関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

西園正都調教師

西園正都調教師


-:今日は盛況だった今年のセレクトセールで西園厩舎に入ることになった5頭について聞かせてください。よろしくお願いします。



●上場番号39 マサコチャンの2011 牡
(父:クロフネ) 購買者:(株)栄進堂、購買金額:2900万円


西園正都調教師:まず、マサコチャンの2011だね。安い馬ではなかったけど、今の旬の血統だし、馬のデキもすごくよかったので、オーナーに無理を言って、買ってもらいました。

-:松田博資厩舎のベストクルーズの全弟になるわけですね。

西:この馬は千代田牧場の根幹となる血統で、サンデーサイレンスの肌にクロフネというのは一番走る配合ですから。

-:ホエールキャプチャ(田中清厩舎 ヴィクトリアマイル優勝)が同じ配合です。

西:そうそう。大きな馬ではないのですが、カッチリとしてシッカリとした馬です。一流馬の風格が感じられるような造りの馬で、ソコに惚れて買いました。

-:先生から見てクロフネの種牡馬としての評価はどのように考えられていますか?

西:ウチの厩舎のシゲルスダチ(現3歳)が芝で走るし、ダートでもオープン馬が何頭も出ているので、芝、ダートどちらでも走れる血統だと思っています。まあ、でも血統背景を考えれば芝でしょうね。マイルから2000mぐらいの距離はこなしてくれると思います。

-:この馬は父系のフレンチデピュティの筋肉質でモリモリとした感じというよりはサンデー肌のスッキリとした体型の馬なのでしょうか?

西:スッキリとした細長い(体型で)、柔らかい筋肉。だからと言って、ユルくはなく、硬くもない、バランスの取れたすごく良い馬ですね。

-:どれぐらいの価格を想定していたのですか?

西:リザーブ価格が3000万円だったので、だいたいそれぐらいの価格までは競りにいこうかなと思っていました。思ったより安く買えましたね。

-:2900万円で落札でしたからね。



●上場番号120 スギノセンヒメの2011 牡
(父:キングカメハメハ) 購買者:(株)ウエスタンファーム、購買金額:2800万円


西:次は120番のスギノセンヒメの2011で、ケイアイテンジン(現6歳 白井厩舎 父アグネスデジタル)の兄弟です。キンカメの栗毛で、すごくバランスが取れた馬です。

-:この馬は幾らだったのですか?

西:2800万円です。やっぱり兄弟が走っているし、ケイアイテンジンというオープン馬も出ていますので、馬の形が良かったし、ポイントも良かったので……。ウチはキンカメの子と合うのでね。

-:先生が好きそうな体つきの馬が多いですからね。

西:でも、そう胴が詰まっていないので、距離も持ちそうです。

-:それはお母さんの影響によるのですね。

西:そうですね。母系がフォーティナイナーなので、ダートが良いのだろうけど、芝を走るフォーティもいますので。でも本当に良い馬だったよ。結構競られたからね。



●上場番号24 ブルーレイの2011 牝
(父:フジキセキ) 購買者:大西定、購買金額:800万円


西:上場番号24番のブルーレイの2011は母系のトワイニングが出て、シッカリとした形に仕上がった馬です。フジキセキはちょっとユルく出るところがあるのですが、見た目が良い馬です。母方にシンボリルドルフがいるので、鹿毛馬でもすごく良く見えました。

-:母系にルドルフが入った血統背景を考えると、今の日本の主流の血筋とは離れた血統のタイプですね。メジロアルダンとか母系が渋いですね。

西: 800万円は渋いでしょ。多分、母父のトワイニングが嫌われたのでしょうね。



●上場番号246 ギャラリートークの2011 牝
(父:オンファイア) 購買者:地田勝三、購買金額:600万円


西:上場番号246番のギャラリートークの2011は兄弟にフィールドシャイン(現5歳 父サクラバクシンオー)やフィールドメジャー(現2歳 父ダイワメジャー)がいる馴染みの統なので、どこまでも行こうという感じですね。

-:厩舎ゆかりの血統ですね。

西:そうですね。本当は上場番号228番(シュガーキャンディの2011 父フジキセキ)を落としたかったのです……。兄弟馬にフィールドベアーがいるので、これが欲しかったのですが、落札価格が結局3300万円で、泣きたいぐらいに競られてしまいました。あとは243番(ローズバレッタの2011 父サクラバクシンオー)です。この馬も落とせませんでした。

-:バクシンオー産駒は難しくないですか?

西:でも、ウチのフィールドシャインがバクシンオーでもう7000万稼いでいるからね。他にはヘッドライナー(CBC賞)もバクシンオーでしたから。種馬として、バクシンオーは相性が良いですから。

-:ギャラリートークの2011のオンファイアという血統についてはいかがですか?

西:結局オンファイアはディープインパクトの弟ですから。ディープに付けられない人がオンファイアを付ける訳です。兄弟はみんな走っているので、男馬だったらもっと値段が高かったのだろうけど、女の子だったので……。

-:この馬は幾らだったのですか?

西:600万円です。

-:おお、結構安いですね。

西:この価格で一つ、二つ勝ってくれれば悪くないですよ。嫌う人は少ないけど、結構地道に走りますよ。

-:オンファイアの骨格自体はディープインパクトよりシッカリしていますからね。

西:オンファイアの子は初めて管理するのだけれども、ディープもいないので、面白そうなのでやってみようかなという感じです。

-:馬主さんはどちらの方になるのですか?

西:フィールドの地田勝三さんです。



●上場番号358 バズビナの2012 牡
(父:エンパイアメーカー) 購買者:地田勝三、購買金額:2200万円


西:当歳馬は1頭で、358番のバズビナの2012です。エンパイアメーカーの仔は少なくて何頭(11頭)も上場されていなかったですが、エンパイアメーカーの仔はどうしても欲しかったですから。

-:エンパイアメーカーというのは北米で大人気の種牡馬ですね。

西:向こう(アメリカ)に残した子がみんな走っていて、向こうのセールではなかなか買えないのです。日本では買えるのですが。このHighest Honorとの配合も面白いと思います。日本にはいないですしね。

-:落札金額が2200万円でしたが、アメリカならもっと高かったのでしょうか?

西:もちろん高くなると思います。まだエンパイアメーカーの評価をみんなが知らないのではないでしょうか。

-:これまで5頭紹介していただきましたが、5000万、6000万を超えるような高額な馬はいませんね。それでも結果を出されている背景と言いますか、セレクトセールにおけるお買い得感みたいなものはありますか?ファンは億を超えるような高額馬や良血馬、世界で通用しそうな血統を注目しがちですが。

西:それは僕も億を超えるような馬を手掛けてみたいよ。でも預けてくれないんだからしょうがない。預けてもらえる範囲内でやっていかないと……。

-:それ(馬の仕入れ)以上の賞金は稼ぎ出しているということですね。一般の人からすれば1000万円を超える馬は安いとは言えないですけどね。

西:まあ、でも次のサマーセールなんかは1000万超えたら、1000万円いったかというぐらいのセリだからね。今年のセレクトは予想以上に競り上がった馬も多かったから翌週に行われるセレクションセールにも影響があった。日程が1日短縮されて、ガッと凝縮されたために、バァーンと値段が上がったので、キンカメ産駒を2頭競ったけど、全然取れなかったですから。だから、セレクトセールで競り負けた高額購買者が来ていたんだろうね。サマーセールには行きたくないけど、セレクションセールなら上場馬が選抜されているからね。500万円以下の主取りはなしで、主取りは1%の手数料を取られるので、販売者も覚悟して来ている訳だから。馬の質も良かったよ。3000万円台がボンボン出ていましたからね。

-:今年のセレクトセールはどのような感想を持たれましたか?

西:高いと思いました。毎年ですけどね。

-:経済的には去年の震災直後より1年経った今年の方が買い渋ると思ったんですが上向いているのは確かですが、それでも高いんじゃないかという気がしたのですが?

西:酔っているよな~。麻痺しているよ。正直高いよね(笑)。現場にいる我々は採算も考えてセールにいるから熱くなれないんですよ。



-:ただ、セレクトセールでも高額ではなくても走る馬がいますよね。アドマイヤムーンが1600万円でしたからね。

西:フランスに遠征したナカヤマナイト(二ノ宮厩舎)が1000万円だからね。同じ年(2009年1歳馬取引)にウチのサダムパテックが1200万円だから。2011年のセールではウチの馬が結構表に出ていたからね。あの年(2008年生)の世代では出世頭だったんでしょうね。

-:馬さえ見られればソコソコの仕入れができるということですか?

西:いや~、それは語弊があるなあ。「運が良ければ」だね。

-:運が良ければとなると、当てずっぽうで買っているみたいじゃないですか?

西:う~ん、何て言うか、馬って当てもんのところがあるのでね。どうしてもバクチみたいなものなんやから。結果が分からないところに3000万出しますか(笑)?

-:出さないですね。

西:それだけ夢を買っているのですよ。すごい金額だけれどね。だから費用対効果は膨大価格の割には走っていると思いますよ。仕入れ値を考えると。

-:たしかにそうですね。一頭の馬がデビューする何年も前から、関係者の方々は夢を買って、将来のデビューを待ちわびているわけですよね。今日は色々と答え辛い話までありがとうございました。愛馬の活躍を楽しみにしております。


【西園 正都】 Masato Nishizono

1955年鹿児島県出身。
1997年に調教師免許を取得。
1998年に厩舎開業。
JRA通算成績は338勝(12/7/21現在)
初出走
1998年3月7日1回阪神3日目7Rドクターブイ(13着)
初勝利
1998年4月26日1回新潟2日目4Rマイネルユートピア・延26頭目


最近の主な重賞勝利
・12年 京王杯スプリングC/11年 弥生賞(共にサダムパテック号)
・11~12年 マイラーズC/11年 京都金杯 (共にシルポート号)


騎手時代に303勝を挙げた後に厩舎を開業。坂路を主体とした独自の調整方法で活躍馬を量産。 現2歳世代もエーシントップがデビュー2連勝を飾るなど、2歳戦線を牽引している。 また、栗東きってのオープンな人柄でも知られ、マスコミ対応も積極的に行っている。