関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

松田俊輔調教助手

松田俊輔調教助手(美浦・加藤和宏厩舎)


松:今までこんなに食べなかったのないぐらいに、一升とか。今までご飯はすごく食べるんですけど実にならないなってタイプだったんですよ。でも食い気だけはあるからまあいいやぐらいの。その輸送して1日2日ぐらいだろうと思っていたら、2日経っても3日経っても全然食べなくて、こりゃどうしようとか思って。見るからにどんどんどんどんしぼんで。厩務員もいろいろ混ぜたりやるんですけど、もう馬房の中を歩き回っちゃったりとか。競馬だと思ってしまっていて。

-:また走らされると。

松:でも調教ではすごく落ち着いていて、美浦にいるのと変わらない落ち着きを見せていたんです。じゃあ食べるだろうって思ったら戻るとまたグルグルまわりはじめちゃって。でも木曜日ぐらいから食べる量がちょっと増えてきて、土曜日には普段どおりになったので、先生にも言って早いところやらせてもらって。で、その後も普通に食べてくれました。体重はその一週間食べてないので10キロは減ってるなという話はしていたんですけど。

-:その調整段階の話を聞くとチューリップ賞で勝ち負けっていうのは、正直思っていたんですか?

松:いやあ(笑)、ないですね。ただ、ひょっとしたら番狂わせさせるぐらいの力はあるんじゃないかなっていうぐらいの期待は高かったんですよ。ただ、そういうアクシデントで食べなかったので、ちょっとどうかなっていうのは正直。3強の内の1頭がコケてくれれば食い込んで、何とか権利取れば桜花賞でもうちょっと良い状態に持って行けるんじゃないかっていうぐらいの…。

-:2週前でしたっけ、見せていただいたときに正直毛艶はそんなに良くなかったんですが、さっき見せてもらったらやっぱり大分良くなってますね。あのときとは全然違う印象です。

松:違いますね。ようやくこの環境に慣れて、やっぱりチューリップ賞よりもう一歩能力出せる状態には持っていけています。今までしっかり仕上げて巻き上がったっていうのは1回もないんですよ。どっちかというと余裕残しの部分は確かにあったので。

-:チューリップ賞のレースなんですけど、やっぱりジェンティルドンナとかジョワドヴィーヴルとか、特にジョワドは2戦目でG1を勝ったような異質な馬ですけど。その馬達をマークしながら進めていたんですけど、どのようにご覧になられていましたか。

松:もともとジョッキーは前に行きたいと言ったのですが、もう変な話不発でも良いから最後まで我慢してもらって勝負してもらいたいって気持ちが強かったんです。だから相手がどうのこうの、例えばジョワドが逃げていたとしてもジョッキーには我慢して最後まで待ってくれと話をしました。

-:じゃあマークしてた訳じゃなくてあの馬自身の我慢させる競馬をしたらたまたまあのポジションに馬がいたという?

松:はい、そうですね。ちょっと動くの早いよーって心の中では思っていたんですけど…。ただカイ葉を食べなくて調教が軽過ぎたっていうのがあって、気の乗り方が普段と違ってちょっと足りなかったというのもあるんで。スタートも出遅れない、すごくいい具合の馬がちょっと出遅れたりとか。ジョッキーもちょっと不安になっちゃったのかもしれないですね。

-:さっきも話に出たはじけるタイプっていうのはやっぱり馬場が良いところでこそというイメージがあるんですけど。桜花賞の舞台である阪神の馬場適性はどんなふうに思われていますか?

松:何かもう結構荒れてるって聞いてるから…。確かに不安なところはあるんですけども、最近成長とともに力強さも出ていて。例えば坂路でけっこう雨が降ったりして、馬場がすごく悪くて時計かかったりするときでも、普通のいつも乗っている時計を難なく苦にせず登ってきちゃうんですよね。っていうのを考えると極端にボコボコだったらダメですけど、まあ悪い分にはどの馬も一緒でしょうから、そこまで苦にしないんじゃないかなって最近は。

-:爪の形とかもこないだ見せていただいたんですけど。小さいですし、言われてみれば重馬場向きかもしれないですね。

松:はい。美浦で乗ってた頃と違って、腰の付け根が特になんですけど、ちょっと筋肉痛が出てきてマイクロをあてたりしてまして、うまいことケアしながらやっていったらそこに筋肉が付いてきたんでしょうね。だから重馬場にも耐えられるような体にはなりつつあるのかもしれないですね。

-:前に坂路で加藤征先生に会ったときにフィフスペトルがいて、話したら『栗東の坂路はきつ過ぎてガタガタになっちゃうんだよ』って言っていて。こんな見栄えのいい馬がやっぱりこたえるのか、そんなに違うんですかって聞いたら『全然違うよ、こんなところでバリバリやったら馬が壊れちゃうよ』って。それを短期間で慣れるっていうのはすごいですね。

松:まあ先天的な能力なんでしょうね。チューリップ賞が終わってから変なところに筋肉が付いてきちゃって、鞍がこう後ろにずれるようになってきちゃったんですよね。最初から付けてて、だんだん付けなくなるっていう馬はいるんですけど、逆にこう下がってきちゃうっていうのは初めてなんで、ちょっとびっくりしています。ご飯も食べて、細くなって滑っているわけじゃないので。

-:今まで通りのセッティングで。

松:危なくて乗っていられないくらいになっちゃって。あっちこっちと目に見えてない部分にも筋肉が付いてきたんでしょうね。

-:骨の面はどうですか?

松:最初はちょっと追い切りでもやるとソエ出たりとか、こう熱が出たりとかあちこち気になることもあったんですけど、不安という不安は少なくなってきましたね。

-:歯替わりとかはどうですか?

松:丁度この前、先週の水曜日に6本。下の2本と奥歯2本、でこっちも奥歯の上を2本で、後1本とれそうだけどまだ我慢しようかっていうことで。

-:ペンチで引っこ抜いた?

松:あ、そうです。全部引っこ抜きで。口血だらけでしたね。ハミ受けがちょっと悪くなってきていたので、厩務員と話してそろそろ伸びてきてるかもしれないってことで確認したら、あーこれだったら取れるねって。

-:桜花賞直前にペンチで引っこ抜きっていうのも怖いですものね。

松:ちょうど3週前の水曜日だったので、追い切りやる前でもあるし、ちょうどいいなって頃を見計らって、うまいことできました。抜いた次の日にはいつもと同じように、同じ強さで同じ状態にもっていけたので、いいタイミングで抜けたのかもしれないですね。

-:まずます桜花賞が楽しみですね。

松:そうですね。相手があっての競馬だから難しいとは思うんですけど、今のままでいけばいい状態で出せそうですから。ただ使い続けている馬なので、悪くなるとは思ってないんですけど、相手がどのぐらい良くなってきてるかの方が怖い。怖いっていうのも変ですけど。



-:チューリップ賞で休み明けだった馬がどこまで良くなっているかと?

松:他のトライアル使ってきた馬も良くなってくるだろうから…。この時期の牝馬の成長って1週間で全然違うっていうぐらいだから。能力としては勝つ力があると信じてはいるんですけどね。

-:あとハナズゴールのパドックはこんなのだよっていうのを教えてください。僕はチューリップ賞で見たとき、とにかく細い馬だなと思ったんですけど。

松:そうですよね。だんだんパドックでは興奮するようになってきていて、やっぱり2人引きじゃないとゆっくり歩かせられないかなと。チューリップ賞のときもそうですけど、ちょっとテンション高くて三分の一ぐらいはダク踏んでいるところがありました。ただこっちが声をかけると落ち着いて、また自分からグオーッて力が入っていって、また抜いてという繰り返しなので。今回も二人で引くつもりなんですけど、なんとか前回ぐらいは落ち着いてくれるんじゃないかと思っています。

-:ファンが多くなるのもテンションが上がるきっかけになるかもしれないですね。

松:チューリップ賞も結構入っていて、写真撮ってくれてる人もいましたから。普段の調教もパドックもメンコは着けているんですけど競馬では外すんですよ。ゲート前で。

-:理想的な体重はどのくらいと思ったらいいですか?

松:先週の金曜日422キロで、1週間たって422を維持できているので。そう考えるとたぶん418ぐらいだと思うんですけど。体重を増やそうと思って、何キロまでもって行くとか考えると逆に重くなっちゃって、ダメじゃないのかなと。そんなに数字にこだわってやってるわけではないんですけど。例えば極端な話、410キロぐらいでも今の状態で410だったら別に減っちゃっただけかなと。そんなに気にはしてないです。

-:5戦ご覧になって枠はどこら辺がいいですか?内に突っ込むという競馬もありですか?

松:はい。全然かまわないと思います。

-:桜花賞って最後外に膨れるレースじゃないですか?内が開くので、あれだけ切れるんだったら細かいところをぬって来れるんじゃないですか?

松:そうですね。自分の中では500万を勝ったときみたいにグイグイグイ引っ張って前についていっちゃうと思うんですけど、そう考えると、うまいこといくのかなと。スタートして2戦目みたいにダーッと行っちゃうんじゃないかなという不安が強いです。そこを御すことができればチャンスもあるのではないかと。

-:そうなると大外枠は嫌ですね?

松:調教でもそんなに引っかかる馬ではないので大外で前いなくても折り合えると思うんですが、壁ができた方が間違いはないかなと。まあそうならないように調教で頑張っていかなければなりません。

-:では最後にファンに向けてメッセージをお願いします。

松:応援してもらえるっていうのはこっちのやりがいにもつながりますし、その分期待されているというプレッシャーもあるかもしれないけど、声をかけてくれればくれるほど楽しみというか携われている事を光栄に思うし、すごい馬やってるんだなって実感にも繋がります。応援がそのまま結果につながるように頑張りたいですね。

-:今日は長い時間、ありがとうございました。

松:こちらこそありがとうございました。

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(取材・写真)高橋章夫




【松田 俊輔】 Shunsuke Matsuda

大学時代に馬術部で馬と出会う。その後、新冠の日高軽種馬共同育成校舎の育成場で馬乗りの講師を4年間していたという異色の経緯の持ち主。当時の教え子は今も東西トレセンで活躍中。当人がトレセンに入った後は佐藤征助厩舎で持ち乗りを3年間経験し、移籍した高木義夫厩舎が解散後は現在の加藤和宏厩舎に所属している。