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小林真也調教助手

小林真也調教助手(栗東・平田修厩舎)



挑戦を続けていくことが使命の馬

-:珍しいなと思うのは普通、アレだけスピードがあったら結構、キレイな馬場で走りたがるはずなんですけれど、この馬はスピードがあるのに悪い馬場を苦にしないところが。

小:トモの形がいいんですよね。形も良く、バランスも良く。馬もジョッキーもバランスが良くて。

-:芝馬というのは結構、トモ脚の蹴りが強いというイメージがあるんですけれど、この馬はどっちかと言えば四駆っぽいじゃないですか。それだからやっぱり、馬場の悪いところも苦にせず、トモだけで走っている芝馬というイメージがなくて。だとしたら、「ダートが合う」と言っているジョッキーの熱意も何となく分かるかなという。

小:鈴木オーナーは最初、結構、迷ってましたよね。なんせみんな言うことがバラバラだから。須田さんは須田さんで、海外も含めて色々な提案があったし、平田先生はデュランダル路線と言ってたかな。僕は中山記念―マイラーズC―安田記念と普通のことしか言ってませんでしたけれど。

-:フェブラリー路線は何路線になるんでしょう。そんな馬はいませんからね、今まで。秋の天皇賞に出たクラスの馬で、トゥザヴィクトリーがそれに近いと言えば、近いかもしれませんけど。

小:何もかも言わない方がいいのかもしれないけれど、将来的には海外のダートでとか、あるいはドバイのオールウェザーで走らせたいという、そういう壮大な夢は語っておられたんで。そういうのも踏まえて、今、ダートという選択肢なのかもしれないし。ちょうどマイルですしね。

-:それで左回りで良いパフォーマンスを出せる馬でもあるし。ただ、一ファンとして思うのは、あの馬というのはさっきも小林助手が言っていたようにまだ成長段階ということと、ジョッキーも「いつかメンコを外して、本来の能力を100%引き出せるような競馬をしてみたい」と言っているような、まだ、そこに辿り着くまでの段階じゃないですか。それにはダートが良いのかなとは思いますけどね。

小:うん、そうですね。

-:まだ、誰も走っていないキレイなハローを掛けた後のダートコースをただ1頭走るという。

小:まあ、どうなるのか、全く分からないですけど。ただ、データ的には全くなしなんですよね。須田さんも言ってましたけれど、ダート初挑戦でG1ということを考えると前例から言うと、全く消しなんだそうです。ただ、この馬は色々、前例を破ったり、挑戦することがテーマだったので。去年、マイルCSじゃなくて、あえて天皇賞(秋)を使ったという、それは多いなる挑戦だったと思いますし。今回は多いなる冒険ですけれど。今回だけじゃなく、これからも色々、挑戦をし続けていく馬ですね。



-:この馬のデビュー自体が遅かったから、スンナリ行かないとNHKマイルCまで辿り着けないローテーションだった、こぶし賞で結局、雪が降って、あれがもしも中止になっていたら、この馬はNHKマイルCのタイトルを獲れてなかったかもしれない。それを獲れたという運の良さというか、ツキを持っている馬でもあるので、こなしてくれても驚けないと思います。

小:そうですね。何事もなかったかのようにこなしても、全く不思議じゃないし。

-:むしろそれを見たい訳ですから。

小:そうじゃないとダメなんでしょうけど、人気をする以上。ただ、1番人気というのはどうなのかな。人気をし過ぎのようにも思いますけど。ジョッキーがアレだけ強気なことを言っているから、なお人気するのかもしれないけど。

-:百戦錬磨のダートのスペシャリストが揃っていて、若干、去年より相手関係が落ちるという話も聞きますけれど、それでも同じ条件で何回も何回もこんな距離を走っている先輩達といきなり戦って。もし、勝てるとしたら、本当にスタートをキレイに決めて、ハナを切って、本当に一人旅で、僕らが驚くような結果しか想像がつきませんよね。かつて、その前例はありませんから。

小:はい。須田さんはとにかくそれを言ってました。人それぞれ意見があって、冒険の一言ですね。

ある程度の馬体重増で出走が濃厚

-:体重的にはそんなに大幅に重たいということはないんですかね。

小:増えていると思いますよ。見た目は毎日王冠の時より、もっともっと締まっているんですけれど、やっぱり、太いのは太いし。今までは1週前とレース当週はCWでやってたんですけれど、今回は平田先生が「1週前はCWでやって、当週は坂路でやる」という。本当のことを言えば、最初から平田先生はずっと「山で追い切りもやる」と言っていたんですけれど、そこは僕と秋山さんの意見としては「できればCWで」ということを言っていて1週前はCWになって。

-:そのCWにするか坂路にするかというのは何が違う感覚なんですか?

小:そこは僕と秋山さんで、もしかしたら思うことが違うかもしれないですけれど、まず、負荷の掛かり方が違いますよね。それから折り合い。直線に向くまで、先導馬の後ろでキレイに折り合って走るとか、それから馬の走りを見ていると、ブラックヒルの走りを見ていると、やっぱりコースのフラットな所でこそ、あの馬の良さというんですかね、走りの良さがもっと際立つと思うし。やっぱり、下でやった方が絞れますしね。

-:でも、太いと言ってた毎日王冠でも実際は輸送もあったかもしれないけれど、プラス8キロだったんですよね。

小:アレは思いの外、絞れて良かったです。本当に僕らはずっと太かった過程を見ているので、当日はホッとしました。本当にこう言ったら悪いですけれど、僕らとか秋山ジョッキーもビックリしました。

1週前追い切り CWコースで6F:82.7-67.8-53.6-40.5-13.1秒


-:負ける可能性もあったと?

小:やっぱり、自信はなかったし……。まあ、色々工夫をして、当日、無茶なことはしていないですけれど、なるべく当日に馬体がスッキリする方向で、その方が脚元にも負担が少ないですし。

-:今回も増えているといっても、競馬場で472~4とかそれぐらいまで収まる訳ですよね?

小:何とかそれぐらいで収まって欲しいなとは思うんですけど。

-:体重ばかり減らそうとすると今度は馬の精神状態が上がり過ぎたりだとか、逆に競馬で良くない方向に向いちゃうイメージがありますから。

小:その辺は全然、無理なことはしてないので。ちょっと工夫する程度で。

-:常歩(なみあし)を長く乗るとか?

小:運動時間は変わらないので、ちょっとだけ牧草類を控え目にするとかですかね。厩舎のスタイルであったり、調教師の考え方があって、できることは限られているので、その限られた条件の中でベストを尽くしてやるしかないですね。



-:ファンは相当に期待していると思うんで、最後まで良いコンディションで持って行って下さい。ありがとうございます。

小:何とか調教で落馬しないように、ケガをしないように最後までサポートをして。ありがとうございます。

-:そんな強気も不安も入り混じったフェブラリーSなんですけれど、人気を集めるはずなので、期待しているファンにメッセージをお願いします。

小:去年の秋は挑戦でしたけれど、今回は冒険ということです。当初は全く予定がなかったフェブラリーSを秋山ジョッキーの進言に賭けて、挑戦することになったので、もちろん勝って欲しいけれど、そうなるかは分からない。もし、人気を裏切った時は僕らも含めてみんなで、ヤジを飛ばしましょうということで、ヘヘヘ(笑)。

-:そうならないように祈っています。

小:なんだかんだ言って、僕と厩務員の西口さんにとってはただ、ひたすら無事で競馬に向かうしかないので。レースのことはジョッキーの仕事なので、とにかく無事に。まだまだ、未熟な体で、いつも一所懸命走ってくれるんですけれど、無事に行ってくれたら良いなと思います。

(取材・写真)高橋章夫


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【小林 真也】 Shinya Kobayashi

中学3年でテレビゲーム「ダービースタリオン」にハマる。そして、5年制の富山国立高専を3年で辞めて早田牧場に。その後、天栄ホースパークで5年務めトレセンへ。

大橋厩舎に所属した後、現在の平田厩舎で攻め専として勤務。一昨年のマーメイドSを勝ったブライティアパルスが思い出の一頭。「膝を骨折してから掛かるようになってしまって潜在能力の半分くらいしか出してやれなかった」と悔やむ。気難しく、普段からうるさかった同馬が輸送した時、夜明けとともに馬房から外に出してレースまで延々歩かせていたのを懐かしむ。

牧場時代から秋山騎手のフォームに憧れていた。「自分じゃあそこまでキレイに乗れないですけどね(笑)」調教後も事務作業を淡々とこなす頭脳系ホースマン。