市丸善一助手インタビュー
本馬場入場の時に、馬場の中から出ていくやん、馬場に出たらスタンドにお客さんがブワーッて見えんねん。で、馬が出て行ったらお客さんも「ウオーッ」て…。
2009/9/6(日)
去年のダービーはホンマに凄かったね、雰囲気が独特やもん。
具体的に何が変わっているって訳じゃないけど、周りがそういう風になっているんやろうな。
JRAがそう、馬主さんもそう、お客さんもそう、みんながダービー仕様みたいになっているから。
普段のレースはレース開始の70分前に集まるんやけど、G1の時って90分前に集合やねんな。
普段より20分早く集まる分、長く感じるはずやのに、ダービーの時はホンマに短く感じたもん。
レースの90分前になったら、まず装鞍所に集合して、馬に鞍をつけてパドック行きます、パドック回って本馬場入場します、競馬します、競馬から上がって来て帰ります、っていう一連の流れが凄く早く感じたもん。
いつもやったら正直な話「長いな~」って思う事もあるんよ(笑)。
でもダービーの時は全然、気がついたら終わっていたみたいな感じでね。
お客さんの歓声も凄いもんね。
本馬場入場の時に、馬場の中から出ていくやん、馬場に出たらスタンドにお客さんがブワーッて見えんねん。
で、馬が出て行ったらお客さんも「ウオーッ」てなるやん?揺れてたもん、地面が。
「これが地鳴りってやつか」って。「凄いな」と思ったもん。
最後、ゴール付近の外ラチのところでしゃがんで見ててんけど、お客さんの歓声が凄くて馬の足音聞こえへんかったもん。
普通のレースやったら、その場所で見ていれば馬の足音って結構聞こえんねんけど、聞こえへんかったもん。
もう気がついたらディープスカイが外からダーッと行って。
そんな舞台にサブジェクトが出ているだけで凄いなって思った。
「よくこの枠に入れたな」って。
年間毎年7千頭、8千頭と生産されている中で、どんどん淘汰されて、競馬に使う事も出来へん馬もいるわけやんか。
そんなのも全部くぐり抜けてここまで来たんやなって思った。
何かその、ある種の達成感みたいな。
ダービーの枠に入った瞬間にそう思った。
8000分の18とかの確率に入ったんやなって思って。
でもそれは僕だけの苦労やないやん。
生産から関わっている人やいろんな苦労があって、それが全部集まって来てそこにいるわけやんか。
だから結局は生まれた時からの積み重ねといろんな事の巡りあわせでここまで来たんやな。
どこかでちょっとでも何か狂っていたら、故障して終わっているかもしれんし。
違う厩舎に入ってまた違う結果になっているかもしれんし。
いろいろ考えると凄い確率やなって。
だから結局、ダービーに出られるのは、生まれた時から全てが上手く来ている18頭なんやな。
パドックで被ってる黒い帽子、あれはG1の時だけ被ってるわ。
普段の調教用のヘルメットじゃない。
いや、スーツに調教用のヘルメットって…変やろ(笑)?
調教用のヘルメットって分厚いやん?
あれ被ってるとホンマ、キノコみたいやねん。
頭だけボッコーッなってカッコ悪いから。
スーツにあのキノコヘルメットはヤバイやろう。
だからあのパドックで被るヘルメットは素材が薄いねん。
ホンマはスーツ着てヘルメット被ってる時点でおかしいねんけど、でもほら、JRAの決まり上、被ってないとアカンからさ。
スーツを着るのは、もう今の競馬会の流れやで。やっぱりG1やしね。あそこでTシャツとジーパンで、馬ガーッ引くのはなかなか無理やで。逆に勇気がいるで(笑)。
その前に馬主さんに「何なんや、あいつは」って言われんで。あそこの調教師は自分とこの従業員の格好くらいちゃんとさせられへんのか、って話になって来るから。
特にG1やと馬主さんやら生産者さんやら関係者の人がいっぱい来るからさ、そんな中で汚い格好でいてられへんやん。
多少なりともマシに見えるように。
有馬記念、ジャパンカップってG1もいろいろあるけど、やっぱりダービーって一番注目されるレースなんかな?って思ったもん。
確かに皐月賞とかも凄いけど、他のG1でも感じた事のあるような盛り上がりやった感じで。
でも、ダービーの盛り上がりは感じた事が無かったから。
周りにいる、ダービーに出た事ある人が「ダービーだけはもう一回行きたいわ~」って言ってたんよ。
「皐月賞は無理でもダービーだけは行きたい、もう一回行きたい」って話は聞いててんけど、何でやろうなって。
その時は僕、行ったこと無いし分からへんから「ダービーも他のG1も一緒ちゃうの?」って思ったけど、全然違った。
「そら、行きたくなるわ!」って(笑)。
うん、また行きたいよね。

市丸善一
栗東・池江泰郎厩舎所属。攻め専として池江厩舎に入った後、持ち乗り助手に転身。04年にはレクレドールを担当し、ローズステークスで持ち乗り助手としては自身初めての重賞タイトルを手にする。その後、07年からサブジェクトを担当。ラジオNIKKEI杯2歳ステークスを勝ち、08年の牡馬クラシックロードを進む同馬と共に皐月賞、日本ダービーに初めて出場した。また、競馬ポータルサイト・競馬ラボ内の「トレセンLIVE!」にコラムを寄せており、厩務員の日常生活をファンに伝えている。
具体的に何が変わっているって訳じゃないけど、周りがそういう風になっているんやろうな。
JRAがそう、馬主さんもそう、お客さんもそう、みんながダービー仕様みたいになっているから。
普段のレースはレース開始の70分前に集まるんやけど、G1の時って90分前に集合やねんな。
普段より20分早く集まる分、長く感じるはずやのに、ダービーの時はホンマに短く感じたもん。
レースの90分前になったら、まず装鞍所に集合して、馬に鞍をつけてパドック行きます、パドック回って本馬場入場します、競馬します、競馬から上がって来て帰ります、っていう一連の流れが凄く早く感じたもん。
いつもやったら正直な話「長いな~」って思う事もあるんよ(笑)。
でもダービーの時は全然、気がついたら終わっていたみたいな感じでね。
お客さんの歓声も凄いもんね。
本馬場入場の時に、馬場の中から出ていくやん、馬場に出たらスタンドにお客さんがブワーッて見えんねん。
で、馬が出て行ったらお客さんも「ウオーッ」てなるやん?揺れてたもん、地面が。
「これが地鳴りってやつか」って。「凄いな」と思ったもん。
最後、ゴール付近の外ラチのところでしゃがんで見ててんけど、お客さんの歓声が凄くて馬の足音聞こえへんかったもん。
普通のレースやったら、その場所で見ていれば馬の足音って結構聞こえんねんけど、聞こえへんかったもん。
もう気がついたらディープスカイが外からダーッと行って。
そんな舞台にサブジェクトが出ているだけで凄いなって思った。
「よくこの枠に入れたな」って。
年間毎年7千頭、8千頭と生産されている中で、どんどん淘汰されて、競馬に使う事も出来へん馬もいるわけやんか。
そんなのも全部くぐり抜けてここまで来たんやなって思った。
何かその、ある種の達成感みたいな。
ダービーの枠に入った瞬間にそう思った。
8000分の18とかの確率に入ったんやなって思って。
でもそれは僕だけの苦労やないやん。
生産から関わっている人やいろんな苦労があって、それが全部集まって来てそこにいるわけやんか。
だから結局は生まれた時からの積み重ねといろんな事の巡りあわせでここまで来たんやな。
どこかでちょっとでも何か狂っていたら、故障して終わっているかもしれんし。
違う厩舎に入ってまた違う結果になっているかもしれんし。
いろいろ考えると凄い確率やなって。
だから結局、ダービーに出られるのは、生まれた時から全てが上手く来ている18頭なんやな。
パドックで被ってる黒い帽子、あれはG1の時だけ被ってるわ。
普段の調教用のヘルメットじゃない。
いや、スーツに調教用のヘルメットって…変やろ(笑)?
調教用のヘルメットって分厚いやん?
あれ被ってるとホンマ、キノコみたいやねん。
頭だけボッコーッなってカッコ悪いから。
スーツにあのキノコヘルメットはヤバイやろう。
だからあのパドックで被るヘルメットは素材が薄いねん。
ホンマはスーツ着てヘルメット被ってる時点でおかしいねんけど、でもほら、JRAの決まり上、被ってないとアカンからさ。
スーツを着るのは、もう今の競馬会の流れやで。やっぱりG1やしね。あそこでTシャツとジーパンで、馬ガーッ引くのはなかなか無理やで。逆に勇気がいるで(笑)。
その前に馬主さんに「何なんや、あいつは」って言われんで。あそこの調教師は自分とこの従業員の格好くらいちゃんとさせられへんのか、って話になって来るから。
特にG1やと馬主さんやら生産者さんやら関係者の人がいっぱい来るからさ、そんな中で汚い格好でいてられへんやん。
多少なりともマシに見えるように。
有馬記念、ジャパンカップってG1もいろいろあるけど、やっぱりダービーって一番注目されるレースなんかな?って思ったもん。
確かに皐月賞とかも凄いけど、他のG1でも感じた事のあるような盛り上がりやった感じで。
でも、ダービーの盛り上がりは感じた事が無かったから。
周りにいる、ダービーに出た事ある人が「ダービーだけはもう一回行きたいわ~」って言ってたんよ。
「皐月賞は無理でもダービーだけは行きたい、もう一回行きたい」って話は聞いててんけど、何でやろうなって。
その時は僕、行ったこと無いし分からへんから「ダービーも他のG1も一緒ちゃうの?」って思ったけど、全然違った。
「そら、行きたくなるわ!」って(笑)。
うん、また行きたいよね。

市丸善一
いちまるよしかず
栗東・池江泰郎厩舎所属。攻め専として池江厩舎に入った後、持ち乗り助手に転身。04年にはレクレドールを担当し、ローズステークスで持ち乗り助手としては自身初めての重賞タイトルを手にする。その後、07年からサブジェクトを担当。ラジオNIKKEI杯2歳ステークスを勝ち、08年の牡馬クラシックロードを進む同馬と共に皐月賞、日本ダービーに初めて出場した。また、競馬ポータルサイト・競馬ラボ内の「トレセンLIVE!」にコラムを寄せており、厩務員の日常生活をファンに伝えている。







