サクセスブロッケンで統一を誓う
2009/11/29(日)
藤原英昭調教師
-:藤原先生、本日はよろしくお願いします。
藤:こちらこそ、よろしくお願いします。
-:では、JCダートに出走を予定しているサクセスブロッケン号についてお伺いします。前走の武蔵野Sは、ダートで初めて大きく崩れるという残念な結果でした…。
藤:そうだね。2走前、南部杯(結果②着)からの始動は予定どおりで、厩舎としては、その後にJBCを照準に調整していたんだ。それが、痛恨の除外で武蔵野Sに出走することに。このローテーションが正直誤算だった。東京マイルはG1勝ちもあるし、ブロッケンにとって最適な条件。ただ、59キロを背負ってというのはやはり厳しかったね。
-:私たちも59キロの負担重量は過酷であることを承知で、サクセスブロッケンなら、藤原英厩舎なら何とかしてくれるという思いで見ていました。
藤:もちろん、僕ら(厩舎)もその思いは持っていたけど、結果として56キロ組にやられたわけだし、敗因が負担重量であることは明確だよね。内田の鞍を持ったときに、もう胸騒ぎがしたけど…。そして、これまであまり負けていない馬が大きく負けてしまったわけだから、馬に精神的なダメージを与えないよう、その後は注意しているんだ。走る馬であればあるほど、敗戦の後は気を配らなければいけないし、ましてやブロッケンは闘争心の塊みたいなところがあるからね。
-:そして、その後の気配というか覇気の部分に変化はありましたか?
藤:難しいところだけど、幸い思ったほどのダメージはないと見ているよ。南部杯、武蔵野Sと状態はJCダートに向けて当然100ではなかったわけだし、誤算があったとはいえ、目標のレースで100にして送り出すのが僕たちの仕事だから。
-:それでは、視点を変えて、除外で出ることができなかったJBCの結果についてお伺いします。勝ち馬はヴァーミリアン。ファンから見れば完勝と取ることもでき、あの手応えで頭差は辛勝と見ることもできるレースでしたが…。
藤:7歳馬で本当に良く走っていると思うよ。ハナでもクビでもキチッと差して勝つんだから大したもん。何時でも一目置かざるを得ない存在だし、あのレースも強い内容だったよね。ただ、フェブラリーSを勝った時点、現段階でチャンピオンはウチの馬だと思っているし、ヴァーミリアンの能力を認めた上で、ブロッケンの能力は揺るぎないものだと信じているよ。
-:それでは、JCダートに向けて、ヴァーミリアンの他に気になるライバルはいますか?
藤:エスポワールシチーだね。何故なら、ヴァーミリアンは競馬が完成されていて、ある程度は手の内が分かるじゃない?エスポワールはウチの馬とのコース適性があるとはいえ南部杯は強かったし、まだまだ伸びしろもあるだろうから。
-:やはりエスポワールシチーが気になりますか…。
藤:一応強調しておくけど、ブロッケンは地方の砂質が得意じゃないけどね。かき込むような走法のエスポワールには絶好の馬場だろうけど、こっちは中央の広いコース、どちらかというと軽い馬場でこそ持ち味を発揮するタイプ。阪神は昨年のJCダートで負けているけど、あれは成長途上の3歳時のものだし、肉体的にも精神的にも今とは比べものにならない。ハッキリ言って“ここは狙って行かにゃあかんレース”だよ。
-:武蔵野Sの敗戦で人気は落ちるでしょうけど、力強いコメントを聞くことができました。
藤:そうだね。人気は落ちるだろうね(笑)。何度も言うけどあれは負担重量で、敗因は明確。だって条件戦で考えてごらんよ。平場のダート戦で▲3キロ減のアンちゃんがよく突っ込んでくるでしょ?ウチの厩舎だってアンチャン使うよ、乗せるよ。やっぱり芝よりダート戦のほうが斤量面はシビアだからね。
-:なるほど。勉強になりました。
藤:それでも、JCダートを勝つために武蔵野Sを使ったということ。これが本番までの間隔がなかったら絶対に使わない。ブロッケン自身、柔らかい馬で一生懸命に走る分、疲労が残りやすいタイプだけど、それを想定に入れて仕上げているから大丈夫。
-:本番となるコーナー4つの阪神1800Mの印象、理想の枠順などについて聞かせてください。
藤:どちらかというと器用さがないから、乗り方にちょっと工夫が必要になるコースではあるよね。あと、このコースに限ったことではなく、どのレースもどの競馬も僕は内枠が欲しいし、有利だと思っているんだ。
-:特にこの時期、来日している外国人ジョッキーが内を付いて追い込んでくるケースが目立ちますものね。
藤:当然の判断だよ。距離ロスはないほうがいいに決まっているんだから。だから、ブロッケンがフェブラリーSを8枠から勝った時は、改めて“強いなー”と再認識したよ。あのコースはスタート後、芝の部分が(外枠のほうが)長いから有利な面もあるんだけど、そういった特殊なコース形態まで考えても、基本はやっぱり内枠だよね。
-:ブロッケンはあまりスタートが良くない時もあるように思うのですが、枠順と関係はありませんか?
藤:あれは地方を使った時なんだよ。さっきも少し話題に出たけど、地方の深い砂は合っていない。スタートもホイルスピン的な感じになるというかね。昨年のJBCなんか見ると分かりやすいんだけど、蹴っ張りが強いから空回りしてしまうんだ。中央だったらしっかり出てくれるよ。それだけ、中央と地方の砂質は違う。
-:南部杯ではエスポワールシチーに先着を許しましたが、今度は中央の砂です。付け入る隙というか、ファン側が見ておきたいポイントはありますか?
藤:好位で折り合って、自分の競馬をさせることにつきる。脚を最後まで溜めて、叩き合いに持ち込めば十分チャンスだからね。長くいい脚を使えるという長所がフルに生きる競馬をさせるつもり。1週前追い切りに乗ったルメール(レースは内田博騎手が騎乗)も、同じイメージを持っていたよ。
-:仕掛けどころが少し早くなる可能性もあるのでしょうか。
藤:それより、道中いかにリラックスして走れるかが重要。ペースが速かろうが遅かろうが対応できる状態にあるしね。斤量が重くて、いい位置が取れなかった前走を教訓にしたいね(笑)。とにかくレースを気持ちよく走らす、今の気持ちがさらに前向きになるような状態を当日までにつくっていくよ。
-:当日、パドックで見ておきたいポイントなど教えていただけたら…。
藤:面子をして、テンションは高く見えるタイプ。極度に汗とかかいていたら心配だけど、いつもと変わらない状態で出せるんじゃないかな。やっぱり、いつもどおりが一番だよね。
-:レース前の気配、レース中は駆け引きなどにも注目して、サクセスブロッケンを追ってみます。最後に競馬ファンに向けて、栗東のトレンドにもなりつつある藤原英厩舎流というものを教えてください。
藤:小さい時から乗馬して、自ら見たり覚えたりしてきたことが今に繋がっているよね。成績を見て他に真似てもらえるのは光栄なことだし、競馬サークル全体のレベルを上げるのが僕の厩舎の目的だとも思っているから。生産とか育成は間違いなく世界に近づいているし、現場サイドはもっと成長していかなければならないよね。調教技術というものをもうひとつ注入して、ちょっとでも日本の競馬の底上げがしたい。ナンボ頑張っても成績が上がらなければ見てくれない世界。成績というのはそのために対してあるご褒美だよ。
-:トレセンを通じ、乗馬技術の向上は日本競馬の底上げに繋がるでしょうね。
藤:本物の技術で仕上げて、依頼するジョッキーに本物の乗り方で結果を出してもらう。僕らが目指している、研ぎ澄まされた競馬がファンの皆さんに伝われば最高だよね。
-:藤原先生、お忙しい中、本当に細かいポイントまでありがとうございました。
藤:こちらこそ、ありがとうございました。
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■最近の主な重賞勝利 |
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07年・08年の2年連続でJRA賞(最高勝率調教師・07年は優秀調教師賞とダブル)を受賞。平場・重賞とレースを問わず積み上げるその勝率はホースマンの間で崇められ、藤原英厩舎流の調教は栗東トレセンでもトレンドになりつつあるほど。本年の秋華賞では有力馬の3頭出しなどで注目を集め、今週のジャパンカップダートは厩舎2頭目のGⅠウイナーであるサクセスブロッケンで3勝目のGⅠ制覇を狙う。 |