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小林真也調教助手

小林真也調教助手(栗東・平田修厩舎)


デビュー戦がベストスタイル


-:それを使って行くという、今までの話を総合すると、まだ上積みはあると?

小:まだ上積みはありますね。3戦とキャリア自体も少ないし、何せ、一戦毎に精神的にも肉体的にも、すごくパワフルになっているんですよ。精神的にも成長しているし、歩様も柔らかくなるし。だから、特にニュージーランドTの後は、本当に馬がバリッとして、「すごいな」っていうくらい変わりましたね。

-:じゃあ、こちらが心配している疲れっていうのはそれほどないと。

小:なさそうですけどね。で、ニュージーランドは僕らから見たらタフなレースだったから、長めにレース後は休ませたんですよ。平田厩舎としてはけっこう長めに。

-:それは幾日ですか?

小:5日です。5日ぐらい普通なんですけど、平田厩舎としては長めに休ませて。そうしたら、もうホントに、凄まじい手応えで走って、引っ掛かるわけじゃないんですけど、「こりゃあ、すごいな」っていう、「もう疲れどころじゃないな」って(笑)。

-:すごいですね。

小:ただ、僕の立場で不安点を言うとしたら、スタートがちょっと危なっかしいんで、その時に脚をもつれさせたりぶつけたりして、落鉄したりとか、どこかケガしたりとかしなきゃいいなって、レースまでに。それだけです。



-:本番の枠としては、どう見といたらいいですか?

小:この馬はどんな競馬でもできるんでどこでもいいと思うけど、まあ、常識的に考えたら、真ん中より内のほうがいいんじゃないですかね(笑)。

-:厩務員さんは、もともとベッラレイアを担当されていた方で、で、秋山真一郎も、ベッラレイアのオークスでハナ差負けをして、先生もこの同じスタッフがもう一回府中を。

小:まあ、違うのは、調教助手が違うんですけどね(笑)。まぁ調教助手は違えど、後は一緒じゃないですかね。厩務員もジョッキーも。

-:かなり楽しみですね。

小:そうですね。何というか……、最初の危なっかしさを思ったら、僕はもうホッとしていますね。本番はマイルカップなんですけど、もう僕はここまでで十分ホッとしていますね……。

「秋山さんも、もう腹は据わっていると思うんです」


-:秋山騎手もずーっと「まだ先ですから。まだ先ですから。5月に仕上がってくれたら良いですから」って口癖のように言っていて。

小:そうなると思うんですけどね。

-:とうとう本番が来てしまいました。

小:でも、10月に入ってあれだけみっちりゲート練習をやって、競馬を使っていないとはいえ、ずっとトレセンで乗っているわけじゃないですか。どこで疲れが来るのかなと思って見ていたけど、全然来ないですね。ほんと、パワーアップしていますね。

-:ゲームみたいな馬ですよね。こんなにパーフェクトな成績なんて無理ですよ。リアルじゃ無理なはずなのに。

小:だからそれだけに、ここまで上手く行き過ぎたけど、そろそろ現実の厳しさというか、競馬の厳しさを思い知らされるんじゃないかなって気がしますけどね(笑)。

-:思い知らせないでくださいよ。もうベッラレイアで十分ですよ(笑)。

小:いやー、マウントシャスタとか強いと思うんですけどね。「あの馬強いな~」と思いました。

-:マウントシャスタもマイル以上のスタミナを持った馬ですよね。

小:そうですね、はい。だから多分、池江先生はダービーに向けて馬を作っていると思うので、ここで100%ってことではないんでしょうけど……。まぁ池江厩舎の良い馬を相手にGIを勝つなんて、ちょっと想像がつかないです(笑)。

-:弱気発言ですね(笑)。

小:弱気というかなんか、池江厩舎とか角居厩舎とか、ああいうところの馬を負かして、GIを勝つなんてことはあるのかなあと。

-:でも、そういうのを全部、面倒見てくれるのが馬でしょう。

小:そうですね。多分、人気にはなるんでしょうけど……。

-:展望としては何かありますか?池江厩舎という高級ブランドが立ちはだかる可能性もあります。

小:もちろん前走取り消したジャスタウェイも強いと思うんですけど、個人的にはマウントシャスタはかなり強いイメージを持っているので……。

-:馬場不問ですしね。

小:そうですね。後は最初に言ったように、運です。結局、詰まるところは(笑)。展開とか。

-:でも運を持っている馬ということで言えば、3戦パーフェクトなら相当持っていますよね。

小:相当持っていますけどね(笑)。

-:最初に教えてもらった時の手応えよりも、かなり超えていますからね。

小:そこから1戦毎にパワーアップしたし、精神的にも落ち着いてきたし、コントロールが利くようになったし、もう言うことなしですよね。

-:じゃあ、もうあとは色んな小細工なしに府中の千六を走るだけと。

小:そうですね。この馬も先行力と持久力が持ち味だと思うので、他の馬がどうとか、位置取りがどうとかあまり気にしないで、この馬のペースでスーッと行ってハナ切るなら切って良いし、ムチャクチャ速い馬がいるならその後ろに付ければ良いし。で、あまり位置取りがどうとかこだわらないで、この馬のペースで走ったらもうバテないですからね。



-:では、逆に考えれば、逃げたらどうなるんですか?

小:僕ね……、逃げたらもっと良いと思うんです。実は(笑)。抑えるより……逃げるというか、押して行くのではなく、スーッと馬なりで行ったらハナを切るくらいだと思うんですよ。そういう走りができれば一番良いと思うし……。ニュージーランドTもゲートが開いて好スタートを切ってハナへ行きかけたところを、内からガシガシ行く馬がいたからちょっと下げたけど、普通にあのまま競り掛けられずに、引っ張らずにそのまま行ったらもっと良かったと思うし。

全く無理しないで先行できるんですよ。他の馬はある程度出して行ったりして前に行くと思うんですけど、この馬は本当に馬なりでスーッとハナ切るくらい行くので、そこで行った位置が先頭か2番手かは分からないし、それはレース展開によって違うけど、そういうことをやれば、それ以上抑える必要はないと思うし。


-:一番聞きたいのは、ハナに行ってリラックスして折り合える馬もいるし、ハナに行ったことで戸惑う馬もいるじゃないですか。キャリアがない馬にとってそれはギャンブルになるから、その時にどうなるかが見えないんですよね。ただ、府中の千六で変に相手に合わせて2,3番手って形を決め込むよりかは、遅いんだったら行ってしまうのもアリかなっていうのはありますよね。

小:秋山さんも前走のニュージーランドTの後にそう言っていましたし、多分もう腹は据わっていると思うんです。もう別に無理に抑える必要もないし、この馬のペースで行ってそれがハナなら大丈夫だし。デビュー戦で逃げ切っていますし。あれこそこの馬の本当のスタイルだと個人的には思っています。

-:しかも突き放しましたからね。昨日の追い切りの時計はどんな感触でしたか?

小:時計は54.2だったかな。ラストは12.9。で、本当のことを言えば、テキの指示は14.0-14.0くらいで56くらいだったんですよ。ただ、それではいくらなんでも軽すぎるし、馬もバリッと充実して太いというか、まだまだ余裕のある体なので、しかもジョッキーがそんな遅いペースで引っ張ってもしょうがないので、「普通に考えないでやってください」って言いましたね。それでジョッキーもその通りに乗ってくれて。

-:終いにちょっとだけ反応させて。

小:そうですね……。僕が後ろを走っていて、最後は別に府中をイメージしたわけじゃないですけど、こっちから見えるところに寄って行ったので、その分、終いまで反応させてって感じにしておきました。

-:そういう隠し味を使っているわけですね。私もあの時、写真を撮っていたから。

小:そうなんですか。あれは別に僕が写りたかったわけじゃなくて(笑)。ブラックヒルは坂路を結構ポワーンと走ってしまうところがあるので、下手に56とか57だと嫌だなと思って。

-:軽くなり過ぎたら嫌だなって。プレスをかけたと。

小:なり過ぎるのが嫌だから、ちょっと後ろで最後馬の見えるところでプレッシャーを掛けましたね……。

-:それで最後、終い12.9っていうのはちょっと反応しているってことなんですね。

小:そうですね、はい。秋山さんはもうずっと手綱プランプランって、ずっとこうやっているだけでしたけどね。

-:じゃあ本人は乗っていただけであまり何もしていないんですね。

小:そうですね。全然行かなかった、凄く折り合ったって言っていましたね。

-:で、本追い切りは秋山騎手ではなく小林助手と。

小:いやいや、追い切りはずっと僕ですけど、競馬の一週前からジョッキーが乗って。で、来週はCWでジョッキーがある程度強めっていうか。

-:秋山騎手が本追い切りに乗るって珍しいですね。

小:そうですか……?

-:「厩舎の人がやってくれたらいいです。自分が乗ったら反応し過ぎる」ってことを言う人なので。

小:なんというか、「気性難の牝馬ならともかく、一応男馬だし、ある程度ピリッとさせておいた方が良いかな」ってことで。

-:輸送に関しても、そこまで不安はないですか?

小:輸送は大丈夫ですね。全く問題ないです。

-:じゃあ楽しみですね。では、最後にカレンブラックヒルを応援するファンに一言を。

小:一戦毎に成長している馬と、秋山真一郎騎手を応援してください。

-:ハハハハ(笑)。

小:ハハハハ(笑)。馬と秋山騎手を応援してください。

-:小林助手も秋山ファンなんですね。

小:僕は大橋厩舎の時から、いやトレセン入る前からか。ずっと競馬を見ていて、凄く綺麗に乗る人だなと思って、馬乗りの端くれとしてずっと憧れていました。ただ、ああいう風には乗れないけど、憧れていました(笑)。そんな人と一緒にGIを獲れたら幸せですね。

(取材・写真)高橋章夫


「持ち味は類稀なる持久力」
小林真也調教助手インタビュー前半→


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【小林 真也】 Shinya Kobayashi

中学3年でテレビゲーム「ダービースタリオン」にハマる。そして、5年制の富山国立高専を3年で辞めて早田牧場に。その後、天栄ホースパークで5年務めトレセンへ。

大橋厩舎に所属した後、現在の平田厩舎で攻め専として勤務。一昨年のマーメイドSを勝ったブライティアパルスが思い出の一頭。「膝を骨折してから掛かるようになってしまって潜在能力の半分くらいしか出してやれなかった」と悔やむ。気難しく、普段からうるさかった同馬が輸送した時、夜明けとともに馬房から外に出してレースまで延々歩かせていたのを懐かしむ。

牧場時代から秋山騎手のフォームに憧れていた。「自分じゃあそこまでキレイに乗れないですけどね(笑)」調教後も事務作業を淡々とこなす頭脳系ホースマン。