マカニビスティー&ゲンテンをドバイへ
2012/3/25(日)
矢作芳人調教師
海外遠征を糧に
-:ドバイWCデーに二頭出走させるという事で、まずゲンテンからお話を伺いたいのですが、昨夏にデビューした当時はどんな子でしたか?
矢:札幌で馬場に入れた感触で、芝も走れるんじゃないかと思って、芝のレースに出走しました。距離も1500mの芝はちょうどいいと思いましたね。予想通り勝てましたが、勝ったのに蛯名騎手が「この馬はダート馬だ」と言っていましたね。血統的なものも含めて、早めにダートを使おうと考えていました。
-:そして、ダートでも勝ち鞍を挙げて、前走のヒヤシンスSは追い込んで僅差の2着でした。内容に関してはどうみられましたか?
矢:あと二完歩あれば、着順がかわっていたレースでした。惜しかったです。
-:ああいう競馬ができたのは収穫だったんじゃないですか?
矢:いえ、むしろああいう競馬しかできないです。抑えるならガンと抑えないと、折り合えないという辛さがあります。
-:現状では折り合いが課題という事ですか?
矢:そうですね。それに今回は1900mという事で、当然、折り合いは課題になってきます。
-:ドバイの馬場の適性はどうですか?
矢:いいと思います。芝もダートもどちらも走れる馬ですかね。信楽(ノーザンファームしがらき)のタペタを随分走っていますし。
-:タペタというのは、日本の競走馬でも特別な装蹄をしなくてもいいという点で、使いやすさがありますか?
矢:我々には2年前のグロリアスノアの経験もありますからね。(以前の開催場の)ナドアルシバとは、全然違います。ナドアルシバだったら行かないですし、メイダンのタペタだから行くんです。
-:このレースに関しては、昨年も日本から出走した馬もいましたが、ファンやマスコミも相手関係や展開など未知な部分も多いですね。
矢:う~ん、南半球の馬は強いと思います。斤量は4.5キロ重いですが、生まれが1年違いますから。3歳のこの時期の馬と、4歳のこの時期の馬では普通に考えれば、勝負になりませんよね。ただ、そのぶん4.5キロ差があるので、それを活かせればと思います。
-:時期は違いますが、凱旋門賞などでは、3歳の方が斤量的にも有利だったりしますよね。
矢:そうですね。55キロ対59.5キロなので、そこに付け入るスキはあると思っています。
-:あとは輸送をクリアできるかも重要ですね。
矢:今回に関してはタペタが硬い馬場なので、向こうで強い追い切りはしたくないですし、遅めの日程を組みました。輸送で失敗をすると、取り返しのつかない事になりますが、出発からレースまで、10日しかないので、輸送が鍵です。そこへ向けて、万全の体制をとっているところです。
-:水や飼料なども持ち込むわけですよね。
矢:もちろんそうです。ただ、水に関しては気にしていません。とにかく今回の課題はシンガポールだけです。シンガポール経由なので、シンガポールで積み替えがありますが、そこがいかにスムーズにいくかですね。ノーザンファームの獣医さんが来てくれるので、そこは安心していますが。
-:シンガポールは熱気がすごいですよね。
矢:湿度ですね。しかしグロリアスノアの経験を活かして、対応していきます。担当の久保はスーパーホーネットで香港に行き、グランプリボスでイギリスに行き、海外経験も豊富なので、そういう点では安心して任せられますし、うちの厩舎もレベルアップ出来てきていますよね。あとは競馬に行っての折り合いだけですね。結果的にはウィリアムズ騎手がレースに乗る事になりましたが、以前に乗る予定だった福永騎手とも話していたのは、思いきって行ってしまうか、抑え込むか、どちらかハッキリした形になると思いますね。そこら辺はウィリアムズ騎手が研究熱心ですので、安心しています。

-:出発はマカニビスティーと一緒に。
矢:ハイ。21日の夜に出発します。関空で23時15分発です。そこから、シンガポールへ朝に着いて、3時間20分の乗り換え時間を経て向かいます。
-:けっこう長い時間が掛かるものですね。
矢:空調のない場所で待たされたくないですからね。飛行機からすぐに次の飛行機に積み込んでもらえるようリクエストしています。飛行機の中は空調が利いていますので。
-:ドバイの調教は本馬場でやるんですか?
矢:調教馬場も横にありますが、タペタの本馬場でやります。単走でサーッと水曜日にいくらか時計は出す形にはなると思いますが。
-:先程、折り合いが課題というと、当日は花火が上がったりするセレモニーもありますよね。テンションの面で心配なところはありませんか?
矢:うちの馬は出走の時間が早いのであまり関係ないと思いますよ。しかし、暑さは心配です。前半のレースで暑い時間帯に出走するので、昼は30度を越えますから。
-:わかりました。最後にゲンテンに関して、まとめの一言をお願いします。
矢:正直まだ3歳の春なので、今回の経験を今後に活かせればという意識はあります。グランプリボスの時にも、メディアの方々には言ったと思いますが、早い時期に海外遠征するという事は、後々の競走馬成績に活かせると思います。まずは無事にレースを終えてほしいですね。
最適な条件選択を
-:続いて、マカニビスティーについてお願いします。
矢:当初から出走は狙っていました。招待がくるのは遅かったのですが、レーティングは113ポンドを持っていたので、(招待は)くるだろうと思って動いていました。ダイヤモンドSを除外になり、仕方なく仁川Sに使ったんですが、あくまでステップと思っていましたから。 阪神大賞典のメンバーを見てもわかる通り、日本では日経賞を含めて天皇賞へのステップとして、かなりのメンバーが揃います。相手関係を考えて正直あのメンバーでは厳しいと思います。そうなると新設重賞で明らかにメンバー的にも恵まれると思われるここが狙い目だと思いました。たまたまドバイというだけであって、選択肢の一つでしたからね。選択肢として、そこがいいと思うから使うだけで、特にドバイだからとか、そういう意識はないですね。
-:適条件のレースがたまたまドバイにできたという事ですね。
矢:エエ。それと2頭で行けるというのも大きいです。特にゲンテンに関しては、3歳だけにね。マカニビスティーに関しては課題は一つだけです。それは暑さです。この馬は暑さに極端に弱いです。それでも、能力的にはヨーロッパのあそこにくるレベルの馬だったら十分戦える力はあります。ここ最近成績が安定して走れている要因は、冬場に走っているからです。いかに暑さ対策をやるかに尽きます。日中はできるだけ外に出すのは避けようと思います。
-:向こうの馬房は日本のものより、暑さ対策の設備は整っているんですか?
矢:空調が利いて、すごく涼しいです。快適な環境です。
-:なかなか掴み辛いところがあるようにみえますが、この馬が好走する条件を教えてください。
矢:距離が長ければ長いほどいいです。これほど折り合いに問題がない馬はいませんから。4000mのレースがあれば使いたいぐらい。あとは馬の状態さえ落とさなければ走ると思います。以前は気の難しさで、やめたりしていましたが、今はありませんからね。
-:エンジンの掛かりが遅いタイプでしょうか?
矢:そう言われればそうですが、そこら辺が不真面目なところです。とにかく自分からやる気を見せないので。しかし、それが長距離レースでは利点になりますよね。 成績的にも最近は安定してきました。前走のダート戦でも砂を被ってもやめなかったですからね。ちょっと位置取りが悪くて、上がりの早い馬場だったので4着でしたが、勝った馬は強かったにしても2着はあったレースでした。
-:世界へ出走するマカニビスティーですが、振り返れば、地方に在籍していた時期もありましたよね。
矢:色々物議をかもしましたが、東京ダービーというタイトルを獲れたので、自分でいうのもなんですが、結果的には英断だったと思います。
-:ドバイで勝てば地方で勝ってドバイでも勝つという異色の経歴になりますね。
矢:キャラクター自体が異色の馬ですからね(笑)。なんとかならないですかね。個性派ですし、そういう意味でも面白いんじゃないでしょうか。
-:レースはヨーロッパ風のスローペースのヨーイドンの競馬になるんでしょうか。
矢:そうでしょうね。そしたらある程度、自力でマクってもいいでしょうね。
-:昨日、小牧騎手に取材して意気込みを聞いたのですが、先生から小牧騎手にエールをお願いします。
矢:小牧騎手も地方競馬から来た人間ですからね、私も地方から来たような人間ですから、そういう点でドバイに向けて真剣に燃えてくれているので、なんとか一緒に頑張りたいなと思います。彼自身も言っていたと思います。「マカニビスティーの事は俺が一番わかっている!」と、豪語するぐらいですから。ちょっと癖のある馬ですから、外国人騎手とかには頼みたくなかったですしね。一時、乗っていたミルコ(・デムーロ騎手)はわかってくれていましたが、今は小牧騎手が一番分かってくれていると思いますから、頼りにしていますよ。
-:いくらビデオを見ていたもテン乗りでは難しいタイプと。
矢:この馬は難しいと思いますよ!

-:レースの情報など、全く伝わってこない部分もありますが、出走頭数はどのくらいになりそうですか?
矢:16頭じゃないかと聞いています。なかな招待が来なかったので、その間に自分なりに分析したんですが、マカニビスティーより弱そうなヨーロッパの馬に高いレーティングが付いていますからね。私が見て日本とは3ポンドぐらい違うんじゃないかと感じています。
-:ではマカニビスティーより3ポンド高い馬でも、勝負できるという事ですか?
矢:114~115ポンドの馬ならしれていると思います。しかし、ゲンテンも含めて海外遠征に関しては自分との戦いなので、いかに持っている力を発揮させてあげられるか?それだけだと思います。そうすれば結果はついてくると思います。
-:現地から、状態やドバイの雰囲気などの情報をファンへ向けて先生から発信してくれることも楽しみにしています。
矢:ええ。興味を持ってくれている方のためにも、できる限りの事はしたいと思います。
-:マカニビスティーもゲンテンも日本のG1馬ではありませんが、海外に出て行って、どんな競馬をするか、今後の日本馬の活躍の場が広がるかもしれませんよね。
矢:そうですね。それにあまりにトップだと、ドバイには行きにくいんじゃないですか?天皇賞や高松宮記念との兼ね合いもありますから。
-:日本でどういう条件で走っているかより、海外の条件に合った馬を連れて行けるかというのが重要なんですね。
矢:そうですね。あと相手関係です。そういう事も考えて行かないといけません。とにかく、2頭にとっても、我々にとっても、いい経験となるレースにしたいと思います。是非、応援してください!
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■最近の主な重賞勝利 |
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父の和人は大井競馬の元調教師。自身は名門・開成高校を卒業するも、父の影響を受け、競馬界へ足を踏み入れる。厩務員・調教助手時代は5つの厩舎を渡り歩き、05年から厩舎を開業。 スーパーホーネット、グロリアスノアなどの活躍馬を管理してきたが、グランプリボスで一昨年の朝日杯FSを制し、GⅠ初勝利を挙げた。 また、08年には著書「開成調教師 安馬を激走に導く厩舎マネジメント」を発刊。メディア対応も積極的にこなす事は勿論のこと、独特の厩舎服を用い、イラストタイプの厩舎ロゴも設けるなど、他とは一線を画した厩舎運営をみせている。 |







