象でしたか?

村:バランスがとれていい馬だと思いました。一歳で調教を始めて、体もどんどん大きくなっていくところでしたね。一度、僕が跨った時も、一頭でいるとそんなことはないのですが、併せると行きたがる部分をみせたりはしたものの、いい走りをするイメージはありました。

-:シンボリクリスエスらしい、気難しさもあったのでしょうか。

村:そういうところはないですね。シンボリクリスエスも難しい馬ではありますが、反面、怖がりなところもあるから、そう出るのかもしれません。それを上手くいかせれば、もっと走ってくるのかもしれません。

-:メモリアルイヤーは前走、鮮やかな逃げ切りでした。

村:次走は阪急杯かオーシャンSです。前回は軽く脚に腫れがみられましたが、抗生剤の注射を打ったら、すぐに腫れもひきましたからね。問題はありませんでした。前回はカラ馬もいて、必要以上に競られることのない運もあったレースですが、特にハンデ戦なら今後もまだまだ楽しみです。
同じ短距離戦線ではコパノオーシャンズというオープン馬が、いま放牧に出ていますが、笹針を打って休養しているところです。サマースプリントシリーズの時期にいい状態で帰ってきてほしいですね。


-:それと、気になったのが先生の厩舎服です。これはどんな由来でつくられたのですか?

村:角居厩舎の高田君(高田潤騎手の兄)の提案もあったのと、僕は騎手時代に松田国英厩舎にもいたので、青を取り入れたんです。あと、映画の「特攻野郎Aチーム」も捩った部分もあります。覚えてもらえるようにと(笑)。

-:個人的には、栗東トレセンの中で一番覚えやすい服でした(笑)。

村:そうなると、僕らが考えていることが機能している証拠ですね(笑)。

-:ホームページもキッチリ作られている印象がありますね。

村:外国の人にも日本の競馬の賞金が高いことをわかってもらえるように、もっと興味を持ってもらえるようにという事を意識しています。日本の馬が外国にいった時も競走成績がわかれば、こういう環境の中でやっているんだとわかるでしょうから、色々なメリットがあるんじゃないかと思います。

-:わかりました。長くなりましたが、村山明厩舎のポリシーを教えて下さい。

村:ジョッキーをやっていた頃に、小学生に高校生の勉強を教えるような事をしたり、体は大人なんだけれど、頭の中がついていかないような競走馬を見てきて、成長に合わせて競馬を教えていくことの重要性を感じさせられました。馬をいじめないようにすること。すごく厳しい調教を課したりはせず、“長い目で見て活躍できるように”という事を意識して馬造りを考えています。


【村山 明】 Akira Murayama

1971年東京都出身。
2008年に調教師免許を取得。
2008年に厩舎開業。
JRA通算成績は73勝(12/2/12現在)
初出走:
08年9月28日 2回札幌6日目7R コパノオーシャンズ(4着)
初勝利:
08年10月19日 4回京都4日目4R テスタマッタ


最近の主な重賞勝利
・11年 マーチS(テスタマッタ号)


競馬好きの父の影響で騎手を志す。1990年より斉藤義美厩舎よりデビュー。 その後、松元省一厩舎、大沢真厩舎、松田国英厩舎に所属。騎手時代は通算中央競馬3186戦218勝(うち重賞2勝)をマークした。 07年に騎手を引退、角居勝彦厩舎で調教助手となり、08年に厩舎を開業すると、開業2年目にはテスタマッタでジャパンダートダービーを制覇。 名門厩舎で培った名馬との経験を厩舎経営に勤しんでいる。