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小林真也調教助手

小林真也調教助手(栗東・平田修厩舎)


昨年、最強3歳世代と謳われた中で忘れてはならないのがカレンブラックヒルの存在。ジェンティルドンナのJC制覇よりもゴールドシップの有馬記念制覇よりも先に、毎日王冠を制して天皇賞(秋)に挑む同馬の姿があった。そこから一足先に休養を選んだと思えば、本年緒戦に陣営が選択したのは初ダートでフェブラリーSに挑戦。そこまでの経緯と肝心の仕上がり、ダート適性などを小林真也調教助手に直撃した。

毎日王冠当時の休み明けと比べて

-:天皇賞(秋)から3カ月半振りの実戦になるんですけれど、戻ってきてからの状態について教えて下さい。

小林真也調教助手:同じ休み明けでも毎日王冠の時と違って、牧場でもずっと乗り込んでいましたし、完全に休ませた訳ではないので、今回の方がスゴく良い状態です。

-:事前の取材で「ちょっと太めが残っているかもしれない」という毎日王冠だったんですけれど、1番人気で勝ったと。驚く人は少ないかもしれないですが、結構、傍で見ていたらスゴいなと、改めて思ったレースだったんですけれど、それよりも良い仕上がりで行けると。

小:そうですね。NHKマイルCまで結構、休ませずに使ってたので。夏の間は1カ月ぐらい完全に休ませてから、一からやり直してたので体も太かったし、緩かったので。その時とは全く、今回は違うので、同じ休み明けでも。まあ、太いのは太いですけどね。ただ、体の締り具合とか、中身というのは全然、違いますね。

-:この馬は明けて4歳になり、体的にはまだ若干、成長の余地があるのかなと思ってたんですけれど、背が伸びたとか、体重が増えたとか、その辺はどうですか。

小:見た目はそんなに変わった感じはしないですけれど……。

-:跨った感じの幅とかは?

小:特に変わりはしないですね……。開業獣医さんが去年の秋に言ってたのは「他の同世代の馬が社会人ぐらいだとしたら、この馬はまだ、高校生ぐらいの体だから、筋肉のデキ具合だとかが。だから、これからまだまだ、体がシッカリしていく」と。去年の秋の時点では「筋肉も頼りないし、まだまだ子供だ」と言っていましたね。

-:それでいて、G1のトップの天皇賞(秋)でコンマ4秒差の5着という。

小:まあ、天皇賞(秋)は人によって色々と見方があると思うんですけれどね。やっぱり、一番は外枠じゃないですかね。外枠のロス、距離のロスと出して行った分のエネルギーのロスと。ちょっと出して行った分、力んじゃった分のロスと、そういうロスが勝ち馬との3馬身ぐらいですかね。勝ち馬は最内を完璧に乗ってきたし、そう考えるとそんなに。まあ、距離もあったにはあったかもしれないですけれどね。

-:個人的に距離が敗因だったら、もっと止まると思うんですよ。

小:だから、距離というか、距離経験というんですかね。そういうのも色々、あってだと思うので、あの着差が全て、距離だということは、それはまずないと思うので。外枠のロスをまず、考えてもらったら良いんじゃないかと思います。

秋山騎手がダートを進言。とにかく強気!

-:そう考えると日本の芝馬のトップホースの1頭と言えると思います。その馬がダートに挑戦するという、ポイントはそこに尽きると思います。それは誰に聞いてもやってみないと分からないと思うんですけれど、小林さん的にはどう思われますか?

小:僕も同じく、やってみないと分からないとしか、そうとしか言いようがないんですけど。ただ、秋山さんが珍しく強気なので、その強気というのは天皇賞(秋)を負けた後に言いだしたんじゃなくて、デビューの頃から、NHKマイルCを勝つ前から「ダートに行ったら、スゴいことになる」と言ってたので、それはそれで説得力があるんじゃないかなと。僕らはやっぱり、レース中のことは分からないですけれど、ジョッキーがそれだけ言うので、そこはそれなりに説得力があるんじゃないかと思っています。

-:思い出せば、ダイワメジャーが種牡馬になるという時、夏の北海道シーズンの時に秋山君が社台に行って、ダイワメジャーを見てきたんですよ。その後に熱く語ってて、「ダイワメジャーは良かった」と。何が良かったかと聞いたら、「すごいオールマイティな感じがあって、芝の短距離も、マイルも、2000mぐらいも出そうやし、ダートにも対応できるようなオールマイティさを感じた」と言ってて、それが現実に証明できるかどうかということなんですけど。

小:ダイワメジャーも最初の天皇賞(秋)は負けていますよね。3歳の時でしたっけ。その後、天皇賞を勝って、マイルCSも勝って、有馬記念でも良い競馬をして。まあ、ブラックヒルはどうなんだろうな。ダートで普段は乗らないんで、何とも言えないですけれど、追い切りで例えば、CWで雨でグチャグチャのドロドロの重い馬場を「全く気にせず、スイスイ走っている」とジョッキーが言っているので。まあ、そんなに酷いことにはならないんじゃないかなと。



-:酷いことにならない、じゃなくて、1番人気もありそうですから。

小:ハハハ(笑)。

-:多分、ファンは勝つということを望んでいて、さっきの馬場の話でいったら、昨日(2/6)のCWがまさにそれで、雨が降っている中、朝一番だけれど、いの一番じゃなくて、ちょっとズラして。他の馬が走った後の決して時計が出るような好時計が出る馬場状態ではなかったけど、併せた馬に小林助手が乗り、秋山騎手がカレンブラックヒルに乗り、一瞬にして置き去りにしたと。

小:まあ、アレは乗り手と馬の差があり過ぎるんで。ブラックヒルもいつもみたいに直線で来るかと思ったら、3コーナーぐらいで早めに来ちゃって、これは自分の馬がすぐに止まっちゃうなと思ったんですけどね。

-:悪いなりの馬場をスイスイ走るというところはファンの人にも1週前追い切りを見てもらったら、分かるんじゃないかなと。終わってから、ちょこっと秋山騎手と話をしたんですけど、なんせ馬場が良いとか、悪いとかは全く関係がない。

小:なんせ強気ですよね。

-:どんな競馬をするのと聞いたら「付いて来られないでしょう」と言ってましたから。

小:まあ、言わずに心に留めておいて欲しいですけどね。ハハハ(笑)。まあ、あの人は色々なところでそれを言っているから……。

-:ある程度は行くことは見えているんですけれど。

小:まあ、ただでさえ、芝スタートで、ゲートの速い馬なので。普通に放っておいても前に行くでしょうしね。ただ、もしそれ以上に速い馬がいるのなら、気にせんと先に行かすだろうし。他の馬が行かないんならば、自然とハナに行くだろうし、それは今までと同じように他の馬に関係なく、出たなりで行くんじゃないですか。

-:初ダートで大敗するパターンは砂を被ってというのが一番に思いつくんですけれど、ブラックヒルがちゃんとスタートを切れるとしたら、あんまり砂を被るイメージが湧かないんですけれどね。

小:被って気にするようなタイプでもないと思うんですけれどね。今まで散々、チップをかぶっていますし。競馬はまた、違うのかもしれないですけれど、チップを被ったりしても、気にもしないですし、それで闘争心が萎えるような馬でもないですしね。

-:闘争心で言えば、毎日王冠でしたっけ。ちょっと当てられたシーンがあったんですけど、その時にまた、盛り返してますからね。ジョッキー曰く「止まりかけてたけど、もう一回、息を吹き返した」みたいなことを言ってましたけど、闘争心はこの馬はかなりありますよね。



-:その前向きさを初ダートに?

小:そうですね。う~ん、どうなることやら。

-:未知の魅力というのが正直なところなんだけれど、何があのジョッキーをそんなに強気にさすのかなとね。それほど、馬が持っているんでしょうね。

小:競馬での走りっ振りはジョッキーしか分からないですし、乗った感じなんでしょうね。メチャクチャ強気ですもんね。天皇賞(秋)の時も。確かにあの時は絶好調だったし。

-:1回叩いててという上積みを計算できる状態だったから、あの時は分かるけれども、今回の強気は多分、付いてこれへん、という意味みたいです。トップクラスの芝馬がフェブラリーSに挑戦するということは、ある種の決断がいったと思うんですけれど、この辺に関してはどういう段取りを踏まえて?

小:フェブラリーSという選択肢は当初、全くなかったです。ただ、天皇賞(秋)の後に馬主さんと調教師と馬主さんのマネージャーの須田鷹雄さんも入れて、作戦会議をした時に秋山ジョッキーが、「ダート」と言っていて。みんな言うことがバラバラだったんですけれど、結局、秋山ジョッキーの意見に乗ってみたというところですかね。

-:責任重大じゃないですか?

小:自信と熱意ですね。毎日王冠に勝って、カンカン場で「コイツ、ダートでも行けるけどな」と言って。「この蹄はダートでも強いで」と降りた時点で言ってましたから。あの時でも話が出てました。もっと言えば、デビューしてちょっとした時にもう言ってましたから。

-:しかもこの馬、さかのぼれば雪で馬場が悪くなった時。

小:雪で白い所を走ってきましたからね。4つ目までは全部、良い馬場で走っていません。全部、悪かったですもんね。何なくクリアしてくれましたから。

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【小林 真也】 Shinya Kobayashi

中学3年でテレビゲーム「ダービースタリオン」にハマる。そして、5年制の富山国立高専を3年で辞めて早田牧場に。その後、天栄ホースパークで5年務めトレセンへ。

大橋厩舎に所属した後、現在の平田厩舎で攻め専として勤務。一昨年のマーメイドSを勝ったブライティアパルスが思い出の一頭。「膝を骨折してから掛かるようになってしまって潜在能力の半分くらいしか出してやれなかった」と悔やむ。気難しく、普段からうるさかった同馬が輸送した時、夜明けとともに馬房から外に出してレースまで延々歩かせていたのを懐かしむ。

牧場時代から秋山騎手のフォームに憧れていた。「自分じゃあそこまでキレイに乗れないですけどね(笑)」調教後も事務作業を淡々とこなす頭脳系ホースマン。