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小坂忠士騎手

小坂忠士騎手

障害レースの心得


-:中山グランドJ以外にも、今年は障害レースで結果を残されていますよね。僕がきになったのは、平地のレースを買う場合「今週の追い切りで、これぐらいの時計が出たから買いかもしれない」とか、調教でジャッジできる部分があると思うんですけど、障害って、調教映像でも目にするチャンスはないし、中間の様子というのが、ほぼ見られないじゃないですか?新聞などをファンが目にした場合、どういったところを参考にできるか、感じるところはありますか?

小:ああ、どうなんですかね……?その馬の状態も大切なんですけど、状態自体は数字で見られるとは思うんですよ。あとはジョッキーとのコンタクトと違いますかね。やっぱり人それぞれなんで、馬と人間とのかみ合いも大事なんで。それはもう、人に聞くしかないですよね、そのへんは。

-:ハハハハ(笑)、聞ける人(記者)はいいですけどね。

小:そうですよね、だから、そのへんはやっぱり限界があるかなとは思います。

-:そうそう、そこがちょっとね、何かむずかしいなと。

小:そう言っても、毎週、新聞屋さんとかスタンドに入ります。そのへんは、みんな聞いてくれていますからね。

-:障害レースのほうは、本人のジャッジというのは、当たりやすいものか、当たりづらいものかというのは。

小:当たりやすいほうと違いますかね。やっぱり、レースに行く前からの人の心理状況っていうのも、あると思います。デカいと思いますよ。練習から「ちょっと飛びが……」という時とか、やっぱりレースで慎重になりますしね。そういうのもありますし、馬に力があっても、慎重に運ぶ時ってありますし。

-:やっぱり、その練習の飛びの状態というか、上手さっていうのは、実戦に行っても反映されやすい部分なんですか?馬にもよると思いますが。

小:レースに行かなければ分からないというのが、一番だと思いますよ。

-:でも、それは競馬全部に言えることではありますよね。

小:そうですね、でも「レースも同じように行けたらいいな」と思ってレースに行くのと、「レースでは何があるか分からない」と思って行くのとはまた違うんで、そのへんは人の気持ち次第かなとは。

-:そして、今年コンスタントに勝てている理由はありますか?

小:その、“たまたま”なんで、その“たまたま”が続くようにしたいです(笑)。

「最近勝てていない平地でも勝ちたい!」と語っていた小坂騎手。取材週にライブリシーラで勝ち鞍をあげていました


-:まあでも、年によってちょっと変わりますもんね、その人が当たっている年っていうのは。北沢さんが勝っている年もありましたし。

小:はい、そこは大きいと思うんで。「そういういいことが持続するように頑張らなければいけないな」とは思いますね。

-:持続させるために、何か努力していることはあるんですか?

小:“努力”っていうよりか、イメージは大事かなと……。いい時のイメージをできるだけ持続させること。今、いい馬にも乗せてもらっていますしね。「ヘタレな競馬はしないように」っていう(笑)。

-:では、最近、作っている馬で、今後、期待できそうな馬はいますか?

小:そうですね……、これからも走りそうなのは出てきそうですね。まあでも、去年末に「いい雰囲気だな」って感じた馬が、今年になって結果を出してきてくれているんで、それに今乗せてもらっている練習馬とかも続けるように、同じような感じで、練習するようにしていますけどね。

-:その馬にもよると思うんですけれど、攻め馬や調教の時のテーマじゃないですけど、どういった自身のポリシーがあるんですか?

小:う~ん、まあ、やることは周りと一緒といえば、一緒かな……。

-:まあ、誰でも障害ジョッキーは一緒と。

小:いやあ、人によっては多分違うと思うんですけど、その練習の仕方とか。だから、その中で「自分でこれはしておきたい」というのは、やるようにはしていますけどね。……なんて言うんだろう、「走りそう」っていうのもいますし。

-:じゃあ、「今後の自分のここを見てほしい」みたいなものは?

小:いや、僕より馬を見ておいてもらったら(笑)。

-:まあ、人よりも馬が中心という、競馬において、それが真っ当な答えだったりするものじゃないですか。

小:そうですね。まあ「僕を見られても」というのもありますし(笑)。

-:昔はどうなのかわからないですけど、最近は結果が伴わないと「ジョッキーがダメだ」と、騎手のせいにする意見が多い気がするんですよね。そこに馬がないというか。

小:じゃあ、僕は「ジョッキーがダメだ」と思われないように頑張ります(笑)。

-: “馬○○、人○○”ってよく言うじゃないですか、小坂さんから、見て競馬というのは、1対9とか、2対8とか。それはどんな感じなんですか?

小:どうなんですかね、馬あってのジョッキーなんで、そこの負担をできるだけ減らしていくみたいな感じですけど……、割合で言ったらどうなんですかね。割合のバランス的には、やっぱり、「人○○」って決めるんじゃなくて、やっぱり馬のほうがデカいのは当たり前じゃないですか?それをちょっと緩和していけるように、馬の力をちょっとでも、みたいな。「馬の力が100だったら、100出せるわけない」って言ったらおかしいけど、その100に近づけるような乗り方を努力します。「馬を良くする」とかいう表現よりか、僕は「馬をいつも通りの感じで乗ってくる」っていう感じですかね、僕の性格としては。

-:まあスポーツでも、それは人間がスポーツする上でも同じですよね。

小:「良くする」っていう表現がちょっとまだ、僕の中じゃよくわからないですね。障害とか特にそうですもんね、平地のレースとかって、「能力以上」って表現があるじゃないですか、やっぱりそれは合っているだろうし、それがないと走らないと思いますけど、障害レースはそれをすると、飛越があるんで、「能力以上」のことって、あまり要らないんですよね。やっぱり“ここぞ”の時とかは要るかもしれないですけど、普段どおりでいって結果を出せるやつというのが、一番強いかなと思います。「能力以上を出すんじゃなくて、その自分の普段持っている能力を、競馬にちょうど使えるようなイメージで乗って来られたら、一番いいかな」と。

-:そんな中で、それが一番実践できていた馬ってどれだったんですか?

小:実践ですか……。う~ん。

-:もう騎手10年以上やられて。

小:いや、でもその、乗っていてすごく走って来ていたやつは、馬がやっぱりそういうふうになっていますね、普段どおりのまま競馬も走りますし。そのバランスがやっぱり崩れているからクラスが下になったり、とれているやつは走ってきたりという感じですね。そうなるように仕向けるような乗り方を心がけます。だから多分、最近の若い騎手とか、乗り方、考え方がけっこう違うと思うんで(笑)。「競馬、競馬、競馬してくるぞ!」っていう乗り方の人、そんな怖くないです(笑)。「あっ、競馬してきたらいいんじゃない?」って。「どれだけ競馬で上手く内突いて飛んできても、馬に余力がなかった」じゃあ一緒ですからね。僕はその間は、できるだけ馬をリラックスというか。

-:リズム良く?

小:そうですね、そっちのほうに重点的を置いて。それをクリアしてきているやつが、初めてやっぱりこっちが競馬に集中できるみたいな。やっぱり、そうなってきたら強いです。

-:呼吸も合い。

小:ですね。だから最初から「競馬、競馬」ってしてくる馬は、伸びてこない。大きいレースに行ったら怖くないですよ、普段の競馬を見ていたらね。

-:いざという時に勝負に来られるほうが怖いという?

小:そうですね、普段、だから余裕持って乗っている人っていうのは、そういうところ強いですよね。やっぱりもう上の人は、そういう競馬してきますよね。



-:そんな小坂騎手も、そろそろ30代に突入しますよね。もう上の年齢に入ってきていますよね。

小:はい(笑)、もうすぐ30です。2月生まれで、まだ来年ですけど。

-:早生まれですね。三十路に突入するにあたっての意気込みは。

小:いや~、G1勝ちたいな。G1勝ったら、もっとドヤ顔で喋れるのに(笑)、勝ってないから。

-:まあでも、リーディングっていう今年のチャンスがあるじゃないですか?

小:頑張らないといけないですね。

-:チャンスはあるわけですよね、十分。早いかもしれないですけど、4月で。

小:まあ、重賞までですよ、勝っているのは。勝たせてもらっているだけに、G1でもいい結果を出したいんですけどね。やっぱりG1を勝っているのと勝っていないのでは、「違うな」っていうのがありますね。その勝っている人の話を聞くと。

-:もちろん、周囲からの目というか、見た目的にもそうですよね。

小:わからないですもん、「勝ってはじめて分かることってあるんだろな」ってことはあるんですけど、それが何なのか。

-:でも、それが中山グランドジャンプでの8馬身って考えると(笑)、まだ遠そうな感じが……。

小:それなんですよ(笑)。

-:ただ、障害レースって、何が起こるかも分からないわけですから。そもそも、大知さん(柴田大知騎手)自体も、3年前くらいだったら、あんなに乗るなんて誰も想像しえなかったことですからね。

-:すごいですよね、コスモオオゾラも4着でしたし。

小:弥生賞を勝ったわけですからね。

-:すごいですよ、もう余裕というか、貫禄が出てきていますもん。

小:ホントですか?グランドジャンプの時だって、気づいたらもう、ヒョコっと、いい位置にいた感じでしたよ。焦っているわけでもないし。

-:確かに、あれだけ人気を背負っているわりには……。

小:ドッシリ構えてね。

-:「そこでいいのか?」っていうのが、ちょっとありましたけどね。

小:まあ、そのへん、馬を信用してね。……すごいな。僕もそうなるように頑張ります。今年はそうなりたいですね。


「完敗も……、力を再認識したバアゼルリバー」
小坂忠士騎手インタビュー前半→

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【小坂 忠士】Tadashi Kosaka

1983年 兵庫県出身。
JRA初騎乗
01年3月3日 1回阪神3日4R キクノプロスパ(2着/13頭)
JRA初勝利
01年3月3日 1回阪神3日7R ブリッジシャトー
JRA通算成績は113勝
※うち障害は60勝(12/04/28現在)


■最近の主な重賞勝利
・2012年 阪神スプリングJ(バアゼルリバー号)


2001年に境直行厩舎所属で騎手デビュー。同期には川島信二、大庭和弥、難波剛健騎手ら。
デビュー2年目に平地で19勝を挙げるなど、現在でも平地・障害、どちらにも騎乗。03年に阪神スプリングジャンプをカネトシガバナーで制し、障害重賞初勝利をマーク。
また、史上初の障害重賞8勝を挙げた障害の名牝・コウエイトライの主戦ジョッキーとして活躍。うち7勝を小坂騎手自身の手で挙げている(残る1勝は高田騎手によるもの)。