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久保敏也調教助手

悔しさをぶつけるジャパンカップ

-:本追い切りはコースでとなりますが、通常なら今日、木曜日に1週前追い切りとなることが多いですが、明日(11/15)を選択された理由は何でしょうか?

久:まず一番は、週明けからの雨で馬場が悪いので、コンディションを考えると金曜日のほうがいいかなと。あとは先生の考えも色々あると思います。とりあえずは綺麗な馬場でトラブル無くですね。週の頭から身体を使わせて、週末にサッと馬の気持ちを上げる程度にやると思います。

-:それで来週の本追い切りに臨む形ですね。毎日王冠、天皇賞(秋)と2戦使ってきて迎えるジャパンカップですが、コンディション維持は難しくなかったですか?

久:正直、難しいです。でもコンディションが落ちているということはないです。昨年は4連戦を経験していて、天皇賞(秋)では頑張ってくれましたが、毎日王冠では結果が残せませんでした。今回は2戦とも好走しています。馬へのダメージが昨年と違うと思うので、同じパターンで合わせるのではなく、馬の状態を見ながらやってきました。

-:天皇賞(秋)が終わってからの動き出しや調整内容に、けっこう気を遣われたのですね。

久:休ませすぎると馬が緩くなってしまって、元の筋肉に戻るのに時間がかかりますからね。どこからペースを上げていくのかという部分は、先生も神経を使われたと思いますけど、上手くいっていると思います。

-:天皇賞(秋)の前に「(台風の影響で)馬場が悪い点が気になる」と藤原調教師はコメントされていましたが、この馬は馬場が悪くなっても走っていますよね?

久:あまり苦にはしないですね。悪くなりすぎると分かりませんが、稍重くらいなら全然大丈夫です。

-:思い返せば、皐月賞の時は芝生が飛び散るような悪い馬場でした。

久:重馬場でしたね(発表は稍重)。あの馬場で、しかも急坂を登ってきていますから。スピードとパワーを兼ね備えた馬です。


「フラッシュはスタートから馬場の悪いところを走らされて、最後は内を狙っていたのですが、みなも狙うから開きませんよね。一番勢いを付けなければいけないところで詰まってしまった。かたや勝ち馬はキッチリ仕掛けられていた。そこだけの差だと思うんですよね」


-:一部では「エイシンフラッシュは超スローの瞬発力勝負でしか勝てない」という意見が言われていますが、この馬は府中のG1を2つ勝っています。久保さんの意見はいかがですか?

久:世間的にはそういう風に言われているのが、僕も納得できないところはあります。違うんだぞというところを見せたいですよね。実際に前走も、ハイペースの中を先団のすぐ後ろに付いて行って、あの脚を使っていますからね。

-:しかも、出たいときに出られなかった。

久:言い訳になるかもしれないですけど、金曜日に凄い雨が降って、土曜日はみんな内から5・6頭目くらいまでを開けてレースをしていましたよね。日曜日は良馬場発表でしたが、ある程度、乾いたとはいえ実際に馬場を歩いてみたら良馬場とは言えませんでした。自分の足で歩いてはっきり分かっているので、ジャスタウェイとフラッシュのコース取りに関しては、"そりゃあれだけ差が開くわな"というような結果で、それでよく頑張ってくれています。日曜日に入って、みんな内を通っているので草は剥げていましたけど、硬さがあるので馬にとっては走りやすいコンディションでした。

逆に内から5・6頭目から外は、見た目はいいけど、草丈が長くて凄く重かったんですよね。ジャスタウェイの場合は道中からいいところを走って、直線は外から捲っていったけど、最後は内の伸びるところを走らせたという、お見事としか言いようのない祐一(福永祐一騎手)の騎乗ぶりでした。フラッシュはスタートから馬場の悪いところを走らされて、最後は内を狙っていたのですが、みなも狙うから開きませんよね。一番勢いを付けなければいけないところで詰まってしまった。かたや勝ち馬はキッチリ仕掛けられていた。そこだけの差だと思うんですよね。


-:その悔しさをジャパンカップにぶつけたいですね。

久:そうですよね。悔しさを晴らすには勝つしかないです。

-:1週前追い切り、最終追い切りをまだ控えている状況ですが、あと10日間でなんとかフラッシュをいい状態に持って行ってください。

久:わかりました。頑張ります。



誇り高きダービー馬のプライド

-:全国で応援しているエイシンフラッシュのファンの方々に、フラッシュの良さをアピールして下さい。

久:すごくプライドが高い馬で、パドックでも「どうだ、俺を見てみろ!」っていうような感じで、いつも他のどの馬よりも堂々と歩きますね。天皇賞の時も、毎日王冠で馬が気持ちよく勝ったこともあって、毎日王冠の時よりもすごくリラックスしていて、尚且つ闘志を内に秘めていました。

負けた時は、馬自身が悔しさを理解しています。レースが終わってからのフラッシュは、気持ちよく走れた後は、レース後も本当にリラックスして、やり切ったというような感じで帰るんです。前回もですが、負けた時は怒ってしまって、鞍を外して厩舎まで帰る間が凄くうるさいんですよ。それくらいプライドが強い馬なんです。スムーズに流れに乗って走れた時は、本当に爆発的な脚を使ってくれる馬なんですが、フラッシュ自身も常にそういう気持ちで競馬に臨んでいるっていうことを、ファンの皆さんにも分かってほしいなと思いますね。

-:ファンだけではなく、フラッシュ自身も悔しがるんですね。久保さんにとって、エイシンフラッシュというのはどんな馬ですか?

久:僕の中では、一生に一度巡り会えるか会えないかのスーパーホースだというくらいの、素晴らしい馬ですね。

-:もう6歳になりましたけど、ずっと強い相手と走っていながら、大きな怪我なくここまでやってきたことも、フラッシュの強さだと思います。それには久保さんを含めたスタッフの努力の面も大きいですよね。

久:ここまで大きな怪我をせずに来ることができたのも、本当に凄いなって思いますね。

-:しかも、これだけキレる脚を持っていて、パワーも他の馬よりあるというのは、故障しやすそうなイメージがあります。

久:最近、インターネットの競馬の掲示板を拝見するときがあるのですが、すごくファンの方が増えてきていて、そういうコメントを見るとすごく嬉しいです。“ダービー馬は短命だ”と言われ続けていて、ここまで長くG1に参戦し続けられた馬って、過去を遡ってもそういないんじゃないかなって思いますし、そこがやっぱり凄いところですね。勝てない時期が2年半ほどありながらも、そこからまたG1を勝って、あの時は本当に「凄いやつだな」って感動しましたね。




-:あの時期は、ファンからも「エイシンフラッシュってダービーは勝ったけど、早熟だったのかな」と疑い始める意見が見られましたしね。

久:勝てなかった時期も大負けをしたことはなかったので、そこは誇らしかったですね。結果だけを見るのではなく、道中、なんで負けたかというのを研究してみてほしいです。8・9着と負けることもありましたけど、それは本気で走りきった結果ではないので、そこをもっと知って欲しいなという気持ちもあります。

-:その最たる例が、前回の3着をどう分析するのか、ということですね。

久:そうですね。

-:僕らからしたら、大きな船に乗ったつもりで、フラッシュに託すJCにしていいんでしょうか?

久:期待に応えてくれると思います。ぼくもそれを一番願っています。

-:それでは、口取り式で待っていますので。

久:はい。そうなることを祈って、あと10日間頑張ります。

-:ありがとうございます。

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【久保 敏也】 Toshiya Kubo

1971年3月生まれ。北海道出身。母方の実家は井高牧場(最近ではドリームライナー[オープン馬]などを生産)を経営。幼少期から馬に携わる。
もともと競馬に興味がなかったが、高校卒業後、家族の勧めで競馬学校に入学。厩務員課程を経て、オグリキャップが現役時代の瀬戸口勉厩舎に入り、10年間勤務。その後山内研二厩舎でも10年間を経て、現在の藤原英昭厩舎に勤務。
瀬戸口厩舎では、ナリタブライアンと同期のマルカオーカン(ダービーでは7着)。山内厩舎でフィーユドゥレーヴ(函館2歳S)、今年の皐月賞にも駒を進めたダノンバラードの母・レディバラード(TCK女王盃など、通算7勝)などを手掛けた。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。