ロゴタイプと共に威厳あるダービーの頂きを
2013/5/26(日)

今年のクラシックはクリスチャンが桜花賞をアユサンで、続く皐月賞はロゴタイプに乗ったミルコが制した。まさにデムーロ兄弟の勝負強さを見せ付けられる結果になった。いよいよ迎える大一番の日本ダービー。クリスチャンは皐月賞を制し、GⅠ2勝と世代随一の実績を誇るロゴタイプと、再びコンビを組むこととなる。若干、20歳ながら、日本でもその活躍の場を広げつつあるイタリアの風雲児は、ホースマンの夢である日本ダービーを、どう考え、どう捌くのか?心境に迫った。
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日本ダービーはロゴタイプをエスコート
-:オークスに続いてダービーのお話もお願いします。皐月賞ではクリスチャンはインパラトールに乗られていましたね。ご自身がスプリングSで騎乗していたロゴタイプには兄のミルコが乗り、鮮やかな勝利でした。今回の皐月賞をクリスチャンは、どう見ましたか?
C:とても速いペースで、タフなレースでしたね。レコード決着にもなりましたし、ロゴタイプと2着のエピファネイアに関しては、特に強いという印象を持ちましたね。
-:そして、そのロゴタイプを、再度、お兄さんからバトンタッチを受ける形になります。ミルコから何かアドバイスはありましたか?
C:ロゴタイプには実戦でも1回乗っているので、ミルコも「特に言う必要はない」ということでした。
-:クリスチャンが乗ったスプリングSのレース内容と、皐月賞はタフさという意味で違うレースだったと思います。改めて、ロゴタイプへの評価は変わりましたか?
C:トライアルのスプリングSは、スゴく強い内容で、ムチも1回しか使わなかったんです。抜け出してからも他の馬を見る余裕がある感じでした。皐月賞は本番なので、楽なレースではなかったですけれど、スゴく成長をしているのが目に見えて分かりました。
-:元々、ミルコが乗って朝日杯で勝った当時、ロゴタイプの評価はそれほど高くなく、むしろ皐月賞で3着に負けたコディーノが1.3倍という圧倒的な評価でした。朝日杯ではミルコの手綱捌きが冴えていて、1.3倍のコディーノを負かした訳ですけれど、あのレースを観るとロゴタイプにも不利があったと思います。スタートして500mほどの地点で他馬に前をカットされていました。普通の2歳暮れの馬だったら、あそこで怯んだり、レースへの集中力が途切れたりすると思います。ロゴタイプは精神力の強い馬だと思っていいですね?
C:ロゴタイプは真面目な馬で、常に力を発揮してくれます。本当に良い馬というのは、全ての条件下でちゃんと走ってくれるものです。ロゴタイプには、そういう強い馬に必要なところがあの若さで既に備わっていますね。
-:しかも、どのレースを観ていても乗りやすそうなんですよね。
C:たしかに、そうですね。他のレースを見ていても、スゴく乗りやすそうな感じがありましたね。
-:ペースが速くなっても、あれだけのパフォーマンスができるということは世代のトップといっても過言じゃありませんよね。その自覚はありますか?
C:もちろん!ハイペースになってもスローペースになっても、どこの位置からでも行けるので、そういう意味ではとても強い馬ですね。
ロゴタイプを信じて勝つ!
-:2冠が懸かるダービーになります。皐月賞とはコースの条件や馬場状態も変わってきます。今のところ、レースへ向けての展望はどうみていますか?
C:前回の皐月賞もそうでしたが、いずれにしても1馬身、1馬身半の厳しい決着になると思うんです。何か一つの要因で着順が変わってしまうのが競馬の怖さです。どれだけ上手く運べるか、そこが一番重要になってくるのではないでしょうか。
-:それは言えますよね。道中での他の騎手との駆け引きもあります。ダービーでは完全にロゴタイプが抜けた人気馬になりそうです。マークされる立場になれば厳しさも出てくると思うんです。
C:それを受けて立たないといけない馬だと思います。想像以上に厳しい戦いになるかもしれません。それでも、大きな舞台になればコントロールが利く馬というのは本当に有利ですからね。実績からもロゴタイプがレースを作ることになるでしょう。この馬が動けば全体も動く、そういうダービーになると思っています。
-:クリスチャンより前で逃げる馬、あるいは先行している馬がいた場合、展開面での怖さもありますね?
C:そうですね。でも、そこまではスローな流れにはならないと思いますよ。もしスローになった場合、ロゴタイプよりも後ろの馬が折り合いに苦しむことにもなります。そうなればロゴタイプの乗りやすさが武器になります。それにスローになってもロゴタイプならいつも通り、前に行くことだってできますから何も心配していません。
-:クリスチャン自身、日本に来るのは今回で3回目になります。今年のクリスチャンは去年よりも騎手として一皮むけた印象を受けました。
C:ハイ。日本でのレースについては、他のジョッキーの癖も段々と分かり、コースの事も分かってきています。整った施設と環境にも慣れました。それが結果に結び付いているのではないでしょうか。

成長の源はアメリカンスタイル
-:去年よりも騎手として成長している部分があったら教えて下さい。
C:アメリカのガルフストリーム競馬場に行って経験を積んできたので、その刺激が良い方向に出ているのではないでしょうか。以前よりも、体を低く沈めて乗る“アメリカンスタイル”を実践しています。
-:馬の背中にくっ付くような低い騎乗姿勢ですね。以前よりも低い姿勢で乗るようになった効果はどんなところですか?
C:スタートが良くなったのも姿勢を低くしたからかもしれません。僕の通訳の武田さんは、レースでも僕を見ているんですが「スタートしてからクリスチャンを見失った(笑)」と何度か言われましたから。それくらい低い姿勢で乗っているので他の騎手の外側にいると見失うらしいですよ(笑)。
-:アメリカのガルフストリームパーク競馬場で乗っていた理由を教えてください。
C:ガルフストリームパーク競馬場はマイアミの一番下。観光地として有名なところですが年明けからトップジョッキーが集まる事でも有名な競馬場だからです。
-:どんなジョッキーと競馬をしたのですか?
C:東海岸のジョッキーが冬場に南にくるんですけど、ハビエル・カステリャーノやエドガー・プラード、ジョン・ヴェラスケスなどトップジョッキーがいました。若手ジョッキーではパコ・ロペスも一緒にレースしました。
-:アメリカのトップジョッキーと戦う中で、より姿勢が低いアメリカンスタイルを意識し始めたのですか?
C:そうなんです。そう簡単には彼らと同じようには乗れませんでした。新しいスタイルで2、3回乗って、徐々に慣れていきました。初めは、どこに重心を置くのか、そのポジションが分からなかったんです。何回かレースでの経験を積んで分かるようになりました。
-:ミルコと比べるとクリスチャンの方が身長が高いじゃないですか。足が長いので体を畳みにくいのではないですか?
C:そんなことはないですよ。身長が高い方が見た目はキレイだと思いませんか?他の人がどう見ているのかは分からないですが、僕は背が高い人の方がキレイに見えます。特にレースで乗っているときに、そう思いますよ。でも、背が低い人が乗ってると、逆に鞍ハマりが悪いんです。
-:なるほど。ある程度は身長があった方がキレイに乗っているように見えると?
C:クリストフ・スミヨンも背が高くてキレイでしょう?
プレッシャーよりも自然体
-:日本のファンに「クリスチャン・デムーロはこういうジョッキーだ」というのをアピールして下さい。
C:子供の頃からランフランコ・デットーリの乗り方を意識していました。それからキーレン・ファロン、ジェリー・ベイリーなど世界の騎手の乗り方を見て育ちました。自分については、他の人が評価することだと思っているので発言は控えます。ただ、常に馬とコンタクトを取るのが上手いジョッキーだとは思います。
-:返し馬の時に馬とコンタクトを取るために気を付けていることはありますか?
C:返し馬で乗った感じでしょうか?その馬のフォームとか、ハミの取り方とかですね。基本的に馬がリラックスすることを心掛けています。
-:返し馬に行く時は馬も興奮状態にありますから、馬を落ち着かせることに重点を置くんですね?
C:ええ、そうです。
-:ダービー当日は大観衆の中で1番人気を背負って乗るプレッシャーがあると思います。アユサンで勝った桜花賞とは比べ物にならないくらい緊張するでしょうね。
C:ロゴタイプは何のウイークポイントもない非常に乗りやすい馬です。僕が意識するのはダービーの大観衆の前で、いかにロゴタイプをリラックスさせるか?ということです。強い馬だとわかっていますからプレッシャーよりも楽しみの方が大きいです。
-:昨年の天皇賞(秋)では兄のミルコがエイシンフラッシュで勝ちましたね。あの時のウイニングランと芝の上での最敬礼は感動的でした。クリスチャンもダービーを勝ったら日本競馬の歴史に名を刻むことになりますね。
C:もし、ダービーを勝ったら……、凄く興奮しているでしょうね。声を掛けられても分からない状況になるかもしれない。それくらい僕にとって大きなことです。
-:まだ二十歳という若さでこれだけのビッグチャンスに巡り会えるとは思っていませんでしたか?
C:はい。とても名誉なことだと思っています。
-:どこの国でも“ダービー”というのは威厳があるレースですからね。
C:ハイ、私もそう思います。
-:プレッシャーがかかるダービーになりそうですが頑張ってくださいね。
C:ロゴタイプを信じて頑張ります。応援してくださいね。
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■最近の重賞勝ち |
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兄は日本の競馬ファンにもお馴染みのミルコ・デムーロ騎手。09年に祖国・イタリアでデビューすると、デビューイヤーは年間45勝。2年目はウンベルト・リスポリ騎手に次ぐ年間153勝をマーク。そして、一昨年は222勝を挙げて、イタリア・リーディングに輝いた。 |
