関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

上野翔騎手

上野翔騎手

-:この秋、9月から美浦トレセンで調教に騎乗されている上野翔騎手にお話を伺います。よろしくお願いします。

上野翔騎手:よろしくお願いします。

-:最初にハッキリさせておきたいんですけど、上野騎手はハーフですか?

上:いえ、それはよく言われるんですけど、完全な日本人です。彫りが深いからでしょうけど、本当によく言われます。

-:スッキリしました。何かクールな雰囲気で、ハメを外して大騒ぎしているところが想像できませんね。

上:それもよく言われるし、実際その通りです。同期の津村(明秀騎手)や丹内(祐次騎手)から「上ちゃんはクールだからなー」って、よく言われています。

-:そうなんですか。では本題に移らせていただいて、まずは、栗東所属の上野騎手が美浦を活動拠点にされた経緯をお聞かせください。

上:今年の春に韓国へ行かせてもらったんですよ。それから栗東へ戻って、すぐに函館、札幌と移動したんですけど、1回韓国へ行ってしまったら、別に栗東に縛られずにどこまでも行ってしまおうかな、と。ちょうどそういう風に思っているときに、今、美浦でお世話になっている池上先生から「一回美浦にきて、乗ってみないか」というお話をいただいたので、これもキッカケだなと思って、しばらく美浦に移ることにしました。今は池上厩舎と伊藤大士先生の厩舎と、他の厩舎さんからも声を掛けていただいて調教に乗せてもらっています。

-:そうなんですね。現在、美浦に来られて約1ヶ月経ちましたが、栗東と美浦で何か違いを感じる点はありますか?

上:そうですね、栗東でも美浦でも全ての厩舎を見たわけではないので一概には言えませんが、今お手伝いさせてもらっている美浦の厩舎スタッフの方たちに関して言うと、みなさんよく仕事をされるな、と思います。馬の調整でも細かいところまで考えている方が多いですね。

-:なるほど。では次に、上野騎手が仕事をする上で気をつけている点を教えてください。

上:普段の調教においては、厩舎の方たちとのコミュニケーションですね。追い切りで乗せてもらうときに「こういう風に乗ってきてくれ」という指示を受けても、今までどういう風な過程で来ているのかによって若干乗り方が変わってきますから。

-:そうなんですか。

上:例えば「5ハロン70の上がり40ぐらいで乗ってきてくれ」と指示されたときに、それがようやくそのぐらいまで動かせるようになった馬と、やれば動き過ぎて速い時計が出るからセーブしないといけない馬では、乗り方が違いますからね。

-:なるほど。

上:時計が合っていてもやっぱり中身が変わってくるので、先生がどういう目的で僕に指示をしているのかを把握するためにも、しっかりコミュニケーションを取っておきたいと思いますね。

-:分かりました。他にも仕事をする上で気をつけている点があれば教えてください。

上:レースに関していえば、あくまで僕の考えですけど、その馬の持っている能力を100%に近い形で出してあげられればいいのかな、と思います。背中に人間が乗っている時点でどうしても負担ではあると思うので、その負担をどれだけ軽くしてあげられるかが僕らの仕事だと思っています。いかんせん、馬は喋ってくれませんからね。「ここが負担だよ」とか言ってくれないし(笑)。

-:確かに(笑)。

上:喋って教えてくれたら、こっちもそこに気をつけて乗れるんですけど(笑)。まあ、馬が喋れたらうるさくてしょうがないでしょうけどね。「今日乗るんじゃねえよ!」とか(笑)。調教も苦しいでしょうからね。馬は偉いと思いますよ。



-:上野騎手が考える理想のホースマン像はどのようなものになりますか?

上:生き物相手ですし、こうしたからこう応えてくれる、というわけでもないので、引き出しを多く持って、いろんな状況に対応出来る人間になりたいと思っています。引き出しを多くするには、数をこなさないと無理ですし、そのためにもたくさん馬に乗りたいです。

-:その「たくさん馬に乗りたい」ということも含まれると思いますが、美浦で活動していく上での目標をお聞かせください。

上:僕が思っているのは、根本的に自分のスキルを上げるために、いろんなところへ行ってたくさん馬に乗りたいということです。それが競馬に繋がったり、手伝っている厩舎の成績が上がったり、そういう風になってくれたら一番良いですね。それを「頑張る」っていう言い方はおかしいですけど、僕らジョッキーは馬に乗ってナンボなんで、いつまでも馬の上で生活できるように頑張っていくしかないですね。続けられるなら続けられるだけ、ジョッキーをやっていたいです。

-:ありがとうございます。良い感じで締まったんですけど、春に韓国へ行かれたときのお話も聞かせていただけますか。韓国の競馬はどうでした?

上:競馬そのものが日本とは全く違う、という感じですね。いろいろな点で違いがありますけど、レースで根本的に違うのは、ジョッキーも調教師も、すごくインコースにこだわるんですよ。馬も内を回ることに慣れているから、外を回ると走らないんですよね(笑)。

-:言葉のコミュニケーションは、どうされていたんですか?

上:通訳がいましたけど、その方が話す日本語が分からなかったです(笑)。最初はそこでストレスを感じましたけど、1ヶ月ぐらい経ったら、まあいいか、と。ジェスチャーでも分かるので、レースや調教のことは、ある程度何を話しているのか分かりました。

-:韓国に行って良かったな、と思えることは。

上:何て言うのか…、韓国の方からすると言い方は悪いかもしれませんが、これまで僕自身が、日本ですごく恵まれた環境で馬に乗せてもらっていたんだな、と思いましたね。

-:どういうところで。

上:韓国では、馬の馴致がちゃんと出来ていませんからね。韓国の人たちはよく「日本の馬とは素質が違うから」と言っていましたけど、そういう問題ではないと思いました。馴致不足という面が改善されてくれば、まだ馬に伸びしろはありますし、韓国の競馬もすぐに良くなってくると思います。

-:そうなんですね。ところで話は変わりますけど、今回のインタビューにあたって、上野騎手のことをインターネットで調べていたら「ファンイベントで上野騎手が優しく接してくれた」というページを見ました。ファンの方とも交流されていらっしゃいますね。

上:やっぱり、お客さんが来てくれてこその競馬ですからね。僕がイベントに出ることによって、競馬に興味のなかった人が競馬を見るようになってくれれば競馬会にとってプラスでしょうし、競馬会にとってプラスということは、僕たちにとってもプラスですから。

-:そうですね。

上:これまでイベントにも何回か出させていただいているので、どういう風にすればファンの方に興味を持ってもらえるかとか、自分自身も考えますよ。僕たちはサービスをする側なので、ファンの方に目一杯楽しんでもらって、周りの人にも広めてもらった方がいいかな、と。大きな話をすると、すぐに馬券を買ってもらえなくてもいいから、まずは競馬場に来てもらえるようにすればいいんじゃないかと思います。

-:なるほど。

上:例えば家族連れで来てくださるようになれば、小さい頃に競馬場へ来てくれたような子が大人になったとき「そういえば競馬ってあったな」って、思い出してくれるかもしれないじゃないですか。それで競馬場に来て馬券を買って面白かったりしたら、今度は友達を誘ってくれるかもしれないし。

-:そうなれば競馬ファンの裾野が広がりますね。

上:目先のお客さんだけを集めて、一人一人の馬券購入額を上げてもらうよりも、ファンを増やしてなんぼだと思うんですよね。将来のことを考えて、今、馬券を買えない人に向けてのサービスもするべきなんじゃないかな、と。そういう風にしていく時期なんじゃないかとも思っています。そんなにすぐ上手くいくかどうかは分かりませんけど、今の時期に競馬に興味を持ってもらえれば、将来競馬場へ来てくれる可能性は広がると思うので。

-:確かに可能性は広がるでしょうね。

上:あと、新規のファンを増やすことも大事ですけど、同じように個人馬主さんを増やしていくことも大事なんじゃないかと思います。個人の馬主さんって、競馬が好きで、自分の馬が競馬場で走っているのを見たいと思って馬を持っている、一番の競馬ファンだと思うんです。そういう方たちを大事にしていかないと、どこかで綻びが出ると思うんですよね。少しでも出走奨励金を上げるとか、着順によって奨励金を多くつけるとか、個人馬主を増やすために優遇措置があってもいいかな、と。

-:なるほど。

上:どんな組織でも、ひとつの大きなところを大事にしていても、それが崩れてしまったら、完全に組織全体が崩壊するんですよ。地盤をしっかり固めておかないと、一回崩れてしまったときに立て直しがきかないんですよね。だから、一部の大手の馬主さんだけに集中するのはどうなのかな、と最近思います。

-:いろいろと考えていますね。

上:これから20年30年で競馬が終わってもいいという考えなら、今のままでもいいと思いますけど、これから100年200年と続けていこうと思っているなら、そういう風にしていかないといけないんじゃないかなって思います。そんなに簡単な話ではないと思いますが、こういう考え方があってもいいんじゃないかと。

-:そうですね。

上:僕らだけがジョッキーをやったり競馬をやったりしているわけではありませんし、次の世代に「競馬って夢のある仕事なんだよ」と伝えていくのが、ジョッキーになった僕らの使命のひとつかなと思います。

-:分かりました。今日はたくさんのお話を聞かせていただき、ありがとうございました。活躍を期待しています。




【上野 翔】Sho Ueno

1985年 熊本県出身。
JRA初騎乗
04年3月7日 1回中京2日7R カリスマサンロード
JRA初勝利
04年8月14日 3回小倉1日2R ホーマンパキラ
JRA通算成績は38勝 (12/10/24現在)


04年に栗東・飯田雄三厩舎所属としてデビューし、07年にはフリーに。12年3月から6月まで、韓国の短期免許を取得してレースに騎乗。3月31日にはソウル競馬場7レースでオッツギチェロムに騎乗し、韓国競馬での初勝利をあげた。帰国後は函館、札幌と移動し、9月からは美浦を拠点として活動している。