右トモの蹄球部の損傷で出走回避が決定
2012/4/1(日)
松田俊輔調教助手(美浦・加藤和宏厩舎)
桜花賞の権利を獲りに西下したチューリップ賞は、2歳女王ジョワドヴィーヴルら並み居る強豪を豪快に差し切って見事優勝。種牡馬オレハマッテルゼ、加藤和宏厩舎に初重賞をプレゼントすると同時に、一躍桜花賞の有力候補に名乗りを挙げたハナズゴール。出走馬の中で最も個性的であろう同馬について、ともに栗東で滞在中の松田俊輔助手に、さらなる成長と激走の可能性を伺った。
-:お忙しい時間にありがとうございます。ハナズゴールについて色々と聞かせてください。
松:はい。よろしくお願いします。
-:血統がやっぱり特徴的ですよね。
松:そうですね(笑)
-:オレハマッテルゼの産駒でコレぐらい小柄というイメージもあまり無いのですが。
松:そうですね。お父さんも大きいって。
-:デビュー前の雰囲気なんですが、初めてこの馬をご覧になったのはいつぐらいですか。
松:えっと、デビューの2週間前?20日くらい前ですかね。
-:結構、牧場で乗込んできてから入ってきたという感じなんですか?
松:そうですね。だから夏は北海道の育成場にいて、それから小倉が始まった頃に来てるから。12月の頭…、11月の末ぐらいに入ってですね。それで僕が出張から帰って来て、競馬使う2週間ぐらい前から美浦でたずさわり始めて。そこまで他の人が調教してたんですけど、ちょっとチェンジと言うことで。
-:担当される前は何日間くらいいたんですか?
松:1ヶ月ぐらいですかね。
-:1ヶ月半ぐらい乗込んでデビューしたと?
松:はい、そんな感じですね。
-:そのころからやっぱり今みたいなスパッと切れる馬というのは感じていたんですか?
松:いやすいません、全然わかんなかったです(笑)。切れる足があるかどうかっていうのは未だにわからないです。
-:それはレースを見た僕らがそういう印象を持つだけであって、調教で乗っていたらそうは感じないと?
松:そういうふうになるようにどの馬も心がけてはいるんですけど、近いような馬がいるんで似通ったところはあるなってぐらいで。だから必ずしもこの馬もああいう切れる脚が使えるかって言うと…。
-:調教イコールレースじゃないというか、調教でもあそこまでしまいブーンと来るという手応えはないということですか。
松:うーん、そうですね。これは獣医さんからのお話なんですけど、13~14秒ぐらいの無酸素呼吸になってくると本来持っていたもので鍛えられるものではないって聞いているんですよ。
-:天性の素質とか。
松:はい。だからあの馬もそういう元々持った。ただそういう無酸素呼吸でしっかり走れるといっても、普段の有酸素運動で鍛えられるところもしっかりしていないと、それにはつながらないと思うんですけど。だからそういう鍛えられない部分が先天的に備わっていた馬ってことなんですかね。
-:そういうことを考えたらデビュー戦は結構仕上がって出たっていうふうに見ていますか?
松:はい、そうですね。本数はたくさんやって。
-:でも人気的には11番人気という。そのへんも調教イコールレースというあたりは結びつかないというか、わかりにくいタイプというのが影響してるんですかね。
松:そうですね、あくまで持論なんですけど。まず調教の本数は結構やっていて度合いとしては力が出せるってことなんですけど。うちは厩舎の方針であまり速い時計を出さないんですよ。チップとかだったら65とか。坂路でしまい10秒代11秒代出すような調教はあんまり先生が好まないのでそういうのはやっていないんですけど、ただそういう調教でしっかりやってる分、力を出せるんじゃないかと。もうひとつは気性が激しい馬なので、もういきなりでもそれが競馬にちゃんと向けばしっかり走れるだろうなと。
-:前向きな気性だから新馬向きの調教が効くというか?
松:そうですね。調教でも凄いうるさいんですよね、人間のいうことを聞かないというか。
-:洗い場でも厩務員さんががいつ怪我するんだろうっていうぐらいの。
松:はらはらしますね。それが乗って教えて行くうちにだんだん乗り手の言うことを聞くようになってきて。教えれば教えるほど走り方も良くなってきてどんどん覚える子だったので、競馬でひょっとしたらちゃんと自分の力を出せるんじゃ無いかなって感じではあったんですが。それでもあんなに走っちゃったんでちょっとビックリではあったんですけども。
-:もうこの馬が生涯であの人気になることはないような気がします。
松:ですかねー。でも当然の人気だとは思ってはいたんで、有力馬も結構出てましたから。厩舎も一流ばっかりでしたし。
-:続く赤松賞なんですが、これはレース内容としたら脚自体は使ってるような気はするんですが、流れが向かなかったというか。
松:これも自分があくまで思ってることなんですけど、この子は最初競馬ってのがわかってなくて凄い落ち着いた状態でゲート出てって感じ、まあスタートもポンと出てるんですけど。うちの厩舎はスタートどっと出たあとに練習でさらに追うってことはあんまりしないんですよね。それで2戦目はもう覚えちゃったんで行かなきゃいけないと思ってしまって、スタートでちょっと引っかかりかけたというか。調教でも1回競馬使われたことによって気持ちもだいぶ高ぶってしまっていたので、スタートでジョッキーとの折り合いとかそういうところで無駄な力を使ってしまったのかなって。
-:持って生まれた気性の激しいところが災いしたというか、よくあることですけどね。その後の菜の花賞なんですが。この軽い馬にとって14キロ増えるっていうのは460キロの馬が14キロ増えるのと、やっぱりちょっと違う感じがするんですけども。
松:この間は丁度放牧に出てるんですけど、赤松賞使った後に馬がたかぶって無理して走った分ちょっとガタガタっときてしまったんで、出していただいたんです。そこで馬が丁度成長してくれたという感じです。骨の成長度合いがすごく他の馬と比べて遅い馬で、普通の馬を100とすればまだ50%ぐらいしか進んでいないっていう。4月産まれというのもあるんですけど。戻ってきた最初の印象は背が凄く伸びたなって、またがった感じは変わりないんですけど、その分の体重もあるのかなって感じはしましたね。
-:成長できる期間が持てたっていうのも。
松:そうですね、大きいです。先生の英断ですね本当これは。あのタイミングでなかなか出すって言えないですよね。
-:当時の敗戦に関してなんですけど、体重が成長して増えた分もあったと思うんですけど、やや重の馬場に関してはどのような。
松:それよりも、使うのが少し早かったんですよ。パンパンの馬場だとしても結果は同じだったと思います。休み明けで気は乗っていたから時計は確かに出ているんですけど。

-:あの一戦を見たファンは、ハナズゴールって重い馬場が苦手なんじゃないかって思っていると思うんですけど。そういうことではないと。
-:次走はそれを証明するかのようなレースだったんでしたね。
松:そうですね。あそこまでの勝ち方するとは思ってなかったんですけど、叩いてこの馬の8~9割の仕上がりではあったので、多分結果は出るよって話はしていました。失敗したこともいろいろあったので、それもふまえていろいろ調教で工夫できました。
-:そのへんを詳しく教えてください。
松:ちょっと細かい話になってしまうんですけど。ハミを取るとどんどんひっかかっていくタイプだったので、結構坂路をダーって登って終わりという調教になっていたんです。そこで下のウッドッチップを使って長めに乗って、最初ペースを上げてグーッとハミを噛んだときにわざと外して馬をふわーっとさせるように、で最後にまたハミを取ってというかたちで。外せばふわーっとするんだよっていうのを教えました。頭の良い馬なので。
-:なるほど。
松:あ、いいんだ。っていうのを覚えてきてくれて、だからスタートでスッと出ても人間が「ダメだよ」って押さえればスーっと収まるようなかたちで、意図していることを馬が覚えてくれるようになったので。赤松賞のときはまだまだそういう感じではなくて、まあその気が良いほうに出るのかなと逆に思っていた部分もあるんですけど。
-:ああいう気性の馬っていうのはテンパるじゃないですか。そういう状況になったときに人の言うことを聞くほどの余裕はないはずなんですよ。だからそれができて、超えて行けるっていうのは、もしかしたら彼女的には大してテンパってる訳ではなく、ちょっと遊んでたりとかそういう部分が、余裕としてあるのかもしれないですね。
松:そう思います。今なんかハミを外しても65、66を馬なりで登ってくれるので、あの子なりに成長してきて良くなっているのを感じるとすごく嬉しいんですよね。乗ってるほうとしてもやりがいでもあるますし。
-:その500万を勝って、チューリップ賞という前に、初めての輸送があるじゃないですか?やっぱりこういう気性なので、やっぱり輸送に関しては敏感になると思うんですが。そのへんはどうようなケアを。
松:今までは中山や東京という近場でも輸送したら食べなかったんですが、使っていくうちに競馬が終わった後に食べるようになってきて、今なら大丈夫じゃないかなっていう軽い…。
-:願望というか?
松:はい。その輸送しても、競馬しても次の日には食べてくれてるんですよ。だから輸送しても、月曜日には食べてくれるから、まあいいんじゃないのかっていう。それぐらい乗り越えられんじゃないかっていうちょっと安易な気持ちはあったんですけど。それが本当に全然ダメで結局一週間かかってしまったんです。
-:一週前に入ったってことですか?
松:えっと、二週間前の土曜日に栗東に入りました。
-:栗東に入ってもそんなに食べなかったのですか?
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