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鈴木裕幸調教助手



2歳時よりクラシック世代を牽引しているエピファネイア(牡3、栗東・角居厩舎)。この秋は同路線に皐月賞馬&ダービー馬不在となれば、何れも2着と苦杯を嘗めた同馬にとって神戸新聞杯は負けられない復帰緒戦となる。春との比較、秋への成長を確かめるべく、お馴染みの鈴木裕幸調教助手に近況を伺った。断然人気を背負う超良血馬への期待を、改めてご確認いただきたい。

"春と比べれば"という段階

-:ダービーに引き続き、よろしくお願い致します。エピファネイア(牡3、栗東・角居厩舎)について、ダービーの後の休養で変わった点、成長した点を教えてください。

鈴木裕幸調教助手:「常歩、ハッキング辺りの動きが、春先と比べるとだいぶ良くなった」と福永騎手も、普段乗っている岸本助手も言っています。

-:能力は誰もが認めるトップクラスなので、それに加え、身のこなしが良くなっていたら鬼に金棒ですね。

鈴:でも、「速いところに行ったら、相変わらず掛かる」とも言っていましたよ。「乗り難しい」とも。

-:昨日(9/11)の追い切りは、4コーナーで早々と楽に抜けて来たように見えました。

鈴:良い調教でしたけれども、もう一呼吸我慢できたら、なお良かったですね。(3頭併せの)真ん中にいたのが2歳の女の子だったので、ある程度、差が出るのはしょうがないと思いますが、早目に交わしてしまった点は、他の2頭には申し訳ない感じです。

-:3頭併せで1番内を抜けてきましたね。あの調教では、他の2頭がどのような役割を演じて、エピファネイアの追い切りをするプランだったのか、教えていただけますか?

鈴:今回は、休み明けのエピを福永騎手に初めて乗ってもらう日だったので、道中はどの程度に収まるかを確認する意味での調教でした。そこで、オープン馬にリードしてもらって、番手につける形で2歳牝馬が入り、その後ろでエピは我慢させる狙いでした。

-:目一杯の調教ではなく、楽々と先着していますね。追い切りに乗る前に、いつも通り角馬場で調整されていましたが、そこでの動きや仕草で春と変わっている点はありましたか?

鈴:体の使いが良くなっていると思いますよ。はたから見ていても、そういう印象は受けます。まだそれでも"春と比べれば"という段階です。

-:どこがあの馬のMAXですか?着実に良くはなっていますか?

鈴:良くなっているところが、競馬でどう出るかは、まだわかりません。正直、未知数なところは現状では多いですね。




-:数字の話でいえば、体重や体高はどうでしょうか?

鈴:正直、体に関してはそんなに成長してはいないですね。体重も春先の競馬前と比べてさほど変わりませんし、数字だけ見たら若干少ないくらいですね。ただ、馬体のシルエットに関しては良く映るなと思います。トモの形などですね。

-:元々、シーザリオ産駒はトモが小さめに見えやすいですよね。

鈴:全体的にちょっと長いですしね。

-:肩も結構ありますものね。

鈴:そうですね。

-:そのぶん、トモがパワーアップして、バランスよく見えるようになってきたと。気性的に変わったところはありますか?

鈴:う~ん、あまり変わってないですね。良い意味でも悪い意味でも、前向きですよ。

-:競走馬に前向きさというのは、絶対に必要ですものね。

鈴:それはないと困りますね。


神戸新聞杯は秋の指標になるレース

-:この後は菊花賞に向かうわけですが、今回はダービーに続いて、"2400をどうこなすか、"というところがポイントになりますね。

鈴:(課題は)そこだけでしょうね。

-:先週から阪神競馬が始まりましたが、それほど"開幕週"という馬場でもなく、ある程度ソフトな感じもありますね。

鈴:いえ、馬場はあまり気にしないですね。

-:悪い馬場で走ると、菊花賞に向かうまでに疲れを抜く期間が掛かるかもしれませんが、どうですか?

鈴:あんまり速すぎる馬場も嫌ですしね。僕の意見では、ちょうどいいところで行ってもらえればと思います。良い感じで走ってきてくれれば、そんなにダメージもないでしょうし、必要以上に喧嘩しながら走ってこられたりすると、後々しんどいとは思います。

-:エピファネイアは、これまでに完全に折り合っているレースがないですよね?

鈴:いやいや、2歳時にありましたよ。

-:競馬を経験して、有り余るパワーの方が出てしまっているような気がします。2歳の時の方が上手く走れていましたか?

鈴:2戦目の京都2歳Sの時なんかは、掛かってはいましたが、上手く走っていたんじゃないですかね。前に馬を置かなくても上手く折り合っていましたし。

-:「掛かる」という話は色々としてきましたが、2400という距離に不安はありますか?

鈴:掛かるには掛かるはずです。それでも、ここまで終いはしっかりとしていますし、掛かっても、それを上回るものがあればいいんじゃないですかね。そう思って行くしかないですしね。あれだけ掛かっても終いの脚は残っているのが、この馬の凄さでしょう?

-:その桁違いの能力を大きい舞台で見せて欲しいですね。

鈴:それは切に願っています。

-:ダービーを見ても色々と感じることはありましたし、あおのレースを見れば世代No.1の実力を持った馬なのはファンにも伝わったと思います。エピファネイアは相当強い馬だと。

鈴:みんなそう言ってくれますけれど、結果が全てなので……。菊花賞で結果を出すためにも、この秋緒戦でどんな競馬をするのか楽しみですね。

-:ダービーまでで1回リセットして、これからエピファネイアの秋競馬が始まっていきます。ファンも相当楽しみにしていると思いますが、休み明けだからといって、凡走したら許されない立場の馬になってしまいました。

鈴:そうならないように、一生懸命やっています。そんなに心配しないでくださいよ(笑)。


-:来週の追い切りはどのような感じになりそうですか?

鈴:福永騎手が乗っての3頭併せで、Cウッドの予定ですね。ある程度はやると思いますよ。

-:ひとまず、神戸新聞杯が終わってから、現状が見えてくると思うので、また菊花賞前は、インタビューをよろしくお願いします。

鈴:そうですね。今はわからない部分も大きいですから。神戸新聞杯である程度の指標ができると思いますし、レースの結果を踏まえて、お話できると思います。

-:掛かっても、その中でどんなパフォーマンスができるかですね。

鈴:いつでも、あの子は自分自身との戦いなので、周りはあまり関係ないです。引っ掛かろうが何しようが、サラッと勝ってくれるくらいじゃないと。逆に僕自身もそこを期待している部分もありますね。あれだけモタれたりしても"それでも終いはしっかり伸びる"という、破壊力みたいなものを期待しちゃいますね。

-:ファンもそんな部分に期待していると思います。

鈴:そうですね。春よりも競走馬らしい体になったエピファネイアを見てもらいたいですね。

-:エピファネイアの顔もファンに見て欲しいですね。まだ幼いのに芸術品みたいな顔だと思いませんか?

鈴:ミケランジェロですか?でも可愛いだけじゃない、凛とした面もあるんです。そういうところも見てもらえたら嬉しいですね。神戸新聞杯をあっさり勝って堂々と菊花賞へ迎えるよう頑張ります!

-:今日はありがとうございました。エピファネイアの秋競馬を楽しみにしています。

鈴:よろしくお願いします。

エピファネイアについて、
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【鈴木 裕幸】 Hiroyuki Suzuki

1977年6月生まれ、京都府出身。
競馬とは縁のない家庭に生まれるが、中学生の頃、偶然ダイユウサクが勝った有馬記念をテレビで観て、競馬という職業を意識することに。 ジョッキーとしては、身長・体重・視力などが適さなかったため、厩務員を目指すことを決意。高校時代に京都競馬場の乗馬苑で乗馬を始め、高校卒業後、北海道の幾つかの牧場を渡り歩き、2004年に競馬学校厩務員過程に入学。
そこから、角居厩舎に入ると、シーザリオ(オークス&アメリカンオークス勝ち)、フレンドシップ(ジャパンダートダービー)、ロールオブザダイス(平安S)、ステラロッサなどを担当した。日々の仕事に対してのモットーは「ルーティーンにしないこと、繊細に務めることを心掛けたい」と語る。