関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

内田博幸騎手

前に行くことも……。ヤル気に任せての位置取り

-:今回は頭数が……。残念ながらオルフェーヴルが出れなくなってしまって、11頭になってしまったんですけれど、頭数が少なくなることで、ガチンコ勝負になるというか、「3強」とも言われています。ジェンティルドンナにフェノーメノ、相手はゴールドシップの前にいると思うんですけれど、後ろからマクりきる戦法ができるかどうかがポイントですね?

内:馬がヤル気になって前に付けれれば、前に行っても良いんじゃないかと思いますけどね。馬の気分でどの位置に付けるかはまだわからないですね……。ゴールドシップの機嫌によって「後ろが良いよ」という時もある。共同通信杯みたいに「良いよ、前に行っても」という時もあるのかなという気持ちもしますしね。ゴールドシップの気分に合わせながら僕も乗って、この馬が良い結果になるように導いてあげることが一番かなと思うんでね。

-:ファンも後ろにいたら、今日のゴールドシップはこういう日なんだなと納得して見ていれば良いと。

内:ほとんど、そういう日ばっかりなんですけれどね。まともに出られたのは共同通信杯だけだから。だから、位置よりも、この馬が気分良く走っているかどうかということが一番鍵じゃないかなと思っていますけれどね。

-:共同通信杯は前に付けられたんですけれど、4コーナーを回ってきて、追い出してから行く気になるまで納得してない感じがあったんです。あれはあの時のコンディション、それとも若さというところなんですか?

内:馬場も速い馬場だし、そこからグゥーとみんな加速して、そこに付いて行かないといけないですものね。今までと全然、戦法の違うレースをしているから、馬自身がちょっと戸惑っている部分もあったのかもしれないけれど、途中からはちゃんとハミを取って、シッカリと伸びて差し切ってくれているので。それがこの馬のG1を獲る快進撃が始まる第一歩だったんじゃないでしょうか。

-:今までタイトルを3つ獲ってるじゃないですか。これからは古馬になってのゴールドシップ第2章が始まる訳で、まだまだ活躍していきたい相棒であると思います。内田騎手にとってゴールドシップはどんな馬ですか?

内:僕がケガから復帰して、この馬と共に去年はレースをしていった訳ですから、その中で重賞を勝たしてくれて、復帰初のG1も勝たしてくれて、そのお陰で僕も皐月賞、ダービー、菊花賞を3つ共に勝つことができたのでね。ジョッキーとして、そういったことを味わえるということは、なかなかあるものでもないですしね。この出会いは運命でもあったんじゃないかと思いますね。

-:内田騎手はエイシンフラッシュでダービーを獲られて。菊花賞は2勝しているんですよね。

内:菊花賞を獲って、ダービーを獲って、皐月賞を獲って、また菊花賞を獲りましたけれどね。また、こういった白い馬体で、ゴールドシップと金の船という、その年の言葉が「金」で、最後の有馬記念も白い馬体に赤い勝負服で、まるで本当にサンタになったみたいで、色んなモノが合わさったというか、そういった年だったと思いますよ。

-:馬場に関しては、今は梅雨の時季じゃないですか。馬場が悪くなった時というのはゴールドシップに適性があるのは、これまでに証明してきてますから心配していないのですが、時計が出る舞台を疑問視する声もあるんですけど、別に気分さえ向けば問題ありませんか?

内:ダービーと天皇賞の2つだけですもんね。別に対応できない訳じゃないと思います。馬の走る気分、そこに尽きますね。馬場が良い、重い関係なしに。

-:ゴールドシップを除いた2頭がいるじゃないですか、ジェンティルとフェノーメノと。内田騎手がファン目線に立つと、ゴールドシップ以外の2頭だったらどっちを応援していると思いますか?

内:どっちもスゴい馬ですからね。ファン目線も大事ですけれど、やっぱり僕たちはファンが納得する騎乗をするということ。勝てば一番良いんですけれど、負けることのほうが多いので。負けることに対して納得してもらえるような騎乗をしていかなきゃいけないので。自分が納得することが大事な部分もあるし、周りが納得してくれることも必要だろうし、どっちのバランスも崩れたらおかしくなって良くない訳で、良いバランスを保てるように騎乗していくことが大事ですよね。







宝塚記念に新たなエピソードを刻む

-:今回は天皇賞(春)みたいな1本被りには多分ならないので、ジョッキーとしてもプレッシャーはありませんか?

内:色々とありますけれど、何番人気であろうが、責任を持って乗ることが良いパフォーマンスができるんじゃないかと自分は思うので。ただ、プレッシャーが強過ぎると良い判断がし辛いとは思いますけれどね。その微妙なサジ加減を自分で保って、1番人気であろうが、2番人気であろうが、3番人気であろうがいつもと同じ騎乗ができるように、かつ良いレースをできるようにしていけば良いかなと思っていますけれどね。

-: G1を3勝していますけれども、その競馬自体は本命馬のようにポジションを取る訳でもなく、競馬っぷりも個性的な馬じゃないですか。かなりファンが多い馬なので、その個性的なゴールドシップを宝塚記念で上手いことエスコートしてあげてください。

内:しかし、これ1回きりで終わる訳じゃないので、もしもダメだとしても秋にはリベンジする舞台があるので。この馬の力があればリベンジすることもできるだろうし、今回の宝塚記念でも、ゴールドシップの能力だったらやれる力は持ってるんでね。堂々とレースをしてきたいと思います。

-:去年の3勝のレースを見たら、その力が十分に備わってますし、一番驚くべきはあそこまで走っているのにケガがないというのが。

内:それが一番良いことだと思いますね。この馬がレースで走りたいという気持ちを当日に持っていくことと、やはり何があっても無事にレースを終えることが一番。その中で勝負が付くんでね。勝てれば最高ですけれどね。

-:内田騎手といえば、宝塚記念はエイシンデピュティで。

内:そうですね。勝たせてもらってます。

-:あの時は結構、興奮してらっしゃったのか、ムチが飛んでいったというエピソードが?

内:そうですね。ゴールに入った瞬間に手が滑っちゃってね。もう渾身の力を込めて、追い出してムチも入れて、“ココで勝てないと勝てねえぞ”と思うぐらいの気持ちでレースをしてましたし、直線で馬がグッと止めたいという時もあったので、それを止めさせたらいけないなという気持ちもあったので。最後は握力がなくなるぐらい馬に対して推進してたんでね。でも、それも何かの運命だったんだろうと思いますしね。

-:そこまで内田騎手を本気にさせるゴール前というのは、そうはないことでしょうから、今回もそうであって欲しいですね。

内:本当に今まで強い内容でG1に勝ってますし、堂々としていきたいと思います。

-:ゴールドシップが勝ってきているレースというのは全部引き離して勝ってるので、そんなには追い比べにならないのかなと思いますけど、ファンも応援しています。

内:今回、僕は調教に乗せてもらっていますが、みんなの力を結集して、同じ方向を向いて、レース当日に向かっていければ良いんじゃないかと思っています。

-:いつもの須貝厩舎のチームワークに内田ジョッキーも仲間入りして?

内:更に結束力を高めていけたらと思っています。

-:分かりました。宝塚記念当日を楽しみにしていますので、頑張ってください。

内:ありがとうございます。

←ゴールドシップの内田博幸騎手インタビュー(前半)

1 | 2




【内田 博幸】Hiroyuki Uchida

1970年 福岡県出身。
1998年 大井競馬からデビュー。
2008年 JRAへ移籍。
JRA初騎乗
93年7月25日 2回新潟4日2R ワカバトウショウ
JRA初勝利
02年4月21日 3回東京2日1R イルラーゴ


■最近の主な重賞勝利
・13年 ヴィクトリアマイル(ヴィルシーナ号)
・13年 目黒記念(ムスカテール号)
・13年 フローラS(デニムアンドルビー号)
・13年 NZトロフィー(エーシントップ号)
・13年 阪神大賞典(ゴールドシップ号)
・13年 弥生賞(カミノタサハラ号)
・13年 ダイヤモンドS(アドマイヤラクティ号)


公営・大井競馬所属から1989年に騎手デビュー。
的場文男、石崎隆之騎手らが全盛期の時代に頭角を現すと、2004年に年間385勝(他、中央では28勝)を挙げて、初の南関東・地方競馬全国リーディングを獲得。 また、鉄人・佐々木竹見の年間505勝の記録を2006年に更新。同年には地方524勝、中央61勝という並外れた成績を残し、翌年には地方所属ながらNHKマイルCでピンクカメオに騎乗し、中央G1初勝利を挙げた。
07年には08年度のJRA騎手試験を受験を決意。当時の規定で、1次試験は免除となり、晴れて、08年3月1日付けでJRA騎手となる。その後の活躍は周知の通りだが、2010年にはエイシンフラッシュで日本ダービーを制覇。一昨年は大井競馬で頸椎歯突起骨折の重傷を負い、長期休養を余儀なくされたが、ゴールドシップとのコンビでG1の舞台でも活躍。完全復活をアピールしている。