関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

兼武弘調教助手

季節にデキを左右される面もあり、G1タイトルには手が届いていないトゥザグローリーだが、これまでに重賞5勝の実績は、このメンバーに入っても見劣りしないもの。リフレッシュ放牧を経て、約9ヶ月半ぶりにターフに舞い戻った前走は、本来のトゥザグローリーに近い姿だったといえよう。今季こそ悲願ともいえるG1タイトルを手中に収められるのか?復調気配漂う血統馬が真の栄光を目指し、秋の盾に挑む。

<関連リンク>

枠順確定後・池江泰寿調教師のコメントはコチラ⇒


前走に復活の兆しトゥザグローリー

-:トゥザグローリー(牡6、栗東・池江厩舎)についてお伺いします。前走の京都大賞典は、有馬記念以来のほぼ10カ月振りの休み明けでしたが、内容が非常に良かったと思います。

兼武弘調教助手:そうですね。間が開いた割には、一旦、先頭に立つぐらいで、あわや勝つかなと思うぐらいの競馬でした。最後に止まったのは、久々の分かな、という感じに思います。

-:途中からペースが上がって追い込みの決着になったのですが、前めというか、中団に付けていて、そんなに展開に恵まれた感じではなかったですね。

兼:自分のペースをある程度は守ったところで、この馬のタイミングで出てきて、それでいて良い脚を使ってくれていたし、何より気持ちが前向きなところが出てくれたのが良いかなと思います。

-:それが、10カ月振りの効果というところでしょうか。

兼:そうですね。リフレッシュ効果はあったんじゃないかと思いますよね。

-:この馬の特徴のひとつに、馬体のシルエットが変わりやすいところがあると思うんですよ。結果が悪い時の体は、ちょっと尖ると言いますか。

兼:お腹が少しボテッとしたりとか、そういうことはあります。本当に良い時は背中から腰に掛けての筋肉がパンと張りますしね。

-:キンカメ産駒特有の丸味が、好調時のサインでしょうか?

兼:そうですね。ブリッとした感じの。

-:今はそれを維持できていますか?

兼:良い状態ですね。前回も、休み明けの割にはお腹がボテッとすることもなく、締まった状態で競馬に挑めたのはすごく大きいことだと思いますね。



-:ファンも知っていると思いますけれど、この馬は寒い時期にやたらと成績が良いですね。

兼:そうです。やっぱり暑い時期がダメで、寒い時期に強い。これからの時期はどんどん良くなっていくんちゃうかなと思います。

-:10月6日の京都大賞典の時はどうでしたか?

兼:当日は暑かったです。ちょっと心配したんですけど、それでもあれぐらいのパフォーマンスを見せてくれました。

-:それだけ気力が充実しているんですね。

兼:気持ちの面も良かったんでしょうね。力はある馬なので、全然終わっているとは思っていないです。

-:同世代のエイシンフラッシュも、毎日王冠でまだまだ健在というところをみせたように、この世代はまだまだやれるはずです。

兼:トゥザグローリーもG2勝ちがあるので、力があるところをG1の大舞台で見てもらいたいですね。

-:有馬記念の好走例もありますし、残すはG1を獲るだけですね。

兼:そうですね。タイトルに向けて、ぜひ頑張ってほしいですね。



乗れているジョッキーで穴の予感?

-:体重の増減は、ここのところは安定しているんですけれど、良い時は530真ん中ぐらいまでで、減る時はやっぱり520ぐらいに減るじゃないですか。今の体重はどうでしょうか?

兼:前走が534で、今は540ぐらいです。前走よりかはちょっと減るぐらいで来るかな、という感じのイメージですね。

-:大一番に対する本気仕上げみたいなところはありますか?

兼:1回使って、体自体は動けるようになってきたと思いますし、気配も良くなってきていると思います。さっきも話しましたけど、この馬はまだまだ力が衰えていないというところを見せてほしいですね。

-:今日(10/17)の1週前追い切りは、馬場が悪い坂路でしたね。

兼:中2週になるので、軽めにサッとやる程度でしたけどね。今日は担当者が乗りましたが、そこまで速く、オーバーワークにならないようにしました。

-:来週はどういう予定ですか?

兼:おそらく池添さんが乗ると思います。

-:休み明け2走目でのG1です。季節が段々と寒くなってきて、今朝も寒かったですね。

10/17(木) 坂路で56.1-40.6-26.5-13.1秒(馬なり)をマーク


兼:この馬の季節になってきたかなと思いますね。前走で見せた前向きな気持ちを、そのまま次のレースに持っていってほしいです。

-:今、池添ジョッキーもG1で乗れています。スプリンターズS3着のマヤノリュウジン、秋華賞3着のリラコサージュと。トゥザグローリーにも合っていそうですね。

兼:そういう感じもします。前走は本当に上手いこと乗ってくれたと思っていますしね。

-:この馬は、馬場が渋ったときはどうですか?

兼:渋ったときは、良くなかったと思います。できれば良い方がいいです。

-:このままいくと、ある程度は時計の出る府中の馬場のなりそうなので、トゥザグローリーに合いそうですね。

兼:そうですね。馬場の良い状態で臨めるのは良いですね。時計勝負が持ってこいかどうかは分からりませんが、良馬場でこそ力を発揮できるんじゃないかな、ということですね。

-:最後、トゥザグローリーのファンにメッセージをお願いします。

兼:この馬もまだまだやれるというところを見ていただきたいです。

-:6歳でも休んでいる期間は長かったし、馬は若いですからね。ありがとうございます。




【兼武 弘】Hiroshi Kanetake

滋賀県出身。1983年3月6日生まれ。初めて観戦した競馬はダンスインザダークが勝った菊花賞。中学生の時に競馬好きの知り合いが多かったため、影響を受けてこの世界に入る。高校の卒業を待たずして、北海道の千歳国際牧場で修行。その後は競馬学校に在籍しながら、滋賀の湘南牧場、トレセン近郊のグリーンウッドに勤める。
池江厩舎に所属後は持ち乗り(エアラフォンやバトードールを担当)を経て攻め専の調教助手に。モットーは「馬1頭ずつ個々の個性を大切にする」こと。目標は「厩舎全体のことを把握できるように頑張る」こと。業界一といっても過言ではないビッグステーブルのムードメーカー的な存在。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。