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中井仁調教助手

中井仁調教助手(栗東・本田優厩舎)


ここ2戦は影を潜めている感はあるものの、フミノイマージンの存在を忘れてはならない。昨年は14番人気ながら2着激走をみせた中山牝馬Sを皮切りに、堰を切るかのごとく、牝馬重賞3勝をマーク。瞬く間に牝馬戦線の有力馬へと伸し上がった。とはいえ、現在6歳。年齢的にも、今年が最大、いや、GI制覇のラストチャンスといえよう。2走前にはヴィクトリアマイルを見据えて、東京マイルも経験。虎視眈々とココへ標準をあわせてきた。今回は自身の初めての担当馬がフミノイマージンだったという中井仁調教助手に大一番への手応えを語ってもらった。


ヴィクトリアマイルを見据えた臨戦過程を経て


-:まず、2走前の東京新聞杯ぐらいから、振り返っていただきたいんですけれども、この舞台というのはヴィクトリアマイルと同じ舞台なので、いい経験になりましたよね。

中:そうですね、一応、ヴィクトリアマイルを使うというので、東京のマイルをやっぱり1回使っておきたいという意味で使いました。

-:このときの状態に関してはどうだったんでしょう。今年初めてのレースで休み明けでしたが。

中:休み明けだったので、多少、余裕は残していたんですけれど、「力は出せる状態かな」と思っていたんです。

-:休み明けの分、プラス8キロだったということで。

中:いや、なぜか愛知杯からその後で、また体が大きくなったんで、そんなに太いっていう感じはしなかったんですけど。「多少、余裕があるかな」っていうぐらいだったんで。

-:この時のレースって、久しぶりの1600mだったじゃないですか。実際、1800m、2000mを中心に使われてきて、20戦目振りぐらいのマイル戦でしたが、やっぱり、1800m、2000mのほうが合うのか、または1400mとかもいいのか?マイル戦に使うのは久々で、意外だったんですけど、実際に走ってみて、イメージと走ってみた現実とは、ギャップがあったりするものじゃないですか?その点はどう感じましたか?

中:もともとスピードがある馬だったんで、長めというか、最初はマイルぐらいでおろして。多分、その後がずっと長かったんですよね。

-:マイルでおろして、芝の1400m、ダートの1400mも行って、芝の1800mも行っているんですね。

中:そのへんから、もう大体1800mとかですよね。当初からスピードはあったんで、ただ長めのほうが、やっぱりタメが利くっていう点で、ずっと使っていたんですけれどね。

-:なるほど。東京新聞杯は勝ち時計が1分32秒2っていう、けっこう速い勝ち時計で、いい脚で追い込んだけれど4着でした。

中:直線で前が開かなかったんで、それがだいぶ……。

-:「開いていれば」と。行き場所がなかったレースになってしまった感じでしたね。若干もったいない内容でした。

中:それでも一番、上がりも速かったし、内容的には「強いな」と、また再確認できたんです。ヴィクトリアマイルを目指す上では、手応えを掴めたレースだったと思います。



-:そして、前走は阪神牝馬Sでしたが、よりスピードが求められる1400mの舞台。このレースはちょっと納得いかないというか……、ここ2戦、不完全燃焼といえば不完全燃焼のレースですよね。

中:そうですね。やっぱり直線の不利が全てですね。ちょうど直線で追い出して、エンジンがかかって伸び始めているころに、内から外に、前に入られました。馬は自分で対応したような感じで、逃げた素振りになったので、あんまり不利を受けていないように見えたかもしれないですけど、だいぶ外に振られたんですね。

-:一旦、態勢は崩して、外にちょっと推進力が逃げている感じでしたね。それでも3着に。

中:そこからまた追い出したんで、力はあるなと思いましたね。

-:先週、今週でもう、だいぶ馬はもう仕上がっていると思うんですけれど、今日、体を見せてもらったら、だいぶプリプリした印象でした。輸送でちょっと減ったとしても、「かなりいい状態で出られるのかな?」という感じには見えたんですけど。明日の(一週前)追い切りは、どれぐらいやられる予定なんですか?

中:ジョッキーに乗ってもらって、多分、併せますね。それなりに終い一杯ぐらい追ってもらうと思うんですけど。

-:時計も終いはビュッと出す予定ですか?

中:でも、どうですかね……、明日、天気が悪かったら、あんまり下が悪いと動かないんで。まあ、それでも負荷をかけられれば、それでいいかなと思うので。

-:じゃあ、明日の追い切りでほぼ仕上げて、来週の本追い切りというのは調整すると。

中:多分、こないだと同じような感じで、終いをちょっと伸ばすぐらいになると思うんですけど。

-:体重に関しては、ちょっと前より、少し増えている傾向があると思っておいていいんですか?

中:多少そうですね、去年とかよりも、体重は普段から増えているんで。

-:レースの時で言ったら6キロくらいですか。

中:そうですね、次でもちょっとマイナスくらいでちょうどいいんじゃないですかね。今、普段はだいたい490ですね。

-:ねえ、なんか480のブリブリした感じじゃないというか……。

中:ちょうどレースに向けて、そこからちょっと締めていくという感じなんで。別に大幅に減っていたとしても、そんなに気にはならないのですが、減っても4~6キロだと思います。



-:あと、東京新聞杯の時、まあ、愛知杯の時もそうなんですけど、輸送しているじゃないですか。府中牝馬とか、愛知杯とか、東京新聞杯とか。輸送を心配することがないタイプの馬ですか?

中:そうですね、昔は輸送で小倉の条件を使っていた頃は、一気に体が減っていたんですけど、その後くらいから、全然問題ないですね。逆に減らなくて困るぐらいの(笑)。

-:減らないというのは、やっぱり向こうに着いてからも、ちょっとは餌を食べてくれているということ?

中:飼い食いは落ちないですね。もうあげたものは全部食べるんで。

-:そうなんですか。じゃあ全く環境に動じず。だからと言って、レース直前だという事が分かってないわけではないんですね?

中:多分、それはないと思いますね。“オンとオフ”がハッキリしているんですよ。

-:トレセンでは、けっこうオフで歩いていますもんね。

中:もう、坂路に行く時だけテンション上がりますけど、それ以外はもう大人しいんで。

-:今日は(2日)火曜日ですが、火曜日って僕らカメラマンはけっこう慎重になるんですよ。休み明けなので暴れさせたらダメじゃないですか?シャッター音とかで。

中:ああ、はいはい。

-:だけど、フミノイマージンはけっこうオットリとして暴れる気配もなく。

中:そうですね、特に暴れないですね。

「スムーズならば、好勝負必至」
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(取材・写真)高橋章夫




【中井 仁】 Hitoshi Nakai

本田優厩舎の持ち乗り調教助手。中学時代、バブルガムフェローが勝った秋の天皇賞を勝った頃から、競馬に興味を持ち始める。高校卒業後、半年間、乗馬クラブで研修。
その後、トレセンの近くにある栗東ホースクラブで約2年、宇治田原ステーブルで6年務めて、2008から本田厩舎に。初めて任されたのがフミノイマージンという幸運の持ち主。
「牝馬を任されることが多いので、あまり怒らないように気を付けています。牝馬は難しい所があるので、馬の気持ちをなだめるように付き合わないと」。
愛馬フミノイマージンの馬房には「ぽっぽ」と書かれていて、歩き方が鳩っぽいところからぽっぽと呼ぶようになった。最近では「ぽっぽ氏」と呼んでいる。