鹿戸雄一調教師×高橋摩衣
連覇の資格を持っているのはスクリーンヒーローだけですし頑張りたいですね。今までジャパンカップを連覇した馬っていないんですよね…。
2009/11/22(日)

鹿戸雄一×高橋摩衣
高:鹿戸先生、よろしくお願いします。スクリーンヒーロー、いよいよジャパンカップになりますけど、まず天皇賞を振り返っていただけますか?
鹿:結構、積極的な競馬をしてくれましたね。内枠から、ブリンカーの効果もあったのか、前々で積極的な競馬をして最後まで頑張ってくれたと思います。最後はもう、決め手の差というか、相手の方が一枚上でしたね。
高:カンパニーの伸びも素晴らしかったですね。
鹿:でも、あの速い上がりに対応出来ましたからね。
高:ウオッカを抑えて2着に粘って。
鹿:ね。ウオッカに抜かせなかったのは、評価が出来るんじゃないかな。
高:レース後、トレセンに戻ってきた後の状態はいかがですか?
鹿:最初の頃は多少の疲れはあったんでしょうけど、1週間しっかり疲れを取ったので、その後は通常の稽古をやって。順調に来ています。
高:疲れを取る間はどのような調整をされていらっしゃったんですか?
鹿:最初の頃はなるべくリラックスさせて、角馬場で乗って、週末だけ馬場に出すという形で、体のケアに専念しました。あとは、気分を変えてプールに行ったり。
高:え?プールですか?スクリーンヒーローって今までプールに行った事は…
鹿:行った事ないですよ。
高:あ、初めてだったんですか。どうでした?初めてプールに入ったスクリーンヒーローの様子は。
鹿:特に何も問題なかったですよ。頭の良い馬ですからね。
高:特に水を怖がるでもなく。では、良い効果が得られたんじゃないか、と。
鹿:そうですね。リラックス出来たんじゃないかと思います。
高:その「プールに入れてみよう」って、どなたが提案されるんですか?
鹿:私がたまたま思いついただけですよ。
高:えー!たまたま思いついたって(笑)。
鹿:まあ、それはもちろん凄く考えますよ。「ここ最近雨が多いし、どうしよう?ポリトラックもあんまり…グチャグチャっぽいし、かと言って本馬場も重そうだし負担になるかな」とか、いろんな事を考えて「今回は坂路中心でいいかな」と。それで「もしかしたら、坂路だけだと稽古の量が足りなくなるかもしれないから、プールにも入れてみようかな」って。それで「プールに行くならキチンと馴致もしないといけないし、プールでケガをするかもしれないし」って続けていろんな事を考えるんです。
高:大変ですね。

鹿:いろいろ考えて最後は「まあ、頭の良い馬だし大丈夫でしょう!」って、信じてやってみる感じで。
高:本当にいろいろ工夫されていますね。
鹿:でも、それが正しいかどうかは分からないですよ。もしかしたらヒーロー自身はプールに入るのはイヤだったかもしれないし、坂路なんて上りたくないよって思っているかもしれないけど(笑)。
高:アハハ(笑)。
鹿:僕の師匠の藤沢和雄先生も「これが正しいっていう事は無い。だからこの仕事は面白いし、難しいんだよ」っておっしゃっていますから。僕も同感です。良い結果が出れば「あれで良かったんだ」と思えるし、残念な結果が出れば「あそこが良くなかったのかな」って、また違うやり方を考えたりしてね。今回はワンパターンじゃダメだと思って変えました。いや、変えたというか、新しい事をやってみようかな、という感じで。
高:でも、それもまた勇気がいりますよね。
鹿:それはもう当然、プレッシャーもありますし、不安もあります。ありますけど…、それを言っていてもしょうがないですもんね(笑)。とにかく良い状態でレースに出られることだけを考えて、ちょっと新しい事をやってみようかなって。
高:先ほど、先生がプールを使う事を思いついた、とおっしゃっていましたけど、そういう事って、事前にオーナーに相談されるんですか?
鹿:「プールに入れてみようと思います」っていう報告はしますよ。この前の天皇賞の時にブリンカーを試してみようと思った時は、藤沢和雄先生にも相談してみたんです。こちらの考えを伝えたら「そういう考え方は良いんじゃないか」とおっしゃっていただいて。後押しされた気持ちになりましたね。スクリーンヒーローは、牧場の方やオーナーさんといった周りの方たちが気持ちよく応援してくれますので、こちらも思い切った事がやりやすいです。
高:そうやっていろいろと工夫をして調整をされて来て。今日(11/18)は坂路での追い切りでしたね。
鹿:Dコースをハッキングで行って、坂路で未勝利馬を先頭に誘導してもらって、2馬身後ろから行って、最後1ハロン併せるいつも通りの稽古でした。
高:もう予定通りの稽古で。
鹿:そうですそうです。あと、この前の日曜日(11/15)にも、今日とほとんど同じようなメニューを消化して。Dコースをハッキングして、馬場を半周回って直接坂路に行って一本、タイムは54.8でしたね。
高:なるほど。この後はどのような予定をお考えですか?
鹿:日曜日と、来週の水曜日にやって競馬という感じですけど、まだ決めていないです。いろんなパターンを考えて対応しようと思います。
高:今度はブリンカーはどうされるんですか?
鹿:まだ分からないけど、着けないつもりです。日曜日の稽古をやってみて決めようかな、と思っています。
高:天皇賞の時は、久々と2000メートルの距離を考えてブリンカーを使用されたんですよね。

鹿:そうです。今回は1回使っているし、2400メートルになりますからね。
高:そうですね。ちなみに去年と今年では、ローテーションというか過程が違いますね。
鹿:はい。去年は夏から使い続けて来て、アルゼンチン共和国杯を勝ちまして。その後は中山のステイヤーズステークスに行こうかと思っていたんですけど、重賞を勝っているしジャパンカップに出られるかもしれない、となったので社長と相談したところ、行けるなら行ってみてもいいんじゃないかという話になったんですよね。そういう過程も、レースの流れも、全て良い方向へ流れてくれて勝つことが出来ました。
高:今年は、かなり早い段階からジャパンカップを使おう、と。
鹿:そうですね。春の宝塚記念が終わった時点でそう考えましたね。一応、凱旋門賞にも登録はしていたんですけど、その方向は無しという事になって、秋はもう一度ジャパンカップを目標にしてやって行きましょうと、オーナーサイドとそういう話になりました。
高:そうなんですか。
鹿:それで、夏は北海道へ戻そう、となりまして。美浦は暑いかもしれないですから。それが良い休養になって、体もふっくらして、最終的には30キロぐらい増えたと思います。その後、山元トレセンに移動して稽古を強めにやってもらって、良い体になって美浦に戻って来たんですね。それから先はずっと順調ですよ。
高:それで天皇賞秋から始動されるわけですね。
鹿:前哨戦に使うと斤量を背負わされるという事もありますからね。体も戻っているし、秋に3戦くらいする事を考えると、天皇賞から使うのがいいんじゃないか、という事でそうしました。
高:正直、あそこまで頑張れると思っていらっしゃいましたか?
鹿:着はあるだろう、とは思っていました。もちろん勝とうと思って使っていましたよ。その為にブリンカーを着けたりいろいろ考えましたからね。ある程度は動けるようにと思って、稽古もいつもよりは強めの稽古をしたり、稽古でもブリンカーを着けたり。あの時はレース前日もちょっとやったんですよ、ブリンカーを着けて。
高:そうだったんですか。
鹿:そういう工夫をした効果があったのか、馬の調子が良かったのかは分からないですけど、結果的には良い競馬をしてくれたと思います。負けはしましたけれど、北村騎手も上手く乗ってくれましたし、馬も最後まで頑張ってくれましたから。
高:なるほど。ちなみに去年と違って、早い段階から目標が決まっていて、それに合わせていく難しさというのはありませんでしたか?
鹿:いや…、そういうのは無いですね。変な気負いも無くやらせてもらっていますし。人間が妙に気合いが入り過ぎても、絶対に良い結果は出ないと思いますから。むしろ、いつも通り平常心で、と思ってやっています。
高:ヘンに力まず。
鹿:僕が気合いを入れたって、走るのは馬ですからね(笑)。張り切り過ぎても失敗する事が多いと思うので、本当、いつも通りに仕事をキチッとこなす事が良い結果に繋がると思ってやっているだけです。
高:現在、順調に進んでいるという事で楽しみですね。
鹿:良い雰囲気で来ていますからね。連覇の資格を持っているのはスクリーンヒーローだけですし頑張りたいですね。今までジャパンカップを連覇した馬っていないんですよね。
高:あ、そうなんですね。
鹿:だからその史上初になれるように頑張ります、と言って、そんなに張り切り過ぎないように気を付けます(笑)。
高:アハハ(笑)。スクリーンヒーロー応援しています。今日はありがとうございました!
鹿:ありがとうございました。
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■主な重賞勝利
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08年開業後、エフティマイア号が牝馬クラシック路線で活躍し、同年秋にはスクリーンヒーロー号がアルゼンチン共和国杯とジャパンカップを連勝し、JRA賞(最優秀4歳以上牡馬)を授賞するなど、華々しいスタートを切った。09年もコンスタントに勝ち星を積み重ねている。今週は、厩舎の看板馬スクリーンヒーロー号で史上初のジャパンカップ連覇を狙う。 |
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■出演番組
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2006年から2008年までの2年間、JRA「ターフトピックス」美浦担当リポーターを務める。明るい笑顔と元気なキャラクターでトレセン関係者の人気も高い。2009年より、競馬ラボでインタビュアーとして活動をスタート。いじられやすいキャラを生かして、関係者の本音を引き出す。 |
