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小林真也調教助手

小林真也調教助手(栗東・平田修厩舎)


初の古馬相手、しかもG1馬6頭もの強豪が集う中でも1番人気に推されて見事連勝を5に伸ばしたカレンブラックヒル。それでいながらも、厩舎サイドに聞けば、明らかにお釣り残しだったというから恐れ入る。今回は春に続き、同馬を知り尽くす小林真也助手に過程を振り返っていただき、大一番を前にした手ごたえを重ねて伺った。


古馬相手で連勝を伸ばした毎日王冠

-:まず、毎日王冠前に秋山ジョッキーに取材をさせていただいて「体の成長は春からそんなにない」と言っていたのです。調教でもちょっと余裕があったから、2週続けてコースで、気合いを付ける感じで乗って「この状態で古馬とどこまで戦えるか楽しみだ」という状態だったと思いますが、実際、レースを見ると予想以上に強かった。と言ったら失礼な言い方にもなりますが……。

小林真也調教助手:そうですね。あの状態で、あそこまで走るとは思わなかったですね。期待以上でした。距離について、僕は全く心配してなかったんです。
でも、休み明けだったということで、結構、太かったんですよ。それにユルいというか、まだまだ仕上がり途上という感じだったので、さすがに今回は厳しいんじゃないかと思ってました。それでいて、そんなに競馬は甘くないんじゃないかと思っていたんです。そんなところですね。


-:G1馬が6頭揃ったレースで、普通の3歳馬が古馬と初めてやる時といったら、1000万とか条件クラスなら互角に戦えるのは分かるのですけど、斤量が2キロ軽かったとはいえ、G1級の相手で勝てたというのは、春からも並みの馬ではないと分かっていたつもりなんですけど、それでも驚きましたね。

小:いつも僕らの期待以上の走りをしてくれますからね。

-:それで、ブラックヒルが控えたレースというのは今までもあって、こぶし賞がそういうレースでした。あの時は抑えようと思ったら、馬の行く気がずっと続いていて、上手く控えることができなかったというのがあったと思います。

小:最初の頃は結構、行きっ振りが良くて、なかなかハミが抜けるところがなかったんですよ。元々、最初はそういう走りだったんで、それが競馬でもそうだったんですけど、あの時はペースも遅かったし、色々要因はあると思います。それから、秋山さんが競馬で教えていって、段々コントロールが効くようになっていきました。

-:毎日王冠はコントロールが効くようになったんですけど、シルポートとグランプリボスが行った3番手で折り合って、そこから3コーナーから4コーナーの間ぐらいで、秋山ジョッキーが「もうちょっと行ってくれよ」というサインを出すんですけど、あまり馬は反応せず、やっぱりこの辺が休み明けなのかなというズブさというか。

小:やっぱりシンドイかと思いましたけれどね。直線でもダノンシャークが内から来た時に、誰もがあのまま下がって行くのかと思いましたが、そこから盛り返したのでね。



-:しかも、手応えが悪かった3、4コーナーというのを見たら、思ったより早く沈んでいくのかなと思って、そうしたら直線伸びていて、逃げた2頭はちょっとしんどくなってきましたね。
ずっとイーブンペースみたいな感じで、ブラックヒル自体のペースはずっと落ちず走っていて、その内からダノンシャークがちょっと狭いところを割って出て来ようとするんですけど、その時、フラッとするじゃないですか。「ああっ」と思って、ダノンシャークに入られて、推進力があったら、あそこで閉まったままじゃないですか。
でも、ダノンシャークに入られているということは結構、推進力が落ちた馬の動きで、入れられてどうなるのかなと思ったら、そこからまた伸びているんですよね。


小:パトロールビデオを正面から見たら、秋山さんもちょっと閉じに行っているんですけど、跳ね返されたという感じで、外に来られて……。でも、そこまで遊び遊び走っていた分、最後もうひと伸びしたんですかね。

-:僕もそれを秋山ジョッキーには聞いたんですけど「全然あそこらへんは手応えがなくって、ダメかなと思ったけど、あそこからもう1回グッと走る気出してくれたから、スゴイですわ」と言っていたんですけど、そういうレースはあんまりないモノですよね。普通はああいう風になったら、心が折れる馬が多くって、幾ら人間が頑張らそうと思ったって。

小:そうですね。だから、そこまで遊んでいたんですかね。良い意味で遊んでいたから良かったのか。

-:良い感じで、良い意味でズブい面があるレースで、なおかつ勝ったと。まあ、2着にジャスタウェイという同じ3歳世代の馬が来たんですけど、これで結構、3歳世代が世代交代かっていう見方もありますね。

小:それは何とも言えないですけどね。ただ、エイシンフラッシュとかも休み明けでしたしね。何とも言えないですけど、それは次のG1でハッキリするかなと思います。


秋緒戦の激走後も疲れは見せず

-:そのハッキリするであろう天皇賞(秋)なんですけど、これもまた、新しい強敵がズラッと出てくるんですけど。

小:いよいよ主役と言うか、更に格上の相手が。個人的にはルーラーシップが抜けているかなと思うんですけど、やってみないと何とも言えないですね。競馬なので。
でも、ルーラーシップは出遅れても勝ちますもんね。本格化したら、どれだけ強いんかなと。オルフェーヴルさえいなかったら、全部持っていっちゃうんじゃないかというぐらい強いと思うんですけど。天皇賞(秋)だから、枠順もあるし、そこは何とも言えないですね。


-:毎日王冠は今まで戦ってきた1600mから1ハロン延びて1800mだったんですけど、元々は距離に対する不安はないとおっしゃっていた小林助手から見て、毎日王冠の走りを見たら、2000mは克服できるという感じでしたか?

小:う~ん、まあ、馬が走ることなのでやってみないとわからない面はありますけど、もし、2000mが本当にダメなら、毎日王冠の直線でもう1回盛り返すような脚はないと思うんですね。

-:それがあったというのは2000mぐらいなら。

小:折り合いも付くし、あの日の状態で、あそこでもう1回後ろから来られて、盛り返したということは距離の不安はそんなにないんじゃないかなと個人的には思っています。

-:あとファンが心配しているのは休み明けの毎日王冠で初めてG1級の相手と戦って、それの疲れだと思うんですけど。

小:疲れは……。しゃべらない馬なので、そこは予想ですけれど(笑)、全く感じないです。脚元も含めて、疲れは全く感じないし、何せまだまだ仕上がり途上だったから、上積みは大きいと思うし、乗っていてもそれは感じますね。


■「2000mが本当にダメなら、毎日王冠の直線でもう1回盛り返すような脚はないと思うんですね」

-:それにしても毎日王冠の1分45秒0というのは京都もそうなんですけど、東京開催になってから、馬場の質がちょっと変わっていて。多分、ちょっと軟らかくなっているはずなんです。

小:ああ、そうなんですか?秋からですか?へえ~。

-:阪神、中山まではパンパン。それでそこから京都でどんな馬場になるかという予想としてはカチカチの予想だったんだけど、実際、競馬を見てみたら若干、京都でもいつになく……。

小:掛かってました?

-:時計が掛かるというよりは軽い、スパッってくる馬が、スタミナがいる感じの。

小:その辺はどうなんですかね。あんだけ「馬場が硬い、硬い、速い、速い」って言われて、何か対策はあったんですかね。

-:多分、何か対策はあったと思うんですけど……。(横にいた)藤懸ジョッキーいかがですか?

藤懸貴志騎手:京都は時計が掛かるようになっています。

-:掛かるようになっていますよね。阪神から比べたら、明らかに硬さは変わっている。

藤:変わっていると思います。特に春の京都は異常だったので。

小:「今年は特に異常だ」と言われて、散々色んなところで言われていましたよね。馬場については。

-:今年の秋の中山は?

藤:あれも異常でしたね。

小:スプリンターズSとか、最後の週の。

-:それとか京成杯オータムHのレオアクティブは世界レコード。

藤:夏の中京とかも速かったですね。

-:それを考えたらスタミナがいるようになったはずの府中、ジョッキーも「良い感じのクッションがあった」と言っていたんですけど、そこでこの時計というのは走り過ぎなんじゃないかなと、それを心配していたのですけど。

小:前の日の晩に結構、長い時間雨が降ったというのも、もしかしたらあったかもしれないですけど、元気一杯ですけどね。

-:じゃあ、休み明けの心配をするよりは1回叩いてしまったであろうブラックヒルの2戦目を期待した方が良いと?

小:そうですね。まあ、あくまで想像ですけどね。人間側の勝手な想像ですけど、特に疲れはないように見えますけどね。


小林真也調教助手インタビュー後半は→

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【小林 真也】 Shinya Kobayashi

中学3年でテレビゲーム「ダービースタリオン」にハマる。そして、5年制の富山国立高専を3年で辞めて早田牧場に。その後、天栄ホースパークで5年務めトレセンへ。

大橋厩舎に所属した後、現在の平田厩舎で攻め専として勤務。一昨年のマーメイドSを勝ったブライティアパルスが思い出の一頭。「膝を骨折してから掛かるようになってしまって潜在能力の半分くらいしか出してやれなかった」と悔やむ。気難しく、普段からうるさかった同馬が輸送した時、夜明けとともに馬房から外に出してレースまで延々歩かせていたのを懐かしむ。

牧場時代から秋山騎手のフォームに憧れていた。「自分じゃあそこまでキレイに乗れないですけどね(笑)」調教後も事務作業を淡々とこなす頭脳系ホースマン。